とある三兄妹のデンドロ記録:Re   作:貴司崎

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前回のあらすじ妹達「「きゃあきゃあきゃあ!」」兄「……うるせぇ。ちょっと告白されたぐらいで騒ぐな」


第6章 麗しの都
【女帝】との邂逅


 □<麗都アンティアネラ> 【高位従魔師(ハイ・テイマー)】レント・ウィステリア

 

「……そう言うわけで此処が<麗都アンティアネラ>。このレジェンダリアでもかなり発展してる都市になると思う」

「まあ確かに<アムニール>と比べても遜色無いわね。外からは頑強な城壁に覆われてたから分からなかったけど、中は結構豪奢だし」

「あちらと比べるとやや硬い感じはするが。アルターの要塞系都市に雰囲気が近いと言うか」

 

 結局ティアモからの依頼を受けた俺たちは『お兄ちゃん(兄様)の恋愛模様を見届けないと!』とかヤケにはしゃぐ妹達と、話を聞きつけて面白そうだと合流したシズカさん達ひめひめパーティーメンバーと共にレジェンダリアの北東側に存在する<麗都アンティアネラ>へとやって来ていた。

 ……その過程でティアモが俺と『正妻の覚えを良くする為』とか言ってひめひめに積極的に話しかけて来たり、その結果として俺とひめひめが付き合ってる事が妹達にバレたり──実のところ隠す理由もそんなに無いので“今は事情があってリアルでは付き合えない”とだけ言って終わりだが──したが、問題なく無事に着いた(強弁)

 

「まあアマゾネスにとって強さ=美しさ、みたいなとこがありますし。後はアルターとカルディナの国境が近い事や、周りに強力なモンスターの縄張りがいくつかあるから防衛力は高くないと」

「此処はレジェンダリアの自然魔力の要なので都市を置かない訳にもいかず、でも周りに強力なモンスターが多いから戦闘に長けたアマゾネスに任されたんです」

「面倒な所を押し付けられたとも言う。アマゾネスは議会での発言力が微妙って婆様も愚痴ってたし」

「ティアモ、裏話を言うのはやめとこう?」

 

 まあアマゾネス娘達の話はともかく、街の中は活気に溢れていてアマゾネス以外にも様々な種族が入り乱れて生活している様だった。どうも見た限り武器屋が多いから、戦いに長けたアマゾネスの街らしく強力な武器の生産が盛んな要塞都市としての面もある感じかな。

 ……うん、どうやら『実は南米の奥深くに住むガチ蛮族で男を見ると飢えた獣の様な目を向けてくる』とかそんな訳では無い様だな。アマゾネスと異種族男性(<マスター>なども含む)の普通に仲睦まじいカップルはよく見かけるから、その辺りはキチンとしているみたいだし。

 

「じゃあ私達は報告の為に族長の所に行くけど」

「分かったわ」

「それじゃあ私達は適当に街を回ってみるよ」

「新しい街に着いたらとりあえず観光だよねー」

 

 そういう訳で俺とひめひめは街の観光に繰り出す他のメンバーと別れ、ティアモ並びにアマゾネス三人娘と一緒にこの<アンティアネラ>の長……アマゾネス達の長であるという族長に会いに行く事になったのだった。

 

 

 ◇

 

 

「……着いた。事前に連絡した時には此処に族長は居ると言っていた筈」

「大きな屋敷ねー。何かこう独特のエキゾチックな雰囲気がする外観かしら」

「アルターの領主の住まいとかよりも小さいが」

「それは族長が『無駄に広い所に住んでも落ち着かん』とか言って普段は此処に住んでるから。流石に小さ過ぎると見栄えの問題があるからそこそこ大きいけど」

「政治やその他業務時には別の大型施設を使ったりもしますよ」

 

 そうして街中を歩く事暫く、ティアモの案内で俺達は街の中心部にある大きな屋敷の前までやって来ていた……そして自分達のトップに会うと緊張しているアマゾネス三人娘をスルーしたティアモが、まるで勝手知ったる場所の様に堂々と扉の前にいる門番らしきアマゾネスに話し掛けた。

 

「来た、入れて」

「おや、お帰りお嬢。……事情は聞いているからさっさと入りな。後ろの人達もね」

 

 そんなティアモも簡潔に過ぎる言葉に対しても、門番は嫌な顔一つせず俺達を屋敷の中に案内してくれた……そして通されたのは大広間であり、そこには一目でどれも高い実力を持つと分かる数名のアマゾネス達がいた。

 ……そして、その中心に座る外見はティアモ同年代ぐらい見えるアマゾネスの少女──最も、纏う雰囲気は周りの戦士達と比べても尚()()()()()だと一目で分かる人物が座っていた。

 

「お帰りティアモ。それとそっちの<マスター>二人は初めましてだね。……私がアマゾネスの族長である女戦士系統超級職(スペリオルジョブ)女帝(エンプレス)】レイソア・デル・ヒュポレだ。今回は孫が世話になったみたいだね」

「私の祖母。後見た目が若過ぎるのは()()()()()()()()()()()()()()()だから寿命が長いの」

「……成る程、俺はレント・ウィステリア。<マスター>だ」

「同じくひめひめよ」

 

 どうやらティアモは族長の孫だったらしい、俺もひめひめも初耳である……まあ、この屋敷に来た時点で全く緊張していなかったから察せられたが。本人の性格(天然)によるものなのかは判別し難かったが。

 後、俺もひめひめも多少はお偉いさんの相手は慣れているので大して動揺せずに挨拶を済ます事が出来……そんな俺達の反応を見たレイソア氏は『面白いものを見た』と言った雰囲気で笑みを浮かべた。

 

「ふむ、どうやら二人ともかなりの“やり手”みたいだねぇ。……まあそこは後回しにするとして、ティアモは遠征先で何があったのかを話しな。先に通信である程度は聞いているが直接詳しく聞きたいからね。説明を頼むよ」

「ん、分かった。……私達は遠征の途中で夜でも明るくて狩りがしやすい<夜光の森>に行ったんだけど、そこで伝説級<UBM(ユニーク・ボス・モンスター)>【夜行殺断 グリムリープ】に遭遇して……」

 

 そうしてティアモはアマゾネス達による遠征部隊と【グリムリープ】の戦いの一部始終を語り、更に妙に力がこもった口調で途中で俺とひめひめが助けてくれた事を念入りに語り出した。

 ……今までから口数が少ない割に突拍子の無い発言をする印象だったティアモなので少し不安だったが、そこは戦闘に関しては真面目なアマゾネスだからなのか状況説明は普通にしっかり分かりやすく伝えていた。そして時折俺やひめひめ、更にはアマゾネス三人娘の口添えなどを絡めてティアモは【グリムリープ】遭遇に関する話を終えたのだった。

 

「……それで遠征隊は私と後ろの三人を残して全滅したけど、レントとひめひめ達の協力で【グリムリープ】は倒す事が出来た。MVPは私が取って、これが特典武具の【夜天手甲 グリムリープ】になる」

「族長、確かにあの手甲は伝説級特典武具の様です」

「うむ、遠征部隊の壊滅は不運なことだったが、それでも御主等だけでも生きて帰って来て特典武具まで手に入れたのは目出度い事だね。遺族への説明や遺品に関してはこちらでやっておこう」

 

 ティアモの両手に装備された“手の甲部分に黄色の目の様な紋様をあしらった黒い手甲”──【夜天手甲 グリムリープ】を見ながら頷いたレイソア氏は、側に居るアマゾネス達に指示を出してこの一件の後処理を行なっていた。

 

「……うむ、このぐらいでいいだろうね。後は任せるよ。……さて、ウチの孫を助けてくれた上、<UBM>の討伐まで手伝ってくれた以上はあんた達にも何か礼をしないとねぇ」

「後は依頼を受けて私と後ろ三人をここまで護衛してくれた事もあるから報酬は奮発して。……今ちょっと妾になれる様にアプローチ中だから、二人の好感度が上がるように一番良いのを頼む」

「いや、そこで族長にタカるの?」

 

 ……まさか妾云々の話を持ってくるとはな。なんか族長の娘だしどう対応するのが正解なのか……くっ! 南米で見た『アマゾネス女王(クイーン)』と名乗るクリーチャーの姿がフラッシュバックして思考がイマイチ纏まらん! 

 

「カネとコネは使ってこそ意味がある。それに欲しい男がいたらゲスな手段以外の可能な限りの手段を使って落とすべきだと婆様から教わったし」

「カカカ! 確かに昔そんな事言ったかね。……しかし、ティアモもようやく色を知る歳か。その祝いに夫候補と正妻候補殿に渡す報酬にはちょいと色を付けておくか。二人とも凄腕の戦士みたいだし宝物庫にある武具とかで良いかい?」

「ええと、別に構いませんが……」

「いや、別に妾に迎える訳では……」

 

 昔のトラウマによりアマゾネス・リアリティ・ショックの所為でイマイチ対応が鈍い俺とひめひめを見たレイソア氏は、意味深な笑みを浮かべつつ部下らしきアマゾネスの一人に頼んで宝物庫にある武具のリストを用意させていた。

 ……なんか順調に外堀を埋められている様な気もしたが、どうすべきかを考えてる間に部下の人が宝物庫のリストを作って持ってきてしまった。仕事が早い。

 

「ほれ、これが宝物庫の中身の中で渡しても良い物のリストだよ。この中から一つ選んで持って行くと良い」

「功績を成したアマゾネスやこちら側に引き込んで起きたい者に婆様が宝物を渡すのは良くある事だから遠慮無く貰って。性能に関しては超級職の所持品だから申し分無いと思う」

「……まあ確かに、リストを見る限りだとかなりの高性能な物ばかりだが……」

 

 うむむ、いかんな。どうやら完全に向こう側のペースだ……とりあえずひめひめとアイコンタクトで『リストを見るフリをしながらちょっと落ち着こう』という方針を共有しつつ報酬の装備を選んで行く。

 ……思ったより『岩盤を素手で砕きながら追ってくる女王』の事はトラウマになっていたみたいだな。あの頃の俺が()()()()()()()()確実に捕まって酷いことになってただろうし。

 

「……それじゃあ私はこの【幻影樹のティアラ】で良いかしら。MP+20%と《幻術適正》《幻術運用効率化》《MP自動回復》の装備スキルがあるから丁度いいわね。頭部装備は良い物が無くて間に合わせの装備を付けてるだけだから。……魔弓でもあれば予備に貰っても良かったけど無いみたいだし」

「ああ幻術使いがウチにいないから死蔵されてたヤツだね。持っていきな。……後魔弓はな。レジェンダリアでもエルフの一部でしか使ってないマイナーで扱い難い武器だからねぇ」

 

 狙いを定めて引き金を引くだけで使える魔力式銃器や拠点に備え付けで使う事が殆どの魔力式大砲と違い、魔弓は弓を引いて射る技術とある程度のSTRとDEXが必要だからな。魔法職のサブウェポンとしては使いにくいらしい。

 他にも機械技術とのハイブリッドである前者二つと比べると純粋に魔法技術のみで作られている故にMP効率が悪く、魔力式銃器よりマシとは言え生産難度も技術面・コスト面共に高いので、生産技術があるレジェンダリアでもかなり希少な武器なのだとか。

 ……同じMPを使う弓なら魔法矢を放つよりも、普通の矢を射る行為を強化する類の装備スキル持ちの方が強いらしいしな。サイズと発射機構的な問題で同じ消耗品でも矢には銃弾と比べてかなり強力な特殊効果を付与出来るからだとか。

 

「俺は【戦舞の衣(上)】にするか。HPとSPに合計レベル×5の装備補正に、いくつかの《病毒耐性》の装備スキルがあるから丁度良い。下の方は【クルエラン・コア】があるから要らんし」

「合計レベル参照の装備補正は値段に比しての効果が低いからあまり人気が無いが……【勇者】の同類であるアンタならそっちの方が良いか。……後、何に萎縮してるのかは分からないがこの報酬はあくまで<UBM>の討伐を手伝った事に対する物だからね。アンタらとティアモの色恋問題には関係無いから、アタシらアマゾネスはその辺りあくまで自己責任だしねぇ」

 

 そうして俺達が報酬を選び終わるとレイソア氏は部下のアマゾネスを宝物庫に向かわせた後、何かを見透かしたかの様にそう言った……うん、だいぶアマゾネス・リアリティ・ショックも落ち着いたしな。

 ……うん、デンドロのアマゾネスと現実のアマゾネスは別物別物。何故なら普通に会話とコミュニケーションが成立するから。

 

「まあアンタ達二人が夫婦なのは見れば分かるし、ティアモを妾に迎えるかはそっちで決めてくれ。別にフった所でアマゾネスとしてとやかく言う事は無いからね。……まあ、種だけ貰って現地妻扱いとかでもお互いが納得するなら構わないよ(笑)」

「ムムム……出来ればちゃんと認められて側室になりたいけど……」

「いや流石にそれはちょっと……そもそも<マスター>との子供とか難しいでしょう。システム的に」

「まあログアウトがあるからこっちで子供を産むのは難しいでしょうね」

 

 ログアウトやデスペナルティになった時点で『<マスター>の身体から離れた体液』の類いも消滅するからな。今まで相手してきたPKを返り討ちにした時も飛び散った血や内臓も消えてたし。

 

「ああ、その問題ならこっちでも確認してるよ。既に<マスター>と“深い仲”になったアマゾネスも居るからね。今もこっちの専門家に何組かの有志の協力、そんで妊娠や出産に纏わる<エンブリオ>持ち<マスター>の協力で、現在は<マスター>とティアンの妊娠を可能とする技術を研究中だ。……とりあえず着床から妊娠までの時間を早めるか、体外に出た体液を保存する手段が出来ればいけると思うんだけどね」

「いやそこまでするのか?」

「戦闘・恋愛・妊娠・出産に於いて私達アマゾネスは常に全力。それらに対する各種福祉支援などでもこのレジェンダリアで最も力を入れている」

「……妊娠出産に纏わる<エンブリオ>って……まあ居るか、レジェンダリアだし」

 

 この辺りは基本女性しか居ないアマゾネス特有の傾向みたいかね……まあそんな感じでレイソア氏やティアモと雑談をしている内に報酬を取りに行ったアマゾネスの人が戻って来たので、それぞれの報酬を受け取った俺達は屋敷を後にする事となった。

 

「よし、報酬も貰ったし婆様との顔合わせも終わったから次はどうする? この麗都のオススメデートスポットでも回る?」

「やれやれ、はしゃいじゃってまあ……悪いけどこの子の事を宜しく頼むよ。妾にするでも現地妻にするでもフるにするでもそっちで決めてくれれば良いし、私はそれについて何か言う事は無いけど、こんなでも孫だし色々と面倒な事情を抱えてるからねぇ。関係をどうするにしても出来れば仲良くしてやってくれ」

「まあそのぐらいなら……」

「……これって外堀を埋められてるだけじゃないの?」

 

 ……それを言うなひめひめよ。正直言ってティアモは今までにないタイプだから、前述のARS(アマゾネス・リアリティ・ショック)とかもあって微妙に距離感を測りかねているんだよな。

 まあとりあえずお互いに話し合って良い感じに軟着陸させるから……アンタの性格だとそれでなぁなぁになって面倒を見る事になりそう? まさかそんな……。




あとがき・各種設定解説

レント&ひめひめ:ARS(重度)
・アマゾネス組にかなり押されていて状況に流されっぱなしだが、これはARSのせいで精神面が本来のパフォーマンスが出せていない事が大きい。
・まあそれ以外にも『まあ別にこのぐらいなら自分達の関係が変わる事は無いよね。今までのアレな連中と比べればティアモは“何の問題もない”レベルだし』とお互いに思ってるのも原因。

ティアモ:とりあえず外堀は埋めたな、よしっ!
・どれだけアプローチしても二人の関係が全く揺らがない事は察してるので、上手い感じに妾として認められる様に二人の好感度を稼ぐ方向へ頑張ってる。

レイソア:孫の行動には内心苦笑い
・まあ長年生きてきたが故の観察眼から二人は悪人という訳でもなさそうと判断し、その初恋の結果が如何あってもティアモにとってはいい経験にはなるだろうと放置する方針。
・ちなみに【女帝】は吸血氏族の【鮮血帝】と同じ様に『このジョブに就いている者がアマゾネスの代表』と議会で定められており、その二の舞にならない様に就職条件を満たした者を常に確保する様にしている。
・そしてジョブとしての特性は女戦士系ジョブの正統強化的な味方の女性に関係するバフ効果で、条件が整っていれば“個人戦闘型<超級>並みの戦闘能力”を発揮出来る模様。
・それに長命種の血を引くお陰で得た長年研鑽し続けた技術と、様々な経験を合わせる事でレジェンダリアでも最強クラスのティアンになっている。

今回の報酬:両方とも値段的には最低でも千万リル以上はする模様
・【幻影樹のティアラ】は【ハイ・イリュージョン・トレント】の素材などを使って作られた一品で、装備スキルは幻術の効果を五割増し、消費MPを二割減するぐらいの効果がある。
・【戦舞の衣(上)】は本来なら割合強化の装備補正をレベル基準に弱体化させた改造品で、その分装備スキルが病毒系状態異常全てに対応する《病毒耐性》になっている。
・ちなみに【戦舞の衣(下)】というズボンも存在し、こちらはAGIへの補正にHP・SPの回復速度上昇と制限系の状態異常への耐性スキルがある模様。
・他にも低レベルだが《破損耐性》や《盗難耐性》という補助スキルがそれぞれ適した感じに付いていたり、単純な防御力とかも結構な物なので装備レベル制限も高い。


読了ありがとうございます。
そういう訳で新章『レジェンダリアのアマゾネス』編を開始します。これからもボチボチ投稿していくので感想・評価・誤字報告などお願いします。
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