□<巨妖樹の森>
「クソッ、いきなり先制攻撃とは……被害は⁉︎」
「爆発矢に当たった後衛魔法職は【ブローチ】付けてたヤツら以外は粉々です! 周りにいた連中も爆発のダメージが!」
「変態軌道で脆い後衛の相手だけをピンポイントで狙って来やがって!」
襲撃者がHENTAIだと分かって一切の容赦を捨てたひめひめの先制狙撃は、そのターゲットである彼女達を包囲しようとしていた<メスガキわからせ隊>に多大な打撃を与えていた。
……具体的に言うと彼女は矢の軌道を後衛に居る魔法職らしい装備をした者に向かう様設定して見事に直撃させたので、防御力に劣る後衛達は広範囲に及ぶ爆発により【ブローチ】を付けていなかった3人はデスペナ、他のメンバーも爆発によって死にこそしなかったがダメージを貰うなど大打撃を負っていたのだ。
「無事な者は態勢を立て直して攻撃準備だ! これで終わらないなら追撃が来るぞ! 《
「よくもやりやがったな! メスガキ共め、わからせてやる!」
「行くぞ【オンギョウキ】!」
だが、その中でもクランオーナーである【
『……まあ準備が終わるまで待つ必要は無いよね。《ハードストライク》!』
「なっ速げハァッ⁉︎」
……が、そうして準備を整え終わる前に
更に体勢を立て直すついでに彼女は【どらぐている】に付いた『装備者のSTRと同じパワーを持ち、AGIと同じ速さで伸縮・稼働させられる』ブレード付きの尻尾──《竜尾剣》を伸長させて爆発のダメージによってふらついていたメンバーの一人を容赦なく串刺しにした。
「このメスガキめ! 《バスターアックス》!」
『ふむ……《ウェポン・デモリッシャー》!』
そこにステータス補正特化の<エンブリオ>持ちでミカの動きを把握出来たメンバーが、バフ込みで超音速に迫る速度で接近して両手持ちの大斧を大上段から振り下ろした……が、その攻撃も“直感”による危険予知で見切っていた彼女は、迎え撃つ機動で【ギガース】を振り上げて大斧を跡形もなく粉砕した。
尚、装備が粉砕されたのはは【戦棍姫】の“対装備”に特化したアクティブスキルであり、装備への攻撃時にその
「なぁっ⁉︎ 俺の斧が高かったのにビィッ⁉︎」
『《瞬間装備》《インパクト・ストライク》……ステータス自慢みたいだけど、私に勝ちたければSTRが後一万ぐらい足りないんじゃない?』
相手が武器の破壊により動揺した隙を突いてアイテムボックスから呼び出した【破砕戦棍・四式】を片手で振り上げてその顎を打ち砕き、付随して発生した衝撃波によって頭部を内側から爆ぜ飛ばしたミカはそんな事を呟いた。
……現在の彼女のステータスは超級職を取ってから地道に、時に兄に手伝って貰ってレベリングをしていた事もあり、<エンブリオ>のステータス補正と【どらぐている】の装備補正を合わせればSTRは二万・AGIも超音速に迫り、物理ステータスの中では一番低いENDでも5000近いというカンスト<マスター>程度では太刀打ち出来ないスペックになっているのだ。
『さてと、とりあえず
「生意気なメスガキめ! これは全力でわからせなければなるまい! ……お前たち、やれい!!!」
「「「うおおおおおおお!!!」」」
ミカは片手で【ギガース】を突き付けながら敵のリーダーに向けてそう宣言し、それを見た彼等<メスガキわからせ隊>は『生意気なメスガキを絶対にわからせる』と言うクラン全員が共有している信念()に火を付けられたのか雄叫びを上げて彼女に一斉攻撃を仕掛けてきた。
「まずは状態異常に掛けてやれ!」
「オレの魅力でわからせてやる! 《
「【猛毒】と【酩酊】と【衰弱】の毒を混ぜて喰らえ! 《疫病の風》!」
「アバダケダブラなんまいだぶなんまいだぶ……《デッドマンズ・バインド》!」
まずリーダーの指示の下、生き残っていた状態異常スキルが使えるメンバーがミカに向けて一斉に女性への【魅了】の波動、複数の毒を混ぜた風を浴びせる<エンブリオ>の固有スキル、<エンブリオ>と《詠唱》の効果で強化・即時発動された複合呪詛が放たれた。
彼等はメスガキを分からせる事が目的でPKをしているので自分達へのバフと、敵への複数の状態異常を駆使して徹底的に有利な状況を作り出す事に特化した連携を好んでおり、この複数種の状態異常による一斉投射もどれかが敵の耐性を突破すれば良いと言う狙いで行われた彼等の常套手段だったのだが……。
『《インスタント・エンパイア》……悪いね、そのタイプの状態異常は効かないんだ』
「「「なニィッ⁉︎」」」
それらの状態異常はミカが装備していた特典武具【鬼身腰帯 クインバース】のスキルにより、それに事前に作ってぶら下げていた“鬼の頭キーホルダー”へと移し替えられて彼女自身には一切の効果を発揮しなかった。ちなみにキーホルダーは定期的により多くのSPを込めた物に作り直しているので複数の状態異常を食らっても十分に余裕がある。
そのまま彼女は状態異常の雨を突っ切りながら超音速で接近し、まず病毒から近接戦に切り替えようとした【
「俺の【ウンディーネ】は水の精霊なのにヒデブッ⁉︎」
『《ストライク》っと。そういうスキルも私にはあんまり効かない……おっと後ろか。《重意圏》《竜尾剣》』
『GIE⁉︎』
「なっ⁉︎ 俺の【オンギョウキ】に気付いただと⁉︎」
その隙を突いて姿と音を消して背後から奇襲しようとして来た鬼型ガードナーの攻撃も“直感”で看破して躱し、すぐに【どらぐている】の周囲にある物体の位置を把握するスキルによって割り出した位置にテイルブレードを放って串刺しにする。
それに対してマスターの【
「そんな……2パーティー12人がもう3人に……」
「くそっ! 超級職だからってここまでデタラメなのか⁉︎」
「落ち着け! まだ勝機はある! ……喰らえ《アクセルスロー》!」
『おっと【ジェム】か。……下がらないと不味そうだね!』
超級職・上級<エンブリオ>・二つの特典武具によって圧倒的な戦力を得ているミカの戦い振りに怖気付き始めた<メスガキわからせ隊>だったが、それでもまだ戦意を失っていないリーダーは虎の子であった【ジェムー《ホワイト・フィールド》】を投擲した。
彼がサブジョブに入れてあった【
『……ふぅ、ギリギリ離脱出来たか。やっぱりAGIは正義だね』
しかし、その【ジェム】の危険性と効果範囲を“直感”していたミカは全速力で後退する事で凍結範囲内にいる時間を短くしており、身に付けている【どらぐている】の寒冷体制もあってダメージは最小限に収まっていた。
「まだだ! 《突撃司令》《攻撃司令》《強襲司令》《行軍司令》!!!」
「うおおおおおおお! わからせェェェェェェ! 《
「《
『おっと、仕掛けて来たか』
だが、その間にリーダーは【司令官】のアクティブスキルを使って残りのメンバーを可能な限り強化し、その二人の内【
「超級職でイキってるとかムカつく! 絶対にわからせる! 《我が拳、巌となりて》! 《ストーム・ストレート》!!!」
「最早わからせの為に時間をかける余裕は無い! せめて苦しませずに斬り捨ててやろう! 《レーザーブレード》!!!」
『余り強い言葉を使うなよ……弱く見えるよ?』
片方が【硬拳士】の奥義で拳の攻撃力を増した上でスキルにより加速込みで超音速での正拳突きを放ち、もう片方も光熱を纏わせた魔剣を超音速で振るってミカを攻撃する……が、それらの攻撃の軌道を彼女は全て“直感”によって先読みする事で回避していく。
「何故だ! 何故攻撃が当たらない⁉︎」
『高いステータスによるごり押しだけじゃね。お兄ちゃんやミュウちゃんと比べれば技量が足りないから、私程度に動きを先読みされるだけで回避されるんだよ』
「何を⁉︎」
実際の所、彼等の<メスガキわからせ隊>の戦術は状態異常を始めとする敵へのデバフと自分達へのバフを併用する事で徹底的に有利な状況を作り出した後、その優位でマウントを取りながらじっくりと時間を掛けて相手をわからせると言うものであり、故に同格の相手と戦う技量は決して高くは無いのだ。
……最もここまで攻撃を回避出来るのは“直感”によって完全に攻撃を先読み出来る事と、ミカ自身の技量が兄や妹と比べると劣るとは言えデンドロで<
「だが、そちらも防御と回避で精一杯の様だな!」
「このまま攻め続ければわからせられる!!!」
『……まあ、やっぱり
とは言え、流石に自身と互角のステータスを持つ相手に二体一では“直感”による先読みがあっても反撃に移る隙を見出せずに防戦一方になってしまっていたが。防御に使っている【ギガース】も《戦棍強化》レベルEXで強度を倍加させているとは言え、相手の攻撃力が高過ぎて傷が付き始めているのでこのままでは彼女に不利な状況になるだけだろう。
『……まあ、それは私が
「……《ヴァイパー・アロー》《ピアースアロー》《光炎之矢》」
「なびゃっ……」
「「何ィ⁉︎」」
ミカがそう言った直後、五本の光の矢が複雑な軌道を描いて指揮を執っていたリーダーの頭部や胴体部の急所へと次々と突き刺さり、付加されていた『貫通力強化』の効果もあって頭部や心臓などの主要臓器を撃ち抜いて絶命させたのだ。
……言うまでもなく、それを行なったのは先制攻撃をした後は後方で“作業”を行なっていたひめひめである。
「とりあえず指揮官であるバフの大元を先に潰すのはお約束でしょう。……それと向こうに居たそこのHENTAI共の
「なっ⁉︎ 気づいていたのか⁉︎」
『まあね〜。派手に暴れて注意を引きつけた甲斐があったって訳よ』
実は今回<メスガキわからせ隊>には姿を消して接近していた部隊の他、有利な状況で調子に乗ったメスガキを戦況を逆転させてわからせる為の援軍役として後方に別働隊を配置していたのだが、探知範囲が非常に広いミュウの《人間探知》によってこちらを伺っている者達が居ると看破され、ミカが暴れている隙にこっそりと向かったミュウとアリマの二名に討伐されていたのだ。
ちなみに二人が他の<メスガキわからせ隊>の目を搔い潜った方法はアリマの場合はひめひめに光学迷彩を掛けて貰っただけだが、ミュウの場合はミカに注意が行っている間に自前の気配遮断(技術)で敵の死角に潜り込んで誰にも気付かれずに後方の部隊へ奇襲を掛けると言うものだったりする。
……コピースキルにより物理戦闘型超級職のステータスを得ているミュウと全力の狂化スキルによって自己強化されているアリマの二人に奇襲されれば、サポートメインで本隊程の戦闘能力が無い別働隊ではどうしようもなく潰されたという訳である。
「さて、こっちもそろそろ終わらせるわ……《イリュージョン・アバター》」
「なっ⁉︎ 分身しただと⁉︎」
「落ち着け! 只の幻術だ!」
実に面倒そうな雰囲気のひめひめが行使したのは他者の実体の無い分身を作り出す幻術であり、それによってミカが一見五人に増えた様に見えて彼等は一瞬戸惑ってしまった……所詮は外見だけが同じなだけの幻術なので冷静に時間を掛ければ見破る事が出来るのだが、リーダーがやられた事でバフが切れてステータスが落ちていた彼等にとってその一瞬の戸惑いは致命的だった。
『はい隙あり《インパクト・エクスプローダー》!』
「オゴバァッ⁉︎」
まず、ミカが幻影の拳を振り上げて空振りした【硬拳士】の横腹に【ギガース】を叩き込み、打撃によるダメージに付随して発生した衝撃波の炸裂によって内臓を破壊して致命傷を与えた。
ちなみに彼は【救命のブローチ】を付けていたが《バーリアブレイカー》によって効果が弱められていた事と、そもそも強化されたステータスによってギリギリ死んでいなかったので発動せず放置しておくだけで死亡する状態になっていた。
「まあ、ダメージで動けない所をキチンと複数回殴って始末しておくけど」
「ぶびっ! ぶぺらっ⁉︎」
「くそぅっ! こうなったらお前だけでも!!!」
「あら、私が狙い? ……舐められたものね《ハウンドアロー》《爆裂之矢》!」
しかし、もう一人の【剣聖】はミカが念入りにトドメを刺している隙に、後方で援護していたひめひめに狙いを変えて全速力で突っ込んで行った。それに対してひめひめも視線誘導の効果を付与した爆発矢を相手や地面に向けて放ち、爆風によりノックバックを狙いながら牽制する。
……だが、覚悟を決めたのか【剣聖】は強化された物理ステータス任せに爆風に耐えながら彼女に向けて突っ切って来たのだ。
「うおおおおおお! わからせぇぇぇぇ!!! 《ストーム・ストラッシュ》!!!」
「……この国ってどの変態も根性だけは立派よねぇ…… 」
更に【剣聖】はスキルによる加速も合わせて遂に超音速を超える速度となり、放たれる無数の矢を掻い潜ってとうとうひめひめに必殺の斬撃を放っってみせた。
「……仕方ないから【ブローチ】はくれてあげる。《フラッシュ》」
「がっ! 目が……」
だが、ひめひめは呆れた様子ながらもその斬撃を敢えて致命傷になる部分で受ける事で【救命のブローチ】を発動される事で凌ぎ、更にゼロ距離から相手の顔に向けて魔法による強烈な光を浴びせて怯ませつつ【盲目】の状態異常にしながら距離を取った。
それでも諦めずにメスガキの気配を感知して剣を振るう【剣聖】だったが闇雲に振るわれる剣を回避するぐらい歴戦のひめひめにとっては訳無く、反撃として貫通力を強化した《閃光之矢》で手足や目を撃ち抜いて戦闘能力を確実に削いで行く。
「【ブローチ】を発動させない様に撃つのも面倒ね」
「声が……そっちか!」
「残念外れ……《シャッフル・ミラージュ》で声と気配の発生点を誤魔化したりもしてるのよね。……もう終わりだけど」
『……やっと追いついたよ《インパクト・スマッシャー》!!!』
「がひゅっ⁉︎」
そんな風に【剣聖】がひめひめに翻弄されている間に【硬拳士】を始末し終えたミカが追い付いてしまい、最後には背後から振り下ろされた身代わりスキルすら減弱させる【ギガース】により【ブローチ】が発動する事すら無くミンチにされたのだった。
『ゴメンねひめひめさん、まさかそっちに行くとは。仲間を助けるか散々挑発した私を狙うかでこっちに来ると思ったんだけど』
「レジェンダリアの変態の根性は色々と無駄にアレだからね、気にしなくていいわよ。直ぐに仕留められなかった私にも非があるし、【ブローチ】はまた手に入れればいいわ。……疲れたでしょうけど、とりあえずアリマ達を迎えに行きましょう」
そうして突発的に始まった戦闘を終わらせた彼女達は疲れた様な雰囲気を漂わせながらも、別働隊を血祭りに上げていたミュウとアリマを迎えに森の中を歩いて行ったのだった。
あとがき・各種設定解説
他称メスガキ達:戦闘は一方的だったが精神的にはちょっとげんなりした
・殲滅を終えた後はそのままクエストの続きでしばらくゴーレムを討伐したが、HENTAI達との戦いで疲れた事とボスが兄達に討伐されたと報告されたので早めに切り上げた模様。
・ちなみにひめひめが【ドラグリーフ】の防御障壁を使わなかったのは継戦の影響と先制攻撃によって蓄積していた光の量が少なかったからで、相手の攻撃を防ぎきれる強度に出来るかが不安だったから。
《ウェポン・デモリッシャー》:【戦棍姫】のスキル
・装備されている装備品に攻撃を加えた時に自身のSTR×スキルレベル×10%だけその装備品の強度(所謂END)を下げるアクティブスキルで、強度はゼロ以下にはならずクールタイムも長め。
・装備品に攻撃する必要があるのでメイスで攻撃を受け止めるなどの場合は効果は発動しない(作中では相手の武器を迎え撃つ形で攻撃を加える事で発動させた)
《戦棍強化》レベルEX:【戦棍姫】によるレベル上限解放
・装備している武器を強化する武器系ジョブには良くあるパッシブスキルで、これの場合はメイスの攻撃力と強度を+100%強化する。
・妹の場合、更に《戦棍鬼の怪腕》の効果で装備スキルにも効果を及ぼすので、装備品である【ギガース】の《バーリアブレイカー》や必殺スキルの効果も倍加している。
<メスガキわからせ隊>:リベンジ失敗
・今回リベンジを仕掛けたのはリーダーの<エンブリオ>の必殺スキルに『一定時間クランメンバーに対する指定した種類の状態異常無効化』が発現したので、前回やられたアリマの精神汚染に対抗出来ると考えてのものだった。
・更に拠点にしていた麗都に彼女達がやって来たので、戦術や戦力をキチンと準備してリベンジわからせを実行に移した……が、超級職と妹及び末妹という理不尽を完全には理解していなかったのが原因で返り討ちにあった。
・実際、幻術からの不意打ち状態異常や全体バフによる戦力強化、更には万が一に備えて別働隊を後方に待機させて初手での全滅を避けるなど結構工夫はしていた……が、それを踏み潰す理不尽があるのもまたデンドロであったとさ。
読了ありがとうございました。
わからせ隊の個人名は考えるのが面倒なので未描写(笑)まあ雑に処理されるモブだし良いでしょう(酷)感想・評価・誤字報告などはいつでも歓迎。