※【魔弓手】系統のスキル名が分かりにくいので全面的に変更しました。
□<巨妖樹の森> 【
ここは<麗都アンティアネラ>南西部に位置する<巨妖樹の森>、何でもかつては巨人族の住処である肥沃でレジェンダリアでも珍しく安定した土地だったのだが、彼等と妖精族との資源と住処を巡る争いがあった際に何らかの禁術系の魔法具が使われた事によって汚染され生態系が変動、今は亜竜級から純竜級の凶暴なモンスターが住み付き危険度の高い自然現象もよく起きる危険な場所になってしまったそうです。
しかし、最近この森に【アフォレスト・マギロード・ゴーレム】と言う自然魔力を吸収して自身の配下であるゴーレムを生産、更に周囲の魔力・自然環境を自分に優位なものに変えるモンスターが目撃されたのです。コイツは放っておくと生態系を大きく乱すため特級の危険生物に指定されていて、今回も麗都にいた<マスター>・ティアン問わずに討伐クエストが発令されたので私達も参加する事にしたというのが現状ですね。
「《フレイム・フィスト》《正拳突き》!」
『GIGIGI……《Fire Regist》《Kinetic Regist》』
そして今現在私は全長5メートル程の黒い樹木で出来たゴーレム型モンスターである【プランティング・ブラックゴーレム】に炎を纏った拳を叩き込む戦闘中です。コイツは【アフォレスト】が作り出して分体ゴーレムの一体で、既に似たようなゴーレムがこの森に多数目撃されているとの事。
しかしながら、ゴーレムの使った炎熱防御と物理防御の魔法で威力を減衰させられたので、相手がHP・END型である事もあってさしたるダメージを与える事は出来ませんでした。
『KIKIKI……《Plant Repair》』
『GUUU! 《Wood Strike》!』
「チッ、回復されましたか」
そのダメージも後方にいた【プランティング・ホワイトゴーレム】の回復魔法で治されてしまい、それで万全の状態となった【ブラックゴーレム】の太い木の幹の様な拳が唸りを上げてこちらに迫り来ました。
……まあ。AGIは低いし単に腕を振り回しているだけなので、紙一重で回避しながら腕に触れて《回し受け》を使いその運動ベクトルを捻じ曲げて転ばせてやりましたが。
「……姉様、ステータスを借ります。ミメ」
『オッケー《
『分かったよ! そっちも頑張って……ねっ!』
とは言え、今の私のステータスでは倒しきれないので向こうで別の【ブラックゴーレム】と戦ってる姉様のステータスをコピーしつつ、奥義《双魔拳》により《フレイム・フィスト》の炎熱を左手に移動させ、右手には【バイオハーデス】から引き出した魔力を使って極寒の冷気を纏わせます。
「敵が防御するなら、それ以上にパワーを上げて物理で殴ればいいのです。《瓦割り》」
『GUUU⁉︎』
そのまま私は超級職になった事で二万以上となった姉様のSTRと木石を砕く事に特化した格闘スキルの合わせ技で倒れたゴーレムの胸部に一閃、その硬質な樹木で出来た表皮を粉々に砕いた後に纏わせていた冷気によって凍結させて再生を阻害します。
……おっと、凍らせた奥にゴーレムのコアが見えましたね。追加で左手の炎熱拳を凍結した部分に叩き込んで一気に砕いてしまいましょう。
『GUU……』
「よし、私は後ろの回復役を潰しに行きますので他の足止めは任せました!」
『了解! ……はい防御とか無駄ァ! 《インフェルノ・ブレイク》!』
「分かったわ。向こうの魔法役はこっちで抑えるから……《ヴァイパー・アロー》《光炎之矢》!」
「頑張ってねミュウちゃん! 《ディバイド・ブレード》!」
コアを破壊して【プランティング・ブラックゴーレム】を倒した私はパーティーを組んでいた他のみんな──防御魔法がかかった【ブラックゴーレム】を圧倒的なステータスと防御無効の固有スキルによって殴り倒している姉様、ゴーレム軍団のリーダー格である【プランティング・ワイズマンゴーレム】の使う攻撃魔法を躱しながら反撃に光熱の魔法矢を放つひめひめさん、自己強化を掛けながら【ブラックゴーレム】の一体と斬り捨てているアリマちゃんの三人に声を掛けておきます。
あの三人なら他のゴーレム達相手に遅れをとる事は無いでしょうからね。私は早急に回復・支援役である【ホワイトゴーレム】を潰すべきでしょう。
『KIKI……《Earth Wall》!』
「む、足止めの為の壁ですか」
ですが【ホワイトゴーレム】も自身が狙われていると判断したのか、私との間に地面を隆起させた壁を作り出して足止めを図ろうとしました……砕くのは可能でしょうが隙が出来ますので飛び越えましょう。先日<魔法少女連盟>さんから丁度いい装備を買いましたし。
「起動せよ【エアロ・タラリア】《エアロジェット》」
そう言った直後、私は足に履いた銀色の羽飾りが付いた脚甲の足裏からジェット噴射の様な暴風を発生させて反動で上へと飛び、目の前の土の壁を飛び越えた所で身体を反転させつつ《エアロジャンプ》の装備スキルで空を蹴り【ホワイトゴーレム】へと突っ込みました。
この【エアロ・タラリア】は<魔法少女連盟>の生産班の人達が『魔法少女なら空を飛ぶべきだろ、常識的に考えて』という目的の下で、所属している魔法少女の一人“
……まあ、生産技術や運用に際してのコストの関係で飛行能力の装備スキルを再現出来ず、代わりにジェット噴射による加速と空中跳躍のスキルを入れたが『これ飛行じゃ無くて跳躍じゃない?』『魔法少女って物理ステータス低めなのが多いから跳躍だと』『ジェット噴射であらぬ方向へと飛んで壁や地面のシミになった件』という理由で余り普及はしなかったモデルらしいです。
『KIII⁉︎』
「遅い《フィストバースト》」
慌てて【ホワイトゴーレム】は逃げ出そうとしますが姉様のステータスを得ている私にとっては遅過ぎる動きだったので、そのまま左拳を頭部に叩き込みながら纏っていた炎に追加のMPを注ぎ込んで炸裂させて上半身を吹き飛ばして撃破しました。
……最も前衛型の私にとっては空中跳躍が出来る装備は有り難いですし、コストとして要求されるMPも【バイオハーデス】があれば考慮する必要がなくなります。それに『狭い場所では使わないでね』と言われたジェット噴射機構も、少し練習すればレジェンダリアの木々の間を飛び回れる程度には扱える性能はあったので私的には大満足です。頑丈なので蹴りに使っても平気ですし。
「……さて、こっちは倒しましたが……」
『いい加減にシツコイ! これで五体目だよ! 《インパクト・エクスプローダー》!』
別の方向では姉様が【ブラックゴーレム】の胸部を殴り付けた途端、まるで
超級職になってレベルもある程度までは上がった姉様の実力はこのパーティーの中でも頭一つ抜けており、<エンブリオ>の補正も合わせての高い物理ステータスと本人の
『ひめひめさん! 加勢するよ!』
「助かるわミカちゃん。あの【ワイズマン】自分も純竜級な上、防御魔法や地属性・風属性の攻撃魔法を使って来るからかなり強いのよね。《ピアースアロー》《閃光之矢》!」
『GUGIGI……《Shine Regist Wall》《Aero Javelin》!』
ひめひめさんが貫通力を強化した光の矢を【ワイズマン】に向けて放ちますが、相手は光属性防御の障壁を展開してダメージを減らしつつ反撃に風の槍を複数放ちました……広範囲を攻撃する亜音速の槍を避けきれないと判断したひめひめさんは迷わず特典武具による光の壁を展開して凌ぎ、姉様は直感と亜音速超えのAGIによって回避しました。
……まあ、今まで純竜級の【ワイズマン】相手に
「そう言うわけで私はアリマちゃんの援護に行きますか。なぁに、今の姉様のステータスがあればそこらの敵など問題にはなりません」
『他人の褌で相撲を取るってヤツかな。僕の能力はそう言うことに特化してるんだけど』
「それより出来れば援護急いでほしいよ! コイツら物理耐性があるのか剣が効きにくくて!」
おっと、今はアリマちゃんの援護に急がねば……今回はちょっと長期的なクエストであり複数のパーティーが参加していて乱戦の可能性もあるので、彼女の広域精神汚染は封印して狂化スキルと剣技だけで戦って貰ってますからね。どうも少し相性が悪かったようです。
◇
「よし! やっと片付いたよ〜」
「お疲れ様ですアリマちゃん。……どうやら姉様達も終わったみたいですね」
それからアリマちゃんが戦っていた【ブラックゴーレム】を私が残っていた《フリーズ・フィスト》に《フィストバースト》を上乗せした上で凍らせて砕いた後、姉様達の方もリーダー格の【ワイズマン】を倒し終えた事で一先ず戦闘は終了となりました。
『とりあえずこれでここらのゴーレムは全滅だね。こっちのドロップは【賢樹霊の宝櫃】か、中身は期待出来るかな?』
「実力的には純竜レベルはあったからね。他もそれなりに強くて連携も取れてたし、超級職のミカちゃんとそのステータスをコピー出来るミュウちゃんがいなければもっと苦戦してたかしら」
そのまま私達は慣れた様子でテキパキとドロップアイテムを回収してアイテムボックスへと回収していきます。まだここら辺は不意打ちや奇襲の可能性もある危険地帯ですし、アイテムの分配に関しては街に戻って落ち着いてからって事になってます。
……今回は信頼出来る身内だけのパーティーなので問題無いですが、これが野良パーティーだと偶に持ち逃げとかも有るんですよねって思いつつ回復用のポーションを煽る私でした。
「しかし情報によると【アフォレスト・マギロード・ゴーレム】は純竜級でも高位のモンスターではありますが、それでも生産出来るゴーレムは亜竜級が最大だと聞きました。ですがあの【ワイズマン】の実力は純竜に届いて他のゴーレムに指示を出せるレベルでしたね」
『ふむ、偶に良くある何時ものイレギュラーかな? そこまで“危険”な感じはしないけど』
「それは下調べ不足ね。ティアモに聞いた話だと【マギロード】は周囲の自然魔力を使って魔法行使や眷属生成を行うけど、稀に多量の自然魔力を使って眷属を強化するスキルを持っている個体もいるらしいわよ」
「成る程〜」
同じ種族のモンスターでも取得しているスキルが違うのは普通にある事ですからね。そもそもモンスターのスキルはその個体が積んできた経験と生まれ持った資質でどんなものを覚えるのか決まるそうですし。
……しかしティアモさんですか。兄様の妾になりたいとか言うとんでも宣言をぶっ放したアマゾネスの女性……今回も『レベリングクエストの続き』と言う理由で他のアマゾネスのティアンと一緒に兄様とパーティーを組んで、私達とは別行動でクエストに挑んでいるんですが。
『と言うか、ひめひめさんはお兄ちゃんとティアモが一緒にパーティー組んで平気なの? 私達はつい最近まで知らなかったけど、長く付き合ってる恋人同士なんでしょ?』
「カンストしてる私が組んでもレベリングの邪魔だし、向こうには何故か面白がって付いてきた【女帝】レイソア氏もいるから戦力的には妥当な振り分けでしょう? 私の見立てだと【マギロード】ぐらいならレイソア氏一人で始末出来るわよ」
「いえそう言う事ではなく……」
「ああ、妾云々に関しては貴女達が気にする事ではないわよ。……
「……ふえぇ……これがオトナの恋愛……」
……おおう……ここまではっきりと宣言されると私も姉様も何も言えませんね。ごまかしや虚勢では無い事が一目で分かるぐらいに堂々としていますし……無駄に気を回そうとした私や姉様の余計なお世話でしたか?
「まあ、貴女達が気を回す必要は無いわよ。少なくともこの程度の事なら私もレントもリアル側の人間関係とかには影響出ないし……全員、戦闘体勢、敵よ。それも
『おっとそうみたいだね。ちょっと危険を感じる』
「ですね、さっきからこっちに視線が来てます……《人間探知》」
「……あ、はい!」
……と、そうして駄弁っていたら唐突に何者かがこちらに悪意を向けた嫌な気配を察知したので、私は戦闘体勢に入ると共に【ブラックォーツ】の索敵スキルを使います……ふむ、ひめひめさんの言う通り十二名二パーティー分の人間の反応がありますね。
「……10時から3時の方向に計12人の人間を確認。こちらを包囲する動きですね」
「それで姿が見えず音も聞こえないとなると……【
小声で指示を兼ねた《詠唱》を終えたひめひめさんは私が言った方向に向けて威力強化と指向性を持たせた幻術を阻害する魔法を放った……すると、私達から三十メートル近く離れた地点でこちらを包囲しようとしている者達──左手に紋章があるので<マスター>──の一団が姿を現しました。
「なっ⁉︎ 幻術が!」
「落ち着け! 既に包囲は完了している!」
「そうだ! 今こそ我ら<メスガキわからせ隊>による復讐の「死ね《光剛成》《アクセルアロー》《ヴァイパーアロー》《爆裂之矢》」
それに動揺した彼等が何かしようとした瞬間、まるでゴミを見るかの様な目になったひめひめさんが瞬時に【アマテラス】で強化された五本の矢を放ちました……それらの矢は五方向に分かれて複雑な軌道を描き木々の間をすり抜けながら彼等の内の5名へ見事に命中、その周りにいた連中を巻き込みながら大爆発を起こして彼等に大打撃を与えました。
……しかし<メスガキわからせ隊>と言う単語はどこかで聞き覚えが……ああ、確かLSさんが言っていたひめひめさんとアリマちゃんを狙ったPKクランの名前でしたね。
「つまり倒しても問題ない相手と言う訳ですね《心頭滅却》《賦活の息吹》《エンハンスフィスト》」
『了解《天威模倣》。対象はミカで』
「しかしPKって姿を消しての奇襲が多いよね。流行ってるのかな?」
まあ、この世界の戦闘──特に千差万別の<エンブリオ>を持つ<マスター>相手の戦闘では相手に何もさせずに倒す『先手必殺』が基本ですからね。姿を消しての不意打ちはそう言った意味でも有効な戦術ですからみんなやってるんでしょう。
……故に、これから私と姉様が行うのもひめひめさんの先手で浮き足立った<メスガキわからせ隊>の連中の数を可能な限り減らす事なんですけどね。誰がどんな
あとがき・各種設定解説
【アフォレスト・マギロード・ゴーレム】:常時討伐対象上級モンスター
・原作に出てきた【アフォレスト・キング・ゴーレム】の亜種でありレジェンダリアの環境に適応して高密度の自然魔力を運用するスキルを覚えた強化種。
・生み出されるモンスターや使用する魔法も自然魔力を利用した強力なものになっている代わりに、レジェンダリアなどの自然魔力が濃い場所以外ではまともに行動出来なくなっている。
《フィストバースト》:【魔法拳士】のアクティブスキル
・属性を纏わせる《〇〇・フィスト》系スキル使用時に発動出来、そのスキルに追加のMPを込めて拳を基点に指向性を持たせて炸裂させる攻撃魔法。
・纏わせている属性を全て一撃の攻撃に転化するので使用後は《〇〇・フィスト》系スキルが強制的に解除され、威力はそのスキルに使われたMPと残りの効果時間、追加で込めたMPの量で決まる。
・ただし、あくまで指向性を持たせて炸裂させているだけなので有効射程はそこまで長くなく、最大の威力を発揮させるには拳を打ち込んでゼロ距離で使う必要がある。
《インパクト・エクスプローダー》:【戦棍姫】のアクティブスキル
・《インパクト・ストライク》などの戦棍士系統におけるメイスによる打撃時に衝撃波を発生させる内部攻撃系スキルの超級職版で“対生物”に特化したスキル。
・最大の特徴は打撃時に発生する衝撃波の指向性が非常に高い事であり、これにより相手の体内に浸透した後で内部の一点に威力が集中して爆発したかの様に内側が爆ぜる様になっている。
・ただし、超級職のスキルらしく消費SPやクールタイムは重め。
【エアロ・タラリア】:<魔法少女連盟>製高性能装備の一つ
・装備補正は少し高めの防御力のみで、空気を固めて瞬間的に足場にする《エアロジャンプ》と足裏から暴風を発生させてその勢いで移動する《エアロジェット》の二種の装備スキルによって魔法少女の空中戦を可能にする。
・……予定だったが、予報バランス感覚や身体制御能力が高い者でないと足にジェット噴射を付けて移動するなぞ出来ず、更に両者のスキルが相応にMPを消費する事などがあってお蔵入りしていた代物。
・一応、この装備を元に空気を固めて空中に足場を作って歩行する感じの装備を開発している模様。
<メスガキわからせ隊>:基本<マスター>しか狙わないので存続はしていた
・最もレジェンダリアのロリショタ軍団にボコボコにされており勢力はかなり減っていて、今回の襲撃も有名なロリ<マスター>を分からせて勢いを取り戻す為に行ったがご覧の有り様である。
・ちなみに麗都にいたのは此処が孤児院を始めとする福祉施設がしっかりとしているので、それらへの援助も行なっている<YLNT倶楽部>が余り寄り付かないからだったり。
・尚、光学迷彩からの奇襲は先手必殺の対<マスター>PKでは流行りの戦術であり、特にレジェンダリアでは“何故か”光学迷彩などの幻術や透視・遠視系スキルを覚えている者が多いのでよく行われているとか。
読了ありがとうございました。
尚、<魔法少女連盟>では箒型の飛行用特殊装備品などの色々な飛行用装備を開発してコンペを行なっている感じ。落選した装備も相性のいいメンバーの専用装備に改修されて使われたるする。