□<群獣の森> 【
ここは<麗都アンティアネラ>北部にある獣系モンスターが群れをなして生息している<群獣の森>、そこでは木々の間を飛び回りながら連携して襲い掛かって来た【フォレスト・ウルフ】の群れを三人のアマゾネス達が迎え撃っていた。
『『『GURURUUUUAAAAAA!!!』』』
「シャニー! そっち行ったよ!」
「オッケー、カチュア。エスカ、カバー宜しく。《ピンポイントアロー》!」
「分かった! 《シールドバッシュ》!」
両手に持った双剣で【フォレスト・ウルフ】を斬り払った【
……彼女達三人はそれぞれ下級職四職目の合計レベル150強ぐらいだが、幼い頃からアマゾネスとして訓練を積んでいるだけあって下級モンスターとは言え優れた連携を見せる【フォレスト・ウルフ】達と互角に戦えている。
「……うん、レントのバフ混みとは言え森の中ではそれなりに厄介な【フォレスト・ウルフ】の群れに対応出来るとは、あの三人も大分強くなった。これもレントの経験値増加バフと各種援護のお陰だね」
「まあ散々レベリングしたからステータスは上がるし、技量は三人とも元々十分なものがあったからな。援護に関しても以前騎士団で受けたクエストでその辺りのコツは掴んでる。ヤバそうなモンスターを先に始末するから」
「レントの【ルー】はパーティーメンバーにも効果を発揮するのは強いわよねぇ。私はカンストしてるから恩恵を受けられないけど」
そんな彼女達の戦いを俺とひめひめとティアモはそう評価しつつ後ろから眺めていた……今回俺とひめひめが彼女達と一緒に狩りを行なっているのは、以前の【グリムリープ】騒動のせいで本来の目的であるレベリングが出来なくなっていたカチュア・シャニー・エスカ三人の修行に付き合ってくれと依頼されたからだ。
尚、この<獣群の森>は都市周辺の狩場の中で一番モンスターの平均レベルが低いので、俺の《長き腕》込みでなら彼女達のレベリングには丁度いいと選ばれたのだが、レジェンダリアの特殊環境で生きているだけあって此処で群れを構成する獣型モンスターは高い連携精度と地形を利用する知恵を持っている事が多く……。
『『『GURURURU……』』』
「おっと群のボスだね。【
「成る程な……《
この様に亜竜級クラスが群れを作って行動する事も無くは無いのだ……アンティアネラ周辺にある他の狩場と比べると平均レベルは低いな分、群れによる連携とか協力を行うモンスターが多いのが此処の特徴なのである。
まあ、麗都周辺の狩場の中では特殊な自然環境も少なくモンスターの最大レベルも亜竜級なので、合計レベル100以上の者にレベリングと戦闘経験の獲得をさせるには丁度いい場所なのだとか。勿論事故防止に護衛を付けて。
「あの連中は私とレントで対応する。丁度【
「はいはい、私はもうカンストしてるし経験値泥棒にならない範囲で援護するわよ」
「経験値はいくらあっても足りん。特に俺は」
『『『GUUUUAAAAAAAAA!!!』』』
そうして俺達はアマゾネス三人娘をサポートしつつ、襲いかかって来た【フォレスト・ウルフ】の群れを迎え撃つ事になったのだった。
◇
「……あー! 終わったー!」
「はいはいお疲れ様。ほい《フィフスヒール》」
「ありがとうございます、レントさん」
「やっぱり回復魔法が使えるメンバーがいるといいね。アマゾネスって殆どが物理的なジョブにしか適正が無いから魔法職貴重だし」
そういう訳で亜竜級含む【フォレスト・ウルフ】の群れを倒した俺達は、負傷した三人娘を治療しつつモンスターの気配がしない場所で一休みしていた。まあ今更亜竜級三体ぐらいなら敵では無いしね。
だいたい【亜竜森狼】の一体はティアモが正面から挑んで斬り伏せ、もう一体はクルエランが押さえ込んだ所をヴォルトに踏み潰され、最後の一体は俺が普通に倒したって感じだった。三人娘の方もひめひめの援護によって多数の【フォレスト・ウルフ】を倒して大分レベルが上がってるから、レベリングとしては一先ず成功と言っていいかな。
「しかしレントの<エンブリオ>、亜竜級を倒しただけでレベルが上がるのは凄いね。お陰で【竜戦士】のレベルも上がってもう一度500レベルになれそう」
「亜竜級以上は【宝櫃】のリソースがまるごと経験値になるからな。ドロップするであろうアイテムの質で変化するが、平均して獲得経験値は二十倍から三十倍以上になるみたいだから」
「ふえー、凄い」
「これが<マスター>……」
「ひめひめさんの弓の腕も凄かったし……」
「それは自前の技術よ」
なので《長き腕》を使っている状態なら雑魚の殲滅よりも亜竜級モンスターを何体か倒す方が獲得経験値の効率は良かったりする。亜竜級を安定して倒せる実力がある事が前提だし、純竜級までになると倒すのに手間取るから時間当たりの効率が悪くなるけど。純竜以上ならドロップアイテムの方が欲しいのもあるから。
「そういえばティアモ、【竜戦士】ってどういうジョブなんだ? 余り聞いたことの無いジョブだから気になったんだが」
「ん……この【竜戦士】ってジョブは
「じゃあ、ティアモの角や尻尾もドラゴンの物なんだ?」
「それはそうだけど、この角と尻尾は“生まれつき”」
……ふむ、確か【大死霊】や【鬼武者】など種族が変わるジョブは幾らか存在するし、【竜戦士】もその類ならアマゾネスに竜の角と尻尾が生えてもおかしくは無いと思ったが……生まれつきという事は、成る程。
「つまりティアモは
「うん、そう。……私は古代伝説級<
「ふむ、どうりてドラゴンとしての血が濃いと思ったら……ちなみにドラゴンは殆どの他種族と交配出来るから人間とのハーフもおる。またその場合の人間範疇生物とモンスターのどちらかで生まれるかは基本的に母体の種別と同じになる傾向があるのじゃ」
俺や妹達が色々と質問するせいですっかり解説役が板について来たネリルの言によるなら、ドラゴンの<UBM>と人間の母親との間に生まれた者は種族:ドラゴンの人間範疇生物になるって事か……しかし【ドラグソード】とはティアモが持っていた特典武具の名前では……?
「……うん、この【竜剣飾 ドラグソード】と【剛竜剣】は父さんが残してくれた形見みたいな物。……かつてレジェンダリアを襲った神話級<UBM>【滅光核魔 ガンマレイザー】と両親が戦った時に父さんが私を庇ってね。そいつ自体は援軍に来た祖母達アマゾネス達が倒したけど両親を始めとする多くの戦士が犠牲になって、どうもその時に私を庇った傷が致命傷になって父さんが死んだからMVPに選ばれちゃったみたい」
「……つらい話なら話さなくても良いが。別に少しジョブについて気になっただけだし」
「別にもう割り切ってるし。後は良いタイミングで過去話をすればレントの同情を引けるかもって祖母が言ってた」
頭に付けた髪飾りを撫でながら神妙な表情で辛い過去を語るティアモに俺は少し申し訳ない気持ちになった……俺はただ珍しいジョブについて聞きたかっただけだったんだが。
それと後半の発言に《真偽判定》は反応せず、ひめひめは『アレはしおらしくしてるだけの演技ね。目の奥では獲物を捕らえようとしている雌の人が宿ってるわ』とか言ってるけど。男の俺には分からない世界だなぁ(白目)
「私としても好きになった人に自分の事とか知ってほしいし……まあそれより【竜戦士】の事だけど、このジョブはアマゾネスの里にあった先々期文明の資料に情報が載っていたジョブ。確か当時のアマゾネスと交流があった
「ふむ、黄河の王族が古龍の血を引いていると聞いた事があるが似たような種族なのか」
これはリアルで見たデンドロWiki・黄河支部サイトからの情報だが。ネリルも先々期文明時に居た古龍が戯れに人間と子を成したと母親から聞いたと言っていたし。
「おそらくはね。文献にも『高位の竜の血を引く部族』とか書かれてた。それ以上は断片的に情報しか残ってなかったし、今のレジェンダリアにそんな種族は居ない以上はもう絶滅したらしいから詳しくは分からないけど。……それで肝心の【竜戦士】なんだけど、運良くその文献に一部の就職条件が載ってたから色々試行錯誤して転職出来たの。具体的な条件は『合計レベル400以上』『亜竜級以上のドラゴンのHPを50%以上削って討伐』『人間と従属関係に無い種族がドラゴンのモンスターから【竜戦士】への推挙を受ける』ってものだったけど」
「それは上級職としてはかなり厳しい条件だな、特に三番目」
所謂『レア上級職』ってヤツか。一番目と二番目なら<マスター>など実力のある人間なら条件を達成するのは可能だろうけど、三番目に関しては知恵を持った人間に友好的なドラゴン系モンスターへの伝手が必要だから、<マスター>の間でも知られていないのは当然か。
「まあ『竜を打ち倒して竜に認められた者がつく事が出来る』とか文献には書かれてたし。ちなみに私の推挙は文献を見た父さんが残しておいてくれた『私を【竜戦士】に推挙する』書状で満たせた。後、父さんが生きてる時に従兄弟の何人かを推挙したけど就職は出来なかったから、多分ティアンで適切のあるのは私みたいなドラゴンの血を引く者だけとかだと思う」
「万能の適正を持つ<マスター>なら就けるだろうが、ドラゴンの推挙なんて貰えるヤツはほぼ居ないだろうからな。従属してないのが条件ならテイムモンスターやガードナーでも無理だから<マスター>が就くのも難しいだろう」
「そんなレアな上級職なら強いのかしら? ここまで聞くとどんな能力があるのかちょっと気になるわね」
まあ確かにレア上級職の情報は気になるな。最初は軽く聞くつもりだったのに話が妙に重くなったけど、ここまで聞いたなら情報を得ておかないとそんな気がする……なんて思いつつティアモの方を見ると、彼女はひめひめの疑問に対して何故か少し困った様な表情をしていた。
「うーん、上級職としては【竜戦士】も別に弱いジョブじゃないんだけど……初めから使える固有スキルは種族をドラゴンに変えて生命力や身体能力を向上させるパッシブ《
「最初から奥義が使えるのね。しかしそれだけの効果がある複合バフって上級職にしては強すぎない?」
「おそらく上級職のスキルの範囲内になる何らかのデメリットがあるんだろう。消費コストか個々の効果の強度辺りで」
まあ、上級職スキルのリソース範囲内でそんな効果を盛り合わせにすれば、効果の何処かを削るかコストを法外にするかしかないからな……その俺の予想を裏付ける様にティアモは軽く溜息を吐きながら首をすくめつつ話を続けた。
「うん当たり。《竜闘気》の個々の能力の強化度合いは上級職の奥義としてはかなり低い、特定ステータスを強化する事に特化した下級職のスキルぐらいなレベル。……まあ、他のスキルが《竜闘気》との併用前提でSPを消費して強化する効果範囲を偏らせるヤツばかりだから、単体運用は想定していないみたいだけど。STR強化特化の《ドラゴンアーム》とか物理防御強化特化の《ドラゴンスケイル》とか」
「聞く限りは色々な状況に対応出来る強そうな上級職に思えるが」
「最も《竜闘気》は使っている間に少なくないMPを消費するから生まれつきステータスの高い私でも長時間の維持が出来ないし、派生スキルも燃費が良いとは言えない上に似たような特化型上級職のスキルと比べると効果が低いし。加えて【竜戦士】自体のステータスもDEXとLUC以外がバランスよく伸びる所為で個々の数値は上級職にしては低めだから、バランス良いんだけど個々の分野に於いては他の特化型上級職の方が強いんだよね」
「まあ、バランス型ジョブの悲哀ってヤツね。対応力が高いのは良いけど、いざと言う時には特化型の方が使いやすいって感じ」
成る程、確かに【竜戦士】は弱くは無いジョブではあるだろうが、ジョブ枠が少ない上級職ともなれば『切り札』になり得る奥義とかがある方が優先されるか。弱くは無いが就職条件の厳しさに釣り合った性能かどうかと言われると微妙って感じに思える。
「父さんが残した推薦状で転職出来た形見みたいなジョブで、転職条件も異様に厳しいから正直もっと強いと思ってたんだよね。……いや、弱くはないのは分かってるし、ドラゴンである私には何となくだけどスキルが使いやすく感じるから相性は悪くないとも思うんだけど……私は父さんや母さんみたいに強くなりたいから、ジョブの構成にもちょっと悩んでる」
「まあ、苦労して取った装備やジョブが思ったより強くないとかは(ゲームでは)よくある事だし余り気にしなくても良いんじゃない? 決して弱くはないんだから」
「それに希少なジョブなら超級職は空いてるだろうし取得を目指せば良いだろう。多分<マスター>含めてもライバルは少ないと思うぞ」
「やっぱり強くなるには
まあ、
……何処をどう考えてもレベル制限があるゲームのシステムで『レベルの上限が無い』と言うのはブッ壊れなんだよなぁ。それが先着一名様限定とか普通のゲームなら暴動間違いなし。
「よし、過去話や雑談で好感度を稼いだ事だしそろそろレベリングの続きをしようか。空気を読んで黙ってくれてたそっちの三人娘もそろそろ行くよ」
「「「はーい」」」
……なんか俺もひめひめも順調に絆されてると言うか攻略されている気もするが。まあ彼女達は友人として付き合う分なら悪い相手でもないし別に良いかな……そんな事を考えつつ、俺は引き続きレベリングの為のモンスター狩りを続けて行くのだった。
あとがき・各種設定解説
ティアモ:順調に好感度稼ぎを実行中
・両親に庇われた事を気にしていない訳では無いが、そこはアマゾネスらしく『両親よりも強くなる事が親孝行』と考えて割り切って自分を鍛えている。
・古代伝説級<UBM>の子供だけあって現在のレベル0の状態でもHP・MP・SPが4000代、STR・END・AGIが500代はあるなど人間範疇生物としては破格のステータスを持っている。
・自らの過去や想いに関してはまだ話していない事も幾らかあるが、そこは好感度稼ぎの状況に応じて段階的に語った方が効果があるかなと思っている。
【竜戦士】:戦士系統派生上級職
・種族がドラゴンになる《竜血炉心》や《竜王気》に近似した《竜闘気》を運用するなどでドラゴンの力を身に纏うレア上級職。
・《竜血炉心》は竜の生命力として自然治癒力上昇や状態異常耐性の上昇、更に基本物理ステータスを中心に補正がかかる……のだが、こちらも上級職のスキルに多様な効果を詰め込んだ所為で個々の補正はかなり低い。
・《竜闘気》の強度は消費MP・スキルレベル・自身のステータスによって決定されるが、やはり上級職のスキルなので《竜王気》と比べると効果は低い。
・とは言え《竜闘気》使用時の派生スキルは一通りの状況で使えるものが揃っているので、汎用性は前衛系超級職の中でもトップクラスと普通に強いジョブでもある。
・それでも酷評されるぐらいにそれぞれの効果が低いのは、単に最強の生物種である“ドラゴン”の力を上級職の器では再現しきれないからでもある。
・<マスター>以外だとドラゴンの血を引く者しか適正が無く、西方のジョブだったので昔のレジェンダリアに住んでいた竜人種が絶滅してからは就ける者がおらずロストしていた。
【剣竜王 ドラグソード】:実力は古代伝説級の中でも最上位
・角により攻撃を得意とする【
・【剣竜】は基本的に群れを作らず単独で放浪しながら自身でもある剣と剣技を磨く求道者的性質があり、その例に漏れず彼も群れを率いてはおらず単に種の中で最も強いから竜王に選ばれたタイプ。
・能力は《竜王気》の応用であり特定武具と同じ『剣で魔法を切って攻撃力上昇』だが、純粋性能型古代伝説級のステータスとそれに比例して性能を上昇させる愛剣、そして修行の果てに手に入れた超級職ティアンレベルの剣技によって神話級一歩手前ぐらいの実力を持っていた。
・その道中にアマゾネスの【剣姫】アミティアと遭遇して死闘を演じたのだが、その末に向こうから実力を見込まれてアマゾネスの強者好き性質にクリーンヒットして惚れられてしまい、その後の積極的なアプローチにより陥落して夫婦となってしまった。
・まあ本人としては長く寿命の中での一興であるとしており、更に自身を上回るアミティアの剣技に惚れ込んでいたのもあって夫婦仲も良く、生まれたティアモも『子供が自分の剣を得るまでは育てる』という【剣竜】の性質からちゃんと面倒を見ていた。
・だが、凡ゆる生命を滅ぼす核分裂光を無尽蔵に連射する神話級【滅光核魔 ガンマレイザー】と遭遇してティアモを庇って致死のダメージを負い、その後は妻と共に剣士としての意地半分親としての意思半分で決死の戦いを挑んで援軍に来た【女帝】達の協力もあって相打ち気味に討伐してみせた。
・また、死する直前に自身の半身である剣を【剛竜剣】としてアイテム化させて娘に残しており、その際にリソースも幾らか削れたので特典武具の【ドラグソード】はギリギリ古代伝説級下位程度になっている(装備補正が無い所やスキル使用に条件がある所など)
読了ありがとうございました。
ちなみに【ガンマレイザー】の特典武具はトドメを刺して生き残った【女帝】が保有しています。強すぎるので滅多に使わないですが。