とある三兄妹のデンドロ記録:Re   作:貴司崎

110 / 131
前回のあらすじ:兄「ええいっ! やっぱり<UBM>は面倒だ!」ひめひめ「面倒じゃない<UBM>とか見た事無いけどね!」

※【魔弓手】系統のスキル名が分かりにくいので全面的に変更しました。


夜を払う竜の剣

 □<夜光の森>

 

『『『KIHIHIHI〜!!!』』』

 

 何処から声が出ているのか分からない様な不気味な笑い声は発しながら、三体の【グリムリープ】は大鎌を構えながら亜音速を超える速度で緩急を付けたフェイントを織り交ぜつつレント達との距離を詰めていく。

 ……それに対してレントは徐に即時放出機能付きのアイテムボックスから三つの【ジェム】を取り出し、三体の【グリムリープ】の進行方向上に投げ放った。

 

「ネリル、壁」

「《ハイ・アイス・レジスト・ウォール》……人使いが荒いのう」

『『『KIHIE⁉︎』』』

 

 その直後、まるで示し合わせたかの様にネリルが対氷属性の障壁を前方に展開した……その瞬間に投げ放たれた【ジェムー《ホワイト・フィールド》】(自作)が起動して、超音速移動が出来る【グリムリープ】でも回避できないタイミングと範囲に上級職の奥義に相応しい極低温の冷気を発生させて前方を白く覆い尽くした。

 

「ちょ⁉︎ この近距離で上級奥義魔法を……⁉︎」

「大丈夫よティアモさん、直前にネリルちゃんが障壁を展開してたから」

「しかし主人殿、いきなり自分達を巻き込む規模の【ジェム】を投げるとはな。ワシの障壁が間に合わなければどうするつもりだったんじゃ?」

「お前が【ジェム】の運用に対応出来ない筈がないだろう? ……さて、本体にダメージを与えるのは難しそうだから【凍結】を狙ってみたが……クルエラン、前に出ろ」

『GO!!!』

 

 そうレントが指示を出し、ゴーレムらしく基本的に主人には忠実なクルエランが白煙に包まれたままの前方に躊躇なく足を踏み入れて……白煙を突き破って現れた【グリムリープ】の斬撃を受け止めた。

 ……不意打ちで極低温の冷気を受けて幻影は構成に使われていた熱エネルギーを奪われて消滅、身体の方も【凍結】された【グリムリープ】だったが、先程と同じ様に身体を消滅させて【凍結】されていない新たなエレメンタルの身体を再構成して凍ったままの大鎌(本体)を使って攻撃したのだ。

 

『GOOO!!!』

『KIHIHI……《ファントム・エイリアス》』

「そのまま本体を抑えろ! ……チッ、やはり【凍結】程度では止まらんか!」

 

 大鎌に斬り裂かれてもそれを意に介さず【グリムリープ】に向けて拳を繰り出すクルエランだったが、相手は超音速機動で躱しながら再度幻影を二体召喚して後ろにいるレント達に嗾しかけた。

 だが、クルエランの方も『急所がない自分にとってあの大鎌は防御力と自己再生でどうにでもなる攻撃』だと割り切って、本体を抑えろと言う主人の命令を成すために相手の攻撃を無視して拳を振るい続ける。流石にその攻撃を無視する訳にも行かず、結果的に【グリムリープ】はクルエランによって足止めされる事になった。

 

『『KIHIHI〜!』』

「行くぞヴォルト、クリティカルだけには注意しろ《アイス・ブリザード》!」

『了解! 《ライトニング・ジャベリン》!』

「ティアモさん、前衛を任せて良いかしら? 《ヴァイパー・アロー》《光炎之矢》」

「分かった! イヤァァァッ!!!」

 

 突破して来た二体の幻影も、一体はレントが広範囲に放った冷気の奔流によって熱エネルギーを奪われて構成が揺らいだ所にヴォルトの雷の槍を叩き込まれて霧散、もう一体もひめひめの矢を回避しようとして()()()()()()()()()()()()()()()設定してあった矢に穿たれて動きが止まった所へティアモの《破魔竜剣(ハマノツルギ)》によって断ち切られて消滅した。

 展開中の《イリュージョン・ジャミング》によって脆くなっている事もあってあっさりと消滅する幻影だったが、それも織り込み済みだったのか【グリムリープ】はクルエランの攻撃を回避しながらも新たに二体の幻影を展開してレント達に嗾しかけた。

 

『『KIHIHIHI〜!』』

「不味い……あいつ明らかに時間を稼いでる。仲間達を転移で皆殺しにした時と同じ展開。あの時は5分ぐらい戦ったら転移を使い始めたけど……」

「ふむ、とすると背後転移の条件は戦闘継続時間と言った所か? 連続行使したって話だしクールタイムの線は薄いか。ネリル、クルエランに対氷バフ。彼女に使ってこない所を見ると同一対象には連続使用出来ない様だが……《詠唱》終了《ホワイト・フィールド》」

「ほいほい……《ハイ・アイス・レジスト》」

 

 自分の考えを《詠唱》として口に出しながら纏めたレントは、ネリルに指示を出してから【グリムリープ】の本体と幻影をクルエラン毎巻き込むレベルの前方広範囲に【白氷術師(ヘイルマンサー)】の奥義である極低温の冷気を発生させて纏めて凍結させた。金属製ゴーレムであるクルエランであればダメージは最小限で住むだろうと考えて巻き添え攻撃である。

 

『……GO……』

「うん、いきなりクルエランを巻き込んだのは正直悪かったと思ってる。《ゴーレム・リペア》」

「氷も溶かしておくぞ《ヒートボディ》」

 

 ……まあ、奇襲の為とは言えいきなり主人から攻撃されたのは不満だったのかクルエランは文句を言いたそうな雰囲気をしながら下がって来たので、レントとネリルは謝りつつ回復と高熱付与による体表の氷の除去を粛々と行うのだった。ちなみに前衛のクルエランの耐久性なら問題ないレベルの広範囲魔法による巻き添え戦術はもう何度もやっているので、クルエランの方も慣れてはいる。

 

「でも、さっきと同じ【凍結】狙いじゃ時間稼ぎにしかならないし、向こうに時間を稼がせるのは危ないんじゃない?」

「あの肉体の再構築にはそれなりの魔力を使うみたいだしMP切れ狙いだよ。……それに()()()()()()()()()()()()()()()からいつ転移を使って来てもおかしくは無い。だから広範囲攻撃で……『KIHIHI!』

 

 そうレントが説明していた直後、冷気によって出来た白煙が目眩しになっていると思った【グリムリープ】は先程と同じ様に【凍結】した肉体を再構築した上で彼の背後に転移してその首目掛けて大鎌を振るい……その刃は直前に彼が後ろも見ずに首を守る様に掲げた右腕を貫いた所為で急所である首からは逸れてしまった。

 

『KIHIA⁉︎』

「……その隙に乗じて一番ヘイト(脅威度)を稼いでいた俺の背後に転移する様に誘導したんだが、上手くいった様だ」

 

 そう、五分が過ぎた時点でレントは【グリムリープ】が自分の背後に転移してくるだろうと予測し、いつ転移して来ても問題ない様に警戒していたのだ。ちなみに『自分の背後に来るだろう』との予測は自身とヴォルトが一番ダメージを与えてる以外にも、これまでの戦闘でティアモに転移攻撃を使わなかった以上は同一人物への転移には制約があると考えた他、攻撃が効かないクルエランに使う事はまず無くひめひめとネリルなら背後に転移されても自分で対応できると考えての判断である。

 そしてレントはそのままもう片方の手も使って大鎌を抑え込み、それに【グリムリープ】は抗おうとするもSTRに於いては大した差がなく、急所に当たらなければ攻撃力は低い事もあって本体を彼から一息に離させる事は出来なかった。

 

「それにテイマーである俺を倒せばテイムモンスター全員消えるし、こいつは頭良いみたいだからそう来ると思ってた……《詠唱》終了《アヴェンジブースト》。ヴォルト、やれ!」

『《迅雷の蹄》!』

『KIHIE⁉︎』

 

 レントが使ったのは【呪術師(ソーサラー)】のスキルである自身にダメージを与えた相手に対する呪術を強化する《アヴェンジブースト》であり、それによって本体(大鎌)に滴る血──【暗黒騎士(ダークナイト)】のスキル《ブラッド・カース》の効果が増幅されて【グリムリープ】に【呪縛】の状態異常を掛けた。

 直後、レントの指示に従ってヴォルトが雷を纏った後ろ脚で勢いよく【グリムリープ】を蹴り付けようとして……その直前に腕に突き刺さっていた大鎌も含めて跡形も無く【グリムリープ】は掻き消えた。

 

『消えた⁉︎』

「転移だ! 次はどこに……ネリルの後ろ!」

『KIHIHI!』

 

 そうして転移した【グリムリープ】が現れたのはネリルの背後であった……《ブラッド・カース》による呪縛も動かしているエレメンタル側に血が付着しなかった事が原因で余り効果を及ばなかったのだ。加えて《闇夜の死神》で作られたエレメンタルも【グリムリープ】の肉体の一部と言う判定なので、大鎌だけを状態異常に掛けてもエレメンタル側からスキルを行使するなども可能な事も原因にある。

 ただ、それでも動きはやや鈍っていたのでレントが転移先を特定するぐらいは出来たが、声を掛けた時には既に大鎌がネリルの無防備な首筋に振り下ろされた後であり……その刃は首筋の寸前で“見えない何か”に阻まれたかの様に停止した。

 

『KIHII⁉︎』

「……まあ、背後から首を狙うと分かっていたし対策は取ってあるんじゃがな。《グランド・ホールダー》」

「《クイックファイア》!」

「《ヴァイパー・アロー》《光炎之矢》!」

 

 そのカラクリは単純、事前に自分の急所の周りだけ《ハイ・マテリアル・レジスト・ウォール》を展開していただけである。【グリムリープ】の攻撃力は急所に当たらない限りは亜竜級上位程度のクルエランの防御を突破出来ないレベルだと判断しての防御術である。

 ……そして攻撃を止められて動きが一瞬止まった【グリムリープ】に対して、まずネリルが地面を操作して作り上げた三本の腕によって拘束し、そこにレントがスキルによって瞬時にアイテムボックスから出した【シルヴァ・ブライト】による射撃とひめひめの【アマテラス】による射撃が放たれ……それらが当たる寸前、またしても【グリムリープ】は今度はひめひめの背後に転移してその首に大鎌を振り下ろした。

 

「《堅樹光球》……ワンパターン過ぎるわよ。予想通りね」

『KI……KIKIA⁉︎』

 

 ……が、その大鎌はひめひめの周りに展開された光の障壁に阻まれて、更に先程放たれた《光炎之矢》が軌道を180度変えて彼女の元に戻りその背後に居る【グリムリープ】を撃ち抜いた。

 この《アローエフェクト・フリードロウ》は()()()()()()()()()()その軌道を自由に設定出来るスキルであり、レント・ネリルと続けて奇襲に失敗した以上は残った自分の背後に転移してくれだろうと予測したひめひめが、これを使って外れた後に自分の背後を撃ち抜く様に設定しておいたのである。

 そしてひめひめは【グリムリープ】が攻撃を受けて怯んだ隙に《堅樹光球》を解除、そのまま背後を振り向きつつ本体である大鎌に狙いを定めて【アマテラス】を引き絞る。

 

「《光剛勢》《サクリファイス・ボウ》《光炎之矢》!!!」

『GIAAAA⁉︎』

 

 そうして放たれた【ドラグリーフ】に蓄積された光エネルギーと【大魔弓手(グレイト・マギアーチャー)】の奥義である魔法弓の耐久値を犠牲に攻撃力を大きく引き上げる《サクリファイス・ボウ》の効果が上乗せされた、必殺スキル以外なら彼女の最大火力である光熱の矢が狙い能わず大鎌の単眼部分に突き刺さり……その眼球部分を僅かに溶かす程度に終わった。

 

「だぁ! これでもダメなの⁉︎」

「ふむ、ならば防御を無視する闇属性はどうじゃ《グルーム・ストーカー》!」

『防御が効きにくいなら雷属性も付けましょう《サンダー・ボルト》!』

「《仮想奥義・神技昇華(イミテーション・ブリューナク)》レベル50消費《リバース・クルセイド》!!!」

 

 奥義の反動で破損して【アマテラス】を紋章にしまいつつ下がったひめひめに変わり、ネリルの闇属性追尾弾とヴォルトが放った落雷が【グリムリープ】の本体に突き刺さり、そこに己のレベルを捧げて攻撃力を大幅に引き上げた闇の奔流がエレメンタルの肉体ごと大鎌を呑み込んだ。

 ……それぞれ必殺の意思を込めて放ったスキルであり、特にレントの攻撃は純竜級モンスターでさえ葬り去れる威力があったのだが……それでも倒せたのはエレメンタルの肉体側だけであり、本体である大鎌はダメージを受けながらもまだ無事であった。

 

『ギギッ……GIGI……』

「HPは削れてるけどこれでも駄目か。こいつENDだけじゃなくて魔法耐性も高いみたいだ」

「強度や耐久値、魔法耐性など武器としての性能も神話級金属レベルと言った所かの」

 

 彼等の予想通り《闇夜の死神》による本体の()()()()()()強度強化は単純なENDの強化だけでなく、魔法耐性や耐久性(HP)などもEND程では無いが引き上げているのだ。それに元となった大鎌の武器性能が高い事もあって超級職の奥義レベルの魔法攻撃でも1発2発程度では倒せなくなっているのである。

 ……しかし、それでも【グリムリープ】にとって本体のHPをここまで削られた事は初めてであり、更に幻術や転移やクリティカルなどの自身のスキルにも悉く対処して来る目の前の人間はこれまで敵対して来た中でも最大の“脅威対象”だと認識したが故に、自身が持つ『切り札』を持って確実に仕留めるべきだと判断したのだ。

 

『ギギ……ギギギ……殺ス。《殺断死鎌(アブソリュート・スレイ)》』

 

 そうして再びエレメンタルの身体を再構築した【グリムリープ】は、これまでの取ってつけた様な笑い声とは違う本気の殺意を彼等に向けて二十万と言う残されたMPの大半を消費して切り札であるスキルを行使すると、本体である大鎌の周りの風景が歪に捻じ曲がり始めたのだ。

 

「アレはまた幻術……って訳じゃ無さそうね」

「うむ、どうやら空間干渉系スキル……しかも転移などでは無く、直接空間に作用する攻撃系スキルの様じゃな」

 

 そう、【グリムリープ】の切り札である《殺断死鎌》は《夜天の死鎌(ナイト・デスサイズ)》の防御無視効果を《暗夜行渡(ナイトリープ)》の空間操作能力を応用させて()()()()()()の守りを無効化する様に変更し、そのまま範囲内の敵対対象を空間諸共切断すると言う荒技である。

 ただ、当然の如く夜間にしか使えない上、使用には夜間限定の消費MP軽減や自動回復スキルを考えても膨大となるMPが必要な事と、発動中に《夜天の死鎌》《暗夜行渡》は使用出来ず【グリムリープ】自身もスキルの制御に集中する為に幻術などは使えなくなるリスクもあるのでこれまでは使って来なかったが、目の前の敵はなんとしてでも排除するべきだと判断したが故に使用へと踏み切ったのだ。

 

「⁉︎ 来るぞ!!!」

『キイイィィィィエエェェェェェェ!!!』

 

 そして【グリムリープ】は奇声を上げながら空間の歪みを伴った大鎌をレント達に向かって超音速で振り抜き、その周辺にある空間諸共ズタズタに引き裂く空間歪曲を発生させたのだ。

 相手が逃げられない様に消費するMPを増やしてでも効果範囲を広げて、このタイミングならば範囲外への移動は絶対に不可能だと確信して放たれた空間歪曲の斬撃波はレント達を呑み込む……直前に前方に躍り出て来たこれまでティアモの【剛竜剣】に受け止められた。

 ……これまで大して活躍していなかったが故に半ば意識の外にあった彼女の行動に多少驚く【グリムリープ】だったが、幻影をかき消した剣であってもこれだけのMPを込めた空間断裂なら問題なく諸共屠れると確信し……。

 

「ここ! 《破魔竜大剣(ハマノオオタチ)》!!!」

『ナァニィ⁉︎』

 

 それ故に彼女の【剛竜剣】によって《殺断死鎌》によって発生させた空間歪曲が切断されて霧散した光景を見た【グリムリープ】は思わず驚愕の声を上げてしまった……これがティアモが有する【竜剣飾 ドラグソード】の第二スキル、使用後に24時間のクールタイムがある代わりにドラゴン系素材製の刀剣で斬りつけた凡ゆるMP消費のスキルを完全に無効化する《破魔竜大剣》のスキルである。

 更にこのスキルには続きがあり、その刀剣の装備攻撃力をその後の三分間だけ無効にしたスキルに使われていたMP数値分だが上昇させる効果があるのだ。

 

「凄い魔力、これなら! 《アマゾネス・ウォーシャウト》!」

「うむ、思った以上に良い展開となったの……《ハイ・フィジカル・ブースター》」

『グッ!』

 

 なので《殺断死鎌》を無効にした【剛竜剣】の攻撃力は二十万近く上昇しており、それによって濃密な燐光を放ち始めた大剣を持ったティアモはここが勝機と【女戦士(アマゾネス)】のAGI上昇バフを自身に掛けて【グリムリープ】へと突っ込んで行き、更にネリルの物理ステータスバフを受けて加速した。

 ……それを見た【グリムリープ】は『あの大剣は自身を殺しうる』と瞬時に判断したが、スキルの反動によって《暗夜行渡》も使えずMPも殆ど残っていなかったので、やむ終えずAGIによる超音速機動と残ったMPによる光学迷彩で逃亡を図ろうとした。

 

「逃す訳ないでしょう、《ヴァイパーアロー》《アクセルアロー》《ブリザードアロー》」

「まあシンプルに逃げ道を封じるか……《魔法射程延長》《魔法威力強化》《ロックウォール》』

『ナッ⁉︎』

 

 ……が、その後方の逃走経路にはティアモが魔法を無効化すると知って準備していたレントが展開した岩の壁によって塞がれており、それを突破しようと一瞬足が止まった所でサブの魔法弓に持ち替えたひめひめからの射撃がエレメンタルの肉体へと当たって【凍結】させた。

 そして本体が【凍結】した事によって動きが止まってしまった【グリムリープ】の元へ、後の“物理最強”の通常攻撃にすら迫る攻撃力を得たティアモが迫り来る。

 

「皆の仇……《タイタン・ブレイク》!!!」

『ガ……ガァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!?』

 

 そうして追い付いたティアモが攻撃力を倍にする奥義も併用して大上段から振り下ろした【剛竜剣】の一閃は【グリムリープ】の本体である大鎌を保持していたエレメンタルの肉体諸共まるで紙切れの様に斬り飛ばし、その圧倒的な攻撃力によって前方の地形諸共【グリムリープ】を跡形も無く消しとばしたのだった。

 

 

 ◇

 

 

【<UBM>【夜行殺断 グリムリープ】が討伐されました】

【MVPを選出します】

【【ティアモ・ウル・ヒュポレ】がMVPに選出されました】

【【ティアモ・ウル・ヒュポレ】にMVP特典【夜天手甲 グリムリープ】を贈与します】

 

「このアナウンスは……皆、仇は取れたよ。せめて安らかに……」

「《フィフス・ヒール》……よし、ちゃんとアナウンスは鳴ったし復活とかもしないみたいだな」

「流石にそれは警戒し過ぎじゃない? ……とにかく、まずはアマゾネス達の遺体を【棺桶】に入れて弔いましょう」

 

 彼等は討伐報告のアナウンスとティアモの手元に現れた特典武具を見てようやく【グリムリープ】討伐を確信して一息吐き、まずは首を狩られて息絶えたアマゾネス達の遺体を弔う事となった。

 

「……あー、相手が相手だったから躊躇なく広範囲攻撃をぶっ放したから結構遺体が損壊してるな」

「そこは気にしなくていい。彼女達もアマゾネスの戦士である以上は遺体がまともに残らないぐらいは覚悟の上。むしろ仇を取ってもらった事に感謝する筈。……それよりも<UBM>のMVPを私が取る事になったけど……」

「戦闘時間とラストアタック的に当然の結果じゃないかしら? 私達は途中参加だった訳だし。……ああ、私もレントも他の<マスター>と違って特典武具にがっついたりはしないから」

 

 そんな話をしつつアマゾネス達の弔いを終えたレントとひめひめはイベントを楽しむ空気じゃ無くなった事と、ティアモが逃げた三人のアマゾネスと合流する為に緊急時の合流地点に定めていた霊都へ向かうと言った事で彼女に付いて街へと戻る事になった。

 

「今回は色々とありがとう。偶々出会ったばかりなのに<UBM>の討伐の手助けをしてくれて……このお礼はアマゾネスの名にかけて必ずする。……えーっと……」

「ああ、そういえば慌ただしくて自己紹介もしてなかったな。俺はレント・ウィステリア、レジェンダリアには旅行に来た感じのしがない<マスター>だよ」

「私はひめひめ、レジェンダリアの“まともな! ”<マスター>でレントの友人よ」

「私はティアモ・ウル・ヒュポレ、アマゾネスの戦士をやってる。……改めてよろしく」

 

 ……そうして戦いの後の自己紹介を終えた彼等は疲れた身体を休める為にも霊都へとゆっくり歩いて行ってのだった。




あとがき・各種設定解説

兄:デンドロでは手札の数こそが長所
・ダメージがダメなら状態異常を掛けたりアイテムを駆使したりと、持っている手札を可能な限り駆使して相手に有効な対応を続けるのがメインの戦術。
・万が一自分の背後だけでなくティアモの背後に転移して来てもいい様には警戒していたし、“背後”の数を減らす為に騎乗したまま戦ったりと色々と手を尽くしていた。

ひめひめ:夜だと必殺スキルも使えないので終始支援役
・ちなみにサブの魔法弓は【凍竜の魔弓】と言う【フリーズ・ドラゴン】の素材から作られた物で、とあるクエストの際に手に入れて【アマテラス】の破損時や光熱耐性のある相手用に所持していた。

《ヴァイパーアロー》:【大魔弓手】のスキル
・弓を番えた際に設定した軌道通りに魔法矢を飛ばすスキルであり、《ハウンドアロー(視線誘導)》や《ホーミングアロー(熱源誘導)》と違って弾速に誘導効果が追いつかない光速の光の矢の軌道も変更可能(但しそれなりのMPが掛かる)
・だが、発射した後に軌道を変更出来ないので闇雲に設定しても関係ない方向に矢が飛んでいくだけであり、扱うには敵味方の動きを先読みする高い予測技術と一瞬で必要な弾道を描く空間把握能力が必要。
・尚、その両方を兼ね備えているひめひめにとっては誘導機能付加よりも使いやすい模様。

ティアモ:今回のMVP
・【グリムリープ】を倒せるだけの攻撃力を得られるのが彼女しかいないのでこうなったが、以前<マスター>達が<UBM>の取り合いで争う所を見ていたのでちょっと不安だった。
・《破魔竜大剣》には上昇させた攻撃力に応じて刀剣にそこそこのダメージが入るデメリットがあるが、超強度と自動再生能力を持つ【剛竜剣】にとっては今回の事でも少し刃こぼれする程度であり問題無かった。
・特典武具である【夜天手甲 グリムリープ】は腕部装備の黒い籠手で、高い強度・防御力とHP・MPへ合計レベル×10・END+30%の装備補正がある(本体である大鎌のステータスはHP・MP・END特化)
・装備スキルは使用中に手持ち武器を急所に当てた時に防御スキルと食い縛りを無効にするアクティブスキル《夜天刃(ナイトエッジ)》と、スキル自体に24時間のクールタイムは付いたが【グリムリープ】と同じ様に五分以上戦った相手の背後に転移出来る《暗夜行渡(ナイトリープ)》の二つ。
・高い装備補正と強力な装備スキルを持つが、その代償として両スキル共に【グリムリープ】の特性に合わせた『夜間でしか使えない』デメリットがある。

【グリムリープ】:夜間しか戦えないが単純な戦闘能力はイベント<UBM>の中でトップレベル
・幻術による撹乱、からの攻撃能力付与、それでもダメなら不意打ち背後転移、そこに防御・食い縛り無効急所攻撃、本体は神話級金属並みで身体は自由に再生可能、切り札に物理強度が意味をなさない空間断裂攻撃と初見殺しと殺傷に特化した<UBM>。
・だったがアマゾネス達との連戦で手札を把握されて、更に自分のスキルへのメタ効果持ちのメンバーが揃ってしまった事で討伐された。
・尚、戦闘をモニターしていた管理AI達の反応はティアンがMVPになって微妙な気分のアリスとか、中々にヒロイックな展開の戦闘が見れて満足しているジャバウォックとそれに呆れる二人と様々だったそうな。


読了ありがとうございました。
これで掲示板とか混ぜたハロウィン編は終わりになります。次回はリザルトからの次章への接続会かな。感想とかもお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。