氷上戦争《Ice War》ー戦火の島々ー   作:空社長

2 / 3
戦闘まで行きませんでした。
地の文の書き方が下手なので、誤字報告や助言などお願いします。


開戦

パルエ暦 628年

フォウ王国 デオ都

王国西方総軍王都防衛域(ノルベニカ)

西方総軍中央司令部作戦会議室

 

 レスチネク王国管区という行政域に分類される王都デオはジェールゼナチ山脈に囲まれており、自然の要害となっているデオ・ニザルチ(デオの囲い)と呼ばれる防衛設備が築かれている。

 そして、その内側は大都市とは言い難いが、比較的高層な建築物が林立し、そしてその中で一際目立つのは山の中腹に建てられたオリンフス王宮であり、西方総軍中央司令部はその山の麓にある。

 

 

 デオ都の作戦会議室はいわば王国の軍事・外交方針を決める会議の場であり、大抵の場合、国王の出席が義務付けられる御前会議が行われる。

 作戦会議室には王国の心臓とも呼べる面子が揃っており、フォウ王国国王アル・ディメラン3世が会議室へと姿を表し、設けられた席に座り次第、御前会議は始まった。

 

「これより、()()会議を開催いたします」

 

 侍従の声に誰もが表情を険しくする。

 そう、この会議は()()()()()()()()()である。誰もが南東のオリエント海、マルダル沖での対立を深めるワリウネクル諸島連合に対する軍事作戦行動であることを理解した。

 

この会議には国王アル・ディメラン3世以下、

国王の甥であり、西方総軍総司令官のレゼノット・ベラル・アル・ディメラン上将。

東部公領を統治し、アル・ディメラン家と互いに国王(フォウゼン)の位を交代しあうリギレンス・ペラ・トゥチセファン大公。

東方総軍司令官にして、作戦立案者のアンセルミ・レモット・ロスライナ上将を中心とした王国の主要メンバーが集う。

 

 ロスライナは、待ってましたとばかりに席を立ち、侍従に対して紙を配らせる。

 

「では、王立軍事委員会第6号作戦計画、作戦名『シュラブヤルド(寒波の雷)』の作戦説明を行います」

 

 ロスライナの顔は自信満々に、且つ王国軍総司令官のレゼノットに対し、わずかに見下す表情をかもち出していた。

 

「作戦名にある『(ヤルド)』という字の通り、我々は電撃的にマルダル諸島を占領。そして諸島民の戦争遂行能力を叩き潰すため、寒波によって海が凍る時期で首都スラーグを突きます」

 

 そう言い切ると同時に、地図上のスラーグに置かれた敵軍の駒を指揮棒で叩きつけ、駒を数十センチ弾き飛ばす。

 

「作戦の詳細を説明します」

 

 ロスライナがそう言うと、下士官らしき複数名が地図をさらに縮尺を大きくしたものに取り替える。

 

「作戦の主力は無論、敵地を占領する為の陸軍です。Kom(コミー)-82戦略戦車"マルダル"。諸島に奪われたままの王国にとって崇高な領土である諸島の名を冠したこの戦車は量産性の問題から31両しか製造されませんでしたが、前面装甲70㎜の厚さです。まともな陸戦兵器を多く持たない諸島民に破壊されるわけありませんよ。この31両や補助車両が含まれる第620独立戦車大隊を筆頭に他の戦車中隊も合わせて、約束された制空権下で凍結したオリエント海を南下し、マルダル、そしてスラーグを突きます。敵地の占領には歩兵部隊が必要不可欠となりますが、敵戦線の突破、迅速な包囲殲滅が必要な第一段階では二の次となります。まあ、海が完全に凍り、座礁した諸島の船舶の制圧に役立つとは思いますが」

 

「陸軍の侵攻を支える空軍ですが、ア式コンスタンティン型空中駆逐艦で構成される第9戦隊、SW-13セルマバリナ型空中爆撃艦を含む独立航空艦中隊、他第15航空偵察群、第33独立航空戦闘大隊で制空権を確保し、総軍直轄の第2重航空戦闘群、第11航空輸送大隊によって陸軍部隊を支援及び兵力を増派します」

 

 そう言い述べたロスライナに対し、レゼノットが手を上げる。

 

「質問よろしいか?」

「……どうぞ」

 

「約束された制空権と言っているが、本当にとれるのか?航空作戦の詳細が示されてないが、まさか性能差で押し切ろうという考えではないだろうな、ロスライナ上将。少しは航空作戦も考えてほしい。諸島も馬鹿ではない」

「上将閣下、諸島連合の機体の予測スペックはあなたも知っているはずですよ。推定時速170キロという遅さです、イスカに対し2倍の速度差でありながらあなたは墜とされると?」

 

 その答えにレゼノットは顔を歪ませる。

 

「……まあ、そこはロスライナ上将の柔軟性に期待しよう、私もあの速度差で撃墜されるとは思ってはいない。だが、決して油断しないように」

「無論、理解していますよ」

「もう一つ質問だ、我々は諸島連合の本土へと踏み入れるわけだが、諸島には地の利があるだろうし我々への備えはしているはずだ。その際の被害は考えているのか?しかも、諸島に碌な陸戦兵器というのは本当か?」

「作戦詳細の用紙に記しているはずですが、しかも相手に地の利があるとしても、戦車に対抗できる兵器が無いことは確認済ですし、歩兵に関しては戦車部隊の後方で従軍する予定ですので、被害は考えられておりません」

「この情報が古いと言っているんだ、我々が直接情報を強いれていたのは、確認できるだけでも5年前だぞ。それに諸島連合の首都を制圧したとしたとして、彼らが降るとは思えないな、歩兵部隊が背後から撃たれる危険性があると思われるが」

「上将閣下はその5年間で諸島民が我々に対抗できる陸戦兵器を生み出していると?まさか、隣国に支援されてるとしても、基礎すらなかったあの国に作れるわけないでしょう。それに、歩兵部隊の背中から攻撃するなど、自ら死にに行くようで正気の沙汰とは思えませんな」

 

 その言葉にレゼノットは内心呆れてしまう。

レゼノットの気持ちを肯定するかのように、西方総軍幕僚らは顔を歪ませる。

 

 その後、他の軍人や王国官僚からの質問が続き、それはそのまま東方総軍幕僚と西方総軍幕僚らの論争へと発展する。

 

「それはおかしいだろ!もっと航空作戦を練れ!演習時の作戦よりひどいわ!」

「作戦成功の可能性は十分高い!そもそもまともな作戦がなくたって勝てる国だ!」

「相手を過小評価し過ぎだ!もっと慎重になれ!」

「だったら貴官は諸島の貧民を過大評価し過ぎと言える!味方の士気を下げているのは明白だ!」

「5年前という昔の情報を信用しきれるか!想定外の被害を受けたとき、貴官はどう説明する!」

「想定外の損害を受けることも、ましてや負けることは無い。我々は完勝する!」

 

 その時、一人の手が上げられ、室内は一瞬で静まる。

 国王が手を上げるのは、『静粛に』という意味を持ち、出席者らは誰一人とも口を開かず国王の言葉を待つ。

 

「ロスライナ上将に一つ尋ねる」

「何でございましょうか、国王陛下」

「この戦争(たたかい)勝てるのか?

 

 アル・ディメラン3世はそう尋ね、ロスライナと目線で対峙する。

 やがてロスライナが諦めたかのように目線をずらし、口を開く。

 

勝利(勝てる)か、敗北(勝てない)かという事でしたら、王国は勝てます。いえ、必ず勝利します」

 

 ロスライナは見るからに自信溢れる表情でアル・ディメラン3世の目を見る。

 

「ふむ、余にそのような大言壮語を吐くということは余程自信あると見える。良いだろう、戦争の遂行を許可する。ただし、勝ちたまえ。勝てなかった場合は貴様が責任をとれ」

 

 そうアル・ディメラン3世が言い終えた時、トゥチセファン大公の口元がわずかにやける。

 その口元は、戦争に必ず勝てるという自信と共に、次の国王へとなったときに、諸島の産業資源を牛耳れることへの期待という思いが籠っていた。

 

 

 こうして紆余曲折があったものの、ロスライナが上申した作戦案は承認され、御前会議は終了する。

 

オリンフス王宮

 

「お父様!!」

 

 王の居室にてそう声を上げるのはアル・ディメラン3世の娘であり、第一王女、そして王位継承権を持つリーサ・アル・ディメラン・フォウゼンである。

 

「なぜ、あの男の出した作戦案を認めるのですか!トゥチセファン大公とともに何か企んでいるに違いありません!」

「だが、その証拠はあるのか?」

「……それは」

 

 父親の意見にリーサは押し黙ってしまう。

 

「我々王族は軍人たちが考える作戦に関してはど素人だ。ロスライナ上将が何か企んでいようが、口を挟んだところで正論で言い返されるのが見えている。彼らの作戦案に反論する間もない。どの道、我々が口を挟めば彼らから睨まれる、リーサ、お前にはそのようなことをさせたくないという思いが私にはある。わかってくれ」

「はい……」

 

 リーサは即座に退室し、そのすれ違いに一人の男がアル・ディメラン3世の傍より姿を表す。

 オギム・リセン・レストジュフ。国王衛兵軍司令官にして上将の階級を持つ者。

 彼はアル・ディメラン3世が自身を認識した上で声をかける。

 

「いかがしますか、国王陛下」

「御前会議で聞いていたところ、この戦争には不安しかない。」

「正直言って、情報が古すぎます。"諸島連合が碌な陸戦兵器を有していない"、果たして本当でしょうか?」

「……ロスライナの近辺を探ってくれ。あの自信がどこから来ているのかが知りたい。恐らく、トゥチセファン大公も絡んだマルダルの利権絡みだろう。しかるべき時にしかるべき措置を取れ、レストジュフ上将」

「はっ!」

 

 レストジュフはさっと国王の方へと振り向き、即座に足を揃え敬礼する。

 

オリエント海 マルダル島近海 クラベルニ環礁

ワリウネクル諸島連合海軍第二海軍総隊 第三水上打撃部隊

 

「くそが!!」

 

 旗艦『ナサルコルチ』に乗艦している乗員は外の状況に愚痴を吐く。

 マルダル島周辺はほとんどが氷河に覆われ、マルダル島から少し南にあるクラベルニ環礁であっても、氷山が数多く見られ、衝突の危険があった。

 

「こんなことなら、第一海軍総隊への配置転換申請でもしておけば良かった」

 

 その男はさらに愚痴る。寒いのはまだ仕方なかった、もう6年もの間、雪は溶けるばかりかその勢いを増していた。

 だが、彼にとっての不安事項はもし衝突して沈んだり、氷に囚われて脱出不能になる事だった。

 大型艦であるナサルコルチに限って、沈むとは思わないが。

 

 その間に男から見る外の景色は動きつつあった。

 ナサルコルチが転舵を開始し、後続の艦艇もそれに続く。

 

「ふぅ……はやくこんな哨戒なんて終わらせて、家に帰って温まりたいよ……と言っても、ストーブの原料が不足しがちだから、毛布にくるむしかないか」

 

 "こんなドくそ寒い海上よりはましだが"と男は内心思い自笑する。

 このような状況であるため、指揮官を除く多くの人間が、戦争の気配が近づいていることに気付かなかった。

 そうして、数日は過ぎていき、第6号作戦計画『シュラブヤルド(寒波の雷)』の決行日となる。

 

フォウ王国 マルダル平原 キルヴァ―リ

王国東方総軍東方鉄壁区(オクシデア)前線司令部

 

 険しい岸壁という自然の要害となっているものに防壁や砲台を増築、補強を繰り返してきたもの、それが東方鉄壁区(オクシデア)という軍管区の名の通り、鉄壁とも呼べる幾重にも張り巡らされた要塞群が構築されていた。

 そして、その奥に前線司令部があった。

 

「そろそろか……」

 

司令室の中央に両足を開いて立つ男、それがオクシデア司令官イーサッツ・カルス・ラディーノセン中将である。

 

「お待ちください、独立航空艦中隊の出港に遅れが出ています!その他の部隊でも出撃できていない機が!」

「急がせろ、ただし整備は完璧にすることだ」

 

 ラディーノセン中将の半ば無茶な命令に幕僚や伝令は顔を歪ませるも、司令官の命令ということもあり、渋々といった表情で幕僚は通信士に声をかけ、伝令は走る。

 

 その命令は速やかに伝達され、ラディーノセンらが待つ間に準備は速やかに進む。

 全翼偵察機ラ・パゼロンで構成される第15航空偵察群、第33独立航空戦闘大隊の局地戦闘機イスカで構成される第67航空戦闘群がオリエント海上空に速やかに進出。

 アーキル連邦のコンスタンティン級駆逐艦を輸入したア式コンスタンティン型空中駆逐艦が含まれる第9戦隊も順次出港し、雪降る中で作戦開始少し前には上空待機を完了した。

 

「第620独立戦車大隊、ガルゼラルからの氷河侵攻準備完了!後続の陸軍部隊もほぼすべてが出撃準備完了しています!他、作戦部隊、全軍準備完了!」

 

 通信士官や伝令の報告を受けて、ラディーノセンは頷く。

 そして、無線機を近づけて、声を発する。

 

『全部隊指揮官に告ぐ、時は来た。『シュラブヤルド』を決行する。全軍、前進せよ!』

 

イレブライ・ファウゼン(フォウ王家に勝利を)!!』

 

 この時をもって、フォウ王国とワリウネクル諸島連合の3年に及ぶ戦争、大寒波戦役が始まった。

 パルエ史上例を見ない『総力戦』が幕を開けたのだ。

 




遂にタイトル通り開戦しました。
次回から戦闘シーンがあると思います。

前書きでも言いましたが、誤字報告、助言の他、感想、批評などよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。