インフィニット・ストラトス 蒼空に鮫は舞う 作:Su-57 アクーラ機
「デュノアくん、4番テーブルに紅茶お願い」
「分かりました」
カウンターから飲み物を受け取って、@マークの刻まれたトレーへと乗せる。
そんな単純な動作にさえシャルロットの気品が滲み出ていて、臨時の同僚にあたるスタッフ達は、ほうっと溜め息を漏らした。
初めてのアルバイトだというのに、その立ち振る舞いには物怖じした様子はなく堂々としていて、けれど嫌味はない。
そんなシャルロットの姿に、女性客のほとんどが見入っていた。
「お待たせいたしました。紅茶のお客様は?」
「は、はい」
自信の方が年上であるにも拘わらず、女性は緊張した面持ちでシャルロットに答える。
紅茶とコーヒーをそれぞれの女性に差し出す前に、シャルロットはお店の『とあるサービス』の要不用を尋ねた。
「お砂糖とミルクはお入れになりますか? よろしければ、こちらでお入れさせていただきます」
「お、お願いします。え、ええと、砂糖とミルク、たっぷりで」
「わ、私もそれでっ」
実はこの2人、常日頃からノンシュガー・ノーミルクなのだが、今日に限っては敢えて目の前の美形執事に奉仕してもらいたい一心でわざとそう答えたのだった。
その内心を知ってか知らずか、シャルロットは柔らかな笑みを浮かべて頷く。
「かしこまりました。それでは、失礼いたします」
シャルロットの白く美しい指がスプーンをソッと握り、砂糖とミルクを加えたカップの中を静かにかき混ぜる。
時折、わずかに響くカチャカチャという音でさえ、女性客は息を飲んで聞き入った。
「どうぞ」
「あ、ありがとう……」
スッとシャルロットの手元から差し出されたカップを受け取り、女性はドキマギとした様子でそれに口をつける。
次に同じようにコーヒーを混ぜてもらった女性客も、緊張からギクシャクした動きでわずかに一口だけ飲んだ。
「それでは、また何かありました何なりとお呼び出し下さい。お嬢様」
そう言って
「(ふう。接客業ってやってみると結構大変だよね。ラウラは大丈夫かな?)」
仕事をこなしつつ、シャルロットはラウラの姿を探す。
そして、ちょうど男性客3名のテーブルで注文を取っているところを見つけた。
「ねえ、君可愛いね。名前何て言うの?」
「……………」
「あのさ、お店何時に終わるの? 一緒に遊びに――」
ダンッ! と、テーブルに垂直に置かれた(というよりは、
面食らっている男達を前に、ラウラはゾッとするほど冷たい声で告げた。
「水だ。飲め」
「こ、個性的だね。もっと君のことよく知りたくなっ――」
台詞の途中で、しかもオーダーを取ることなくラウラはテーブルを離れる。
そしてカウンターに着くなり何かを告げ、少しして出されたドリンクを持って行った。
「飲め」
ソーサーが割れてしまうので、さっきよりは多少優しめにカップを置くラウラ。それでも弾んだカップからは中のコーヒーが遠慮なくこぼれた。
「え、えっと、コーヒーを頼んだ覚えは……」
「何だ。客でないのなら出て行け」
「そ、そうじゃなくて、他のメニューも見たいわけでさ……」
ラウラに好印象を持たれたいがためか、それとも有無を言わせぬ態度に
実際、女性優遇となった社会でこんな風に初対面の女子に声をかけられるというのは、勇者か馬鹿のどちらかでしかない。そして、この男達は確実に後者である。
「た、例えば、コーヒーにしてもモカとかキリマンジャロとか――」
言葉を遮るように、ラウラはまったく笑っていない目のまま、その顔に嘲笑を浮かべた。
「はっ。貴様ら
「いや、その…………すみません……」
結局、ラウラの絶対零度の視線と許しのない嘲笑に折れて、男達は小さくなりながらコーヒーを啜った。
「飲んだら出て行け。邪魔だ」
「はい……」
ドイツの冷氷と呼ばれたラウラの一面は、今でも健在のようだった。
しかし、そんな人を寄せ付けない態度ですら、美少女の外見を
「あ、あの子、超良い……!」
「罵られたいっ、見下ろされたいっ、差別されたいっ!」
「気が高まる……! 溢れる……!!」
一部ヤベェ客もいるが、他の客はもちろんスタッフ達までもが見て見ぬふりでやり過ごしていた。
「ボーデヴィッヒさん、11番テーブルの接客お願い」
「了解した」
スタッフの言葉に従って、ラウラは水の入ったコップを片手に指定されたテーブルへと歩いて行く。
どうやら1人客の男性らしく、メニュー表を顔の前で広げて「どれも美味そうだな……」などと呟いていた。
当然、顔は隠れているので見えないが、どうでも良いことだと切り捨てて、ラウラはダンッ! とテーブルにコップを置く。
「うおっ!? び、びっくりした……」
「飲め。飲んだらさっさと注文を言え」
「Oh……随分とおっかないウェイトレスだな。あー、じゃあ、サンドイッチとアイス・ラテを……」
メニュー表を下ろして、男性は顔を上げる。そしてラウラと視線が重なった。
「「…………え……?」」
ラウラと男性客、2人の時間が同時に止まる。
無理も無いだろう。互いが互いに見知った――いや、見知ったなどという生易しいものでは言い表せない人物だったのだから。
「ら、ラウラ……!? お前、なんで……!?」
「お、おおお前こそ、なぜここにいるのだ、ウィル……!」
「いや、ちょっと用事があって……。ていうか、どうしたんだその格好――」
「み、見るな!」
「ヴェッ!?」
あり得ないものでも見るかのようなウィリアムの顔は、勢い良く突き出したラウラの右手によって首ごと向きを変えられる。
いきなり無理に方向を変えられたことで、ウィリアムの首から小さくグキッと音が鳴った。
「くおぉ……! な、なんか首から変な音出たぁ……!」
「(み、見られた!? 見られたっ!! こ、こんなフリフリヒラヒラの格好を! よりにもよってウィルに!)」
首を擦りながら悶絶するウィリアムを他所に、羞恥で顔を真っ赤に染めているラウラも心の中で悶絶する。
「俺の首、大丈夫だよな……!?」
「(くっ、やむを得ん。見られたからにはこいつを……!)」
何かを決心したらしいラウラは右手を手刀の形に構え、ウィリアムに向き直った。
「ウィル、少しジッとしていろ」
「は? って、おい! その右手はなんだ! なんでちょっとずつ寄って来てるんだよ!」
「心配するな、痛みは一瞬だけだ。目覚めた頃には全て終わっている」
「ねえ、俺何されんの? 何されんの!?」
ラウラ・ボーデヴィッヒ、完全にウィリアムをオトす気満々である。
ふふふ……と、ラウラは不気味に笑いながらゆっくりと迫り、ウィリアムが椅子に座ったまま限界まで身を引く。
そんなやり取りが少し続いて、いよいよウィリアムの意識がラウラに刈り取られようとした刹那、その事件は起きた。
「全員、動くんじゃねえ!」
ドアを蹴破らんばかりの勢いで
一瞬、何が起こったのか理解できなかった店内の全員だったが、次の瞬間に発せられた銃声で絹を裂くような悲鳴が上がった。
「きゃあああっ!?」
「騒ぐんじゃねえ! 静かにしろ!」
男達の格好といえばジャンパーにジーンズ、そして顔には目出し
見るからに、強盗である。それも今しがた銀行を襲撃してきたばかりの逃走犯。
まさか自分達が巻き込まれるなどとは普通なら想像すらしないだろうが、相手は銃を所持した凶悪犯だ。言うことを聞かないわけにはいかない。
「犯人一味に告ぐ! 君達はすでに包囲されている! 大人しく投降しなさい! 繰り返す!」
さすがは駅前の一等地である。警察機関の動きはこの上なく迅速で、窓から見える店外ではパトカーによる道路封鎖とライオットシールドを構えた対銃撃装備の警官達が包囲網を作っていた。
「ど、どうする!? このままじゃ、俺達全員ムショ行きに――」
「狼狽えるな! なに、焦るこたぁねえ。こっちには人質がいるんだ。連中も強引には出れねえはずだ」
リーダー格とおぼしき4人の中でひときわ体格のいい男がそう告げると、逃げ腰だった他の3人も自信を取り戻す。
「へ、へへ、そうだよな。俺達には大金はたいて手に入れたコイツがあるしな」
ジャコッ! と硬い金属音を響かせてショットガンのポンプアクションを行う。そして次の瞬間、威嚇射撃を天井に向けて行った。
「きゃあああっ!!」
蛍光灯が破裂し、パニックになった女性客が耳をつんざくような悲鳴を上げる。それを今度はリーダーの男がアサルトライフルを撃って黙らせた。
「大人しくしてろ! 俺達の言うことを聞けば殺しはしねえよ。分かったか?」
女性は顔面蒼白になって何度も黙って頷くと、声が漏れないようにキツく口をつぐむ。
「おい、聞こえるかポリ公ども! 人質を安全に解放したかったら燃料を満タンにした車を用意しろ! もちろん、追跡車や発信器なんざつけるんじゃねえぞ!」
威勢良くそう言って、
幸い、弾丸はパトカーのフロントガラスとサイドミラーを破壊しただけだったが、周囲の野次馬がパニックを起こすには十分だった。
「へへっ、奴ら大騒ぎしてらぁ」
「平和な国ほど犯罪がしやすいってのは本当だな」
「チョロい仕事だぜ」
「まったくだ」
暴力的な笑みを浮かべる男達。それを物陰から観察する目があった。
《ショットガンにサブマシンガン、ハンドガン、それとありゃあ……AKか?》
《AK‐74だ。47より殺傷力と操作性が向上している銃だが、恐らく連中のはその劣化コピー品だろう》
目立たないようテーブルの下でしゃがみつつ、ウィリアムとラウラは状況を冷静に分析しながらISのプライベートチャネルで交信する。
《で、あのアホどもをどうする?》
《無論、1人残らず制圧する》
《……だと思ったよ》
やれやれと言った溜め息が含まれているが、隙さえあれば……とはウィリアム自身も考えてはいたので、お互い様である。
「「……………」」
やることが決まれば、ウィリアムとラウラは早速テーブルの下から出てゆっくり立ち上がる。
「なんだお前ら。大人しく座ってろっていうのが聞こえなかったのか?」
案の定、近くに立っていた強盗の1人がやってくる。その手に握ったハンドガンに、ウィリアムは視線をやった。
「そいつはグロックか?」
「あん?」
「その銃のことさ。アメリカの警官も使ってる傑作銃だな」
「コイツか? ああ、そうだ。信頼性が1番だからな」
「成程、仕事柄ってわけだ。なあ、よければ少し見せてくれないか?」
馬鹿丸出し――いっそ頭がおかしいのでは? と思われるようなウィリアムの態度に、強盗は顔をしかめた。
「ああ良いぜ――と言うとでも思ったか? 座れっつったんだ。舐めた真似してんじゃねえぞ」
これで満足か? とばかりに銃口を向けたままウィリアムの眼前までハンドガンを近付ける男。キャッ……!? と、どこかから短く悲鳴が上がる。
「おいおいおい、そんなもんこっちに近付けたら危ないだろ」
そんなことを言って、ヘラヘラと笑いながら両手を頭の高さまで上げた、次の瞬間だった。
「ッッ――!!」
目にも止まらぬ早さで銃身を
その目は鋭く、引き金を引くことすら
「……こうなるからな」
「なっ!? こ、こいつ――ア゜ッ!?」
持っていたはずの銃を奪われ、逆に自分へと向けられたことで体が硬直してしまった男は、すかさず繰り出された
「おやすみ」
「ッざけやがって! このガキども!」
いち早く反応したリーダーが、早速アサルトライフルをフルオートでぶっ放す。
火薬の炸裂音を連続して響かせるが、ウィリアムとラウラはそれぞれ近くの遮蔽物に飛び込んでそれを回避した。
ダガガガガガ――ガギンッ!
「クソッ、弾が詰りやがった! この安物が!」
リーダーが動作不良を起こしたアサルトライフルのコッキングレバーを荒々しく引く。
「何ボサっとしてやがる! 援護しろ!」
「お、おう!」
リーダーの怒鳴り声に反応したサブマシンガン持ちの男が慌てるように1歩前へ出て銃撃を開始した。
「チッ、ここからだとサブマシンガン持ちを狙えないな……!」
「ウィル、そのグロックを貸せ。私の位置からなら狙える」
「分かった。任せる」
マガジンの入れ替えで相手の銃撃がやんだ隙を見て、ウィリアムは床にハンドガンを滑らせる。
それを受け取ったラウラはソファやテーブル、ドリンクサーバーの陰に隠れながら近付いて行き、サブマシンガンの機関部へ向けて銃弾を放った。
「づッ!? こ、こいつら――ガッ!?」
持っていた武器を破壊され、丸腰となった男の顎にラウラの膝蹴りが刺さる。
「クソッ! 本当にただのガキかよ!?」
「狼狽えるな! こっちには銃があるんだ! ガキ2人くらいすぐ片付けて――」
「――2人じゃないんだよねぇ、残念ながら」
ようやくアサルトライフルの弾詰まりを解消できたらしいリーダーの、その背後に迫っていたのは見目麗しい執事服の美少年――もとい、美少女のシャルロットだった。
「なっ!? このっ――」
「あ、執事服でよかったかな。うん。思いっきり足上げても平気だし」
そんなことを口にしながら、シャルロットはリーダーのアサルトライフルを手ごと蹴り上げる。
そしてそのままの勢いでショットガンの男の肩に、今度はかかと落としを叩き込んで無力化する。ゴキッという嫌な音がして、ショットガンを構えていた腕はダラリと垂れた。
「(リアルなジョン・ウィックでも見てるみたいだな……)」
サブマシンガン持ちとショットガン持ち、それも大の男を瞬く間に無力化したラウラとシャルロットを見て、ウィリアムは心の中でそう呟く。
このような状況に慣れている――というようなレベルではもはや無い。
より高度な戦闘を数多く経験している、その証拠であった。
ISの専用機持ちともなれば、どの国も『ありとあらゆる事態』を想定した訓練を課している。それが候補生であっても変わりはない。
ISが展開不能な状態にあっても、状況を打破できるように鍛えられているのだ。
無論、軍人であるラウラと非軍人であるシャルロットでは、それぞれ持っている技能・対応能力・肉体能力に開きはある。
しかし、
「目標4、制圧完了。――ラウラ、そっちは?」
「問題ない。目標3、制圧完了。――ウィル」
ウィリアムもそれなりに格闘はできるが、これは前世で受けた『敵地で
専用機持ちとして長く鍛えられてきたこの2人には、恐らく敵わないだろう。
「目標2、同じく制圧完了だ」
手下3名の意識及び行動能力の損失(つまりは気絶)を確認して、3人は頷く。
それじゃあ最後の目標1ことリーダーを――と思ったところで、男はさっき蹴られて指が折れたのとは逆の左手に、予備として持っていたハンドガンを握って立ち上がった。
「ふっ、ふざけるなぁっ! お、俺がっ、こんなガキどもにっ……!」
その引き金が引かれる刹那、それこそ弾丸のように一直線に飛び出したラウラ。彼女は先ほどウィリアムに渡されたハンドガンの銃口をリーダーの眉間に突きつける。
「遅い。死ね」
「えっ。ラウラ、待っ――」
「おい、ラウラ! よせ――」
ガツン! と、銃弾ではなくグリップが額に叩き込まれ、男は糸の切れた操り人形のように倒れ伏した。
「全制圧、完了」
「……はぁ。一瞬びっくりしたじゃない……」
「肝が冷えたぞ……」
「ああ言えば、素人ならトリガーにためらいが生まれるからな。より安全な制圧方法だ」
「いや、まあ、そうなんだけどな……」
――ラウラなら本当に撃ちかねない。というのは、黙っておく。
しばらくの間、シーンと静まりかえる店内。ジェットコースター展開に呆然としていた店内の『民間人』こと客とスタッフは、ノロノロと頭を上げ始める。
「お、終わった……?」
「助かったの、私達……」
「い、いったい何が……?」
危機を脱したことは分かるものの、まだ状況を正しく把握できていない人々は、何度もまばたきを繰り返してラウラとシャルロット、ウィリアムの姿を呆然と眺めている。
同じくまだはっきりとした意識が戻らない店長は、『銀髪の美少女メイドと金髪の美少年(女)執事と偶然居合わせた男性客が強盗を撃退しました』って本社に連絡したら信じるかしら……? と変にズレたことを考えていた。
「お、俺達助かったんだ!」
「やった! あ、ありがとう! メイドさんに執事さん、男の人もありがとう!」
助かった実感が今になってはっきりと自覚できたのか、突然店内が騒がしくなる。
その様子を見て、状況に決定的な変化があったのかと警官隊も詰めかけてくる。
「ふむ、日本の警察は優秀だな」
「ラウラ、まずいってば! 僕達って代表候補生で専用機持ちだし、ウィルも男性操縦者なんだから
「おっと、確かにそいつはヤバいな。マスコミも大勢押しかけてくるぞ」
「それもそうだな。この辺りで失敬するとしよう」
案の定、警官隊の後ろには交通規制もなんのその、立ち入り禁止のロープを乗り越えたマスコミ関係者が大勢見えた。
――しかし、事態は再び一変する。
「捕まってムショ暮らしになるくらいなら、いっそ全部吹き飛ばしてやらあっ!」
完全に意識を失っていたと思っていたリーダーは、決まりが浅かったのかそう叫んで立ち上がるなり、革ジャンを左右に広げる
そこにあったのは、軽く40平方メートルは吹き飛ばせそうな、プラスチック爆弾の腹巻きだった。起爆装置は、もちろん手の中にある。
すぐさま先刻以上のパニックに飲み込まれる店内。しかし――
「諦めが悪いな」
フワッと、ラウラがスカートをなびかせるようにして右足を上げ、その奥にチラリと見えた白い布地に男の視線と意識が奪われた。そしてその隙に、ラウラは足を振り下ろす。
その
ダダダダダンッ!
「「チェック・メイト」」
高速5連射×2の弾丸は、的確に起爆装置と爆薬の信管、そして導線『だけ』を撃ち抜いていた。
「まだやる?」
「次はその腕を吹き飛ばす」
ジャキッ! と2丁のハンドガンを突きつけられ、さっきまでの威厳も高圧もなく男は震える声で謝った。
「す、すみっ、すみませんっ! も、もうしまっ、しませんっ。い、命ばかりはお助けをっ……!」
そんな敗北宣言を最後まで聞くことなくラウラとシャルロット、続いてウィリアムの3人は店をあとにしようと歩を踏み出す。――が、最後の最後に
「こ、の……ガキどもがぁ……! よ、よくもっ、やりやがったなああっ!」
先ほどウィリアムが金的で沈めたハンドガンの男が予想よりも早く意識を取り戻したらしく、ポケットナイフを片手に背後から突っ込んで来たのだ。
狙いはもちろんウィリアム――と隣にいたラウラである。
「「はぁ……」」
うんざりした様子で溜め息を漏らすウィリアムとラウラ。
その凶刃をわずかに体を傾けることでかわし、お返しと言わんばかりにラウラの
ドベキシッ!
「グベッ!?」
強烈なカウンターを喰らった男は短い断末魔を上げ、そして背中向きにドサリと倒れる。
一方の2人は動かなくなった男へ向けてわずかに振り返り、一言――
「「寝てろ」」
そう言い残して、今度こそ店を立ち去って行くのであった。