□<サウダ山道> 【
【<UBM>【心蝕魔刃 ヴァルシオン】が討伐されました】
【MVPを選出します】
【【レント・ウィステリア】がMVPに選出されました】
【【レント・ウィステリア】にMVP特典【才集刃飾 ヴァルシオン】を贈与します】
「……む、このアナウンスは……つまりはアイツを倒せたという事か?」
「そうなんじゃないか? ……しかしMVPは取り逃がしたか。トドメ刺せなかったしな……」
俺の放った極大の炎の槍が【心触魔刃 ヴァルシオン】を焼き溶かしてHPをゼロにした後、目の前にその様なアナウンスが表示された……近くにいたシュバルツ何某の言葉や周りの反応から、どうやらこのアナウンスは戦闘に参加した全員に通達されているらしい事が分かる。
……更にそのアナウンスと同時に俺の手元には一つの【宝櫃】が現れた。確か<
「ふむ、中身を確認したいのは山々なのだが……まだ、周りにはやる気のあるゴブリン達が残ってるしな」
「ボスを倒したんだから周りの雑魚も一緒にやられてくれる仕様なら良かったんだが。……やっぱり、この群れのボスはあっちの【ゴブリン・キング】って扱いなんだろうな」
そう言ったシュバルツ何某と同じ方向を向くと、そこには【テンペスト・ペガサス】のティルルに乗ったリリィさんが徒手空拳の【ゴブリン・キング】と激しい戦いを繰り広げている所だった。
……相手のステータスを《看破》すると、どうやら【ヴァルシオン】が強化していたのか先程までの半分ぐらいの数値になっており、更に徒手空拳な事もあって現在はリリィさんが飛行出来る事による機動力を活かしたヒットアンドアウェイで圧倒していた。
「<UBM>が倒された事でステータスが下がっていますね。……これなら押し切れます。《エアレイド・ラッシュ》!」
『まあ、身代わりでダメージを与えられないのは変わりませんが、足止めし続ける事は出来ますね。《エア・ハンマー》!』
『マダダッ! タトエ弱クナッタトシテモ我等ガヤル事ハ変ワラヌ! ……オ前達!
今もティルルが圧縮した暴風を叩きつけて【ゴブリン・キング】の体勢を崩した所で、そのまま上空から鋭角の軌道を描く様にリリィさんが突撃してから離脱するを繰り返して相手を攻め立てている。
……ただ、あの【ゴブリン・キング】が何か気になる事を言っているし、その声に応えた周りのゴブリン達の士気も更に上がっている事が気になるな。<UBM>が倒されたのだからもう少し混乱すると思っていたんだが、以前として全体の戦局は押され気味だ。
「とはいえ、俺のMPは枯渇していてレベルも下がってるから正直厳しいな。……折角の特典武具なんだから、何かこう都合のいい装備とか出てくれないかな。開けてみるか」
「……それはペンダントか?」
シュバルツ何某の言った通り、手元の【宝櫃】から出て来たのは小さな剣型のペンダントが付いた首飾りだった……少し【鑑定眼】を使ってみると名前はアナウンスにあった通り
……少し見た限りだと残念ながらどちらもこの状況を打破出来る様な都合のいいスキルでは無かったが、片方が装備者の合計レベル分の数値だけHP・MP・SP・STR・END・AGI・DEX・LUCと言った全ステータスを上昇させる《強装才刃》というパッシブスキルだったので、装備すれば下がったレベルを多少補うぐらいは出来そうだ。
「とりあえず《瞬間装着》っと……」
「って、おい! ゴブリン達がこっちにも来たぞ!」
『『GYAAAAAAAA』』
幸いアクセサリー枠は空いていたので、俺はさっさと《瞬間装着》を使って【ヴァルシオン】を首にかける……その直後、シュバルツ何某が慌てた様子でゴブリン達がこちらに来た事を伝えて来た。
……こっちに来たのは【ゴブリン・ウォーリアー】と【ゴブリン・ソードマン】の二体だったので、片方の【ウォーリアー】をシュバルツ何某に任せて、俺はもう片方の【ソードマン】を《瞬間装備】で【シルバー・マギソード】を取り出しながら迎え撃つ事にした。
「……まあ、幾ら物理ステータスが劣っているとは言え、この程度の雑魚にやられたりはしないけどな」
『GYAAAU⁉︎』
俺はまず【ソードマン】が振り下ろして来たそれなりに鋭い剣閃を半身になって躱しつつ、そのまま懐に潜り込み逆手に持ち替えた剣を横薙ぎに振るって相手の両目を斬り裂いて視覚を封じる。
そこから更に相手が怯んだ所で足払いを掛けて転ばせつつ馬乗りになって、そのまま逆手に持った剣を全体重を込めて相手の喉に突き刺してその身体を光の塵に変えるのだった。
……まあ、俺のジョブは魔法寄りだから物理ステータスが低いしその手のスキルも持ってないから、相手とのステータス差からこうでもしないと仕留められないんだよな。今回は相手が下級のモンスターだから何とかなったけど、これ以上の相手に接近戦はキツイか。
「……お前、魔法職じゃ無かったっけ?」
「ミュウちゃん程では無いが、俺もこの程度の事が出来る
担当していた【ウォーリアー】を倒したシュバルツ何某が唖然とした様子で問いかけて来たので、俺は適当に答えながら周辺を見渡して戦況を確認したが……その状況はお世辞にも良いとは言えなかった。
「あ、やっば。MPがもう切れそうや。ポーションも無くなって来たし」
「オーナー! こっちもMPが〜!」
「安心しろ……俺ももう無い」
「セイラン卿! 負傷者が増え過ぎて前線が維持できません!」
「くっ、止む終えん、私も前に出る!」
『『『『GYAAAAAAAAAA!!!』』』』
ご覧の通り、数こそ減ったもののまだまだ元気……と言うか、疲労とかを感じさせない程に高い士気を保っているゴブリン達と比べて、こちら側は負傷やMP切れなどで既にまともに戦える様なコンディションな者は殆ど居ない状態である。
これは戦力的に不利な状況を覆してゴブリン達と互角に戦う為に、これまでずっと後先考えずに全力を出し続けて戦った所為でこちらが息切れした形になるな。
……そうでもしなければゴブリン達の物量に飲み込まれて、俺達はあっさりと壊滅して居ただろうから仕方がないのだが……。
「……ふむ、このままだと普通に詰むな」
「いや! どうにかならないのかよ! その特典武具とかで⁉︎」
「残念ながら、この【ヴァルシオン】は今の所《強装才刃》で俺のステータスを多少上昇させる事しか出来ないからな。……もう一つのスキルは
ちなみに、この【才集刃飾 ヴァルシオン】のもう一つのスキルは《刃技才集》──装備者が獲得する経験値の内5%を【ヴァルシオン】に蓄積して、蓄えられた経験値を使って
……ただ、スキル自体のクールタイムが30日間もある上、経験値を蓄積する関係からか手に入れてから30日間スキル使用不能のデメリットもあるので今は何の意味もないスキルである。
「……とりあえず味方と合流するぞ。こっちにもゴブリンが集まって来たし、このままだと囲まれる」
「チッ、今はそれしか無いか……」
まあ、規格外の“直感”持ちのミカが何も行動を起こさない以上は、このままの戦局でも
……俺がそう考えて味方と合流しようとしたその時、上空から
『ガアアアアアアアアアァァァァァァ!!!?』
「ふむ、見た目も違う上【ゴブリン・キング】にしてはステータスも高かったが、それでも純竜クラスと言ったところか。……おっと、遅れてすまなかったな。だがもう大丈夫、私が来た」
「父さ……じゃなくてリヒト団長!」
そこに舞い降りたのはティルルよりも一回り大きく、頭にツノが生えている白銀のペガサス──【ハイエンド・セイクリッド・モノペガサス】のデュラルに跨った、このアルター王国が誇る
……彼は先程の【ヴァルシオン】と
「リリィ、お前は他の騎士達や<マスター>と協力して負傷者の治療と安全確保を……直ぐに片付ける」
「了解しました」
その指示を受けたリリィさんは即座にその場から離れ……直後に指示を出したリヒトさんの姿がかき消え、次の瞬間には吹き飛ばされてからようやく立ち上がった【ゴブリン・キング】の眼前に出現していた。
「カチ上げろ、デュラル」
『承知、《ディバイン・ホーン》!』
『ナッ⁉︎』
そしてデュラルは自身のユニコーンの様なツノに白銀のエネルギーが纏わされふた回り以上に巨大化させた上で、そのツノで【キング】を掬い上げる様に打ち据えて空高くはね飛ばした……尚、その一撃の身代わりのなった周囲のゴブリンが十体程消し飛んだ事からその威力が伺える。
……更にそれを追ってリヒトさんも直ぐ様上空に舞い上がり……。
「【ゴブリン・キング】が率いる群れを倒すのは簡単だ……【キング】を攻撃し続けてその超過ダメージで群れを全滅させればいい。《エアリアル・ダッシュ》!」
『ガ! アア! アア! ア!!!』
そんな事を言った直後、デュラルに乗ったリヒトさんは俺の目には映らない程の速度で飛翔して【ゴブリン・キング】に突撃して(多分)手に持った長槍で打ち据えて吹き飛ばした……と思ったら、吹き飛ばされた【キング】が更に(おそらく)急旋回したリヒトさんによる再びの突撃を受けてまた吹き飛ばされた。
……そうしてリヒトさんは【キング】を吹き飛ばした先に飛翔で追いついて、更に別の方向に吹き飛ばすと言った行為を何度も繰り返す事でまるでお手玉の様に相手を空中で打ち据え続けていったのだ。
(一見ギャグみたいに見えるけど、相手をまともな防御・回避行動が取れない空中に縫い止め続けて一方的に攻撃する為に吹き飛ばす方向や威力とかも計算してやってるみたいだな。……それに一発の威力も身代わりにされた地上のゴブリンが十数体あっさりと消し飛ぶ威力だし……確かにコレなら直ぐに終わるだろうな)
……俺がそんな事を考えている間にまだ数十体残っていた筈のゴブリン達は、彼の苛烈な攻撃の身代わりにされた所為で全て跡形も無く消滅しており、残りの敵は空中に弾き飛ばされて続けている【ゴブリン・キング】のみとなってしまっていた。
「終わりだ。《ディバイン・チャージ》!」
『ガアッ⁉︎ …………』
そこにリヒトさんが先程もリリィさんが使っていた聖属性の突撃スキル──ただし、武器に纏わせた聖なるオーラの威力・規模共に桁外れ──を【ゴブリン・キング】に叩き込んで、その身体を文字通り跡形も無く消し飛ばしたのだった。
……<UBM>である【ヴァルシオン】が倒されて弱体化していたとは言え、あの【ゴブリン・キング】がまるで相手になっていないとか超級職ってヤバいなホント。
◇
「……成る程。それで【ゴブリン・キング】に寄生していた<UBM>【心触魔刃 ヴァルシオン】を<マスター>達が倒したが、その後もゴブリン達は戦闘を継続したので応戦していた時に俺が到着した訳だな」
「はい。……私が合流する前に向こうにいた何人かの<マスター>がやられた様ですが、合流後は<マスター>・ティアン共に死者は出ていません」
「うむ、それは幸いだったな。……死亡した<マスター>の分も合わせて追加の報酬を用意しておいた方がいいか……」
あれからゴブリン達をあっさりと全滅させた後、地上に降りてきたリヒトさんはまず<マスター>・ティアン問わずに負傷者の手当てを部下達に指示して、それと共に怪我が少なかったリリィさんから今まであった事を詳しく聞き出していた。
ちなみに怪我人の治療で一番大活躍したのはリヒトさんの愛馬であるデュラルで、彼は執事服の男性に人化すると強力な広域回復魔法を行使して俺達の負傷を瞬く間に癒していったのだ(その際、リリィさんの愛馬であるティルルもメイド服の女性に人化して手伝っていた)
……だが、そこで大した怪我も無かったから治療も直ぐに終わっていたミカが、話をし終わったリリィさんとリヒトさんの方に向かっていった。
「ねえねえリヒトさん、ちょっといいかな?」
「ん? 君はミカ君だね。……話は大体終わった所だから問題無いが、一体何かな?」
「うん、リヒトさんがさっき倒した【ゴブリン・キング】って……
……ああ、成る程。確かに<UBM>である【ヴァルシオン】を倒した後もゴブリンを倒した後には“何も残らなかった”な。ただ光の塵になっただけだ。
この『アイテム』を落とさない現象が【ヴァルシオン】の仕業なら倒された時点でゴブリンはアイテムを落とす筈で、そうでなければあの【ゴブリン・キング】がそう言う能力を持っていた可能性もあるが……。
「……いや、あの【ゴブリン・キング】も
「そう言えば、あの【ゴブリン・キング】は『あの方により多くの力を捧げる為』と言っていましたね。……ゴブリンの王である筈の【ゴブリン・キング】が奉じている“あの方”……そう呼ばれている存在がいると?」
「その可能性もあるって話だね〜。……私の勘だとこの件にはまだ黒幕がいる気がするし」
そのリヒトさんとリリィさんの証言によって【キング】がそう言った能力を持っている可能性が低くなった……最もミカが“黒幕がいる”と言っている以上は、まだこの事件が終わっていない事は確定だろうがな。
「そんな……まさかまだ黒幕がいると……!」
「あ、これはまだ続きがあるヤツかな。でもポーションの飲み過ぎででうちの腹タプタプなんやけど……」
「ふむ、<編集部>的には美味しい展開ではあるが……」
「いやオーナー。もうポーションとかのアイテムも残って無いですし、これ以上戦うのはキツイですよ」
……セイラン卿や月夜さんやアットなど頭が回る人間達は、そのミカとリヒトさんの会話を聞いて俺と同じ結論に達したのか愚痴をこぼしたり周りの人間と相談しだしたので俄かに周囲は騒がしくなって来た。
だが、リヒトさん以外の此処にいるメンバーは直ぐに戦える様な状態では無いし、戦うとしても疲労から十全のパフォーマンスは出せないだろうしな。
「……取り敢えず、<UBM>が現れたと言う報告があったから騎士団の方から一旦クエストを中断して援軍をこっちに送る手筈になっていたし、今後は彼等に事情を説明した上で協力してこの近辺を引き続き調査する事になるだろう」
……その状況を見かねたのかリヒトさんは今後の明確な方針を皆に説明し始めた。
「……それと<マスター>はここで抜けて貰っても構わない。無論、その場合でも後日改めてクエスト報酬の【許可証】と<UBM>討伐の追加報酬を渡す。……だが、今後の調査にも協力して貰えるなら更に追加で報酬を支払う事も出来るだろう」
そして、彼は俺達<マスター>にはその様な追加説明を行った……その言葉を聞いた他の<マスター>達は今後どうするべきか少し悩んでいる様だった。
……まあ、どうやらミカがやる気みたいだし俺も中途半端で終わるのもアレだから今後も協力する方針だけどな。
あとがき・各種設定解説
【才集刃飾 ヴァルシオン】:伝説級特典武具
・見た目は銀色の10センチくらいの両刃剣の様なペンダントが付いた首飾りで、その剣の形は<UBM>になる前の【ヴァルシオン】に酷似している。
・装備補正は無いが、その代わりに全ステータスを装備者の合計レベル分だけ上昇させるパッシブスキル《強装才刃》がある。
《刃技才集》:【ヴァルシオン】の第2スキル
・蓄積した経験値とを使って何らかのスキルをランダムに習得出来るスキル……分かりやすく言うと“月一SR以上確定(兄限定)スキルガチャ”。
・ラーニングスキル特有の成長率減少などのデメリットが少ない分、発動条件やコストが厳し目になっている。
・獲得出来るスキルは蓄積された経験値の量で強度が決まり、その経験値のデータ(倒したモンスター・人間・受けたジョブクエスト)を参考にして装備者にアジャストされたスキルがランダムに得られる。
・実は<UBM>などの規格外の強者を倒して得た経験値があると、それに準ずるスキルが出やすくなる隠し効果がある(またの名を“<UBM>ピックアップスキルガチャ)
リヒト・ローラン:これが王国の(まともな)超級職だ……!
・超級職になってから25年近く経っており合計レベルも1000を優に超えており、当然技量も王国最高峰で神話級の愛馬との連携や保有する複数の特典武具を合わせれば並みの準<超級>を超える実力を持つ。
・王国最高峰の機動力を持っている事と【大賢者】や前任含む【天騎士】達や故【教皇】などが王都を離れ難い事から、彼等に変わって王国に出現した<UBM>への対処を長年行ってきた結果として多数の特典武具を所持している。
・作中で手に持っていた槍も【収奪長槍 ドレインドレイク】と言う【業奪死竜 ドレインドレイク】という古代伝説級<UBM>を【大賢者】【天騎士】と共に倒した際に手に入れた特典武具だったりする。
・ただ、年齢が50を超えているので最近は流石に衰えが見え始めており、本人としては【天翔騎士】を娘のリリィに引き継いでほしいと考えている。
デュラル:神話級モンスター【ハイエンド・セイクリッド・モノペガサス】
・実はペガサスとユニコーンのハーフで頭にツノが生えているのもその為であり、聖属性・風属性のスキルを多く習得していて防御・回復魔法に長ける。
・どちらかと言えばスキル型でステータス面は(神話級モンスターとしては)そこまで高い方では無いが、実際にはリヒトの各種強化スキルで大幅に強化されるので特に問題にはなっていない。
《エアレイド・ダッシュ》《エアリアル・ダッシュ》:【天馬騎士】のスキル
・それぞれ対地・対空用の突撃スキルで突撃時の速度と攻撃力を強化する。
・スキルレベルが上がると他のスキルと比べて比較的長時間効果を発揮する為、非常に高い操縦技能とAGIがあれば何度も敵に突撃する事も可能。
【ゴブリン・キング】:最後まで頑張ったが相手が悪かった
・尚、アイテムのリソースを回収するスキルは彼のモノでは無く、彼にリソースが流れていた訳では無い。
読了ありがとうございます。
第三章はもう少し続きますので応援よろしくお願いします。