とある三兄妹のデンドロ記録:Re   作:貴司崎

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前回のあらすじ:妹「よっしゃー! レイドボスじゃー! 喰らえ必殺スキル!」末妹「しかしせっかくの100話なのに最初が微妙に暗い話なんですよね」妹「そこは作者の構成が悪い!」


ハロウィンボスのカボチャ竜(後編)

 □ 【激災棍 ギガース】について

 

 ミカ・ウィステリアの<エンブリオ>TYPE:エルダーアームズ(第五形態への進化で上位カテゴリ化)【激災棍 ギガース】は物理的なステータス補正と装備としての性能、そして凡ゆる防御スキル効果を減少させる《バーリア・ブレイカー》のみをスキルとして有する、言ってはアレだが割とよくあるタイプの単機能特化型アームズ系<エンブリオ>である……最も、能力がシンプルだからと言って、それを発現させたミカ(加藤美希)のパーソナルが単純と言う訳では無いが。

 

 ……加藤美希と言う少女が自らの『危険を察知する直感』と言う異質な才能を自覚したのは今から約六年程前、海外旅行に行く為に両親と兄が乗った飛行機が墜落して、両親が死に兄が命に関わる重症を負った……その時に自分一人だけ“直感”によって危険を感じた飛行機に乗るのを避けて叔父夫婦(祐美の両親)の家で留守番をしていたからである。

 勿論、彼女は自分だけ助かろうとした訳ではなく未だに小学生にも上がっていなかった故に“直感”が告げている『危険』が何か分からず、ただ『旅行には行きたくない』と駄々をこねるしか出来なかっただけなのだ。両親と兄も単に初めての海外旅行を嫌がっているだけだと思って彼女を親戚に預けたので、“直感”と言う異才を持っている事には気が付かなかったのだからやむ終えない事だったのだろう。

 最も『阻止出来たにも関わらず危険を回避させる事もせず、その結果として両親を失った』と言う事実に後で気が付いてしまった彼女の心に残されたトラウマは並大抵のモノでは無かったのだが。

 

 実際、事故後の彼女は『あの時ちゃんと止められていれば』『なんでそうしなかったのか』『どうして私にはこんな力が』と思い悩んで塞ぎ込んでしまっていたが、その後は奇跡的に一カ月くらいで回復した兄や叔父夫婦の励ましで日常生活を送れるぐらいに回復した……のだが、今度は事故をきっかけに完全に目覚めた“直感”が未来で自分が不快に思う事を知らせて来る事が悩みとなった。

 まだ小学生である彼女にとって『下の妹がナニカに襲われる』や『同級生が自殺する』などの情報を告げられても精神的な負担になるだけ

 それでも彼女はもう事故の時の様にはならない様に同時に告げられる解決法を頼りに行動して行くが、所詮は小学生でしかない以上は手に負えずにどうにも出来ない事も多々あった。

 

 故に、今はある程度割り切れる様になったとは言え、こんな経験をしてしまった彼女の内心には『危険をどうにか出来ない自分への無力感』と『“直感”などと言う形で理不尽を一方的に告げて来るナニカ──この世界にあるかもしれない“神”の様な存在への憤り』が生まれたのだ。

 そして、そのパーソナルと“直感”によって<Infinite Dendrogram>世界において“神”や“危険”に関わりの深い概念──【神】系統のジョブが司るモノで<UBM(ユニーク・ボス・モンスター)>や<エンブリオ>を象徴するモノでもある『スキル』の存在を無意識のうちに把握した事で『高いステータスによるスキル効果の無効化』を能力特性とする【ギガース】が生まれたのである。

 

 まあ、流石に<エンブリオ>のリソース的な問題で高ステータスとスキル無効の併用は不可能だったので、高めの物理ステータス補正と物理攻撃力を基準とした防御系スキル効果の減少と言う形で発現し、更にパッシブスキルである《バーリアブレイカー》をこの世界の()()に対抗する為に単純な防御スキルだけでなく攻撃を遮断する“法則”などにまで効果を発揮する様にしたので単機能特化型としては出力が大分低くなったりもしたが。

 ……それでも<マスター>の願いを叶えるのが<エンブリオ>であり、【ギガース】も常に主人の真の望みを叶える為に戦闘経験の分析と思考を続け……その結果として条件を付ける事でスキル無効の力を引き上げる形で発現したのが必殺スキル《我は禍ツ神を砕く巨人なり(ギガース)》である。

 

 この必殺スキルはマスターが認識している敵対対象一体を選択する事で発動する事が出来て、その際に“二つの効果”を新たに得る……まず一つ目は『《バーリアブレイカー》の効果が選択した対象にしか働かなくなる代わりに防御系スキル減少効果を大幅に強化する』と言うものだ。これまでの経験から基本的に単騎で戦う事の多い<UBM>などのボスモンスターに対抗する為のデメリットを付けてでも更なる効果の強化を図った形であり、一体だけに限定されるが<UBM>や上位<エンブリオ>にも攻撃を通す事が出来る可能性が生まれた。

 ……だが、それだけでは奇々怪界なスキルを持つ<UBM>や<エンブリオ>に対抗するには不十分だと考えた【ギガース】は、更に自身のモチーフ元である『ギリシャ神話において“神”には殺されない能力を持つ巨人』を参考にしてもう一つの効果を発現させており……。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 □<樹霊の森>

 

『……《我は禍ツ神を砕く巨人なり》脅威対象(ターゲット)【ハイ・パンプキン・ドラゴン】』

『GOOAAAAAAAAAA!!!』

 

 そうしてミカが必殺スキルを使用した直後、【ハイ・パンプキン・ドラゴン】のカボチャ頭から放たれた呪いの豪炎が彼女を呑み込み……その直後、その呪炎の中を()()で通り抜けたミカが【ギガース】を振りかぶりながら驚愕するドラゴンへと肉薄した。

 ……これが必殺スキルの第二の効果『対象が使用したスキルによる自身への悪影響を、自身のHP・STR・END・AGIの現在値に応じて大きく減少させる』であり、その効果によってミカは《カースド・ブレイズ》のダメージと呪いをほぼ無効化したのである。

 最も必殺スキルの使用中にはSPが対象の能力に応じて継続消費される上にスキル効果の減少率は使われたスキルの強度によって変動するが……特典武具【クインバース】の効果でSPが継続回復するミカならかなり長時間使用でき、<UBM>でない上位純竜故にスキル自体は汎用的なものであるイベントボス相手であれば現在のミカの物理ステータスでもスキル効果をほぼ無効に出来る。

 

『まずは一撃目! 《ノックバック・インパクト》!!!』

『GAOッ⁉︎』

 

 そのままミカは《カースド・ブレイズ》を突っ切ってドラゴンの顔の前まで迫り、相手が自身の炎でも燃えず呪いすら掛からない相手に動揺して一瞬動きを止めた隙を突いて、新たに覚えた【戦棍姫(メイス・プリンセス)】のスキルを使いながらその顎を【ギガース】で大きくカチ上げた。

 そして《ノックバック・インパクト》は与えるダメージがゼロになる代わりに相手を大きく弾き飛ばし、更に【硬直】と【部分麻痺】の状態異常を与えるスキル。加えてドラゴンが有する防御魔法と耐性スキルは強化された《バーリアブレイカー》で無意味なものになった以上、その効果をドラゴンはモロに受ける事になり……。

 

『GA……AA……』

『よし! 頭部に【部分麻痺】が入れば脳震盪みたいな状態になるみたいだね。今が総攻撃のチャンスだよ! 《インパクト・ストライク》!』

『DEHAA!』

 

 その結果、ドラゴンはまるで目眩でも起こしたかのように振らつきながら地面へと倒れ込んでしまった……これは攻撃を当てた部位の動きを大きく鈍らせる【部分麻痺】を頭部に受けた結果、三半規管の働きが鈍った影響で所謂『立ち眩み』を起こしたからである。

 ……当然、中途なく内部破壊系の打撃を胴体に叩き込んで追撃しているミカに言われなくとも、他の<マスター>達はその隙を見逃す事無くそれぞれ《グルーム・ストーカー》に対処しながら一気に接近してそれぞれの全力攻撃を叩き込んで行く。

 

「地上に落としさえすれば負けないと言っていたのは本当だったか……《暴緑(ボウリョク)》《ブラッディ・インパクト》!」

「流石は超級職のスキル、上位純竜をタコ殴りに出来るとは……ミメ、MPを回しなさい、翼を狙います《真撃》《正拳突き》!」

『了解、MP十万使って《エンハンスフィスト》《ライトニング・フィスト》』

「私も行きます。各種狂化自己バフ並行起動! 《レーザーブレード》!」

「【カルキノス】はヤツの足に組み付け! 《ストーム・スティンガー》!」

『KYASYSYA!』

 

 緑色の血液置換<エンブリオ>を身体に纏ったブラッド・Oの拳が【ハイ・パンプキン・ドラゴン】の顔に突き刺さり、ドラゴンの一万越えのSTR・END及び五千超えのAGIをコピーしたミュウが拳に雷を纏わせながらその背に登って翼の付け根部分に拳を打ち込む。

 更に自身の<エンブリオ>の力で必要な強化スキルを瞬時に並列使用したアリマが光熱を発する【ヴァニフォーク】でドラゴンの足を斬り裂き、もう片方の足には剛雅が【疾風槍士(ゲイル・ランサー)】の奥義により超音速の突きを放ちながら、自身の<エンブリオ>である【守護星蟹 カルキノス】の鋏で挟んだ相手を離されにくくしつつそのAGIを下げる《邪魔大鋏(ジャマーシザース)》で組みつかせる。

 ……が、それでも一万五千に達するENDを持ちHPもバフ込みで五十万を優に超えるドラゴンは総攻撃を耐えながら脳震盪から回復。即座に《ヒートボディ》で身体に高熱を纏わせつつ直接攻撃をして来た相手に【呪詛】を掛ける《リヴェンジ・カース》を使った上で出鱈目に暴れ回り纏わりつく人間を退けようとした。

 

『GAAAAAAAAAAAA!!!』

「チッ《装紅(ソウコウ)》! 流石に上位純竜だけあって簡単には倒れてくれないか!」

「ですが翼の片方はへし折りましたし飛行は難しいかと! 姉様は今だに攻撃を続けてますし!」

「後、俺の【カルキノス】も食らいついているが!」

『どりゃあ! 熱も呪いも今の私には効かないよ! 《サンダー・インパクト》!」

 

 高熱と呪いと巨体から繰り出される近接系アクティブスキルに押されて接近していた<マスター>達は一旦下がるが、そんな中でもミカ(と足を挟んだまま攻撃を受け続けている【カルキノス】)は今だにドラゴンとの近接戦を続けていた。

 今も高熱と呪いを継続中の必殺スキルで無効化し、ドラゴンの放った《ブレイククロー》すらも威力を減衰させながら反撃に雷を纏った【ギガース】で弾き返すが……。

 

『GEEEAAAAA!!!』

『! おっと、それは勘弁!』

 

 そこでドラゴンが苦し紛れに振るった尻尾を見たミカは慌てて飛びすさりながら回避した……これは《我は禍ツ神を砕く巨人なり》では()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()には効果を発揮しないからである。これが武技系のアクティブスキルなら攻撃力や運動エネルギー含めて減衰させるのだが、通常攻撃だとSTR強化などの掛かっているパッシブスキルの効果だけは減衰できるが単純な腕力(STR)から発生する攻撃力には干渉しないのだ。

 また、兄との必殺スキルの試験運用では装備している装備品の装備スキルの効果は対象でも、【ジェム】などの消費アイテムの効果は対象外である事が分かっており、これについて兄は『元ネタのギリシャ神話の巨人は神には殺されなくても、人間であるヘラクレスの怪力(通常攻撃)ヒュドラの毒矢(消費アイテム)で倒されてるから原作再現かな』とコメントしている。

 

『……さて、残りのSPは半分ぐらい。事前に飲んでおいた【SP持続回復ポーション】の効果含めても維持できるのは十分ぐらいか』

「流石にボスだけあって精神耐性も高いわね……ところでさっきからドラゴンに組みついている蟹が凄い殴られてるんだけど大丈夫なの?」

「ああ、俺の【カルキノス】はロリショタを庇って攻撃されるのが仕事だしな。直接攻撃を受けると相手のSTRを下げたり、HP自動回復や魔法と状態異常の効果を軽減するスキルも持ってるから」

「お陰でこちらが攻撃する隙も出来てますしね! 《ソニックブロウ》!」

「一応妨害もしておくか《ブラッディ・チェーン》!」

『GIIIIAAAAAAAAAOOOOOOOOOOO!!!』

 

 その後も翼へのダメージと組み付いた【カルキノス】のお陰(時折アリマが回復魔法を飛ばしてる)で【ハイ・パンプキン・ドラゴン】が再び飛び上がる事も無かったが、それでも上位純竜のステータスによる豊富な近接用アクティブスキルと魔法を駆使して暴れ回る相手に<マスター>達は一進一退の攻防を繰り広げていった。

 ……そんな戦況が動いたのは()()()()()()()がドラゴンに向けて撃ち放たれた時からだった。

 

『済まん遅れた! 加勢するで! 《弓の紋章》……ファイア!!!』

『《魔法多重発動》《エアハンマー》!』

『GAHAA⁉︎』

 

 空から援軍に来たガンドールとイーグレットの銃撃と魔法が、何度目かの攻防で地上部隊を振り払って体勢整えようとしていたドラゴンに突き刺さってダメージを与えた。その攻撃で与えたダメージ自体は少なかったが、ドラゴンを怯ませて前衛組が攻撃に移る隙を作るには十分な効果を発揮していた。

 

『GUUAAAAAAA!!!』

『よし、メンバーが増えたお陰でDPS(秒間火力)も増えたしこのままなら行けるかな……《ギガント・ストライク》!』

「多分ヤツはHPの自動回復も持ってるだろうから。反撃の魔法も痛いし、なるべく彼方に攻撃の隙を与えない様に攻め続けたい所だが……《ブラッディ・インパクト》!」

『向こうが飛べへんならこっちは一方的に空から攻撃出来るしな……おっと⁉︎ 魔法がこっちを追いかけて来るな!』

「誘導弾による対空攻撃までやって来るのね……ん? 通信……光を? 《ライト》!」

 

 それでも尚、狂ったかの様に暴れ続けるドラゴンに対して歴戦の<マスター>である彼等は多少もたつきながらもお互いの隙をフォローする様に代わる代わるに連携攻撃を仕掛けていったが、そんな中で突然イーグレットが攻撃力の無い光源を作り出す魔法を使用した。

 発生した光源はただその場の者達を強めに照らすだけで攻撃力などは一切無く、一瞬僅かに警戒したドラゴンも直ぐに目眩しだと思い直ぐに戦闘を続行しようとし……その直後、光源によって伸びきったドラゴンの()を何者かが踏んだ。

 

『《シャドウ・スタンプ》ですぞ』

『GII⁉︎ GAAAA!!!』

 

 その足の正体はガスマスクに全身タイツの変質者……もとい<YLNT倶楽部>オーナーLS・エルゴ・スムであり、彼のメインジョブ【高位呪術師(ハイ・ソーサラー)】の相手の影を踏む事で【呪縛】【恐怖】【吸魔】の三重状態異常を与える呪術によりドラゴンの動きが止まった。

 そしてAGI差とMPなどの回復で遅れていたサリー・クリィミーやバーニング・ハートと言った魔法少女組や、ミマモリ・KNKAと言った<YLNT倶楽部>後衛組が戦場に現れて前衛組の援護へと回り始める。

 

「とりあえず壁を出しましょうか……《氷晶創造(アイスメイク)》《氷晶成型(アイスカット)》《クリエイト・フロストゴーレム》」

「なら私はアタッカーを出すわね……《ヒート・ジャベリン》《フレアボム》《ヒートボディ》《カラーチェンジ》セット《焔騎士召喚(サモン・ブレイズナイト)》。とにかく突っ込んでドラゴンに近接攻撃をしなさい」

「私は回復を! 《魔法射程延長》《魔法多重発動》《フィフスヒール》!」

「フハハハハ! 魔法少女達の支援を有り難く受け取れい!」

 

 まず彼女達は自分達を守る為にスノー・ホワイトが氷で出来たゴーレムを複数召喚し、更にバーニングがアタッカー役も兼ねている槍を持ってカラフルな色合いをした近接攻撃用騎士型の炎エレメンタルを召喚、更にサリーが減った前衛組のHPを回復させながらその肩に乗ったモップルが意味もなくドヤる(一応【司令官(コマンダー)】のパッシブスキルなどで支援はしている)

 

「うむむ、【アイテール】の蓄積MPはさっきノリで殆ど使い切ったしな。普通に支援しか出来ん」

「まずはDPSを更に増やしましょう……《四天の透視眼》ターゲットの内臓に照準。《ヴェノムアイ》」

『守りを固めるなら急いだ方が良いですな。向こうは呪術も使える上位純竜である以上、俺程度の呪術ではそう長くは……おや?』

『GI……GIGI……』

 

 おそらく自分の呪術はそろそろレジストされるだろうと考えたLSだったが、視線の先にいるドラゴンを見るとまるで何かに()()しているかの様に身体を震わせて動きを止めていた。

 それを見たLSは直ぐに《シャドウ・スタンプ》の内【恐怖】の状態異常だけがレジストされなかったのだろうと当たりを付けたが、一体何故一番レジストされやすい精神系状態異常だけが残ったのかを考えて、先程“とある幼女”がやってみせた芸当を思い出した。

 

「……やっと《ウィークネス・テノール》が効いてきたみたい。やっぱり上位の純竜となると精神耐性も高いのか、或いはスキル自体の効きが悪いのか……多分両方かな」

 

 その幼女……アリマは手に持った二又の剣【音叉角剣 ヴァニフォーク】から()()()()()()()()()()()()をドラゴンに向けて放ち続けながらそう言った。ドラゴンは戦闘開始からずっと精神減弱スキルを浴びせられていたが故、精神系状態異常である【恐怖】をモロに食らったと言うわけである。

 

『GUGUGU……GIGYAAAAAA!!!』

「うん《伝播スル狂信》による狂化系デバフも入り始めたか、ちょっと遅かったね。……でもあの巨体とステータスで暴れ狂われても困るし眠らせようか……効果範囲圧縮《スリーピング・ソプラノ》!」

 

 そして何かに恐怖しながらも狂った様に暴れ始めたドラゴンに対して、アリマは本来無差別に放射されるだけの【ヴァニフォーク】の音波を《悟りし者の御業》で無理矢理に圧縮した音波斬撃をその頭部に叩き込みそれによる圧縮状態異常の【強制睡眠】に落とし込んだ。

 

「んぐんぐ……よし、これで後は全員で総攻撃して倒すだけだよ! 状態異常が解けそうならもう一回撃ち込むし!」

「流石はアリマちゃんですね! 早速殴りましょう!」

『……お、おう……』

 

 幾らか減ったMPとSPを回復させる為にポーションを飲みながら『一仕事終えた』みたいないい笑顔でそんな事を宣うアリマに対し、基本彼女の事は全肯定ヨイショなミュウ以外の面々は『え? 増援も到着してこれから激戦が始まる雰囲気だったのにもう終わり?』みたいな事を内心思いつつも、このチャンスを逃すわけにも行かないと気を取り直して眠りこけた【ハイ・パンプキン・ドラゴン】へと一斉攻撃を行うのだった。

 ……その結果はと言うと、まあ当然ながら幾ら上位の純竜とはいえ完全に状態異常へ嵌ってしまった状況でこれだけの<マスター>達の一斉攻撃をどうにか出来る筈もなく、汎用スキルしか持たない普通のボスモンスターだったのでそのまま特に何かドンデン返しも起きずにサックリ討伐されたのであった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

『……はい乙ー。これでイベントボスモンスター【ハイ・パンプキン・ドラゴン】の討伐は終了ですねお疲れ様でしたー』

「いやぁ、流石はイベントボスだけあって【ハイ・パンプキン・ドラゴン】は強敵でしたね!」

「そうですねアリマちゃん。ですがパーティーの連携もあって無事倒せましたし、ドロップアイテムもがっぽりです」

「……最後は眠っているドラゴンをタコ殴りにするだけの作業だったけどな」

『やはりデンドロに於いて状態異常は重いですな。うわようじょつよいですぞ』

 

 眠っている所への総攻撃の末に【ハイ・パンプキン・ドラゴン】が光の塵となった事をしっかりと確認して勝鬨(おざなり)を挙げたミカが切っ掛けで、他のメンバーも漸く緊張を解いてドロップアイテムの分配など戦後の処理へと移っていった。

 

『あ、我らへのドロップアイテムは彼女達(ロリショタ勢)に渡しても良いですぞ』

「後出来ればフレンド登録もお願いしたい」

「どさくさに紛れて何やろうとしてるのよアンタら。……ドロップアイテムは全員で山分けで良いわね? コイツらを只働きさせるのは逆に怖いわ」

「LSさん達も活躍してたしドロップアイテムは受け取っておくべきだと思います!」

 

 その際の報酬の分配で<YLNT倶楽部>のメンバーが『自分達の分をロリショタへ貢ぐ』と言い出したのを、バーニング(HRNTAI達への警戒から)とアリマ達少女組(こっちは普通に善意)が止めてとりあえず全員で山分けにしたりなんて事もあったが、基本ロリショタが言う事には素直に従うHENTAI達含めてがめついタイプはいなかったので報酬について特に揉める事は無かった。

 

「あ、そうだ! ミュウちゃんとミカちゃんにお願いがあるんだけど、私とフレンド登録してくれないかな?」

「ん? サリーちゃんと? 別に良いけど」

「私も構いませんよ」

「ありがとう! 今度機会があったら私達<魔法少女連盟>に遊びに来てよ」

「君達にも中々の“魔法少女”の資質がありそうだからな。私達が作って廃棄したアイテムも存分に使いこなしているようだし、制作アイテムの販売などもやっているから気軽に来ると良い」

 

 また、ミカとミュウが<魔法少女連盟>組とフレンド登録したりなどもあって、互いに(一部HENTAIと常識人勢除く)友誼を結ぶなどして和やかな雰囲気で今回のイベントボス攻略臨時パーティーは解散したのだった。




あとがき・各種設定解説

我は禍ツ神を砕く巨人なり(ギガース)》:【激災棍 ギガース】の必殺スキル
・対象一体限定の防御スキル効果大幅減衰+自身へのスキル効果大幅減衰のスキルで、発動中は常時SP継続消費、クールタイムは1時間と長め。
・自身へのスキル効果減衰の基準となるHP・STR・END・AGIの数値は現在値であり、HPの減少や物理ステータスへのデバフを受けていれば効果は下がる。
・対象にした相手の保有するスキルと装備品・消耗品のスキルが効果減衰の範囲であり、また使役している生物のスキルは従属キャパシティ範囲内か《軍団》スキル範囲内なら適応されるがパーティー枠に入っているだけだと効果範囲外。
・現時点での妹の物理ステータスでは上位純竜のスキルをほぼ無効化出来るぐらいで、特典武具越しならノーダメージで凌げるぐらいに減衰可能なぐらい。

《ノックバック・インパクト》:【戦棍姫】のアクティブスキル
・メイスで殴った相手に与えるダメージがゼロになる代わりに、装備による影響を受けずに相手を大きく吹き飛ばした上で【硬直】と【部分麻痺】の状態異常を与えるスキル。
・吹き飛ばしや状態異常の度合いは自身の攻撃力と相手の防御力の差で決定し、ガードされない場合に相手のENDをSTR分減少させる《ストライク・ペネトレイション》の効果なども反映される。
・【部分麻痺】の状態異常は殴った部位辺りまでしか効かない代わりに効果と持続時間が高い【麻痺】と言った感じで、装備による影響を受けないので武器や盾で防いだ場合でもそれを持っている腕に効果がある。
・本来はこれと弾き飛ばしと【硬直】を合わせる事で『相手の腕を痺れさせて武器を弾き飛ばす』と言った使い方がメインのスキルだが、当然普通に身体に当てても【部分麻痺】で行動を大きく制限出来る優良スキル。
・尚、妹はジョブレベルがまだ低いので【戦棍姫】のスキルはこれしか覚えていないが、これはメイスの特徴である『対人』に長けたスキルであり他にも『対装備』『対生物』のアクティブスキルと『奥義』がある模様。

アリマ:時間を掛けると大体詰む系の子
・彼女の《悟りし者の御業》は脳の一部を置換している【シャカ】が彼女の考えを読み取って、それに合わせて精神干渉系のスキルを自動で改造するスキル。
・精神系のスキルであれば保有スキル・装備スキルは問わず改造可能で、そのスキルの運用データが集まる程に改造の効率が良くなる特性もある。
・スキル効果範囲の設定に関しては『特定対象のみを対象・非対象にする』『効果範囲そのものを操作する』『効果範囲そのものを圧縮する』などによって行われており、前二つと比べると圧縮はコストがかなり掛かる模様。

【守護星蟹 カルキノス】
<マスター>:剛雅
TYPE:ガーディアン
到達形態:Ⅴ
能力特性:カバー・妨害
固有スキル:《友の危機に駆けよ(レスキュー・フレンズ)》《邪魔大鋏(ジャマーシザース)》《邪魔甲羅(ジャマーシェル)》《巨蟹宮の加護》《自動再生》
必殺スキル:《魔蟹は砕かれ星となる(カルキノス)
・巨大な蟹型のガードナーで、モチーフはギリシャ神話のヒュドラの友であり後に蟹座となった魔物“カルキノス”
・HP・END型のステータスをしておりSTR・AGIはそこそこだが、組み付きに補正が乗る《邪魔大鋏》や味方を敵の攻撃から庇う際のみAGIを十倍のにするアクティブスキル《友の危機に駆けよ》で補っている。
・攻撃能力は低いがカバーリングと耐性・再生系のパッシブを組み合わせての守護、そこにデバフ効果を織り交ぜての敵の弱体化が得意なサポート型ガードナー。
・必殺スキルは【カルキノス】が死亡した際に<マスター>へと憑依融合して、両者のステータスを合計してスキルも全て使えるようになるスキルで、チャージ時間は無いが持続時間は五分間でその後は最低24時間復活の為に【カルキノス】が紋章の中で休眠する。
・<マスター>の剛雅はAGIよりのジョブに付いて【カルキノス】に自分を庇わせる形で高速移動させたりしており、今回の様に相手に組みつかせてから殴り続ける戦術も使うなど割と酷使しているが、その分好物をやって機嫌を取ったりもしてる。


読了ありがとうございました。
仕方ないんや……三兄妹の<エンブリオ>は自分の“才能”に対するコンプレックスから生まれてる設定なんだから……。感想・評価・誤字報告いつもありがとうございます。
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