※【魔弓手】系統のスキル名が分かりにくいので全面的に変更しました。
□<夜光の森>
「さて、治療しながらで構わないんだが、あの<UBM>の能力や特徴を簡単に説明してくれないか?」
「う、うん……アイツは幻術による七体の分身と大鎌による【ブローチ】も無効にするクリティカル攻撃を使ってくる。それと分身の大鎌でも相手を攻撃出来るし透明化の幻術もある。そして相手に背後に転移する能力も持っていて隠密発動出来るのかタイミングがよく分からない。戦闘直後には転移を使ってこなかったから何か条件があるのかも……」
質問されたティアモは傷を直すためにポーションを背中に振りかけながらも、レント達に知る限りの【夜行殺断 グリムリープ】に関する情報を早口で話していった。この辺りの切り替えの早さは流石は戦闘民族であるアマゾネスらしいと言えるだろう。
……だが、それを見た【グリムリープ】はいきなり現れた“不確定要素”にこれ以上準備されるのは危険と判断して、目くらましに展開されていた炎の壁を斬り裂きながら七体の分身を撹乱させる様に散らしつつレント達へと斬りかかっていく。
『『『『『『『KIHIHIHI〜!!!』』』』』』』
「⁉︎ 来た!」
「あの程度の壁では足止めにならんか……《ブースト・エンデュランス》。クルエランは前に出ろ、幻影は任せる。俺達は手始めに本体を狙う」
『GO』
向かって来た【グリムリープ】達に対してレントはクルエランにバフを掛けて壁役にしつつ、自身はアイテムボックスから魔法銃【シルヴァ・ブライト】を取り出して、最初から今までずっと補足し続けていた本体へと向けた。
……これまで余り出番が無かった【シルヴァ・ブライト】だが、そもそもレントが普段の戦闘においてコレを使わないのは雑に使うだけでも強すぎるが故にデンドロでの実戦経験がまともに積めないからである。そして<
「さて、本体はアレだな……《ラピッドシュート》」
『ッ⁉︎ KIHII⁉︎』
そしてレントは向かって来る【グリムリープ】に対して、まず手始めに【シルヴァ・ブライト】を
……だが、光属性の弾丸が当たったにも関わらず【グリムリープ】はまるで応えた様子も無く距離を詰めようとし、更にこの攻撃でレントを脅威と認識したのか七体の幻影も彼を狙って突っ込んで行った。
『『『『『『『KIHIHIHI〜!!!』』』』』』』
「……まずはその邪魔な幻影をどうにかしましょうか。《イリュージョン・ジャミング》」
「そうじゃのー。《イリュージョン・ジャミング》」
『『『『『『KIH……K……H……』』』』』』
だが、幻影が彼等に到達する直前、ひめひめとネリルが発動した【
……ちなみにこの《イリュージョン・ジャミング》は『幻術の光・音・熱エネルギーなどの制御に干渉して周囲で発動されている幻術を
「悪いけど幻惑とかには昔から嫌な思い出が多くてね。対策は取る様にしてるのよ」
「まあ基本は魔法制御への干渉技術じゃし……《ハイ・フィジカル・ブースター》《ブーステッド・グループ・アジリティ》」
……のだが、そもそも幻術対策の為に【
「《ワン・アンド・オール・エンチャント》ぐらいなら素で出来るのじゃよ」
「助かった二人共! クルエラン、ヴォルト、俺たちは本体だけを狙うぞ!」
『承知! 《ライトニング・ジャベリン》!』
『KIIHIII!』
そうして残された【グリムリープ】本体に対してレントは先程よりも威力を落とした状態で【シルヴァ・ブライト】を練習し、彼を乗せたヴォルトも頭部の三つの角から雷電を迸らせ槍状に変形させて射出した。
……尚【ライトニング・トライコーン】へと進化したヴォルトに新たに追加されたツノは決して飾りでは無く、この三本の角を中心とする事で雷属性スキルの高精度運用を可能とする《征雷の角》というパッシブスキルを有しているのだ。これとこれまでの騎乗戦闘しながらの雷電制御訓練が身を結んだ結果として進化時に発現した《防雷の鞍》と言う騎乗者を雷属性から保護するスキルを合わせて、ようやくヴォルトはレントとの騎乗戦闘が可能になったのである。
『KIIHIIE!』
「……とは言え、回避に徹せられると早々当たらんか……だが追い込んだ、やれクルエラン」
『GOOO!!!』
だが、それでもレント達の遠隔攻撃を超音速機動躱した【グリムリープ】だったが、そうして回避される方向すらも計算に入れて射撃していたレントの策によって前に出ていたクルエランの近くにまで移動させられていたのだ。
ならばと【グリムリープ】は自身よりも巨体なクルエランを壁にして彼等の遠隔攻撃を封じようと懐に潜り込んでの接近戦を挑むが、ENDにバフを重ねられたクルエランには自慢の大鎌でも切り傷を付けるだけしか出来ず、急所を狙おうにもゴーレム故に装甲に覆われた胸部内のコア以外に弱点が無いクルエラン相手ではクリティカルヒットを発生させる事も出来ないので仕留め切れなかった。
『GOOOOO!!!』
『KIHIIII!!!』
「まあ流石にAGI差で攻撃は当てられんか……《ゴーレム・リペア》」
それでも【グリムリープ】はAGIの差を活かしてクルエランの拳を躱しながらその身体を斬り裂いて行くが、ゴーレムであるが故にレントの使う【
「突っ込めヴォルト、遠距離では拉致があかないから近接戦だ。急所攻撃には気を付けろよ! 《瞬間装備》《ルミナス・コーン》!」
『相手に態勢を整えられる方が危険な気もしますしね……《エレクトリカル・エンハンス》! 《サンダー・トライデント》!』
制御系スキルの恩恵によってようやく騎乗中の発動が可能になった『電気を纏う事での身体強化』と、進化して新たに覚えた『角に近接用の雷の刃を展開するスキル』を使ったヴォルトは一気に【グリムリープ】を突き刺さんと突撃した。
更に騎乗しているレントも武器を【パラディンソード】に切り替えつつ、刀身に聖属性の馬上槍の様なエネルギーを纏わせて刺突とリーチに特化させる【
『⁉︎ KEHYAAAA!!!』
『狙いはこちらか! だが進化して手に入れたこの角は伊達では……!」
だが、それでも一万越えのAGIを持つ【グリムリープ】は即座に反応して『そちらから来るならむしろ好都合』と薙ぎ払う様にヴォルトの首を狙って大鎌を振るい、それに対してヴォルトも雷刃を纏わせた三本角で迎撃しようと頭部を振るって……。
「……違う、本命は上だ」
『KIHIE⁉︎』
直後、突然レントが何も無い自身の上に剣を振るったと思ったら薙ぎ払いの構えを取っていた筈の【グリムリープ】の姿が歪み、代わりに
……本体と同じ座標にある幻影故に気配やヴォルトの電磁波による探知といった探知系スキルなどで見破る事も難しい高度な幻術技巧だったのだが……。
「済まんがソレは
『了解! 《サンダー・トライデント》最大出力!!!』
『KIKAKAKAKAKAKAKAKAKA⁉︎』
それはリアルでの経験則と《イリュージョン・ジャミング》によって僅かに乱れていた幻影を見逃さない観察眼を持つレントに見破られ、その結果として攻撃を捌かれて大きく隙を晒した【グリムリープ】にヴォルトの雷の三本角が突き刺さってその身体に大電流を叩き込まれた。
そうして放たれた大電流によって【グリムリープ】が身に付けていた仮面やローブが破壊されて行き、その内にあったまるで夜の様に暗い色合いをしたエレメンタルの肉体が見えたのだ。
「む……成る程【
「……凄い、これが<マスター>の力……あの<UBM>をこんなあっさり……」
「んー、如何かしらね。アマゾネスの精鋭を倒した割にあっさり過ぎるし、まだ何か隠している気がするんだけど……まだ夜だし必殺スキルは使えないけど準備はしておこうかしら」
一方的に電流を叩き込まれている【グリムリープ】を見て傷の治療を終えたティアモは驚いていたが、それに対してひめひめはどうにも“嫌な感じ”がする事から油断なく【アマテラス】を構えてその様子を見守り……その直後、まだレント達が戦いを始めてから3分程度しか経っていないにも関わらず、《サンダー・トライデント》に貫かれて電流を流され続けられていた筈の【グリムリープ】の身体が
それによっていきなり手答えが消えた事でヴォルトは一旦《サンダー・トライデント》を解除して辺りを探り、相手の転移に何度も煮え湯を飲まされてきたティアモは今度こそ捉えようと背後を中心に警戒した。
『消えた⁉︎ どこに……!』
「また転移⁉︎ 今度は誰の背後に……!」
「む? いやあれは……」
「……違う! 転移じゃなくてまだ居る!」
だが転移程度なら感知出来るネリルと異能・戦術問わずに対幻惑に非常に長けたリアルスキルを持つひめひめ、側から見ていた内その二人は【グリムリープ】が転移したのでは無く
……そして、姿を消している大鎌は今まで閉じていた先端部分にあった眼を開き、月の様な淡い黄色の単眼を覗かせながら独りでに宙を舞いレントの首を刈ろうとして……。
「《黒晶刃》……
『KITITI!』
以前に
……そして物体は透過する筈の《黒晶刃》で受け止められた事からレントは『大鎌の方が本体である』疑惑を確信に変えつつ、手綱から手を離して【グリムリープ】の持ち手を掴んで無理矢理引き剥がし5000近いSTRを使って投げ飛ばした。
「あの大鎌が本体だ! 《リバース・クルセイド》!」
『承知! 《サンダー・スマッシャー》!」
「成る程ね! 《ハウンドアロー》《光炎之矢》!」
「ふむ……《グルーム・ストーカー》」
そうして投げ飛ばされた【グリムリープ】に対して地面から吹き上がる闇のエネルギー、指向性を持たされた雷撃、視線による追尾機能付きの光炎の矢、生物のみに当たる追尾式の闇の魔弾が次々と突き刺さっていく……が、夜間限定だが
『KIKITI! 《
そして攻撃の衝撃を利用して距離を取った【グリムリープ】がスキルを行使した途端、先程と同じ夜色のエレメンタルの肉体が構築されて本体である大鎌を手に取った……これが【グリムリープ】に取って本当の意味での切り札と言える《闇夜の死神》──夜間限定で本体のENDを中心としたステータス上昇と、伝説級相当のスペックのあるエレメンタルの肉体を作成してそちらを本体だと偽装するスキルである。
このスキルのお陰でMPが残っている限りはエレメンタルの肉体が幾ら破壊されても問題なく、そもそも神話級金属並みの強度となった本体を傷付けるのも至難の技となるという、夜間限定とは言え【グリムリープ】は異常な生存性能を有する<UBM>となっているのだ。当然、戦闘時間を稼ぐ必要のある《
「ふむふむ、どうも【ナイト・エレメンタル】と器物系のエレメンタルのハイブリッドだったようじゃな。加えてアレだけのスキルを使ってもMPが二割も削れておらん。おそらく夜間限定でのMP消費削減と自動回復じゃな」
「加えて本体がクソ硬い。多分殆どのスキルに『夜間限定』のデメリットを付けている分だけスキルの性能やステータスが高くなってるんだろうが……」
「夜が明けるまでは後5時間ぐらいはあるから時間切れを狙うのは現実的じゃないね。夜間だと私の必殺スキルも使えないし」
「……私だと神話級金属レベルでは傷を付けるぐらいしか出来ないし……特典武具の第二スキルなら可能性はあるけど今は使えない」
「……とりあえず詳しく」
それに対してレント達は一旦集まって現在分かった情報を整理していたが、そこでティアモが特典武具【ドラグブレード】のスキルに付いて【グリムリープ】に聞かれない様に小声で話した。
「……成る程、確かにそれなり条件は厳しいが……俺ではまともにダメージを与える手段だと《神技昇華》でワンチャンあるかと言った所だしな」
「単純にENDの影響を受けにくい闇属性か雷属性を使う手もあるが……それでは先にこっちがやられるのう」
「とりあえずティアモさんだったかしら、第二スキルに方はまだ少し待って頂戴。MPの総量と私の勘だけどアッチにもう切り札が無いとは限らないから、まずはこっちの攻撃手段を試すわ」
「分かった」
それだけ手早く話し終えた彼等は戦闘態勢を整えて再び【グリムリープ】に向き合ったが、それに対して【グリムリープ】は再び《ファントム・エイリアス》を行使して二体だけ分身を作り出してみせた。
『『『KIHIHIHIHI……』』』
「数を絞ってその分だけ制御力を上げた《イリュージョン・ジャミング》二つ分の妨害を突破したようじゃな。それでもやや精度は落ちておるが」
「とにかく敵が三体に増えようがやる事は変わらないわ。あの本体である大鎌を何とかしてぶっ壊すのよ」
……そうしてお互いに準備が整った所で分身と共に超音速で斬りかかって来た【グリムリープ】にレント達が対応する形で第二ラウンドが始まったのだった。
あとがき・各種設定解説
兄:ようやく騎乗戦闘が出来る様に
・妹二人が天災児で基本そのサポートに徹していたから目立ってないが、現実での戦闘経験値と本人の『全方面に於いてハイエンド一歩手前の才能』によって普通に戦っても強い。
・【シルヴァ・ブライト】の使用頻度が低い理由は強すぎる他にも燃費が悪く攻撃範囲も狭いからと言うのがあり、長期戦想定及び面の攻撃が必要だった【バイオハーデス】戦で使わなかったのはそのせい。
・現在のジョブは【古株】と経験値稼ぎ用下級職のレベルを上げ終わったので、レベル上げ途中だった【暗黒騎士】をメインにしつつ純竜級になったヴォルトに合わせて今までコツコツと就職条件を埋めていた【高位従魔師】【幻獣騎兵】【獣戦鬼】のジョブを新たに取得して経験値を流している。
【ライトニング・トライコーン】:進化したヴォルトの種族
・レジェンダリアの秘境で少数生息していると言う『ユニコーン』や『バイコーン』などを代表とする有角馬系モンスターの一種である三本角の雷属性の馬で、有角馬系は非常に希少なので亜竜級でも従魔としての値段は一千万越え、純竜級であれば億は余裕で超える。
・有角馬系モンスターは主に魔法系のスキルに長けており、頭部の角は特定の属性の魔法制御に使われるスキルの発動媒体であるが強度も高く頑丈なので接近戦でも使える。
・ヴォルトの場合は親である【純竜雷電馬】がこの種族の血を引いており、ネリルのよる制御が難しい雷属性魔法の制御訓練を経た結果として魔法制御に長けた進化を遂げた感じ。
・ただ、魔法制御に特化させた分スキル重視でステータスはMP以外の物理ステータスは純竜級としては低めだが、その辺りは兄の《魔物強化》《騎乗強化》などのスキルでカバーしている。
・ちなみに進化したてでスキルレベルが低いので騎乗者への保護は完璧では無いので、現在のところ兄はレジェンダリア産の《雷電耐性》《麻痺耐性》付き高級アクセサリーを装備している。
ひめひめ:幻惑系を相手にするのが嫌い
・なのでそれに対抗するために高レベルの幻術と幻術対策技術を習得しており、デンドロでもMPを稼ぐためのサブ魔法職に迷い無く【幻術師】系統を入れる人。
・ちなみに敵に回すのは嫌いだが自分で使う分には問題無いので、ソロ戦ではサブの【弓狩人】や【観測手】と合わせて隠密からの狙撃をしたりと有効活用している。
・尚、苦手な理由は幻術が得意なストーカーに付き纏われたり、兄との馴れ初めの時に幻惑系で嫌な思いをしたからだとか。
【夜行殺断 グリムリープ】:武器が本体系<UBM>その二
・厳密に言うとエレメンタルとしてのコアが大鎌に組み込まれていて、それを運用する為に必要に応じて《闇夜の死神》で戦闘用の肉体を作っているタイプ。
・大鎌単体でもある程度動けるが速度は亜音速にも届かず攻撃力やパワーも低いので夜間でも急所狙いぐらいしか出来ず、昼間に至ってはずっと光学迷彩と気配操作を駆使して姿を消すしか出来ない模様。
・幻術による分身でわざわざ《イリュージョン・エイリアス》の様に映像だけでなく音や気配や熱源まで再現する高位幻術を使っているのは、幻術の精度に応じて《幻夜の大鎌》で再現される攻撃力が変動するからである。
読了ありがとうございました。
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