インフィニット・ストラトス 蒼空に鮫は舞う   作:Su-57 アクーラ機

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26話 水着の天使

 篠ノ之博士の派手な登場から少し。

 箒に「もう少しかかるから先に行っててくれ」と言われた俺と一夏は男子更衣室へ向かっていた。

 

「なあ一夏」

 

「? なんだ?」

 

「なんだって篠ノ之博士はいきなりここに現れたんだろうな?」

 

「ああ、そりゃたぶんだけど明日が箒の誕生日だからだな」

 

 ふと、なんの気なしに投げ掛けてみた質問に一夏はさらりと答える。――って、明日は箒の誕生日なのか?

 

「ほう、明日が。そいつは初耳だ」

 

「人の誕生日なんて周りに言って回るような話でもないしな。で、束さんは毎年この辺りになると箒に会いに来るんだよ」

 

「……あんな感じでか?」

 

「そ、あんな感じで。去年はステルス迷彩とかいう機械を使って何も無い所からいきなり出て来たって箒が言ってたぞ」

 

「えぇ……」

 

 話を聞く限り妹の誕生日を祝いに来た良い姉という感じだが、色々と登場手段がぶっ飛んでるな。誕生日のたびに寿命が縮みそうだ。

 と、そんな会話をしている内に更衣室のある別館に到着する。

 当然だが男子である俺達は別館でも1番奥の更衣室を使用するようにと言われている。ちなみにその別館からは直接浜辺に出られるようになっていて、海へと一直線らしい。

 

「(それにしても……)」

 

「(……なぁ?)」

 

 1番奥の更衣室――ということは、女子の更衣室前を通るわけで。当然、中は見えないが、中から聞こえるキャイキャイとして黄色い声には少し参ってしまう。

 

「わ、ミカってば胸おっきー。また育ったんじゃないの~?」

 

「羨ましい、妬ましいっ……! このっ!」

 

「きゃっ!? も、揉まないでよぉっ!」

 

「ティナってば水着だいたーん。すっごいね~」

 

「そう? アメリカでは普通だと思うけど」

 

 ………………。

 そう、こういう話題が平然と飛び交っているのだ。まあ本来ここは女子校だから仕方がないと言えば仕方がないのだが、どうにも気恥ずかしい。理由は分からないが。

 やや早足でその場を立ち去り、男子用更衣室へ。男の身支度なんて手軽なもので、海に出たらまず始めに何をしようかと考えている内に済んでしまった。さて、目一杯楽しむとするか。

 

「あ、織斑くんとホーキンスくんだ!」

 

「う、うそっ! わ、私の水着変じゃないよね!? 大丈夫だよね!?」

 

「わ、わ~。体かっこい~。2人とも鍛えてるね~」

 

「まあ、日頃から箒に剣道でしごかれてるからな」

 

「俺は空軍を志望してるからな。これぐらいは鍛えておかないと」

 

「へ~、そうなんだ~」

 

 更衣室から出てすぐ、ちょうど隣の更衣室から出てきた女子数人と出会う。皆それぞれ、可愛い水着を身につけていて、その露出度に思わず目を奪われてしまう。――って、ああ、いかんいかん! こんなジロジロ見てたらただの変態だ。

 慌てて視線を外した俺は、そのまま砂浜に向けて1歩踏み出す。――途端に7月の太陽に熱され続けた砂に足の裏を焼かれた。

 

「あっちちちっ」

 

 海に来るのも久しい俺としては、この感覚がとても懐かしい。やっぱり海っていったらこれだよな。

 素足で感じる熱に少し跳びはねながら、波打ち際へと向かう。ビーチにはすでに女子生徒が溢れていて、肌を焼く者、ビーチバレーをしている者、早速泳いでいる者と様々だ。着ている水着も色とりどりで、ある意味7月の太陽よりも眩しい。

 

「あちっ、あつつつっ」

 

 取り敢えず準備運動を始めようとしていると、後ろから一夏がつま先立ちで歩いて来た。

 

「お前も先に泳ぎに来たのか?」

 

「おう。やっぱ海に来たからには泳がないと損だろ?」

 

「そりゃそうだ」

 

 フッと笑ってから、また準備運動を再開する。長いこと泳いでないし、足がつって溺れでもしたら目も当てられない。取り敢えず屈伸をして腕を伸ばして背筋を伸ばして――

 

「い・ち・か~~~~~っ!」

 

「? おい一夏。呼ばれてるぞ――って」

 

「のわっ!? な、なんだ!? 誰だ!?」

 

「アンタ達真面目ねぇ。一生懸命体操しちゃって。ほらほら、終わったんなら泳ぐわよ」

 

 いきなり一夏に飛び乗ったのは鈴だった。

 

「まるで猫みたいだな……」

 

 ちなみに着ているのはスポーティーなタンキニタイプの水着で、オレンジと白のストライプ柄だ。

 

「こらこら、お前もちゃんと準備運動しろって。溺れても知らねえぞ」

 

「そうだぞ鈴。代表候補生が足つって溺れましたなんて笑えない話だ」

 

「あたしが溺れたことなんかないわよ。前世は人魚ね、たぶん」

 

 そう言いながら、鈴は一夏の体を軽やかに駆け上がって肩車の体勢になる。こいつ、前世は人魚じゃなくて猫じゃないのか? キャットタワーに登る猫のようにしか見えなかったぞ。

 

「おー高い高い。遠くまでよく見えていいわ。ちょっとした監視塔になれるわね、一夏」

 

 にへへっ、と笑う鈴。

 

「あっ、あっ、ああっ!? な、何をしていますの!?」

 

 と、そう言ってやって来たのはセシリアだ。手には簡素なビーチパラソルとシート、それにサンオイルを持っている。

 こちらは鮮やかなブルーのビキニ。腰に巻かれたパレオがちょっと優雅な雰囲気を出している。

 

「何って、肩車。あるいは移動監視塔ごっこ」

 

「ごっこかよ。ていうか監視員じゃなくて監視塔!?」

 

「監視塔というより、パシフィック・オリム(・・)ラじゃないか?」

 

「じゃあ誰がKAIJU(カイジュー)役するのよ」

 

「ふむ……織斑先生とか――」

 

「アンタそれマジでやめときなさい。消されるわよ、この世から」

 

「わ、わたくしを無視しないでいただけます!?」

 

 おっと、ついつい3人で会話をしてしまった。それにしても一夏は鈴にこうもベッタリくっつかれているのに一切動じていないな。昔からこの調子みたいだし、もう慣れてしまっているのかもしれない。あるいは刺激が少ない(・・・・・・)とかか……?

 

「とにかく! 鈴さんはそこから降りて下さい!」

 

「ヤダ」

 

「な、何を子供みたいなことを言って……!」

 

 セシリアがザクッ! とパラソルを砂浜に刺す。おぉう、とてつもない怒りのパワーを感じるぞ。

 

「なになに? なんか揉め事?」

 

「って、あー! お、織斑くんが肩車してる!」

 

「ええっ! 良いなぁっ、良いなぁ~!」

 

「きっと交代制よ!」

 

「そして早い者勝ちよ!」

 

「私、ホーキンスくんにしてもらう!」

 

「あ、ずるい! 私が先よ!」

 

 騒ぎを聞きつけた女子が何を勘違いしたか一夏と俺に肩車をしてもらおうと詰めかけてくる。こいつはまずい。かなりまずいぞ。あれだけの女子を肩車するなんて体力よりも精神的と男として非常にまずい。というか、君達は男に肩車してもらうことに抵抗とかは無いのか!?

 

「り、鈴。そろそろ降りてくれ」

 

「ああ。誤解が広まりかねん」

 

「ん。まあ、仕方ないわね」

 

 よっ、と一夏から飛び降りる鈴。ヒラリヒラリと掌で着地して、そのまま前方返りで起立。……やっぱり前世は猫だろ。

 

「鈴さん……? 今のはいささかルール違反ではないかしら……?」

 

 セシリアはピクピクと引きつった笑みを浮かべている。これは間違いなくご立腹だ。

 ちなみに俺と一夏はというと、やって来た女子達に「そういうサービスはしていません」と説明するので忙しい。え、なに? サービス精神が足りない? ここはテーマパークじゃないんだぞ。

 

「そんなこと言って、どうせセシリアだって一夏に何かしてもらうんでしょ? じゃあ良いじゃん。ねえ?」

 

「いえ、それは……」

 

「え、何もしてもらわないんだ。じゃ、あたしが――」

 

「し、してもらいますっ! 一夏さん、早速サンオイルを塗って下さい!」

 

「「「え!?」」」

 

 誤解だと説明している途中だったのだが、セシリアの言葉に女子と俺は声を揃える。サンオイルを……塗る? 一夏がセシリアにか……!?

 

「一夏、お前そんな約束してたのか?」

 

「ああ、まあ、バスの中で頼まれてな――」

 

「私サンオイル取ってくる!」

 

「私はシートを!」

 

「私はパラソルを!」

 

「じゃあ私はサンオイル落としてくる!」

 

 わざわざ塗ったのを落としてくるのか……。

 ともあれ、鈴の件で集まった女子達はこれまたセシリアの件で一旦解散となった。

 

「コホン。そ、それでは、お願いしますわね」

 

 シュルリとパレオを脱ぐセシリア。なんだかその仕草が妙に色っぽく、俺は体ごと後ろを向いて視線を逸らす。

 

「さ、さあ、どうぞ?」

 

「お、おう。じゃ、じゃあ塗るぞ?」

 

「ひゃっ!? い、一夏さん、サンオイルは少し手で温めてから塗って下さいな」

 

「そ、そうか、悪い。何せこういうことをするのは初めてなんで……スマン」

 

 そりゃあこういう経験が豊富な方が驚きだよな。それにしても、後ろを向いたのは却って逆効果だったかもしれない。見えない分、全て耳が捉えることになるのだが、これが余計に変な想像を膨らませてしまう。

 

「ん……。良い感じですわ。一夏さん、もっと下の方も」

 

「せ、背中だけで良いんだよな?」

 

「い、いえ、せっかくですし、手の届かないところは全部お願いします。脚と、その、お尻も」

 

「うぇっ!?」

 

「(一夏がやってるのは健全な作業、一夏がやってるのは健全な作業、一夏がやってるのは健全な作業、一夏がやってるのは健全な作業、一夏がやってるのは――)」

 

「はいはい、あたしがやったげる。ペタペタっと」

 

「きゃあっ!? り、鈴さん、何を邪魔して――つ、冷たっ!」

 

「良いじゃん。サンオイル塗れればなんでも。ほいほいっと」

 

「ああもうっ! いい加減に――」

 

「あっ、水着が……」

 

「き、きゃあああっ!?」

 

「ま、待てセシリア――」

 

 ゴスッ!!

 

「うわああぁぁぁぁぁ………」

 

 セシリアの悲鳴が轟いた直後、大きな打撃音と共に一夏が海へと吹っ飛んで行った。

 

「い、一夏ぁ!?」

 

 ドボーーンッ!! と盛大な水柱が上がり、俺は慌ててそちらへ向けて駆けて行く。

 

「ぶはっ! なんで俺がこんな目に遭わないといけないんだよ……」

 

「まあ、なんというか、ご愁傷様としか言ってやれんな」

 

 と、そこへ騒ぎの元凶こと鈴がやって来た。

 

「一夏、向こうのブイまで競争ね」

 

「だとよ。人魚姫がレースをご所望だぞ一夏」

 

「随分といきなりだな。ウィルはやらないのか?」

 

「レースは遠慮しとくよ」

 

「ビリになったら駅前の『(アット)クルーズ』でパフェ奢んなさいよ。よーい、どん!」

 

「この勝負、負けられん……!」

 

 鈴の『奢り』という言葉に一夏が反応する。なんだ、その店のパフェはそんなに値段が張るのか? まあ良いか。俺が払うわけじゃないし――

 

「ウィルー! アンタも負けたら学食の海鮮丼奢りだからねー!」

 

「よーし上等だぁ……! 俺に勝負を挑んだこと後悔させてやる!」

 

 こうして俺はなし崩し的に鈴と一夏を追いかけるハメになった。学食の海鮮丼は具がドンブリからはみ出るほど大量に乗っているが、その分お値段もなかなか高いのだ。悪いがあいつらに勝ちを譲ってやれそうにはないな。

 

「うおっ!? おまっ、ウィル、早すぎだろ!」

 

「はっはぁ! 残念だったな一夏! これでも泳ぎは得意なんだよ!」

 

 バシャバシャとクロールで一夏を追い抜き、あとは鈴を追い越すだけだ。――というところで、俺達は異変に気付いた。

 

「……一夏、鈴はどこだ? さっきからどこにもいない」

 

「おい、まさか溺れたんじゃ……!」

 

「あり得るぞ!」

 

 俺と一夏はドボンッと勢い良く水中に潜り、周囲を見渡す。――苦しそうにもがく鈴の姿を見つけた。

 クソッ! だから準備運動しろと言ったんだ!

 俺達は1度水面に出て大きく息を吸い込んでから再潜行し、沈んで行く鈴の腕を掴んで一気に浮上する。

 

「おい、鈴! 大丈夫か!?」

 

「落ち着け、鈴。ここはもう水上だ。しっかり呼吸しろ」

 

「ごほっ! けほっ! だ、大丈夫……」

 

「ったく、言わんこっちゃねえ。ちゃんと準備運動しないからだぞ」

 

「まったくだ。人魚でも死ぬ時は死ぬんだからな。とにかく1回浜辺に戻るぞ」

 

 言いたいことは山ほどあるが、とにもかくにも今は1度陸に上がった方が良い。そう思った俺は鈴を一夏に預け、それを支えるようにして浜辺へと泳いで行く。あまり速度を出すと危ないので、あくまでゆっくりとした泳ぎだ。

 

「あ、あのさぁ、一夏、ウィル……」

 

「なんだ?」

 

「どこか怪我でもしたか?」

 

「ううん、それは大丈夫よ。それより、その……」

 

 ポソポソとした声だったが、それでも俺達の耳にははっきりと届いた。

 

「あ、ありがと……」

 

 一夏におぶられているのが恥ずかしいのか、はたまた溺れないと豪語していた手前、この状況が恥ずかしいのか。もしかしたらその両方かもしれないが、俺と一夏はその言葉に「おう」と微笑みながら返す。

 

「こ、ここまでで良いわよ。さすがに自分で歩くくらいはできるからっ」

 

「本当に大丈夫か?」

 

「本当よっ。ちょっ、ちょっと向こうで休んでくるっ」

 

 そう言って一夏から降り、さっさと別館に向けて歩き出す鈴。やはり気恥ずかしかったのか、その頬は若干赤みが差していた。

 

「まあ、あの調子なら問題は無いだろ」

 

「ああ。にしてもほんとに危なかったな。まさに間一髪ってやつだ」

 

 2人して、ふぅ~と安堵のため息を漏らす。

 

「あ、2人ともここにいたんだ」

 

 ふと、声を掛けられ振り向くと、そこにはシャルロットと――

 

「ん? シャル……と、バスタオルおばけ?」

 

「ひぃっ!? な、なんだそのミイラは!?」

 

 こんな真夏の浜辺に不相応のミイラが立っていた。だ、だから俺はホラーの類いがマジでダメなんだって! 日本の貞子(さだこ)伽椰子(かやこ)もそうだが、あいつらはもう超常的な恐怖を濃縮したような連中だ。脚本家はどうしてあんなエグいものを次々と作れるんだ!?

 

「あはは。ミイラじゃないよ。ほら、出てきなってば。大丈夫だから」

 

「だ、大丈夫かどうかは私が決める……」

 

 ん? 今の声……もしかしてラウラか?

 目の前のミイラを改めて見てみると、それはバスタオル数枚で全身を頭から膝下まで覆い隠しているように見える。

 

「ほーら、せっかく水着に着替えたんだから、ウィルに見てもらわないと」

 

「ま、待て。私にも心の準備というものがあってだな……」

 

 間違いなくこのバスタオルミイラの正体はラウラだ。しかし、いつもの自信に満ちたラウラにしては随分と弱々しい声に聞こえた。シャルロットはシャルロットで何やら説得を試みている。いったいどういう状況なんだ?

 

「もー。そんなこと言ってさっきから全然出てこないじゃない。一応僕も手伝ったんだし、見る権利はあると思うけどなぁ」

 

 そういえばシャルロットとラウラは同室になったらしい。先月の一件では色々といざこざがあったが、今は普通にルームメイトとして仲が良いようだ。元々人付き合いの悪かったラウラが、こうしてどんどん交友の輪を広げていっていることを俺は嬉しく思う。

 

「うーん、困ったなぁ」

 

「なあシャルロット。ラウラはいったいどうしたんだ?」

 

「実はラウラがすっごく可愛い水着に着替えたんだけど、今になって恥ずかしくなってきちゃったみたいなんだ」

 

 ほう、学園指定の水着があるからと言っていたが、結局ラウラも水着を買っていたのか。

 

「あーあー、せっかくの可愛い水着なのになー」

 

「うっ……」

 

「ウィルに見せないなんてもったいないなー」

 

「うぅっ! え、ええい! 分かった! 脱げば良いのだろう、脱げば!」

 

 言うなり、バババッとバスタオル数枚をかなぐり捨て、ラウラが陽光の下に現れる。そして、俺は口を半開きにした間抜けな表情のまま固まってしまった。

 なぜなら、今、俺の目の前には黒の水着を纏った天使が立っていたのだから。

 

「わ、笑いたければ笑うがいい……!」

 

 ラウラの着ているそれはレースをふんだんにあしらったもので、一見するとそれは大人の下着(セクシー・ランジェリー)のようにも見える。さらにいつも飾り気のない伸ばしたままの髪は左右で一対のアップテールになっている。正直この姿は控え目に言っても――かなり可愛い。モジモジと落ち着かなさそうにしているラウラが、より強くそう思わせていた。

 

「おかしなところなんて無いよね、ウィル?」

 

「あ、ああ。少し驚いたが、よく似合ってると思うぞ……」

 

「なっ……!?」

 

 水着姿のラウラに目を奪われ、俺はつい生返事のような答え方をしてしまう。だが、そんな俺の言葉が予想外だったのか、ラウラは驚きに一瞬たじろいだあとそのままカーッと赤面した。

 

「しゃ、社交辞令ならいらん……」

 

「世辞じゃないさ。なあ、シャルロット、一夏?」

 

「うん、僕も可愛いって褒めてるのに全然信じてくれないんだよ」

 

「おう、俺も良いと思うぜ」

 

「あ、ちなみにラウラの髪は僕がセットしたの。せっかくだからオシャレしなきゃってね」

 

 確かに普段のストレートに下ろした髪もきれいだが、それとはまた違う新鮮さがあってこれはこれで良い。

 

「そうなのか。うん、確かに今のラウラによく合ってるな。すごく可愛いぞ」

 

「か、かわいっ……!?」

 

 そういう褒め言葉に慣れていないのだろうか。ラウラは俺の言葉に狼狽したような反応をして、両手の指をもてあそぶ。

 

また可愛いって……。お、お前はどこまで私の心を乱せば気が済むのだ……

 

 赤面したラウラが俯きながら何かをボソボソっと呟く。しかし、声が小さいことに加えて波の音や辺りの女子の声に掻き消されてしまい、よく聞き取れなかった。

 

「スマン、よく聞こえなかった。なんだって?」

 

「た、ただの独り言だ」

 

 聞き返すも、プイッと顔を逸らされてしまう。

 

「おっりむーらくーん! ホーキンっスくーん!」

 

「向こうでドッジボールしようよ!」

 

「わー、おりむーとホーくんの対戦~。ばきゅんばきゅーん」

 

 名前を呼ばれて振り向くと、女子2名とのほほんさんがいた。

 せっかくビーチに来てるわけだし、そこは普通ビーチバレーとかじゃないのか? まあいいか。俺、バレーのルールとかあまり詳しくないし。

 

「ドッジボールだとよ。やるか?」

 

「おう。やろうぜ」

 

「僕も行くよ。ラウラも行くよね? ……ラウラ?」

 

「――ッ!? あ、ああ。もちろんだ。私も参加しよう」

 

 そんなわけで、俺達はドッジボールのコートへと歩いて行くのだった。

 

 

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