とある三兄妹のデンドロ記録:Re   作:貴司崎

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前回のあらすじ:妹「私自身がシメの弾丸だ!」クインバース『グワーーーー!!!』


ゴブリン事件の終わり

 □【クインバース】の拠点 【戦棍騎士(メイスナイト)】ミカ・ウィステリア

 

「……痛たた……まあ、痛覚はオフにしてあるんだけど。……ていうか、私生きてる? HPは減ってるけど」

 

 私は自分で発案(不本意)した人間砲弾作戦によって超超音速で【鬼仔母身 クインバース】に向けて突っ込んだ訳だが、その後に地面へ激突したのに何故か生きていた。

 ……正直なところ私のAGIでは何が起こったのかはよく分からなかったが、身につけていた【救命のブローチ】と【身代わり竜鱗】が砕けていた事と、地面に激突する寸前にスピードが落ちた様に感じたので多分リヒトさんが上手くやってくれたのだろう。

 

(ちょっとだけ【気絶】してたから分からないけど、手元にお兄ちゃんが持ってたのと同じ特典武具入りっぽい【宝櫃】があるから多分【クインバース】は倒したんだろう。そんな()()()()し。……さて、このままだと残ったゴブリン達にリンチにされそうだけど……おおっと!)

 

 未だにフラつく頭を抑えながら現在の状況を確認していると、突如として私の身体が何者かに引っ張られる様に宙へと舞い上がった……そして、次の瞬間には【ハイエンド・セイクリッド・モノペガサス】のデュラルに乗って地上に接近していたリヒトさんの後ろに乗せられていた。

 ……更に私を乗せたリヒトさんは即座にデュラルの騎手を上げて上空へと昇っていった。

 

「おお! リヒトさん【クインバース】は⁉︎」

「討伐アナウンスがあったから倒したのは確定だ! よくやってくれた!」

『それよりさっさと離脱するぞ。……あのゴブリン達【クインバース】がやられたという事実でショックを受けて今は放心状態だが、おそらくこれから……』

『『『『『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!!』』』』』

 

 デュラルさんが何か言おうとして途端、地上から凄まじい怨嗟と怒りが伴ったゴブリン軍団の大咆哮が辺り一帯に轟いた……うーん、戦意喪失とかじゃなくてそっちの“ルート”に行くかぁ。まあ予想はしてたけど。

 

『ヨグモ女王ヲォォォォッ!!!』

『追エェェェェェェ!!! ヤツラヲ殺セェェェェェェ!!!』

『GAAAAAAAAAAAAA!!!』

「……わーお、みんなハッスルしてるねー(棒)」

 

 ……私が思わず下を向くと、そこには血走った目をしつつ怨嗟の声を上げながら上空にいるこちらを睨みつけるゴブリン軍団の姿がありましたとさ。【クインバース】を倒したら高確率でこうなるとは解ってはいたけど、実際にこれだけの殺気をぶつけられるとちょっとビビるね。

 勿論、ゴブリン達はただ喚いている訳ではなく、こちらに向けて弓矢や魔法や投擲による遠距離攻撃を行ってもいる……が、そこはリヒトさんが上手く飛び回る事で回避しているから私達には当たらずに空を切るだけである。

 

「それでリヒトさん、あの連中から逃げきれます?」

「逃げるだけなら君を乗せたままでも容易いが……あのゴブリン達をこのまま放っておく訳にもいかん。八つ当たりで近くにある村や街を襲撃される可能性もあるからな」

『幸いと言うか今のヤツラは我々にしか目を向けて居ないから、このまま引き離さない程度に逃げ回ればそう言った被害は抑えられるだろう』

 

 ……まあ、そうするしかないよねー。【クインバース】は倒したからもう増える心配は無いとはいえ、あのゴブリン達だけでも相当な戦力になるし。

 

「……一応、【クインバース】を倒した時点でこうなる可能性も予測していたから()()も打っているし、悪いがミカ君にはしばらく付き合ってもらう。……とりあえず【クインバース】を倒した事を連絡して、事前に伝えておいた予定通りあの辺りに追い込めば……」

「分かりましたー、お任せしまーす。……まあ、私はこうやって後ろに座っているだけしか出来ないので」

 

 そうしてリヒトさんはマジックアイテムで何処かに連絡を取りつつゴブリン達が撃ってきた遠距離攻撃を避けて飛行し始める……そんな状態なのに一発も攻撃当たってないとか、やっぱ超級職凄いね。

 ……そして私達は激怒しているゴブリン軍団としばらくの間だけリアル鬼ごっこ(ガチ)を行っていくのだった……ゴブリン()だけに()

 

 

 ◇

 

 

『『『『『待ァテェェェェェェェ!!!』』』』』

「うん、アイツらしつこいね。……どうも諦める気は毛頭無いみたい」

「私達以外に注意が行かないのはむしろ幸運ではあるのだが、付かず離れず逃げ続けるのも面倒だな」

『空を飛ぶ連中は撃ち落としたから後は地上からの遠距離攻撃だけしか向こうに出来る事は無く、それらも高度を取っていれば避けるか防ぐかし続けるのは容易いがな』

 

 あれから小一時間、私達はひたすらにゴブリン達との付かず離れずの追いかけっこを続けていた……まあ、リヒトさんとデュラルの飛行技能が凄まじいから多分私を乗せてるせいで全力で飛行出来ない筈なのに殆どの攻撃を回避しているし、まれに当たりそうな攻撃もデュラルが展開した結界に防がれるからこれまで私達はノーダメージである。

 ……それ以外にも空を飛べる【ゴブリン・ライダー】が襲い掛かって来た事もあったけど、即座にリヒトさんの槍に貫かれるかデュラルの蹴りで文字通り一蹴されている。

 

『唯一の懸念は《ユニゾン・マジック》だったが、アレは複数の術者の精神と魔力を同調させなければ使えない高等技巧だからな。あそこまで精神が乱れているなら使えない様だからな』

「そう言えば聞きそびれましたけど、コイツらを何処まで誘導するんですか?」

「ああ、<サウダ山道>の街道から大きく外れた人気の無い地点だ。アイツらを相手にする際に余計な被害を出さない様にな。……む、来たか」

 

 ……その時、リヒトさんの通信手段として使えるらしきマジックアイテムに誰かから連絡が入った。

 

「……はい、予定通りゴブリン達はそちらに誘導しています。そちらの準備は? ……分かりました。では後五分程度でそちらに付く様に誘導します。……それじゃあ向こうの準備が整った様だからそろそろ詰めに入ろう」

「はーい」

 

 通話を終えたリヒトさんはそう言うと少し高度を上げてゴブリン達を何処かに誘導し始めた……そして五分後、私を乗せたリヒトさんは<サウダ山道>の山間部にある盆地の上空にやって来ていた。

 ……そして、そこの上空には黄金の機械の馬に乗ったなんかリヒトさんと同等ぐらいの実力がありそうな騎士と、その後ろに横向きに座っているローブを着た老人の姿があった。

 

「グランドリア卿、【大賢者】様、お待たせしました準備は?」

「ええ、“歓迎”の準備は出来ていますよ。何せ五分も時間を貰いましたから」

「私は【大賢者】様をここまで運んだだけだからな」

 

 どうやら、その二人とリヒトさんは知り合いの様で何処か気安く話していた……以前、アイラさんから聞いた話と彼等の特徴は一致するし。多分この二人が王国に所属している残り超級職(スペリオルジョブ)である【天騎士(ナイト・オブ・セレスティアル)】ラングレイ・グランドリア卿と本名不明の【大賢者】さんなんだろうね。

 ……私がそんな事を考えていると地上から散々聞かされてきたゴブリン達の怨嗟の叫び声が聞こえて来て、そちらを見ると山間の盆地に次々とゴブリン達が入り込んで来る光景があった。

 

『『『『『『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!!』』』』』』

「……これは、上級のゴブリンがこれほどか。話には聞いていたが凄まじいな。拠点で防衛するコイツらを倒すのは我々でもかなり梃子摺るだろう」

「ですが、怒りで理性を失っているのであれば御し易いですね。……何せ()()()()()()()()()()に簡単に引っかかってくれるのですから。……魔法隠蔽解除」

 

 ゴブリン達が山間部に入り込んだ丁度その時、【大賢者】と呼ばれた老人が何かを呟きながら右手を振り上げると、盆地の上空に突如として直径300メートル以上の()()()()()が現れたのだ。

 ……そのあまりにあまりな光景にあれだけ怒号を放っていたゴブリン達ですら、頭上を見上げて沈黙すらしていた。

 

「五分も時間を貰えれば()()()()()姿()()()()()()()()()()()()()()()()()()ぐらい出来ますからね。……では、落ちなさい。《イマジナリー・メテオ》」

 

 そう言った【大賢者】さんが右手を振り下ろすと上空の隕石がゴブリン達に向かって急速に落下していった……それを見たゴブリン達が慌ててその隕石に弓矢や魔法を放つが、それらは全て隕石を擦り抜けていったので何の妨害にもなっていなかった。

 ……そして、その隕石はゴブリン達の群れの中央部分に激突して彼等を跡形も無く消し飛ばしていく。よく見ると周辺の地形には一切の影響を与えていないから、多分敵対生物だけ攻撃する感じの仕様なんだろう。何そのチート。

 

『『『……GA……GGA……』』』

「おや? 【ハイゴブリン・キング】は生き残ってますね。……ああ、《イマジナリー・メテオ》の範囲外のゴブリンにダメージを写しましたか。数が多すぎて盆地に入り切らないゴブリンが結構いましたからね。……では、()()()()落としましょうか。彼等にダメージを与えればその身代わりにされたゴブリン達を殲滅出来るでしょうし」

 

 隕石が落ちた後、まだ辛うじて生き残っていた三体の【ハイゴブリン・キング】を見た【大賢者】さんは何の事も無い様にそう言って、おそらく事前に準備しておいたもう一つの隕石を上空に出現させた……どうやら、あの隕石は複数用意してあったみたいだね(白目)

 ……それを見て呆然としている【ハイゴブリン・キング】に向けて先程と同じ様に隕石が落下していき、今度はその落下地点には何も残らなかったのだった……。

 

「……ふむ、これでここに来たゴブリン達は倒しましたかね」

「《トライブレベル・ラウンドサーチ》……この一帯にはもうゴブリンの姿は無い様です。……まあ、まだ【クインバース】によって産み出されたゴブリンが残っている可能性もあるが……」

「そこは<サウダ山道>から<ネクス平原>の監視を強化して対応するしか無いだろう。……王都の騎士だけで無くギデオン伯爵にも連絡して協力を頼むべきだな」

 

 あれだけいたゴブリン達をサクッと殲滅した御三方はそんな感じの会話をしながら周辺の確認をしているみたいだね……とりあえず、これで事件は解決して一件落着って事で良いのかな? 私の“直感”でも『この事件はこれで終わり』って感じがするし。

 ……そんな事を考えていたら私を放置していた事に気が付いたリヒトさんが話しかけて来た。

 

「おっと、それよりもまずはミカ君を送り届けなければならないな。……ミカ君、今回は本当に助かった。君達が早期に【クインバース】を発見・排除してくれたから楽に対処出来た。報酬の方も【許可証】を含めて相応の物を用意しよう」

「確かにあのゴブリン達は更に勢力を増した状態で正面からの戦いになっていれば、ここまで楽に済む事は無かっただろうしな」

「まあ、報酬の方は王都に戻ってから話し合う事になりそうですがね」

「は、はあ……」

 

 実際、この人達がいれば【クインバース】とか普通に倒せたんじゃない? と思ってしまったので恐縮しつつリヒトさんの背に隠れる私なのでした……まあ、そっちのルートだと勢力を増した【クインバース】達が人里を襲い始める気がするから、こっちの方が私的には良かったんだけど。

 ……後、本当に何となくだけどあの【大賢者】さんには余り関わらない方が良い気がするんだよね。何かこう“直感”がイヤな感じで反応しているというか……。

 

「それじゃあリリィ達と合流して王都に戻ろうか。報酬に関しては色々と話し合う事もあるから後日になりそうだが……」

「あー、それで良いですよ。私も今日は疲れたので」

 

 主に人間砲弾になった事とかね……そんな訳で本当に妙な事になった私達の【墓標迷宮探索許可証】入手クエストは終わりを迎えたのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 □◾️??? 

 

【孤狼群影 フェイウル】

 最終到達レベル:37

 討伐MVP:【壊屋(クラッシャー)】シュウ・スターリング Lv48(合計レベル:48)

<エンブリオ>:【戦神砲 バルドル】

 MVP特典:逸話級【すーぱーきぐるみしりーず ふぇいうる】

 

【絶界虎 クローザー】

 最終到達レベル:58

 討伐MVP:【闘士(グラディエーター)】フィガロ Lv46(合計レベル:46)

<エンブリオ>:【獅星赤心 コル・レオニス】

 MVP特典:伝説級【絶界布 クローザー】

 

【擬音色獣 サウンドカラレス】

 最終到達レベル:42

 討伐MVP:【盗賊(バンディット)】ゼクス・ヴュルフェルLv39(合計レベル:39)

<エンブリオ>:【始源万変 ヌン】

 MVP特典:逸話級【偽音色布 サウンドカラレス】

 

【心蝕魔刃 ヴァルシオン】

 最終到達レベル:51

 討伐MVP:【紅蓮術師(パイロマンサー)】レント・ウィステリアLv8(合計レベル:140)

<エンブリオ>:【百芸万職 ルー】

 MVP特典:伝説級【才集刃飾 ヴァルシオン】

 

【鬼仔母身 クインバース】

 最終到達レベル:69

 討伐MVP:【戦棍騎士】ミカ・ウィステリアLv45(合計レベル:95)

<エンブリオ>:【撃災棍 ギガース】

 MVP特典:伝説級【鬼身腰帯 クインバース】

 

「……ふむ、これは予想外と言うべきか。投下した<UBM(ユニーク・ボス・モンスター)>の多くが<マスター>に倒されるとは。……“こちら”に来たばかりの<マスター>に対する最初の壁として程々の強さのモノしか投下しなかったとは言え、これは嬉しい誤算か」

「やっぱり地球の<マスター>は優秀みたいだねー。……最初はどうなる事かと思ったけど、これなら何事も無く終わるかなー」

 

 そこは管理AI達が住まうとある場所、その一角ではジャバウォックとチェシャが今回の<UBM>投下イベントの成果であるその討伐情報を眺めていた。

 ……そこにはアルター王国を始めとした全ての国での<Infinite Dendrogram>を始めて内部時間で1カ月程度にも関わらず、投下した<UBM>を倒して特典武具を獲得した<マスター>達の情報が載っていた。

 

「結果を見ると今回の投下イベントは大成功と言って良いだろう。……まあ、本来は<UBM>が多くの<マスター>を打ち倒して、それによって彼等の発奮を促す予定だったのだがな。地球の<マスター>達は期待以上の逸材が多い様だ」

「まー、<マスター>達が強い分はいいんじゃない? 僕らの“目的”にはさー」

 

 それを見ていたジャバウォックは満足気であり、チェシャは懸念が悉く外れてくれたお陰で安心した雰囲気だった。

 

「ふむ、とすると今回のデータを参考にして今後のイベントで使用するモンスターの強度は上方修正した方がいいか。……例えばハロウィン用の<UBM>として【カボチャ化】の特殊な状態異常を他者に与えて操るモンスターとか。それと今後はクイーンの<UBM>判定はキツめにしよう」

「……影響が広範に及ぶイベントの<UBM>はティアンへの被害が少ないヤツにしてねー。……後、クイーンにはもうちょっと優しくしてあげて」

 

 ……そんな会話をしてから彼等は各々が<Infinite Dendrogram>で為すべき作業へと戻って行ったのだった。




あとがき・各種設定解説

妹:ギリ生存
・生存出来たのは【クインバース】に激突した時の衝撃をデュラルが貼った結界と【竜鱗】で防がれ、地面への激突時はリヒトが直前で速度を緩めた(止めるとGで潰れる)事と【ブローチ】のお陰。
・もう<UBM>を倒す為に人間砲弾はこりごりなので、しばらくレベル上げに徹したいと思っている。

リヒト・ローラン&デュラル:真のMVP
・【クインバース】を襲撃に行く前に【天騎士】と【大賢者】の二人に後詰めを頼んでおくなど油断無く詰めるタイプ。

【天騎士】【大賢者】:リヒトから連絡を受けた後に【黄金】に乗って全速力で駆け付けた
・これまでも<UBM>相手にリヒトが先行して情報収集を行い、それから援軍として彼等が駆け付けると言うのが何度かあったので対応は手慣れている。

ゴブリン達:流れ作業の様に討伐された
・尚、理性が残っていればもう少し善戦はしていた(勝てるとは言っていない)
・まだ残っている【ゴブリン・キング】とその配下も居るが、上が居なくなったので闇雲に行動する様になり人間や他のモンスターに討伐されて行く模様。

管理AI達:とりあえずイベントが無事に終わって満足(クイーン除く)
・【カボチャ化】<UBM>は適当に書いた物なので実際に出るかは不明です。

悪いスライム:名前だけゲスト出演
・ジョブが【盗賊】なのは『とりあえず悪人っぽいジョブに就きましょう』と思ったからだとか。


読了ありがとうございました。
最後はやや駆け足になりましたがこれで第二章本編は終わりになります。次回はオマケの掲示板回になる予定です。
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