【ぬら孫】双子の兄妹は我が道を行く【奴良リクオ】【氷麗】 作:月華綾響
大翔sied
俺達が奴良家に来て早数日。
リクオの通う小学校に転校生として入るらしい。
って──…
「急な事ですね、爺様」
「なぁに、心配せんでもよい。お前達なら上手くやるじゃろ?」
「だとしても、おじ様?突然過ぎますわ」
「すまんの、師匠からの頼まれ事でもあるんじゃよ」
首を傾げる俺達に爺様は笑って誤魔化す。
「水月としては嬉しいじゃろぅ?リクオと居れるんじゃからな」
「ま、まあ…それは、そうですけど」
頬を赤らめる妹が可愛い。って、そうじゃない。
「面倒くさい…」
「ま、大翔…(苦笑」
「明日から行くんじゃぞw」
落ち込む俺を慰める水月。
にしても、外が騒がしい。何かあったのだろうか?
爺様も目を細めて庭を見る。
「行くぞ」
「「はい」」
爺様の後に続く。
俺達が着くと、丁度氷麗が取り乱しつつも、指を差している。その方向にはテレビがあった。そこには……。
【中継です!!浮世絵町にあるトンネル付近で起きた崩落事故で路線バスが"生き埋め"に…中には浮世絵小の児童が多数乗っていたと見られ…】
「!?
助けに…行かなきゃ…!!
ついてきてくれ!!青田坊!!黒田坊!!皆!!」
「「へ…ヘイッ!」」
しかし、リクオとついて行こうとする妖怪達を木魚達磨が止める。
「木魚達磨殿…?」
「なりませんぞ。人間を助けに行くなど…
言語道断!!」
「な、何で…?」
「そのような考えで、我々妖怪を従える事が出来るとお思いか!?我々は妖怪の総本山…奴良組なのだ!!
人の気まぐれで百鬼を率いられてたまるか!!」
木魚達磨の言葉に同意出来る部分はある。
「リクオ君…」
リクオ、如何するつもりだ。
俺の妹の顔を曇らせるなんざ許さねーぞ。
「や…やめねぇか!!」
リクオの叫び声に言い争いをしていた青田坊と木魚達磨、そして彼等を止めようとしていた奴等も驚いたようにリクオの方を向いた。
「時間がねぇんだよ。おめーの分かんねー理屈なんか聞きたくないんだよ!!木魚達磨!!」
「?」
「なぁ…皆…」
「若…?」
「若の姿が…?」
「何これ?こんな若…初めて」
「俺が"人間だから"だめだというのなら…妖怪ならばお前等を率いていいんだな!?だったら…
人間なんてやめてやる!」
妖怪となったリクオの鋭い深紅の瞳を見た木魚達磨は畏怖になったのか、額に汗を浮かべる。
「え…(なんだ!?これは…この目、さっきまでとは別人)」
そんな木魚達磨を無視して、リクオが水月を見る。
「水月」
「!…はい、リクオ様」
手招きされた水月は妖怪の姿に変化し、リクオに近付く。リクオは片腕で水月を抱き寄せ、頬に手を添える。
「リクオ様…?」
「オレの隣に居ろ、水月。絶対に離れるな」
「!…私はいつでも、貴方様のお側に」
リクオに擦り寄る水月。俺としては、一先ず安心かと思っている。
「氷麗」
「あ、大翔様!」
「俺の側に居てくれよ?氷麗。必ず、お前を守るから」
「はい////」
リクオは水月の腰を抱き寄せたまま、妖怪達を連れて行こうとすると二代目が出てきてリクオに刀を渡した。
「リクオ…そいつの名は"祢々切丸"と言ってな。俺が親父から受け継いだ刀だ。百鬼を率いるならそれを持っていきな」
「!…すまねぇ、親父」
俺達はリクオの百鬼夜行として、人間達を助けにトンネルへと向かった。
水月sied
現場へと着くと、トンネルの入口が岩や土で埋められてる。私達ならばともかく、人間では暫く入ることは出来ないわね。
にしても…。
「…リクオ様」
「ん?」
「この辺り、他とは違って薄そうですわ」
私の指差す方を見てリクオ様は頷く。
「…青、黒」
「「はっ」」
小妖怪達が大体の岩を退かし、力がある青田坊や黒田坊達が残った岩と土の壁を破る。
「おほ…見つけましたぜ若ァ、生きてるみたいですぜー」
トンネル内に入ると、中には小学生が多数…。
それから、ガゴゼとその下僕の妖怪達がいた。
「……ガゴゼ
貴様…なぜそこにいる?」
「本家の奴らめ…」
トッ、とリクオ様は地面に降り立つ。私に"降りて来い"と視線を送ってくるので、その隣に降り立つ。
人の姿をしていない妖怪達が子供達をあやそうとするが…。
「オメェ等、顔怖ェんだからやめろ」
「へ、へい」
リクオ様に止められる。
「よかった…無事で
カナちゃん、怖いから目つぶってな」
「…ぇ、誰……?」
リクオ様はそれだけ言うと子供達に背を向けてガゴゼ達の方へと向き直る。
「子供を殺して大物ヅラかしら?」
「オレを抹殺し、三代目を我がモノにしようとしたんなら…
ガゴゼよ、テメェは本当に…小せぇ妖怪だぜ」
リクオ様の言葉にガゴゼの下僕の妖怪が胸倉を掴みに掛かるが、首無の紐で止められる。
「若様や姫様には1歩も近付かせん。ガゴゼ会の死屍妖怪どもよ…」
「な、なめるなぁああぁぁ…!」
反撃しようとするが首無の紐によってそれは叶わず…。
結果絞め殺された。
仲間達が戦っている間、リクオ様は私の髪を弄る。
「水月の髪、綺麗な色だな。触り心地も良い」
そう言って髪にキスをする。
「わ、若様…////」
「ふっ、照れてるのかい?」
「…若様の意地悪…//」
袖で口許を隠し、リクオ様を見上げる。
「好きだぜ、水月」
優しく微笑むリクオ様に私も頬を緩める。
「私も好きですわ、若様」
腰を抱き寄せられ、私はリクオ様に擦り寄る。
それしても、力差で奴良組の方が圧倒的に有利。
ガゴゼ会の妖怪達はどんどんやられていく。
珍しく大翔も戦っている事に驚いたけれど、氷麗が恋する乙女のような顔で大翔を見つめてるから微笑ましいわね。
私達の勝利は目に見えた。
「くそっ…行けお前ら!!纏めてかかれ!!」
残りの妖怪達が一斉にかかってくる。
身の程知らずもいい所ね。
「水月、お前の力。オレに見せてくれ」
「若様…。分かりましたわ、見ていて下さいな」
リクオ様の側から名残惜しく離れ、一歩前に出る。
そして、腰に差した刀の柄を握る。
「「!姫様!!?」」
「ふふ、私の大切な人達を傷付けないで下さる?」
素早く抜いて横に一振りするとガゴゼ会の妖怪達は真っ二つ、ドサドサと残りの連中は倒れていく。
「…凄い……」
「くっ……ん?」
ガゴゼは一瞬怯むが、子供達を視界に入れると一直線に向かって行く。
「…水月、此処で待ってろ」
「はい。若様、お気を付けて」
子供達に迫るガゴゼの間にリクオ様が素早く入り、刀を刺す。ガゴゼは切れた顔に痛い痛いと泣く。
「なんで、なんで…貴様のようなガキに…ワシの、ワシのどこがダメなんだー!?
妖怪の誰よりも恐れられているいうのにー!!」
呆れた…。そんな事も分からないだなんて。
「子を貪り喰う妖怪…そらぁ"恐ろしい"さ…だけどな…弱ぇもん殺して悦にひたってる
そんな妖怪がこの闇の世界で1番の"畏"になれる筈がねぇ」
「!!」
「情けねぇ…こんなんばっかかオレの下僕の妖怪共は!だったら!!オレが三代目を継いでやらぁ!!
人に仇なす様な奴ぁ、オレが絶対許さねえ。
世の妖怪共に告げろ、オレが魑魅魍魎の主となる!!
全ての妖怪はオレの後ろで百鬼夜行の群れとなれ!」
リクオ様はその言葉と共に、ガゴゼを斬った。
「すげぇ…あんな小さいのに…」
「カッコイイ…」
「妖怪って…ほんとにいたんだ…あんな、凄いんだ……」
"畏"の意味とは。
──闇世界の主とは、人々に畏敬の念さえも抱かせる
真の畏れをまとう者であると──
私はリクオ様に近寄り、頬に手を添える。リクオ様は私の手に自分の手を重ねる。
「若様、お疲れ様でした」
初めて妖怪へと覚醒なされたからなのか、リクオ様は少し疲れているように感じる。
「…水月」
"側に居ろ"と目で伝えてくるリクオ様に優しく微笑み、頷く。
「はい、お休みになられて下さいませ
私は貴方様のお側に居りますわ
後はお任せ下さい」
「…ああ」
安堵したように答え、私に凭れ掛かるリクオ様は次第に人間の姿に戻っていく。
ワラワラと妖怪が集まってくる。
「人間に…"戻っている"…?」
「「!?」」
「まさか、四分の一…血を継いでいるからって1日の、四分の一しか妖怪でいられない…とか…?」
「「…………」」
「えーーー!?なんですってぇえーー!?」
「そ…それってどーなるのぉー!?」
「「「若アァァー!!?」」」
下僕の妖怪達の叫びが、日が昇り明るくなった空に響いていた。
「水月」「姫様!」
「大翔、氷麗」
側に寄る2人に微笑む。
「水月、若の代わりに命令すべきだと思うぞ?」
「そうですよ姫様!」
「…私の言葉が届くかしら」
数日なのよね…。不安でしかない。
「水月様、大丈夫です。我々にとってリクオ様と同じ位に大切なんですから」
「そうですぜ、姫様」
「首無、青田坊。…青田坊、リクオ様をお願いね」
「はっ」
リクオ様を頼んだ後、立ち上がる。
軽く深呼吸をして、キッと見据え…声を張り上げる。
「お前達!今すぐ引き上げます!付いて来なさい!!」
「「!はっ、姫様!!」」
反応してくれた事に安堵しつつ、皆で帰る。
「ご立派でしたよ」
「へ、変じゃなかったかしら…」
「大丈夫でしたよ、姫様」
もしもの為にと控えていてくれてたささ美が励ましてくれる。
リクオ様を心配しつつも代わりに百鬼夜行を引き連れる。
リクオ様、私は貴方様のお役に立てていましたか…?