インフィニット・ストラトス 蒼空に鮫は舞う 作:Su-57 アクーラ機
「……昨日は酷い目に遭った……」
朝、俺は
眠気覚ましのブラックと、シュガーとミルクを混ぜた甘いものをそれぞれ用意する。ブラックが俺で、甘いのがラウラだ。
ドイツ人のラウラなら『コーヒーはブラックしか飲まん!』とか『シュガーとミルクなどコーヒーへの
「関節はまだ痛むし、なんかパキポキ鳴るんだが……」
「し、知らん! 自業自得だ!」
「えぇ……」
プイッとそっぽを向くラウラの頬は心なしか赤みがさしているように見える。どうやら昨晩のことについて、まだ怒りが治まっていないようだった。
……ていうか、さっきから目も合わせてくれないんだよなぁ。うっ、なんか精神的ダメージが……。
「(さて、どうしたものか……。なにかいい方法はないか? 考えろ、俺! 足りない頭をフル回転させるんだ!)」
――おっ、そうだ! ナイスでグッドなアイデアを閃いたぞ!
「よし! じゃあ、ラウラ。今週の土曜に少し出かけないか?」
「……なに?」
ピクッと、ラウラが反応する。よしよし、なんとか話は聞いてくれそうだ。
「実はちょっと良さげなスイーツ店を知っていてな。甘いものご馳走するから、機嫌を直してくれないか?」
そのスイーツ店というのは以前出かけた時に偶然発見した店なのだが、結構な人気店で海外にも支店を構えているんだとか。
店舗はここからでもアクセスしやすい場所にあるし、近くにはショッピングセンターなどもあるので遊んで回るのもいいだろう。
「どうだ?」
「……それは……」
先ほどまでこちらに背を向けていたラウラがわずかに振り返り、小さく口を開いた。
「『それは』?」
「ふ、2人で、行くのか……?」
「え? ああ。まあ、そのつもりだが。なんだったら一夏達も呼ぶか――」
「い、いい! 2人だけでいい!」
「お、おう。分かった」
ガタンッと、テーブルに乗り出す勢いのラウラに圧倒されて、俺は体を
「それじゃあ、土曜日にな」
「い、言ったな!? 約束だぞ!」
そう言って、グイッとラウラは小指を差し出してきた。
「……指切りか?」
「うむ。何か重要な約束事があればこうするのだろう? シャルロットに聞いたぞ」
「ああ。約束を守りますっていう
俺としては別段断る理由もないので、ラウラの小指に自分の小指を
「指切りげんまん、ウソついたらバルカン砲全弾くーらわす」
何それ怖っ! もし当日行けなくなったら
「指切った」
「ら、ラウラ? バルカン砲のくだりもシャルロットから聞いたのか?」
「そうだが? ちなみにバリエーションとしてクラスター爆弾やナパーム弾もあるらしいぞ」
「そ、そうか……」
怒らせたら怖いのは断トツでラウラだが、シャルロットもシャルロットで結構怖そうだな……。
「よし、土曜日は何がなんでも空けておくとしよう」
例え織斑先生に急用で呼ばれたとしてもノーって言うぞ! 土曜日は死守せねば! じゃないと
「当然だ。当日になって急用が、などと言ったら許さんぞ?」
すっかり機嫌は直ったようで、ラウラは上機嫌な声でそう告げてくる。
「分かってるよ。約束だ」
心の中でホッと安堵の息を吐きながら、俺はマグカップに入ったコーヒーを飲み干した。
「ところでウィル、そのスイーツ店の名前は何と言うんだ?」
甘口コーヒーを飲んでいたラウラが、ふとそんなことを問うてくる。
「ん? あー、なんて言ったかな。確か……そうだそうだ。『スイート・キッス』――」
「ぶぅぅっ! ゲホッ! ゲホッ、ゲホッ!」
「お、おい! ラウラ、大丈夫か!? どうした!?」
「ケホッ! な、なんでもない……!」
▽
それから時は経ち、土曜日。
「(服装に乱れ無し。現在時刻
駅前のモニュメントにて、ラウラは自身の服装をチェックしながら、デートの相方であるウィリアムを待っていた。
「…………………」
同じ部屋なんだから、わざわざ待ち合わせする必要は無いだろうと言われそうだし、実際ウィリアムに同じことを言われたが、それにはちょっとした理由がある。
というのも以前、副官のクラリッサに『待ち合わせもデートの
「(……さすがに少し早く来すぎたか?)」
携帯電話を取り出し、時間を確認する。
約束の時間まではまだまだ程遠かった。
「(いや、軍人たる者、常に迅速な行動を心がけなければいかんのだ。け、決してウィルと出かけるのが楽しみで仕方なかったなどという浮わついた理由ではないぞっ!)」
などと誰に向かってのものか分からない言い訳をするラウラ。
そこへ、見るからに『遊び人』な
「ねえねえ、カーノジョっ♪」
「今日ヒマ? 今ヒマ? どっか行こうよ~」
ちなみに女性優遇制度を各国が取るようになってから、男性の地位は急転落した。
しかし、それなりの容姿があれば権力者=女性から愛される、俗に言うホストやアイドルなどは以前にも増して可愛がられるようになったのである。
そうなると、今この瞬間のように、
「約束がある。他を当たれ」
「えー? いいじゃん、いいじゃーん、遊びに行こうよ」
「俺、車向こうに
「話を聞いていなかったのか? 他を当たれと言ったはずだ」
拒絶100%、冷たい瞳に睨まれてチャラ男Bはたじろぐが、もう1人の男はラウラの態度が気に食わなかったらしく苛立たしそうに舌を打った。
「チッ。いいから来いって!」
そう言ってラウラの腕に手を伸ばすチャラ男A。相手は自分よりも小柄だから力で勝てると判断したのだろう。
「いっ――でぇっ!?」
瞬間、ラウラは触れられる寸前で身をかわし、その腕をねじ上げる。続いて体勢を崩した男の
堪らず腕を引っ込めたチャラ男Aは、痛そうに膝を抱えて
「気安く触れるな。その鼻につく香水の匂いが移る」
「こ、こいつ、女だからってお高く止まりやがって――ぐぇっ!?」
「――俺の連れに何をしてるんだ?」
▽
朝、9時25分。
IS学園発のモノレールを降りた俺は、待ち合わせ場所である駅前のモニュメントを目指す。
「(よし、待ち合わせ時間まではまだ30分以上残っているな)」
改札口を出て階段を下りながら、俺はふと恩師である『隊長』と雑談を交えた時の古い記憶を思い浮かべた。
『いいか、ホーキンス。レディーとの待ち合わせは常に30分前行動だ。覚えておきな』
『そんなことを自分に話して何になるんです? そもそもそんな機会なんてありゃしませんよ』
『バッカ、お前っ! もしかしたらこの先あるかもしれねえだろぉ!?』
『はあ』
『そんなシケたツラするなよ。彼女いない歴=年齢のお前でも覚えといて損はねえって』
『……隊長、高度1万からのヒモ無しバンジーとミサイルに縛り付けて発射されるの、どっちが良いですか?』
『どっち選んでもデッドエンドまっしぐら!?』
懐かしい思い出に口元を緩めながら駅のゲートを抜けると、広場に鎮座するモニュメントが目に入った。
そして、その近くに人影が3つ。目を凝らして見ると1人はラウラで間違いないようだが、残りの2人はチャラチャラした格好の見知らぬ男だった。
しかも、男の1人がラウラの腕を強引に掴もうとして、逆に
「(あいつら、ラウラに何してやがる……!)」
自分でも気づかないうちに大股で3人の元へ向かった俺は、今にもラウラに掴みかかろうとしていたチャラ男Aの服の後ろ
「ぐぇっ!?」
いきなり首が締まって潰れたような悲鳴を上げるチャラ男A。
俺はそのまま腕をスイングさせてそいつを強引に退け、ラウラとの間に割って入る。
「俺の連れに何をしてるんだ?」
「な、な、なんだよテメェ!」
「その女の子の連れだ。これ以上、手荒なマネしようっていうなら――」
「うるせえ! この
「……後悔するなよ」
何やらわめきながら殴りかかってきたチャラ男Aの右ストレートをかわして、その鼻先に1発だけお返しのパンチを食らわせる。
「ブッ!?」
手加減はしたが、軽い
「さて……。おい、そこの」
「ひぃっ!?」
青ざめた表情で立ち
「す、すんません! もうしませんから勘弁してください!」
「おいおい……」
どうやら自分も殴られると思って震えているようだが、そこまで怯えられると、なんだがこっちが悪者になった気分だ。
「落ち着け。さっきのはそいつが襲いかかって来たからで、別にあんたまで殴ったりはしない」
「へ?」
「ほら、そこでノビてるアホを連れてさっさと行け」
「わ、分かりましたっ!」
バタバタと大慌てで気絶した相方を背負うチャラ男Bに、俺は「ああ、それと」と引き止めて言葉を続ける。
「一応、加減はしたから大丈夫だと思うが、もしそいつの鼻血が止まらないようだったら病院に連れて行ってやれ」
「はいぃっ!」
とても男を1人背負っているとは思えないほどの速度でチャラ男Bは走り去って行った。これが火事場の馬鹿力ってやつか?
「まったく。今の時代でも、ああいう連中はいるもんなんだなぁ……」
そう
「よう、ラウラ。遅れてすまんな。大丈夫か?」
「……かっこいい……」
ポーッとした表情で俺の顔を見上げるラウラの口からは、そんな言葉が漏れる。
耳を澄まさないと聞き取れないような小さな声だったが、なぜか俺の耳にははっきりと聞こえた。
「そ、そうか……」
面と向かってそんなことを言われたのは初めてで、俺はなんとなく落ち着かない気分になってしまう。
と、ここでハッと我に返ったラウラは、瞬く間に顔を真っ赤に染めて狼狽し始めた。
「わ、私は何を言って……い、いい今のは忘れろ! いいな!? 分かったな!?」
そんなこと言われても、そう簡単には忘れられないんだが……。
「なら私が手を貸してやろう……!」
おぉう、ナチュラルに心を読まれたぞ。さすが、織斑先生に鍛えられただけあって読心術も完璧らしい。……っていうか、手刀を構えてにじり寄ってくるこいつを早くなんとかしなければ。
「わ、分かった分かった。俺はなんにも聞いてない。だから記憶を飛ばそうするのは勘弁してくれ」
俺が気絶したらスイーツ店に行けなくなるぞ? と付け加えると、ラウラは「ふ、ふん!」と鼻を鳴らして背中を向けてしまった。
「(ふう、助かったぜ)」
「……しかし、まあ、なんだ」
「?」
こちらに背を向けたまま、ラウラは歯切れの悪い口調で言葉を
「お、お前には、助けられたからな。れ、礼は言っておこう……」
「なに、当たり前のことをしただけさ」
ニッと笑みながらそう答えると、恥ずかしさが限界突破したのかラウラは足早に歩いて行ってしまう。――って、ちょっと待て。
「おーい、ラウラ。そっちは目的地と真逆だぞ」
「ッッ~~~~!!」
一度立ち止まって戻ってくるラウラだったが、なぜか恨めしそうな目で睨まれた。……俺、何か悪いことしたか?
▽
スイーツ店『スイート・キッス』。
なんとも
「いらっしゃいませ。2名様でよろしかったでしょうか?」
「ああ、はい。2人で」
「かしこまりました。こちらへどうぞ」
そう言って店員はテーブル席へ誘導する。
俺とラウラもそれに並んで付いて行き、イスに座った。
「ここのオススメはなんですか?」
「はい。当店のオススメはこちらのパフェになります」
店員がメニューを取り、俺に見せてくる。
どうやらこの店はサンドイッチなどの軽食も頼めるようだが、やはりスイーツ店を名乗るだけあってオススメは菓子類らしい。
「(高っ! このパフェ1つで3,000円以上持ってかれるのか!?)」
しかし、どうせならラウラには良いものをご馳走してやりたい。……よし。
「じゃあ、このパフェとサンドイッチセットを1つずつ」
「かしこまりました」
そんなやり取りを交わして、店員が帰って行く。
ふと視線に気づくと、ジーッとラウラが俺を見つめていた。
「どした?」
「随分と手慣れているな」
「そうか? まあ、外食はそれなりにしてたからな。自然と慣れてくるんだよ」
「……誰とだ?」
「男友達と行ったり、1人で行ったりとかだな。たまに外で食うのも新鮮味があって良いもんだ」
「そうか」
どこかホッと安堵しているようなラウラの様子に、俺は小さく首をかしげる。
「……誰か他の女と行っていたわけではないようだな。よし……」
「うん?」
「な、なんでもない!」
そんなやり取りをしていると、意外と早く注文品が運ばれてきた。
ウェイターはパフェとサンドイッチセットを載せた丸いトレーを右手でバランス良く持っている。
「お待たせしました」
テーブルに並べられる皿とパフェグラス。サンドイッチセットには、サービスとしてコーヒーが付いている。
パフェは、チョコクリームの上にメロンやイチゴなどのフルーツが文字通り山盛りだ。さらにそこへ生クリームとポッキーがトッピングされている。
「(おぉ……なんかスゲェのが出てきたな)」
タワーのようなパフェを前に、そりゃこの価格も納得だな。と頷いていると、ウェイターがアンケート用紙とペンをテーブルの
「これは?」
「はい。現在、当店ではカップル客の方を対象にアンケートを取っておりまして。1分ほどの短いものですので、ご協力をお願いします」
「ほう、カップル……えっ?」
「はい?」
どうやら、このウェイターはちょっとした勘違いをしているらしい。
「あー……。どうやら誤解されているようですが、自分と彼女はそういう間柄ではありませんよ。同じ学園に通う友人です」
「さ、左様でしたか! 大変失礼いたしました!」
申し訳なさそうに頭を下げるウェイター。この人には俺達がそんな風に見えたのだろうか。
「いえいえ、大丈夫ですよ。な? ラウラ」
「……………」
「どうした、そんな怖い顔して」
「知らんっ」
そう短く告げて、ラウラは俺から顔を背ける。まあ、いきなりカップルなんて言われたら恥ずかしくもなるよな。
「あっ。……それではこの用紙はお下げしますね。また何かございましたら、遠慮なくお呼びください」
そう言ってアンケート用紙とペンだけ回収して、ウェイターはテーブルを離れて行った。何かを察したような表情をしていたのが少し気になるが……。
とにもかくにも、せっかく注文した品が運ばれて来たのだ。俺はおしぼりで手を拭き、ラウラは持ち手の長いスプーンを取って、早速食べることにした。
「「いただきます」」
手を合わせてから俺はサンドイッチを、ラウラはパフェを食べ始める。
「おお、この店のサンドイッチは当たりだな。文句無しに美味い」
セットに付いてきた無料のコーヒーもなかなか良い豆を使っているようだ。エグ味がなく、実に飲みやすい。
「これがパフェか……! 今日初めて実物を食べたが、これは美味いな」
初めてのパフェは少し食べ方に苦労したようだが、スプーンですくって口に入れた瞬間、ラウラの顔がパァッと明るいものにと変わった。
「……………」
「おっと、このメロンが少し
パフェの横に刺さったメロンに苦戦していたラウラが、俺の視線に気づいて手を止める。
「いや、本当に美味そうに食べるな、って思ってな」
「実際に美味いぞ。このチョコクリームとイチゴの相性もなかなか良い」
「そうか。ん? ラウラ、ちょっとジッとしててくれ」
「なんだ?」
俺は紙ナプキンを1枚取ると、ラウラの口元をそっと
「っ!? な、ななな……!?」
「クリーム、付いてたぞ」
「そ、そ、それくらい言ってくれれば、その……じ、自分で拭く!」
「そ、そうか。確かにそうだな。悪い悪い」
「あ、いや、その、なんだ。……つ、次からは、気をつけるんだな……」
ラウラはカーッと赤くなって視線をさまよわせる。
学園祭の時もそうだったが、やはり俺には女子に対するデリカシーが欠けているようだ。こりゃ一夏のことをとやかく言えないぞ。
そんなことを思いながら自分のサンドイッチに手をつけようとしたところでラウラに呼ばれて、今度は俺が手を止めた。
「う、ウィル」
「?」
「あ、あーん……」
自分のパフェをすくって差し出してくるラウラ。そのスプーンの上にはイチゴとチョコクリームが乗っている。
……えっと、これってつまりそういうことだよな? いやしかし、そうなると間接キスに――
「か、勘違いするなよ! こ、これはお前が食べたそうにしていたからであってだな……!」
「いやいや、気持ちだけで十分だよ。欲しかったら自分で注文するから――」
「い、いいから早くしろっ……!」
「お、おう……。それじゃあ、あぁー……」
羞恥に耳まで赤くなりながらスプーンを近づけてくるラウラに押しきられる形で、俺はパクンとパフェを飲み込んだ。
「……確かに美味いな」
とは言うが、味なんてほとんど分からないというのが正直なところである。
感じるのはおぼろげなイチゴの食感と、異様な甘ったるさだけだった。
「まだまだ時間はあるな。ラウラ、少しショッピングセンターに寄って行かないか?」
「構わんが、何か目当てのものがあるのか?」
スイーツ店を出たあと、俺とラウラは近くにあった公園を歩いていた。
「まあな。ほら、一夏の誕生日が近いだろ? だから、ちょっとした贈り物でも――」
ドンッ
「おっと……」
太もも辺りに唐突な衝撃を感じて、俺は足を止める。
「どうした?」
「いや、何かが当たったみたいでな」
ボールか? と思って背後を振り返ると、そこには6歳くらいの女の子が立っていた。……この子、たしかアイスクリーム持って走り回っていた子だよな。
「(うっ、なんかズボン越しに冷たい感覚が……)」
嫌な予感がして手を這わすと、ベットリとアイスクリーム(バニラ味)がついていた。おぉう、マジかぁ……。
「アイスが……」
ジワァっと女の子の目に涙が浮かぶ。え、えーっと……。
なんと声をかければいいか分からず頭を悩ませていると、女の子の母親であろう女性が慌ててやって来た。
「す、すみません! うちの娘が……ああ、ズボンにも……! 本当にすみません! ほら、ちゃんと謝りなさい」
「ご、ごめんなさい……」
「ズボンは弁償させていただきます。本当にご迷惑をおかけしました」
「ああ、これくらい大丈夫ですよ。洗えば落ちますから」
ペコペコと平謝りする女性にそう告げて、俺は腰を折って女の子に目線を合わせる。
「ごめんよ、君。食いしん坊な俺のズボンがアイスを食べちゃったようだ」
ほら、と言って女の子に100円硬貨を3枚手渡す。
「これでもう1度アイスを買ってもらうといい」
「わぁ……! ありがとう、おにいちゃん!」
「次からは周りに気をつけるんだよ?」
「うん!」
「こんなことまで……本当になんと申し上げればよいか……」
「お気になさらないでください。公園のド真ん中を歩いていたこちらにも非がありますから。それでは」
軽く
「子供の扱いが上手いな」
「ははっ、まさか。泣かれないか気が気じゃなかったよ」
目を笑みに細めて言ってくるラウラに、俺は太ももについたアイスをハンカチで
そうこうしているうちにショッピングセンターに到着した俺達は、早速センター内を見て回ることにした。
「おっ、このキーホルダーいいな。プレートに彫られた
「決まったのか?」
「おう。キーホルダーなら実用性もあるし、デサインもいい。こいつで決まりだな」
雑貨店で見つけたキーホルダーが目に止まり、それを一夏への誕生日プレゼントとして購入したり。
「1/10スケール【バスター・イーグル】? まさかプラモデル化していたとは……」
「こっちには私の【シュヴァルツェア・レーゲン】も置いてあるぞ」
偶然、前を通った玩具店の軒先で、自分達の専用機がプラモデル化されていることに驚いたり。
「くっ……! まさかあのタイミングで背後を取られるとは……!」
「はっはっはっはっ! 惜しかったなぁ、ラウラ。これで俺の3勝だ」
「も、もう1戦だ!」
「いいぜ、何回でも受けてやる」
「おい見ろよ、あの2人」
「スゲェ……。どうやったらあんな操縦できるんだ?」
「お、俺、あの兄ちゃんに対戦申し込んでみようかなっ」
超リアルな空戦シュミレーション・ゲームでラウラ相手に圧勝したり、それを見ていた周囲から「おぉ~」と歓声が上がったり。
俺達は時間も忘れて、その日を存分に遊び尽くした。
▽
時刻は4時過ぎ。だいぶ日の落ちが早くなった空の下で、俺とラウラはIS学園への帰路についていた。
「いやぁ、楽しいと時間も早く感じるもんだな。ラウラは満足できたか? ……ラウラ?」
応えが返ってこないことを不思議に思って振り返ると、ラウラはアクセサリーショップの前に立ち止まってショーウィンドウを眺めていた。
「この中に何か気になるものがあるのか?」
「っ!? い、いや! 別に、こういったものに興味はないぞ! 無くても生活に支障はないからな!」
声をかけるとラウラはビクッと小さく跳ねて、それから慌てた様子で取り
――が、はっきり言ってウソをついているのがまる分かりだ。きっとラウラのことだから、恥ずかしくて言い出せないのだろう。
「よし、ちょっと寄ってみるか」
「お、おい。私は何も……」
「まあまあ、そう言うなって」
そう言ってラウラの手を引き、店に入る。
店内の棚にはたくさんのアクセサリーが並べられているが、その数ある中で俺は迷いなく1つのブレスレットを手に取った。
「(見つけた。ラウラが眺めていたのはこれだな)」
ショーウィンドウのマネキンが着けていたものと同じデサインのそれは、銀色の光沢がなんとも美しい。全体的に
お値段は少々張るようだが、俺からすれば差ほど痛くはない出費だ。
「待て。それをどうするつもりだ?」
ブレスレットを持って早速レジに行こうとしたところで、ラウラに待ったをかけられた。
「どうするって、買うんだが。欲しいんだろ? これ」
「そ、それなら自分で買う! お前にはもうパフェをご馳走になって――」
「いいんだよ。俺の方こそ、今日は楽しませてもらったんだ。だから、これはそのお礼ってことで、な?」
「ん。じゃあ、ちょっとレジに通してくるから待っててくれ」
とラウラに言い残し、俺は店内レジへ向けて歩を進めて行った。
アクセサリーショップを出た俺とラウラは、改めて学園への帰路につく。
「ウィル」
IS学園行きのモノレール駅がわずかに見え始めた辺りで、さっきまで無言で隣を歩いていたラウラが、ふと口を開いた。
「今日は、その……あ、ありがとう……」
「それは、『こちらこそ』だな。俺も今日は最高に楽しかったよ。また一緒に行こうぜ」
「そっ、そうだな! またこうしてお前と……」
言いながら、ブレスレットが
その笑顔に当てられて、俺は顔を