とある三兄妹のデンドロ記録:Re   作:貴司崎

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前回のあらすじ:末妹「カシミヤ強すぎワロタ」アリマ「側から見れば互角の勝負だと思うけど」末妹「タイマンだと勝率3割もないですよ?」


決着、そして終盤戦へ……

 □イベントエリア中央東側

 

 カシミヤとミュウ、二人の“天災児”は孤島の一角にて雌雄を決するべく互いに『この激突で決着をつける』という意志の元に最後の決戦を繰り広げ様としていた。

 

「……それしか道がないのなら須らく斬って捨てるまで」

「来ますか」

 

 そして二人の間の空気が最大限にまで張り詰めて研ぎ澄まされた時、遂にカシミヤが動き出した……最も彼がやる事はこれまで現実、そして<Infinite Dendrogram>で行ってきた『己の抜刀術に全てを賭ける』もの、故に抜刀の体勢をとったまま《鮫兎無步(コートムーブ)》によって超音速でミュウを斬り捨てるべく接近する。

 それに対してミュウはその場で迎撃の構えを取るだけで動かず待ちの構え……元より彼女は最初から相手の必殺を誘って特典武具の防御スキルを利用してのカウンター狙い、故に下手に動いて隙を見せるより動かずに迎え撃つ事を選んだのだ。

 

「(やはり刃を通せる隙など見せませんか……ではこじ開けるまで)《紫電一閃》」

「《寸勁》(電撃ですか……!)」

 

 カシミヤの初手は電撃を伴う斬撃を放つジョブスキルと抜刀術を組み合わせた一閃。雷光を纏うその斬撃は狙い違わずミュウの首を目指して振り抜かれるが、それに対して彼女は最小の動きのみで大威力の打撃を与えるスキルの応用で直前に迫った刀の側面を打ち抜き軌道を逸らす。

 しかし、それがカシミヤの狙いでありそうして接触した事によって刀に纏わせていた電撃が通電する。彼女は《憑依融合(フュージョン・アップ)》》によってエレメンタルとなり各種属性耐性も上がってはいるが、それでも悪影響をゼロには出来ずほんの刹那の間だけ僅かに動きを鈍らせてしまい……その刹那の隙をカシミヤは見逃さなかった。

 

「(ここですね)《居合い》」

 

 そうして僅かな隙をこじ開けた彼が次にもう片方の手で発動したスキルは《居合い》──抜刀術の基本スキルであり抜刀時に自身のAGIを現在値の倍とするジョブスキルであり、それにより彼のAGIは八万近くまで上昇する。

 もちろん《天威模倣(アビリティ・ミラーリング)》によってAGIを同値にしているミュウのAGIも引き上がるが、やはり自分の意思によらず引き上がってしまう事によって上昇したAGIに対する行動はカシミヤよりも半歩遅れてしまう……先程と同じ変速のフェイント、ただし今度は急加速によってタイミングをずらした一閃は無防備な彼女の首へと吸い込まれていき……。

 

「(……ええ、こんな隙を見せたなら貴方は必ず私の防御を抜いてきますよね。それは分かっていました)《暗黒転身(ダークネス・シフト)》」

「ッ⁉︎」

 

 その一閃はミュウが先(・)の(・)一(・)閃(・)を(・)防(・)い(・)だ(・)直(・)後(・)に(・)発(・)動(・)さ(・)せ(・)て(・)い(・)た(・)《暗黒転身》の“生物と闇属性以外を擦り抜ける”効果によって首に当たりながらも一切のダメージを与える事なくそのまま通り抜けて空を切ったのだ。

 彼女は初太刀を防いだ時点で『彼なら次の斬撃を確実に自分に当ててくる』と判断して即座に防御スキルを発動しており、そして両手装備不可のデメリットと引き換えに防御スキルとしては珍しく自身の移動には制限がない特性を生かして狙い通り両手を振り抜き終わったカシミヤを仕留めるべく一気に接近して刀の触れない懐へと潜り込もう……とした所で融合しているミメの意思が“まだAGIの加速が終了していない”と認識した事を知覚した。

 

「(……やはり防御スキルがありましたか。二太刀目で使ってくれて助かりました。《瞬間装備》)」

「(三本目!)ッ⁉︎」

 

 そこでミュウはカシミヤが最初に居合いを放った手に再び“鞘に収まった刀”が握られて、それが補助腕である【イナバ】によって保持される事によって一般的な抜刀術の体勢とは異なれど確かに3回目の抜刀術へと入っている事に気が付いた。

 これは装備をアイテムボックス内部の物と入れ替える《瞬間装備》を応用し、抜刀が終わった後の手に納刀状態の刀を補助腕である【イナバ】も駆使して保持させる事で途切れない連続の抜刀術を放つカシミヤの秘技であり、未だに習熟不足とスキルのクールタイムの関係で3度目までが限界であったがこれまでの攻防によって“抜刀術は両手で交互の二連続まで”と思わされていたミュウを驚かせた。

 

「(ですが《暗黒転身》の効果時間は十秒。仮に闇属性攻撃などでも《霊冠の加護》で……いや、あれはまさか特典武具⁉︎)」

「(僕のとっておきです、この【ダントウジン】は)」

 

 防御スキルとしては珍しく自身の移動には制限がない《暗黒転身》の特性、更にもう一つの一度だけダメージを蓄積MPで肩代わりできる【バイオハーデス】があれば例え3度目の攻撃であろうが対応出来ると攻撃を続行しようとした所でミュウは3本目の太刀が異質な雰囲気を有する──自分も持っている特典武具の一種であると気が付いた。

 その刀の正体は逸話級特典武具【命斬刀 ダントウジン】という代物であり、抜刀した直後の一閃にのみ限定してあらゆる防御スキルを発動させず、及びその一閃で殺傷した相手の《ラスト・コマンド》を始めとする食い縛り系スキルによる延命をも無効化する《一斬絶殺(ダントウジン)》の装備スキルを有する格殺の魔刃である。

 

「(回避不可ならこのまま突っ込む! この間合いでAGIが同じなら先にこちらの攻撃が当たる!)」

「(同期しているのはAGIのみであれば“AGIはそのままに斬撃のみを加速させる”スキルなら!)《鞘走り》!」

 

 更にカシミヤ抜刀時に刀身のみを加速させる《鞘走り》──“AGIには影響を与えずに斬撃のみを加速させる”スキルを使用して、同期しているAGIにSTRを加えた踏み込みによる加速で先制を狙っていたミュウの思惑に先んじる速度で抜刀術を放った。

 その一閃は不安定な抜刀体勢、刀身の無理矢理な加速から放たれたとは思えない精度の斬撃として接近の為に前傾姿勢となっていた彼女の首に吸い込まれていき、【ダントウジン】の力によって彼女の特典武具の防御を発動させずにその首を斬り飛ばしたのだった。

 

「ミュウちゃん⁉︎ だったら私が!」

「そう来ますか……」

 

 宙を舞うミュウの首を目にしたアリマは決意を秘めた顔つきで今度は自らが前衛となるべく強化されたステータスで前へと進もうとし、それを見たカシミヤは素早く再度の抜刀体勢に入って彼女の方も斬り捨てようとした……が、その直前に腕を何(・)者(・)か(・)に(・)掴(・)ま(・)れ(・)た(・)事によって物理的に、また有り得ない事象を前にした精神的動揺もあって動きを止めてしまった。

 

「なっ⁉︎」

『……捕まえた。《攻撃纒装(アタック・テスクチャ)》《スライス・ハンド》!!!』

 

 彼の腕を掴んだ者の正体は首を斬り飛ばされて首無しになっている筈のミュウ……の身体に憑依してそれを動かしている【ミメーシス】であり、彼女はそのままカシミヤの防御無視斬撃の効果を上乗せした手刀を一閃させて掴んでいる【ダントウジン】を持っているほうの腕ごと彼の胴体部を袈裟懸けに斬り裂いたのだ。

 ……ミメーシスと融合しているミュウは『種族:エレメンタル』となっている事から分かる通り生態的な構造も人間のものではなく、憑依しているミメーシスが無事であれば【頸部切断】の状態異常であっても“生物としての特性”によって即死はしない(スキルによる食い縛りではないので【ダントウジン】の効果範囲外)

 そしてミュウは事前に『カシミヤ相手なら防御スキルで相打ち狙いでも先にこちらの首が落ちる可能性も十分ある』と予想しており、事前にミメーシスに対して『もし自分の首が落ちた時にはそちらで身体を操って攻撃して』と頼んでいたのだ。流石に首が飛ばされて脳と肉体の神経が切断された状態だとミュウ自身で首から下を動かす事は不可能なので。

 

『少し浅いか! やっぱ僕だとミュウみたいには……《回し蹴り》!!!』

「くっ! ですがこれなら!」

 

 しかし、肉体を動かした経験が薄いミメーシスであるのでどうしてもスキルアシスト頼りの攻撃に成らざるを得ず、不意打ちで打ち込んだ先程の攻撃もギリギリ致命傷にならない程度だったのでカシミヤは片腕が斬り落とされ胸部から腹部に裂傷を負わされてはいるがまだ動けた。

 それを見たミメーシスは追撃の回し蹴りを放つものの、カシミヤは重症だろうが問題なく動ける《鮫兎無步》を使って型通りの動きでしかないそれを回避しつつ残った片腕と【イナバ】を動かして抜刀体勢へと移行する。

 

「ミュウちゃんはやらせないとよ!」

「チッ!」

 

 どれだけの重症を負おうがまだ動ける以上勝負を捨てる道理はないと天地の<マスター>らしく考えて“勝つ為”に動き続けるカシミヤだったが、そこに超音速で移動して来たアリマが彼とミュウ(首無し)の間へと割り込んで来た。

 そのまま彼女は両手に持った【ヴァニフォーク】と【ラブリーチャーミングハートソード】の二刀流で斬りかかっていくが、その太刀筋はミュウや天地の武芸者と比べればセンススキル頼りの拙いものであったので、彼はその斬撃を見切って回避しつつ《雲耀・瞬光》の効果で加速した抜刀術を残った片腕のみで放って彼女の首へと放ち……。

 

「《如来転心唯我独尊(シャカ)》!!!」

「なっ⁉︎」

 

 その《剣速徹し》の効果でENDの大幅減少を伴う一刀は、しかしアリマの首に当たりながらも薄皮一枚裂くことなく停止していたのだ……それを見たカシミヤは一瞬のみ驚くものの、直前に相手が使用していたのが“必殺スキル”である事から何らかの防御効果で防がれたと判断した。

 だが、防御スキルを突破出来る【ダントウジン】は片手ごと持っていかれており、それでなくても一度使用すれば十分程のクールタイムを課せられる装備なので使えない。それでも彼は諦める事なく後方に下がりながら効果時間切れを狙い、カウンターで振るわれた相手の横薙ぎの斬撃を回避する……。

 

「《伝心》並びに《レーザーブレード》!!!」

「でもまだ避けられ……なっ⁉︎」

 

 その光熱を纏った一刀の範囲から完全に逃れた筈のカシミヤだったが、しかしその腹部がまるで焼き切られたかの様な裂傷を生じさせた上で肉体を上下真っ二つに切断されて地面に倒れ伏したのだった。

 ……この奇妙な現象はアリマの<エンブリオ>TYPE:ルール・カリキュレーター【正心偽脳 シャカ】の必殺スキル《如来転心唯我独尊(シャカ)》の効果──自身を一時的に精神生命体へと置換し、その際に自身が関わる物理現象と精神的現象の境界を曖昧とする力によるものである。

 

「……悪いけど今の私の攻撃は必中だし、殆どの物理攻撃も効かないよ。……それよりミュウちゃん大丈夫⁉︎」

『まだ死亡はしないけど……って融合してると僕の声は外部に聞こえないんだよね。とりあえずミュウの首を持ってこよう』

 

 それだけだと分かりにくいかもしれないが要するに“自分が関わる物理現象を精神的現象としても扱い、逆に精神的現象を物理現象としても扱える”効果であると考えれば良い。

 これによって敵からの物理攻撃を精神的悪影響と同じ様に扱って《悟りの境地(マインド・セット)》で防いだり、他者に思念を送るスキル《伝心》と剣技ジョブスキルを《悟りし者の御業(ソウル・コントローラー)》で複合させて『斬撃のみを遠距離の対象に届けて斬り裂く』などと言った芸当も可能になるのだ。

 ……そしてアリマは必殺スキルを維持したまま倒れ伏したカシミヤを尚も警戒しつつデュラハン状態のミュウを庇うが、その身体を動かしているミメーシスは斬り飛ばされた首を取ってくると徐に身体にくっつけながらイベント用にレントから貰っていた高位回復魔法の【ジェム】を使用した。

 

『……よしくっついたね。ミュウ大丈夫?』

「……ええどうにか。流石に首を斬り落とされるのは初めてでしたが兄様の【ジェム】で治せて良かったです」

「うわ本当にくっついた。……大丈夫なんだよね?」

「大丈夫ですよアリマちゃん……ですがまだ戦いは終わってません。あの状態でも移動スキルと残った片腕で抜刀術を放って来るかも……」

「いや流石にこの負傷では後十秒ぐらいで死にますし、スキル起動条件である抜刀体勢を取るのも無理なんですが……それにもし抜刀術を打てても貴女はもう接近戦をする気すらないでしょう?」

「そんな事は当然です。何故好き好んでカシミヤ君に近接戦を挑まねばならんのですか。遠距離戦で封殺出来るならそうします」

 

 そこ言葉通りにミュウはカシミヤがまだ戦うつもりなら必殺スキル起動状態のアリマを盾にしつつ、拳士系の遠距離攻撃系スキルや範囲攻撃の【ジェム】を使って彼が傷痍系継続ダメージで死ぬまで近づけすらさせない気まんまんであったが(これまで使わなかったのは万全の彼相手では全部避けられて無駄だからである)

 

「ふぅ、首を落とした後の残心を怠るとは僕もまだまだ修行が足りません」

「というか今回の勝因はアリマちゃんが居たからですけどね。私ばかり見て彼女に注意を割けなかったのが主な敗因でしょう……この世界での彼女は私よりも強いですよ。最後はしっかりと決めてくれましたし」

「いや私は殆ど見てただけだし、最後も今(・)度(・)は(・)後(・)ろ(・)で(・)見(・)て(・)る(・)だ(・)け(・)じ(・)ゃ(・)な(・)く(・)て(・)前(・)に(・)出(・)よ(・)う(・)と(・)って思っただけで……」

「……成る程、これは僕の負けですね。……ですが次はリベンジさせて貰いますよ」

 

 そうして二人の会話を聞いてどこかスッキリとした笑みを浮かべたカシミヤは継続ダメージによってHPがゼロになり光の塵となったイベントから脱落したのであった。

 

「……まあ、こちらの世界でもし機会があれば請け負いますよ」

 

 ……こうして天災児達の戦いは彼女達“二人”の勝利に終わったのだった。

 

 

 ◇

 

 

「うーん、やっぱり結構消耗しちゃったね。私の必殺スキルは効果が微妙な割に消耗が激しいよ」

「いやあらゆる攻撃を無効にして自分からの攻撃は必中とか十分過ぎるぐらい強いと思いますが。発動条件が厳し過ぎて中々使えない私のそれと比べれば」

『発動出来ればどんな相手でも詰ませられるから。メイデンはジャイアントキリングが真骨頂だし!』

 

 そうしてカシミヤとの死闘を制したミュウとアリマはポーションを煽りながら損耗を回復させつつ、先程までと同じ様に周囲を警戒しながら森の中を歩いていた。

 ……強敵を一人倒そうともこの島にいる参加者が三人になるまでバトルロイヤルは終わる事は無く、彼女達もそれは分かっているので即応体勢を維持したまま動いていた。

 

「……む、また《人間探知》に反応があります。今度は一人ですね」

「他の参加者かな。どうする? とりあえず戦闘準備を……」

 

 そこでミュウがまたしても他の参加者らしき反応を感知したので彼女達は戦闘準備を整えようとし……その直後に探知範囲内ギリギリに居たはずの“それ”が先(・)程(・)の(・)加(・)速(・)し(・)た(・)カ(・)シ(・)ミ(・)ヤ(・)以(・)上(・)の(・)速(・)度(・)でこちらに接近して来たのを感じ取ったミュウは慌てて声を上げた。

 

「不味いもう来ます! 準備を……きゃぁっ!!?」

「ミュウちゃん!!!」

 

 警告の声を上げつつ前に出たミュウだったが言い終える前に前方から超超音速で飛来した“鎖”に弾き飛ばされた……幸いまだ使われてなかった《霊冠の加護》によって致命傷は肩代わりされたが、ただの鎖の一撃が致命傷になるレベルの異常な攻撃力を持つ事。そして何よりその鎖に見覚えがあった彼女はよりにもよって“最悪な相手”と遭遇したらしいと内心歯噛みした。

 

『《転位模倣(エフェクト・ミラーリング)》! 《ライトニング・フィスト》! 《エンハンスフィスト》!』

「チェアァァッ!!!」

 

 吹き飛ばされた彼女に追撃の鎖が二本迫るもののミュウの考えに答えたミメーシスが“鎖の持ち主”を対象にバフ効果を写し取るスキルを使用、それによって相手の“絶大なステータスバフ”をコピーした彼女は瞬時に体勢と立て直し雷を纏う両腕で鎖を弾き飛ばした。

 ……しかし最初の攻撃で使われた物を含む合計3本の鎖は異常な硬度と攻撃力を誇っており破壊は出来ず、その間に自己バフをノータイムで実行して敵に対する精神汚染を行おうとしていたアリマに超超音速で接近する一人の男がいた。

 

「ミュウちゃん⁉︎ 《スリーピング……」

「……疾ィ!!!」

 

 その男は手に持った伝説級特典武具【竜鳴槍 ドラグソング】が発する超振動波でアリマの【ヴァニフォーク】から鳴り響く強化された催眠音波を力技でかき消して無効化、そのまま彼女の反撃を許さぬ速度と精度で槍を胸部に突き刺して強化された攻撃力と振動波によって上半身を消し飛ばしてあっさりとリタイアさせたのだった。

 

「アリマちゃん⁉︎ ……まさか貴方がいるとは思いませんでしたよフィガロさん!!!」

「君は……ミュウちゃんだったね、ギデオンでの決闘以来だね久しぶり。……やっぱりこのイベントは強者と沢山戦えて良いね」

 

 そうして仲間を失ったミュウはイベント開始から戦い続けて中央部の他の参加者を壊滅させていた長時間戦闘済(ロングウォーミングアップ)状態のアルター王国決闘ランカー【剛闘士(ストロング・グラディエーター)】フィガロと対峙してしまったのであった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 □■イベント用管理AI作業領域

 

「……ふむ、これでバトルロイヤルの残り人数は38人。かなり早い段階で大分減ったな」

「大規模戦闘がいくつかあったからな。尚今のところ空間操作に異常は無し」

「各システム面でも特に異常は起きてないねー。まあ空間に強力に作用する<エンブリオ>持ちはいなかったけどー」

「しかぁし、配置した宝箱はあまり拾われてませんねぇ。取られにくい場所には相応のレア度のアイテムを配置したのでぇすが」

「あくまで主目的はバトルロイヤルだからな、そんな中で宝箱を探す余裕などないだろう。それより【シャウト・ハンター】はギミックとしては微妙だったな」

「試験の為に色々と要素を追加したのだから仕方がないけど、やっぱりイベントの目的は一つに絞るべきね。そこは次回に活かしましょ」

 

 バトルロイヤルが佳境を迎える中、それを観戦しながら隔離スペースにおける各種システム動作を確認していた管理AI達は各々の感想を言い合う程度には余裕はあった。

 まあ、総評としては『システム面では問題なし』『イベントとしては余計な要素を多くし過ぎて全体的に薄味になった?』と言った所であり、次回以降はもう少し趣向を凝らすべきかと思っていたが。

 

「……さて、ではイベント最終盤の隠しギミック……参加者達を刈り取る四(・)体(・)の<UBM(ユニーク・ボス・モンスター)>を投下するとするか」

「改めて聞くと<UBM>のイベントエリアでの行動時におけるデータ取りの為とはいえ多いな」

「でも未だに隠れてバトルロイヤルをクリアしようとしてる人もいるし、このままだとグダグダ時間だけが過ぎる可能性もあるわね」

「まあバトルロイヤルなら生き残り優先なのは間違いじゃないし」

「生き残り特化のチェシャが言うと説得力があるね〜」

 

 ……そうしたどこか呑気にも聞こえる会話が行われた後、イベントエリアの孤島に参加者達を刈り取る最悪の狩人達が放たれたのだった。




あとがき・各種設定解説

末妹:勝因・二体一だった事
・融合状態でエレメンタルになっていれば首を切断されても即死はしないが、肉体構造は人間のままなので脳に酸素が回らなかったり頸動脈が斬られてたりと大ダメージである事は変わりなく十分ぐらいで死亡する。
・肉体が切断された場合だとミメーシスの意識は最も質量が大きい場所に宿る仕様であり、今回は首から下の肉体に宿って動かせたが切り離された首には干渉できない。
・実は彼女の特典武具のスキルのいくつか(主に防御スキル)には『両手部未装備状態でのみ使用可能』というデメリットがあり、融合時のデメリットに合わせて導入する事でスキル性能を底上げするアジャストになっている。
・だが流石に最後のクソエンカには思わず叫ぶぐらいイラッと来てる(笑)

【命斬刀 ダントウジン】:逸話級特典武具
・装備スキルは《一斬絶殺(ダントウジン)》一つのみで、カシミヤにアジャストされた結果抜刀時の一太刀のみ防御無効・食い縛り無効の効果で使用後には十分程度のクールタイムが必要な代わりに逸話級としてはスキル性能が非常に高くなっている。
・ただその分武器としての攻撃力は低めであり、あくまで斬撃による死亡時に踏み止まるスキルを無視するだけなのでダメージ自体の回復も可能だし死んだとしても蘇生は出来る。
・この防御効果無効は『斬撃時に防御効果を発動させずに擦り抜ける』感じの効果であり、それ故に末妹の《霊冠の加護》は発動していなかったので後の一撃を防ぐ事が出来たみたいな事情もある。
・元の<UBM>は【斬愧死刃 ダントウジン】と言うとある介錯人の一族の装備が怨念によって変異したリビングアーマー及びリビングウェポンで攻撃全てが防御食い縛り無視で攻撃力自体も非常に高いと言うものだったが、元が介錯人や処刑者がベース故か戦闘技術がそこまででもなかったので噂を聞きつけて腕試しに来たカシミヤと運悪く遭遇して討伐された。

《如来転心唯我独尊(シャカ)》:アリマの必殺スキル
・実は『自身を現実世界と精神世界の狭間にある“精神生命体”へと一時的に変性させる』スキルであり、その結果として自分に関わる物理現象と精神現象の境界が曖昧になって相互に干渉出来る感じ。
・そんな特異なスキルだからか使用中にはHP・MP・SPを持続消費するとコストが重いので戦闘出来るのは万全な状態でも3分程度であり、更に使用後には仕様時間の100倍の時間クールタイムが課せられる。
・アリマ自身にもまだスキルの詳細が完全には分かっておらず、それ故に今後の理解と発想次第では更なる運用法を思いつくかもしれない応用性が高いスキルとも言える。
・……ただクールタイム中に脳筋に襲われればどうしようもなかったが。


読了ありがとうございました。
フィガロはギデオンにいた時に末妹と一度決闘しており、その時の経験から現状の自分でも負ける可能性があると考えて初手から全力でまず何をしてくるか分からない仲間を格殺しに来ました。ちなみに末妹は現状のフィガロとタイマンすれば自分に勝率は1%未満ぐらいと見積もってる。
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