<墓標迷宮>へGO!
□王都アルテア 【
「さて、いざ行かん神造ダンジョン<墓標迷宮>! 音速の数倍で投げ飛ばされるなどの凄まじい苦労の果てに手に入れた【墓標迷宮探索許可証】を今こそ活用する所だよ!」
「辛く厳しい戦いの果てに獲得したアイテムですからね。大事に使いましょう」
「実際、<UBM>二体と戦ったからねー」
「……本来は精々十万リルぐらいのアイテム何だがな、この【許可証】。……これ一枚手に入れるのにここまでドラマチックな事になるとは」
そんな感じで、私達
それに私は漸く転職条件を満たして就く事が出来た戦棍士系統上級職【剛戦棍士】のレベル上げもしないと行けないし、お兄ちゃんも
「まあ、あのクエストでは苦労した分、高額のリルの初めとした報酬はたんまりと貰ったからね。……それに
「うん! 僕も第四形態になれたしね! 」
「……と言うか、あの戦いが終わってから私達三人の<エンブリオ>が全て第四形態に進化しましたから。あの戦いで経験値的な何かを得たのでしょうか?」
「さあ? <エンブリオ>の進化に関してはよく分からんから何とも言えんな」
そう、あのクエストを達成し終えた翌日、私達がデンドロにログインするとそれぞれの<エンブリオ>が第四形態に進化していたのだ……まあ、ログアウト前にミメちゃんがなんかダルそうにしてた(彼女は進化前にちょっと気怠い気分になるらしい)ので、そうじゃないかとは思ってたけど。
……ちなみに私の【ギガース】はいつも通り《バーリアブレイカー》のレベル上昇とステ補正・装備性能の強化だけだったから、ちょっと損した気分。
「まあ、第三形態以前までの進化時とは比べ物にならないぐらいに強化はされてるけど。具体的にはHP・STR・END・AGIの補正がAになってたりしたしね。……確か第四形態からは<上級エンブリオ>って呼ばれて能力が大幅に上昇するんだっけ?」
「そうらしいな。アット曰く、ギデオンに居る【
「確か
だよねー。まあ別に私達は決闘王者を目指す予定はないから別に良いんだけど……ちなみに以前ちょっと調べた所、この世界の伝説に出て来る有名<マスター>ってその殆どがキャット姓で【猫神】のジョブに就いてるみみたい。
……ここの運営って妙な所で雑だよね。チュートリアルとか……人手が足りないのかな?
「……まあ、それはそれとしてミメも進化に際してスキルこそ増えませんでしたが五万強ぐらいまでに上昇したMPを筆頭に融合時のステータスがそこそこ上昇しましたし。更にスキルが強化、及びデメリットのいくつかが解除されたので大分戦いやすくなったのです」
「僕の名前も【模倣天女 ミメーシス】に変わって、TYPEもメイデンwith
「大丈夫、凄い似合ってるよそのコート」
「元の素材がいいからな、そういう衣装を着ても違和感はないだろう」
ミメちゃんが私とお兄ちゃんに新衣装を褒められて照れてる。可愛い! ……前までのミメちゃんの衣装は半袖とハーフパンツというさっぱりとして感じだったんだけど、進化した際に白を基調とした可愛らしいデザインの長袖ロングコートを上に羽織る様になったんだよ。
外見的にも進化して名前に付いた【天女】の文字にぴったりだね! ……でも、何で乗り物でもないのにTYPEにチャリオッツが付いたんだろう?
……と、そんな会話をしていたら突如お兄ちゃんが肩を落として溜息をついた。
「しかし、お前達は良いよなぁ、進化してパワーアップしてさぁ。……俺はむしろ第四形態になって折角必殺スキルとやらを覚えたのに何故か
「別に弱くなった訳ではないのでは? ……ただちょっと兄様の
「まあちょっと進化する間が悪かったよねー」
お兄ちゃんの<エンブリオ>【百芸万職 ルー】の必殺スキル《
……元々就ける500レベル分のジョブを合わせて今のお兄ちゃんの最大合計レベルは3000に届くので、超級職を除けば基本的に500までしかジョブレベルをあげられないこのデンドロに於いては非常に強力な“必殺”の名に恥じないスキルなのだが……。
「“ジョブ枠拡張”とか言うデンドロのゲームシステムに喧嘩を売ってる効果だからか相応のデメリットがあるんだよな……具体的には『就いているジョブ系統の超級職への転職不可』と『全ステータス補正
「最終的にレベルが六倍になるんだし、ステ半減でも別に良いよね! って感じかな」
「ステータス補正マイナスなんてあるんですね。私の補正はゼロのままですが」
「スキルのデメリットとしてならそういうのもあるみたいだよ」
そういう訳で、今のお兄ちゃんは進化前と比べてステータスが大幅にダウンしているのであった……一応、進化によって獲得経験値が+400%になるなど強化された部分もちゃんとある模様。
なので、この<墓標迷宮>でさっさとレベルを上げてステータスをどうにかしようとしているらしい。他と比べてステータスが半減しているなら他人の倍レベルを上げれば良い理屈だね。
「それにお兄ちゃんは【ヴァルシオン】があるんだしステータスはある程度どうにかなるでしょう。……私の【クインバース】は色々と
「ああ……確かに中々ファンキーなデザインですよね」
「でも性能は普通に強いだろう。俺の【ヴァルシオン】は合計レベル分のステータス上昇だから、他のステと比べて数値が多いHP・MP・SPの上昇に不安があるし……特に俺は魔法系だからMPが少ないのが痛い。他の装備で補ってはいるが」
ちなみに私が入手した特典武具【鬼身腰帯 クインバース】のデザインは正面に生前の【クインバース】に似たゴブリンの顔を模したエムブレムがあり、左右にこれまたゴブリンの頭部を模したキーホルダー的な物が付いているという見た目が物凄くファンキーでパンクでアレな感じのベルトなのである。
……まあ、能力はSP+50%のステ補正を初めとして、10秒毎にSPを1%ずつ回復するパッシブスキル《SP自動回復》と、SPを消費して自身に掛かった状態異常・デバフ効果を移し替えて治す事が出来るゴブリン頭キーホルダーを作る《インスタントエンパイア》と
「……しかし、能力だけじゃなくて外見もアジャストしてほしいね。お兄ちゃんの【ヴァルシオン】は土産物屋に売ってそうなオサレペンダントみたいな感じなのにどうしてこうなった」
「まあ、この手の剣型アクセサリーって小学生ぐらいの時に買った記憶があるな」
「あーよく道の駅とかで売ってますよね。……おっと、二人とも情報交換はここまでにしましょうなのです」
「着いたみたいだよ<墓標迷宮>」
ミメちゃんの言葉通り前方に<墓標迷宮>の入り口に続く墓地が見えてきたので、私達は日課の情報交換を辞めてその墓地に入っていった……しばらく墓地を歩くと二人の騎士に守られた石造りの門が見えて来た。
……どうやらアレが<墓標迷宮>の入り口の様なので私達は騎士さんに【許可証】を見せる事にした。
「……確認しました。どうぞお通り下さい」
「ありがとうございまーす!」
……さて、これから初めての神造ダンジョンアタックだね。張り切っていこう!
◇◇◇
□<墓標迷宮> 【
そんな訳で、今俺達は<墓標迷宮>地下五階に居た巨大な骨剣が付いた六本の腕、及び頭部の代わりに先端に骨剣が付いた骨の職種が付いた大型スケルトンであるボスモンスター【スカルレス・セブンハンド・カットラス】との戦いを繰り広げていた。
……尚、道中の事は出て来るゾンビやスケルトン、レイスを片端から蹴散らすだけの作業だったので描写はカットである。強いて言うならミュウちゃんがゾンビを殴るのを嫌がって《波動拳》による遠距離攻撃に徹していたぐらいかな。
「いい加減にしつこいのです。骨もゾンビもそろそろ見飽きたので消えてください《インパクト・フィスト》!」
「さっさとくたばるが良いわこのデカブツ! 《アンデッド砕き》!」
「お前も経験値になるんだよ! ……《ヒート・ジャベリン》!」
『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!?』
そして全員で容赦無くフルボッコにしています……確かにコイツは身体に付いた7本の骨剣で連続攻撃してくるそれなりに強いモンスターなんだが、うちの
……そこに二人が与えたダメージで怯んだ隙に、後方に居る俺が【紅蓮術師】のレベルを上げて覚え直した火属性魔法を当てる事でHPをガリガリ削っているのだ。
「ゾンビと違って骨なら殴っても汚れないので楽で良いのです《真撃》《正拳突き》!」
『素手だと感触が気持ち悪いもんねー《
『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!?』
乱舞される7本の骨剣をあっさりと躱しながらミュウちゃんは【カットラス】の足元まで接近して、そのまま【
「やれやれ、やはりMPが下がっているのが痛すぎるな。火力が出せん……《詠唱》終了《ブレイズ・バースト》!」
『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!!』
それによって出来た隙に、俺が《詠唱》によって強化された豪炎の奔流を倒れた【カットラス】に撃ち込んでその腕を二本程吹き飛ばした……やっぱり威力が落ちてるよなぁ。もっとレベリングしないと。
「よっしゃ! ナイス二人共! ……これで終わりだよ《インパクト・ストライク》!」
『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!!』
そうして死に体になって倒れ伏した【カットラス】にミカが飛び乗り、その胴体部にステータス補正特化の【ギガース】の進化と上級職になった事を合わせて更に上昇したSTRによる一撃を叩き込んでトドメを刺した。
……今回はレベリング重視で俺の《長き腕》をオンにしていた為【カットラス】はアイテムを落とさなかったが、階層ボスを倒した際に出て来る追加の宝箱は普通に入手出来た。
「それで宝箱の中身は……人数分の【エレベータージェム】と換金アイテムか。時化てるね」
「まあまあ姉様、今回はレベリング重視という方針なので良いでしょう。私の【武闘家】もだいぶレベルが上がりましたし」
「それで地下六階への階段と情報通りなら地上に繋がっているワープポータルが出てきたけど、予定通り先に進む感じでいいか?」
事前の話し合いでしばらくは<墓標迷宮>で経験値稼ぎマラソンをする予定だからな……地下五階までのゾンビやスケルトンは大したアイテムは落とさないけど獲得経験値は悪くないし、まだ<マスター>で【許可証】を持ってる人は少ないから狩り場がブッティングする事もないのも良い。
「そうだねー、ここまで大した消耗もしていないし。……それに次の地下六階からは植物型エレメンタルがポップするらしいから、火属性魔法が使えるお兄ちゃんならカモでしょう」
「これまでのゾンビ達も片っ端から焼き尽くしていましたからね。……お陰で匂いが酷かったですが」
「あー確かに……必殺スキルのお陰でジョブ枠増えたしアンデッド対策に【
ウチの妹二人が滅多にダメージを貰わないから後回しにしていた回復スキルだが、以前の戦いの事もあるし就いておいても良いかもしれないな……そんな会話をしながら俺達は地下六階へと続く階段を降りていったのだった。
あとがき・各種設定解説
兄:現在弱体化中
・第四形態になった必殺スキル以外の【ルー】の強化点は《長き腕にて掴むモノ》の切り替え時間が12時間になった事、《光神の恩寵》のレベルが四になり獲得経験値が+400%になった事がある。
・更に《仮想奥義・神技昇華》でコストに出来るレベルが最大40までになり、以前までは指定したジョブ一つからしかコストに出来なかったが、進化によって現在就いているジョブの中から複数のジョブを選んでそれぞれから任意のレベルをコストに出来る様になっている。
・後、TYPEもルールになった。
《
・第四形態時点で兄が就く事が出来るジョブの数を下級職20、上級職15だけ増やす常時発動型必殺スキル。
・ただしデメリットとして『現在兄が就いているジョブの同系統超級職への転職不可』と『全ステータス補正がマイナス50%』が課せられている。
・ちなみに【ルー】は兄の『妹達に追いつける様にもう少し才能が欲しい』という願いから生まれた<エンブリオ>であり、故に『
《ブレイズ・バースト》:【紅蓮術師】のスキル
・炎をやや狭い範囲の放射状に発射する攻撃魔法で消費MPはやや多いが、威力が高く攻撃範囲も味方を巻き込み過ぎないぐらい広いので扱いやすい魔法。
・ただ、範囲が広い分だけ単純な威力・燃費・射程は《ヒート・ジャベリン》に劣る。
ミカ:進化+上級職+特典武具でかなり強化された
・【ギガース】の進化によりレベルの上がった《バーリア・ブレイカー》はスキル強度の他にも効果の適応範囲も広がっており、壁を作って防御する魔法や物質の強度を上昇させる効果なども範囲内になった。
・ただし他ののステータス補正はほぼGのままという清々しい割り振りとなっている他、TYPEはアームズのままで武器としては装備攻撃力よりも単純な硬度と耐久力を重視して強化されている。
【剛戦棍士】:戦棍士系統上級職
・【戦棍士】の上級職でステータスはSTRに特化しており、ステータスの伸びがいいタイプのジョブなのでAGI・HPもそこそこ伸びる。
・スキルは下級職のソレを順当に強化したヤツが多く、両手持ちの大型メイスに対する補正もつく。
・また、戦棍士系統には転職条件が厳しく特殊なスキルを多く覚える別の派生上級職もあるらしい。
【鬼身腰帯 クインバース】:伝説級特典武具
・アクセサリーの装備枠を一つ消費してSP+50%と《SP自動回復》のスキルが付くので、デザインが少々アレでも装備せざるを得ない(妹談)
・《インスタントエンパイア》でゴブリンヘッドキーホルダーを作る方法は【クインバース】にSPを任意の量込める→腹部に着いた頭部の口からキーホルダーが出て来る、と言った感じ。
・一つのキーホルダーに移せる状態異常・デバフの量は製作時に消費したSP量によって決まり、このスキル自体のクールタイムは一時間でストック出来るキーホルダーの数は最大10個まで。
末妹&ミメ:何故チャリオッツが付いたんでしょうか?
・まず《天威模倣》はコピー出来るステータスが五つになりSTRからLUCまで全て適応可能になった他、同一対象への24時間使用不能のデメリットも解除されている。
・《転位模倣》の方も同じ様に24時間使用不能のデメリットは解除されたが、どちらも使用後1分間のクールタイムは健在。
・《攻撃纒装》はストック数が一気に六つまで増えており、更にストックした攻撃を肉体に付加するだけでなくコストを支払ってストックした攻撃をそのまま使う事も可能になっている。
・例としてはMPを消費して放つ火炎ブレスをストックした場合、肉体に火属性とブレスの攻撃力を付加するか、MPを消費して火炎ブレスを放つかを選べる感じ(当然ながらコストが支払えない場合にはそのまま使う事は出来ない)
・また、TYPEが“フュージョン”では無くチャリオッツとのハイブリッドなのは、スキル《憑依融合》が一部のレイスのエレメンタルが有する憑依系スキルがベースの“半憑依半融合”的なスキルでマスターを乗機に見立てて乗り込む感じだから。
・《憑依融合》中は種族はエレメンタルになっており、更に属性耐性や状態異常耐性などのマスクデータや肉体の再生能力などもエレメンタルとして結構上がっていたりする……が、
《波動拳》:【武闘家】のスキル
・MPを消費して拳から衝撃波を飛ばすスキルで、本来なら東方の格闘系ジョブで習得出来るスキル。
・MP消費なのでミメ憑依時の末妹にとっては使いやすいスキル。
《真撃》:【武闘家】の奥義
・次に使用する格闘系アクティブスキルのクールタイムを十倍にする代わりに威力・効果を大幅に引き上げるスキルで、このスキル自体のクールタイムは長め。
・【武闘家】で覚える中で唯一スキルレベル10まで上げられるスキルであり、レベルを上げれば増幅倍率が上がりこのスキル自体のクールタイムは下がっていく。
読了ありがとうございました。
今回は説明回だったからあとがきが長くなりました。やっぱオリ設定書くのは楽しいです(笑)