とある三兄妹のデンドロ記録:Re   作:貴司崎

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前回のあらすじ:兄妹「「ついに俺(私)の<エンブリオ>が!」」末妹「……私は?」


<エンブリオ>の孵化と訓練開始

 □王都アルテア・冒険者ギルド ミカ・ウィステリア

 

 私の左手にある卵──第ゼロ形態の<エンブリオ>が光を放ち始めてからしばらくした後、その光が収まると共に私は自分左手に何かが握られている事に気が付いた。

 

「……これは……随分とデカイね。……えーっと、金属製の棍棒なのかな?」

 

 私の左手に握られていたのは長さ二メートル程の金属製らしき棍棒で、形状は一メートル強ぐらいある持ち手の棒に巨大な四角錐がくっついた様な感じである……また、四角錐は鋭い凹凸が付いているかなり殺意の高い形状であり、物凄く重そうなのに不思議と片手で持てるぐらい軽かったりする。

 ……そして、卵があった私の左手には“棍棒を持った大柄な人”っぽい図柄の紋章が描かれていた。

 

「……それが姉様の<エンブリオ>なのですね。なんか凄いゴツいのです。……どこかのロボットアニメの主人公機が持ってそうなデザインですね

「本当に殺意が溢れるデザインだよねー。……あっ! お兄ちゃんの方はどうなったのかな?」

 

 そう思って私とミュウちゃんが隣を向くと、そこには左手にある“太陽を背負う男”の様な紋章を眺めているお兄ちゃんの姿があった。

 

「あれ? お兄ちゃんの<エンブリオ>は? まさかハズレとか……」

「ちゃんと孵化はしている。……おそらく、実態が無いタイプのモノなんだろう」

 

 ああ、確か<エンブリオ>にはいくつかの種類があるんだったね。私の棍棒は武器やアイテム型のTYPEアームズ、お兄ちゃんのは能力・領域型のTYPEテリトリーってヤツっぽいかな。

 ……と言うか、それもステータス欄を見れば普通に分かるよね。よく見たら、お兄ちゃんは早速自分のステータスを開いてるし。

 

「とりあえず、ステータスを見てみようか。……えーっと、<エンブリオ>のステータス欄はーっと……」

「一体どんな感じなのですか?」

「……んー、ちょっと待ってねー……ああコレだね。こんな感じー」

 

 私はステータス欄を操作してお兄ちゃんとミュウちゃんに自分の<エンブリオ>の能力を見せた。

 

【激災棍 ギガース】

 TYPE:アームズ

 到達形態:Ⅰ

 

 装備攻撃力:200

 装備防御力:20

 

 ステータス補正

 HP補正:D

 MP補正:G

 SP補正:F

 STR補正:D

 END補正:E

 DEX補正:G

 AGI補正:D

 LUC補正:G

 

『保有スキル』

《バーリアブレイカー》Lv1:

 自身の直接攻撃時、攻撃対象の防御系スキル・身代わり系スキル・防御力強化系スキル効果を低下させる。

 効果低下率はこのスキルのLvと攻撃する際の自身の攻撃力、及び攻撃対象と対象となるスキルの強度で決定する。

 パッシブスキル。

 

 ……ふむふむ、このスキルとステータス補正を見ると、多分物理的な近接戦闘に特化した感じの<エンブリオ>みたいだね。相手の防御を削って物理で殴る感じのスタイルなのかな。

 

「姉様の<エンブリオ>は物理攻撃特化って感じですかね。……後、ギガースってどう言う意味でしたっけ?」

「私も知らない。……後で現実(リアル)に戻ったらネットで確認してみよう。……さて! 次はお兄ちゃんの<エンブリオ>を公開ダー!」

「はいはい……ほれ、こんなんだ」

 

 そして、お兄ちゃんは私達に自分の<エンブリオ>のステータスを公開した。

 

【百芸万職 ルー】

 TYPE:テリトリー

 到達形態:Ⅰ

 

 ステータス補正

 HP補正:G

 MP補正:G

 SP補正:G

 STR補正:G

 END補正:G

 DEX補正:G

 AGI補正:G

 LUC補正:G

 

『保有スキル』

光神の恩寵(エクスペリエンス・ブースター)》Lv1:

 自身が獲得する全ての経験値を+100%する。

 パッシブスキル。

 

長き腕にて摑むモノ(エクスペリエンス・トランスレイション)》:

 自身と自身のパーティーメンバー、及びそれらの従属生物が非人型範疇生物(モンスター)を倒した時、アイテムをドロップしなくなる代わりに経験値が増大する。

 ※このスキルのオンオフを切り替えた後、<Infinite Dendrogram>内時間で24時間の間はこのスキルのオンオフの再変更は不可能。

 パッシブスキル

 

 ……うーむ? ステータス補正がオールGなのはともかく、スキル的には獲得経験値を増大させる<エンブリオ>って事なのかな? 

 

「それにしても、スキルの文字とルビがなんかアレだよね。……まあ、お兄ちゃんのパーソナルから生まれたのなら納得だけど」

「おいコラお前それ以上言うなそれを言ったらマジで戦争だろ!」

「まあまあ! 落ち着いて下さい兄様! ほら、アイラさんも見ていますし」

 

 私のからかいの言葉にちょっとキレたお兄ちゃんをミュウちゃんがどうにか宥めてくれた……ていうか、さっきからアイラさんを放置しっぱなしだったね。<エンブリオ>の孵化にちょっと浮かれ過ぎてたかな。

 

「あ、……申し訳ありませんアイラさん。何分、急に<エンブリオ>が孵化したもので動揺してしまって……」

「いえ、大丈夫ですよ。……私も、<マスター>が<マスター>足り得る<エンブリオ>の誕生を見る事が出来てとても興味深かったですし」

 

 お兄ちゃんの謝罪に対しアイラさんは大人の態度でそう言ってくれた……私達は『これ以上彼女に迷惑をかけるのも忍びないので、<エンブリオ>の考察は後回しにしてさっさと就くジョブを決めよう』という事になった。

 ……とりあえず、私とお兄ちゃんは自分達の<エンブリオ>の情報もカタログに入力して、自分に適したジョブを検索してみた。

 

「じゃあ、私はカタログで出たオススメの【戦棍士(メイスマン)】にしようかな。【ギガース】の種類は戦棍(メイス)みたいだし、その扱いに特化したこのジョブが無難でしょう」

「私はさっき言った通り【格闘家(グラップラー)】でいいですし……兄様は?」

「俺は【魔術師(メイジ)】で行く。……俺の【ルー】は今のところ獲得経験値を増大させるだけの<エンブリオ>だから、ジョブは割と何でもいいしな」

「その三つのジョブであればこの近くにあるそれぞれのギルドで転職出来ますね。……では、地図を渡しておくので早速転職してから、また此処に戻ってきて簡単な戦闘訓練に入りましょうか」

 

 そうして、私達はそれぞれ自分が初めて就くジョブをそれぞれのギルドに行って転職し、その後戦闘訓練の為に冒険者ギルド内にある訓練場へと戻っていったのでした。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 □王都アルテア・冒険者ギルド訓練場 【魔術師】レント・ウィステリア

 

「《ファイアーボール》!」

 

 そう言った俺の突き出した右手から小さな火の玉が発射され、10メートル程先に置かれていた的に命中した……ふむ、この世界の魔法は基本的にスキル名を言うだけで後は自動で発動してくれるみたいだな。

 ……あれから俺達は各々が選んだジョブに就いた後、この訓練場でアイラさんに簡単な訓練を付けてもらう事になった。

 

『それでは、まずは皆さんの実力を知りたいので軽く模擬戦でもしましょうか。……ああ、これでも私は殆ど戦闘系のジョブで()()()()()4()6()8()ありますので、遠慮なく向かって来てくれて構いませんよ』

 

 そう言った彼女の実力は本物で、俺も多少は剣の腕に覚えがあったのだがステータス差以前に純粋な技量で上回られて軽くいなされてしまっていた……と言うか、ティアンは<マスター>と違って合計レベルも個人差があるらしいのに、レベルから考えて彼女の最大レベルは500あるよな。

 ……なんで冒険者ギルドの受付嬢なんてやってるんだろう? 

 

『レントさんはどうやら剣の心得があるようですし、魔法系のジョブ主体で行くならそちらの訓練を優先した方がいいでしょう。ミカさんは武術の心得が無い様なので私が少し指導しましょうか。……ミュウさんは特に私が教える事は無いレベルなので自主訓練で』

 

 その模擬戦の後、アイラさんはミカとの一対一の訓練を始めて、俺は彼女が用意してくれた訓練用の的に向けて魔法スキルを発動させる練習を行っていた……後、ミュウちゃんは『あっち(現実)と身体の大きさが違うのでちょっと調整してきます』と言って、訓練場の端っこで暫く武術の型を繰り返していた。

 ……と思っていたら、ミュウちゃんが急に演舞を辞めてこっちにやってきた。

 

「もう調整はいいのか?」

「はい、体格の違いによる動きのズレは矯正出来ました。やっぱり格闘で戦うなら手足が長い方が有利ですからね、アバターを成長させて正解だったのです。……それで兄様、そちらの魔法の方はどんな感じですか」

「ふむ、発動の意思を込めてスキル名を言うと、MPが消費されてスキルが魔法を自動で発動させてくれるって感じかな。……後、発動者のイメージでスキルの方がある程度補正してくれるらしいか?」

 

 例えば、さっきの《ファイアーボール》は右手から出したけど、左手から魔法を出す事もできたりするし……多分、この辺りの事は本格的に魔法について調べないとどうしようもない領分かな。興味はあるし、機会があったら調べてみるのもいいかもしれない。

 ……実は、今はそれよりも気になる事があるんだが……。

 

「後、気になる事は()()()()()()()()()()()()()()()()だな」

「……アレ? この世界ってモンスターを倒すかジョブクエストをこなすかしないとレベルが上がらない仕様では無かったです?」

「ああ、それは私のジョブスキルによるものですね」

 

 そんな俺の疑問に答えてくれたのはアイラさんだった……後、ミカは向こうでヘトヘトになって地面に座り込んでいる。

 ……アイラさんは汗ひとつかいていないんだが、これがステータスの差か……。

 

「私のメインジョブ……教官系統上級職【教導官(インストラクター)』には《戦技教導》という『戦闘の指導をした相手がその度合いに応じて経験値を獲得する』スキルがありますので」

「成る程、そうだったんですね。ありがとうございます」

 

 経験値を獲得させるタイプのジョブスキルもあるのか……俺の【ルー】とは相性が良さそうだし、今度その辺りのジョブを調べてみようかな。

 

「それでは時間も押していますし、ミカさんの体力が回復したら最後の訓練……実戦訓練に移りたいと思います」

「分かりました」

 

 それじゃあ、暫くは休憩時間だから俺とミュウちゃんはへたり込んでいるミカの様子でも見に行く事にした……まあ、ミカは『アイラさんスパルタすぎー……。レベルは上がったけど……』とか言ってたし特に問題は無さそうだった。

 

 

 ◇

 

 

 それから十分後、ミカの体力が回復したので俺達はアイラさんの言う『実戦訓練』に入る事になった。

 

「では、これからの実戦訓練では、この中に入っているモンスターと戦ってもらいます」

 

 そう言って、アイラさんは一つの宝石の様な物を俺達に見せた。

 

「これはモンスターを入れておく為の【ジュエル】というものです。……この中には呼び出した人間を襲う様に設定された訓練用のモンスターが入っているので、皆さんにはそれと戦って貰う事になります」

 

 尚、そのモンスターは呼び出してから30分程度で死亡する設定の【錬金術師】が作り上げたホムンクルスらしく、ステータスも王都周辺に出るモンスターに毛が生えた程度らしいので、今の俺達でも普通に倒せるでしょうとの事だ。

 ……そうして一通りの説明を終えた後、アイラさんは【ジュエル】を俺に手渡してきた。

 

「それを持って《喚起》──【チュートリアル・ブラックホムンクルス】と言えば中にいるモンスターが出て来ますので、準備が出来たら呼び出してそれと戦って下さい」

「分かりました」

 

 それだけ言うと、アイラさんは部屋の隅の方に下がっていった……まあ、レベル四百越えの彼女がいれば万が一も無いだろう。

 

「……ミカ、ミュウちゃん、準備はいいか?」

「大丈夫だよお兄ちゃん」

「問題無いのです」

 

 俺の確認にミカは両手に【ギガース】を構えて、ミュウちゃんはごく自然体で立ったままそう答えた……それじゃあ、この世界での初実戦をやりましょうか! 

 

「じゃあ行くぞ……《喚起》──【チュートリアル・ブラックホムンクルス】!」

 

 俺のその宣言と共に手に持った【ジュエル】が発光し、直後に前方5メートルぐらい先へ一体のモンスターが出現した……のだが……。

 

『KYASYAAAAAAA……』

「……ホムンクルス?」

「……どっちかと言うと、怪物系の映画に出て来るクリーチャーみたいなんですけど……」

「……見た目的にはゲーム終盤に出てきそうな感じですね」

 

 その見た目は鈍く輝く黒い身体に禍々しい爪がついた手足を持つ長い腕と脚が生えていて、首から上は人間に嫌悪感を抱かせる事に特化された歪な形状をしていて、その牙が生えた口からは呼吸音と共に異臭を放つヨダレが滴り落ちていた。

 ……呼び出す相手を間違えたかな? 

 

「……あのー、アイラさんこれは……」

「それが貴方達がこれから戦う【チュートリアル・ブラックホムンクルス】で間違いありませんよ。……初めてモンスターと戦う初心者の死因で最も多いのが“初めて相対するモンスターに怯んで不意を突かれる”事なので、そう言った事に耐性を持たせる為に()()見た目を変えていますが」

 

 えぇ……俺達は別に大丈夫だけど、現実視でグロ耐性の無い<マスター>はリタイヤしそうな見た目何ですが……。

 ……そんな俺の考えを読み取ったのか、アイラさんは更に言葉を続けた。

 

「まあ、()()()()でリタイアする様ならば戦闘以外の道を探した方が賢明でしょう。この世界にはコレより遥かに恐ろしい脅威が幾らでも存在していますし。……それより、そろそろ来ますよ」

『KYASYAAAAAAaaa──ッ!!!』

 

 アイラさんのその言葉と同時に【チュートリアル・ブラックホムンクルス】が奇声を上げながら俺に向かって突っ込んで来た……ここに、俺達の<Infinite Dendrogram>における初めてのモンスターとの戦闘が始まったのだった。




あとがき・各種設定解説

兄:昔アレな性格だった時期がある
・あらゆる方面に高い才能があったため、昔は神童と呼ばれて天狗になっていた時期があった。
・その際の性格は閣下とジュリエットを足して2で割った感じで、事故にあってからは改善したが当時の事は本人的には完全に黒歴史になっている。

【百芸万職 ルー】
<マスター>:レント・ウィステリア
TYPE:テリトリー
能力特性:獲得経験値上昇?
固有スキル:《光神の恩寵》《長き腕にて掴むモノ》
・モチーフは『諸芸の達人』『長腕のルー』ともあだ名されるケルト神話の太陽神“ルー”。
・《光神の恩寵》が増加させるのは自身が最終的に獲得する経験値量になる。
・《長き腕にて掴むモノ》はモンスターを倒した際にドロップアイテムのリソースを全て獲得経験値に回すスキル。
・尚、<UBM>には効果を発揮しない仕様。

妹:私の<エンブリオ>ゴツい……
・アイラとの特訓では持ち前の“直感”で攻撃を凌ぎ続けたものの疲労でダウンした。

【激災棍 ギガース】
<マスター>:ミカ・ウィステリア
TYPE:アームズ
能力特性:防御系スキル効果低下?
固有スキル:《バーリアブレイカー》
・モチーフはギリシャ神話において神々と戦った巨人を指す言葉“ギガース”。
・巨大なメイス型のアームズで非常に頑丈で攻撃力も高いが、大型である為に装備時には両手の装備枠を消費する。
・《バーリアブレイカー》は多くの防御系スキル効果を減衰出来るが、適応範囲が多くパッシブスキルなので減衰率はそこまで高くない。

【戦棍士】:戦棍士系統下級職
・メイスを扱う事に特化したジョブで、主に直接戦闘や相手の鎧などの破壊に長けておりステータスはSTR特化。
・上級職は【剛戦棍士(ストロング・メイスマン)】だが、派生のジョブもあるらしい。

末妹:現実とアバターの違いには三分程度で慣れた
・実は格闘系天災児でもあり、戦闘の才能はちょっとヤバいレベル。

【格闘家】:格闘家系統下級職
・格闘系のジョブの中でも殴る、蹴る、投げるなどの各種センススキルを習得出来る万能型で、《看破》《殺気感知》などの汎用スキルも習得可能。
・ただし、それらのスキルレベルの上限が低くアクティブスキルも殆ど覚えない上、ステータスも余り高くならないのでメインで使う人は少ない。
・上級職は【武闘家(マーシャルアーティスト)】。

アイラ・ローラン:意外と武闘派&スパルタ
・かつては五百レベルカンストしていたが、受付嬢になるに当たって【教導官】のジョブを取得する為にいくつかのジョブをリセットしている。

【教導官】:教官系統上級職
・他者にものを教える事に特化した【教師(ティーチャー)】の派生で、戦闘技能を教える事に特化した【教官(コーチ)】の上級職。
・主に武術系の指導に長けておりほぼ全ての武器を使え、戦士を育てるのに有用なスキルを習得出来る(魔法の指導に長けたジョブは別にある)


読了ありがとうございました……設定考えるのやっぱり超むずい……。
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