【ぬら孫】双子の兄妹は我が道を行く【奴良リクオ】【氷麗】   作:月華綾響

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婚約者は前世で恋した人

かつて人は妖怪を畏れた

 

 

 

その妖怪の先頭に立ち

百鬼夜行を率いる"男"

 

 

 

人々はその者を妖怪の総大将_

 

 

 

 

あるいはこう呼んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

魑魅魍魎の主、ぬらりひょんと_

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水月sied

 

 

ふぁ〜…あ。もう朝か。

 

ヒョコッ

 

「水月、朝飯だぞー」

 

そう言って障子を開いて顔を覗かせるのは私の双子の片割れ、雨宮大翔。

 

「今行くよ!」

 

私がここに転生してから数年。まさかのぬら孫の世界とはね。

 

男のような容姿を持つお婆様の恩人に連れられて行った神社で少女と男性、遠くの方に少年が居たのを見た。恩人は急いだ様子でその父親を"助けた"。少年は気絶。その少女はお爺さんと共に何処かに消えてしまったけれど…。

 

「おはよ〜」

 

「おはよう、水月」

 

「おはよう、水月ちゃん♪」

 

両親に挨拶をし、先に座って居る大翔の隣の椅子に着く。「いただきます」と口を揃えて言い、食べ進める。

 

「2人共、旅行の準備は終わってる?」

 

「うん、大丈夫だよ。お母様」

 

「俺も平気だ、お袋」

 

「そう♪」

 

「遂にこの日が来たか…」

 

「ふふふ、そうねぇ」

 

我が家は割と古風なお屋敷。奴良組の傘下の雨宮組。其れこそ、あの魑魅魍魎の主と呼ばれし"ぬらりひょん"とお母様の母、つまりは私の祖母にあたる"お婆様"は戦友。しかも、奥方様の護衛であり親友だったんだとか。

 

お母様はそのぬらりひょんの息子にあたる二代目の奴良鯉伴の戦友で氷麗の母、雪麗の親友。しかも昔は想いあっていたが、恐らく羽衣狐の呪いのせいで妖同士の子は為せない事を知る事となった。だから、今はこんな状況なんだ。

 

でも、今でも二代目と想いあってるのがお母様だ。お父様はそれでもお母様を愛しているらしい。…大翔と私はそれを知って辛くなった。お母様の想いの強さを、目の当たりにしたからでもある。

 

「「「ご馳走様」」」

 

「お粗末様です。それじゃ、行きましょ!」

 

上機嫌のお母様に連れられて、荷物を乗せる。お父様が運転手として車を走らせる。

 

「大翔、水月」

 

「「?」」

 

「2人にとって、とても大切な存在になる子がもう直ぐできると思うわ。でもね、決してその子の全てを否定してはいけないの。分かったかしら?」

 

「「…はい」」

 

「それなら良かったわ」

 

「さあ、着いたよ」

 

私達と同じ位大きい和風な屋敷。アニメで見たまんまだと改めて思う。

 

今の私達は妖の姿で屋敷に出向いている。私と大翔は半妖だけど、覚醒が早かったから力の暴走はしてない。

 

「あ!優菜!お久し振り〜!」

 

「若菜じゃない!お久し振り〜!」

 

「んもう、元気だった?」

 

「元気に決まってるじゃないの〜」

 

まるでjkの会話のように華を咲かせるお母様達。

 

「あら?この子達が優菜の子供達?」

 

「ええ、そうよ!」

 

「大翔と申します」

 

「双子の妹、水月に御座います」

 

「あらあら〜可愛らしい子達じゃないの、流石は優菜ね!」

 

「ふふん。って、若菜の子は何処に?」

 

「あの子なら…」

 

パタパタ…

 

「おかーさん!」

 

「お待ち下さいませ!若ぁ!!」

 

誰かが私達の方に走って来ている。私と大翔はそっちを見る。

 

茶髪の男の子と、その子を慌てた様子で追い掛けている白の着物を着ている紺色がかった髪の女の子…雪女かしら?

 

「あらリクオに氷麗ちゃん。丁度良いタイミング!優菜、この子は息子のリクオ。こっちは雪女の氷麗ちゃん」

 

「あらあら…本当、鯉伴によく似てる」

 

「お姉さん、お父さんを知ってるの?」

 

「ええ、よく知ってるわ…」

 

…これ以上は良くないわね。

 

「お母様、そろそろ…」

 

「そうね。…若菜、ぬらりひょん様は居るかしら?」

 

「優菜…。ええ、今案内するわね。氷麗ちゃんはリクオをお願いね?」

 

「は、はい!」

 

私達が歩き始めた時、ギュッと誰かに死覇装の袖を掴まれて振り返る。其処には後に三代目となる彼、リクオ様が私の袖を掴んでいた。

 

ふと、隣を見る。…如何やら、大翔も氷麗に袖を掴まれたらしい。

 

「大翔?水月?」

 

「お母様、先にお行き下さい」

 

「我等は後から向かいます」

 

「…分かったわ」

 

お母様達を先に行かせて、私達は2人に体を向ける。

 

「…私達に何か用でしょうか」

 

「あの…ボク、リクオ」

 

「氷麗と、申します」

 

「2人の名前は?」

 

「大翔と申します」

 

「双子の妹、水月に御座います」

 

「水月…」

 

「大翔、様」

 

頬を赤らめ、私達の名前を呟く2人。ふむ、可愛らしい。

 

確か、話ではリクオ様の事は聞いていたし…接触しても大丈夫でしょう。

 

「…リクオ様」

 

「ぁ、なあに?」

 

「リクオ様は三代目になられるのですか?」

 

「う、うん!なるよ!」

 

「そうですか…」

 

私達は雨宮組。奴良組の者じゃないから、あまり長く話す訳にはいかないわね。…リクオ様は気付いてないけれど、周りの妖怪は警戒しているのだから。

 

「リクオ様、またお会いしましょう?では、私はこれで…」

 

…いや、なんで離してくれないのですか。

 

「水月…ボクは君がすk」

 

人差し指を彼の唇に触れさせて言葉を止める。それ以上、聞く訳にはいかない。

 

どうして?

 

と、悲しげに見つめてくるリクオ様。ああ、そんな顔をなさらないで下さいませ。私だって、貴方様のものになりたいわ。

 

 

でも、まだその時ではないです。

 

「私達はまだ出会ったばかりですわ。まだ、口に出してはなりません。…貴方様が、覚醒なされれば…私は貴方様のお側にいる事が出来ますわ。それまでは、どうか…胸に秘めていて下さいませ」

 

頬を赤らめて淡く微笑み、同じ身長の彼の耳元に口を寄せる。

 

「その時は、私を…貴方様のものにして下さいませ」

 

驚く彼に微笑み、大翔と共にお母様の下へ歩き出す。

 

「気に入ったのか?次期三代目若頭を」

 

「あら、それはこちらの台詞よ?

あの娘と約束してたみたいね」

 

「まあ、お袋が許してくれるかによるけどな」

 

「ふふ、それもそうね」

 

 

 

 

 

 

 

その後の御披露目も終わり、私達はリクオ様と氷麗の4人で同室に居た。

 

先程の会議にて

私はリクオ様の婚約者、大翔は氷麗の婚約者となる事が決まった。

 

お母様に言われて人間の姿に戻ると2人は驚いていた。

 

今は其々で話してる最中。敬語は外してくれと言われたが、妖の時は無理だと伝えてある。

 

「水月の好きなものってなに?」

 

「桜と月、かな?」

 

「あ、なんか分かるかも?夜に見上げる桜と月は綺麗だよね!」

 

「うん♪」

 

夢にも思わなかったわ。まさか、ガチ恋してたリクオ様の婚約者になれるなんて…。本当に嬉しいっ!

 

にしても、さっきからなんで障子から隠れて見てるのかしら?おじ様達。まあ良いか。…ワンピースだけど、下はスパッツ履いてるから大丈夫でしょう。

 

「…リクオ君、抱き付いても…いい、かな?」

 

「っ!…う、うん。良いよ」

 

リクオ様の胸に擦り寄る。リクオ様は頬を赤くしながらも私を抱きしめてくれる。それが嬉しくて首元に顔を寄せる。

 

「(か、かわ…ん"ん"…////)」

 

「リクオ君?大丈夫?」

 

「ぁ、な、なんでもないよ!」

 

「?それならいいけど」

 

これからは、貴方様のお側に居りますからね。リクオ様


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