□<墓標迷宮> 【
「レイスは邪魔! 《ピュリファイ・アンデッド》! ……残りはさっさと経験値になれや! 《アンデッド切り》!」
『『『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!?』』』
さて、俺は今<墓標迷宮>の地下四階でアンデッド相手のレベリングに励んでいた……とりあえずMP吸収と【恐怖】状態異常を操る面倒な【テラー・レイス】はアンデッドに対するデバフ、及び低位アンデッドへの即死効果がある【
そしてデバフが掛かった武器を持つ骸骨【ソルジャー・スケルトン】と、こっちに食おうとして来るゾンビ【ハングリー・グール】を【騎士】のアンデッド特効斬撃で斬り伏せていく。
……ちなみに【司祭】の次に【騎士】のジョブを取ったのはソロ行動だと近接戦への備えも必要だと思ったからだが、一対多数の乱戦だと魔法を使う余裕が無い時だと近接用種族特効スキルが大活躍。お陰で大分狩りも楽になった正解だった。
「アイテムは落とさなくて良いから経験値をハリー! ハリー! ハリー! 《魔法多重発動》《ホワイトランス》!」
『『『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!?』』』
そうしてある程度近くにいたアンデッド供を切り捨てた後、《詠唱》による上乗せ込みで散髪の聖なる光の槍の魔法《ホワイトランス》を離れた場所に居るアンデッドへと放って消滅させた……【司祭】で覚える数少ない聖属性攻撃魔法だがアンデッドには覿面に効くな。
……しかし、妹達が見ていない事とレベリングの為の狩りのし過ぎでちょっと口調が変になって来てるな。誰かに見られたらアレだし気を付けよう。
「ふぅ、とりあえずここら辺のアンデッドは片付けたか。……おっと【騎士】がやっとカンストしたな」
ステータス欄を見るとメインジョブにしていた【騎士】のレベルが50になっていた……やっぱり下級職のレベルを上げるだけなら地下三階から四階辺りでアンデッドを乱獲するのが今の所一番効率的か。
地下六階で植物狩りでも良いんだが罠や不意打ちがあるから今の俺のソロでは事故の可能性があるし、地上に戻るのも【エレベータージェム】を使う必要があるからな。
……まだ余裕はあるし引き続き狩りを続行しても大丈夫そうだし、
「……テレレレッテレー! 《ジョブチェンジロッド》〜!」
この一見ただの杖に見える《ジョブチェンジロッド》には、装備スキルとして自身が就いているメインジョブを変更出来る《ジョブチェンジ》が備わっているのだ〜……うん、この某有名青狸の真似は
ちなみに、これは以前【司祭】のジョブレベルを上げきった時にジョブ入れ替えの為に<墓標迷宮>から出ざるを得なかったので、レベリング中でもメインジョブを変更出来るように<マリィの雑貨屋>で100万リル程で買ったやつ。お陰で手持ちが結構減ったよ。
……まあ、使い捨ての【ジョブクリスタル】でも10万はするし、この杖も本来なら300万近い値段がするんだけど『そもそもフィールドでジョブを変更する必要なんて滅多にないから使い捨てで十分じゃね?』と言う理由で売れ残っていたから安くしてくれたし。
「それじゃあさっさとメインジョブを変えますか。《ジョブチェンジ》──【
とりあえずアンデッド狩りの効率を更に上げる為に聖属性攻撃魔法と悪魔・アンデッドへの聖属性ダメージ及びスキル効果上昇特効パッシブスキル《エクソシズム》を覚える【祓魔師】へとメインジョブを変更した……今後の育成方針としてはドンドン下級職をカンストさせていくつもりだからな。
……本来なら上級職の方がステータスの伸びは良いんだが俺の場合は必殺スキルの所為でステータスが半減しているし、装備している【才集刃飾 ヴァルシオン】の《強装才刃》によって合計レベル分ステータスが上がるからな。同じレベル50上げるのでも下級職なら上級職の半分くらいの経験値で済むし、こっちの方が手早く強くなれると考えての事だったりする。
『『『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️』』』
「……おっと追加が来たか。じゃあレベリングの続きを始めますか」
一通りの作業を終えた辺りで追加のアンデッドモンスター達が生者の気配を探り出したのかこっちに近づいて来たので、引き続き俺は両手に剣と杖を持って引き続きレベリングの為の狩りを行っていったのだった。
◇
あれから<墓標迷宮>でレベリングを行なっていた俺はキリの良い所で雑魚狩りを辞めてから、地下五階のボスを倒して地上に戻って来ていた……ちなみに倒した方法はデバフを掛けてから自作の火属性魔法入り【ジェム】を叩き付け続けるという力技である。
それから【司祭】で覚えた浄化魔法でアンデッド臭くなっていた自分の肉体や装備を清めてから、ちょっと近くの喫茶店で一服している所だ……ゾンビ臭いままだと文句を言われるからな、前までは一旦ログアウトする必要があったぐらいだし。
「……よしよし、漸く合計レベルが300を超えてそろそろ400に届きそうだな。これでステータスも少しは……うん、つまりステ補正の無いティアン150レベル分だからなぁ。全ステータス+300ぐらい上昇するのをを込みでもどうにかレベル100ぐらいの<マスター>レベルかな。……<エンブリオ>の固有スキルとか抜きで」
そんな感じでステータス欄を呼び出した俺はその内容を見て溜息を吐いてしまった……やっぱり全ステータス半減が思った以上に足を引っ張っているな。特に数値の桁の関係で【ヴァルシオン】による補助が少なくなってしまうHP・MP・SPが。
それに俺の【ルー】は戦闘に使えるスキルが、レベルをコストにするからどうしても使う場面が限定されてしまう《
「……ふむ、やはり今後は強力なスキルを覚える上級職も取っていった方がいいかな? ……ただ転職条件を満たすのが面倒だからな。モンスター討伐条件なら亜竜級ぐらいならどうにかソロで倒せる俺なら何とかなるんだが、ジョブクエストが条件になると時間が掛かるからな……」
一応、レベリングの合間にジョブクエストを受けたりもしているんだが、ジョブによっては面倒な転職条件があったりするからな……例えばこのアルター王国の目玉ジョブとも言える【
……俺が早期に【
「特にこの王国の主要ジョブである騎士系統や司祭系統の上級職には、それぞれ騎士団や教会関係者の推薦が条件になってる事が多いからな。……じゃあ【司祭】のジョブクエストはこの前受けたし、今日は【騎士】のジョブクエストでも受けに行きますか」
……そうして俺は勘定を済ませてからジョブクエストを受けに騎士団の詰所まで行く事にしたのだった。
◇
「さてと、どんなクエストがあるかね……」
そういう訳で特に何事も無く騎士団の詰所にやって来た俺は、そこに備え付けられた騎士系統ジョブクエストが乗ったカタログを眺めていた……このカタログは冒険者ギルドで使われている物と同じで現在受けられるクエストが分かるマジックアイテムで、他にも各専門ギルドなどジョブクエストが受けられる場所にそれぞれ専用のヤツが置かれているのだ。
「騎士系統のクエストだと一番ポピュラーなのは騎士団の手伝いとしてのモンスター討伐とかか。後は街中の見回りの手伝いや合同訓練などか……どうも騎士団員と合同でやるのが多いみたいだな」
まあ、ジョブクエストは冒険者ギルドで受けるクエストと違ってそのジョブ系統でなければ出来ない専門的なヤツばかりだからな……モンスターや犯罪者を相手に戦って国や人を守る公務員──と言うのがこの国の騎士の仕事内容である以上はジョブクエストもそういう内容になるんだろう。
……魔石職人系統なら【ジェム】作り、司祭系統なら治療とか悪霊払いといった具合にジョブクエストは専門的なだけあって時間が掛かるものが多いからな。やはり割とお手軽に受けられる冒険者ギルドのクエストと比べると敷居が高い。
「特にログイン時間が限られてる<マスター>だと長期的なタイプのクエストは受けられんしな。……まあ、今日はまだ時間があるから大丈夫だが「おや、レントさん」……ん? 貴女はリリィさん、お久しぶりです」
そんな風にカタログを捲っていた俺に突然声を掛けてきた人がいたので顔を上げると、そこには以前クエストで行動を共にしたアルター王国近衛騎士団の一人リリィ・ローランさんが立っていた。
「はい、久しぶりですねレントさん。……そのカタログを見ていると言う事は、貴方も騎士系統のジョブに就いたのですか?」
「ええ先日【騎士】のジョブに就きましたので、折角だからジョブクエストも受けてみようかと。……それで? リリィさんは何か私に御用でも?」
「む、用が無ければ声を掛けてはいけないので?」
「いえ、そんな事は無いですが。何か用がありそうな雰囲気だったのと……
尚、誘拐事件というのは先日この国の第三王女がとある犯罪者<マスター>に誘拐された事件の事である……幸いその王女は騎士団に助けられたらしいのだが、守るべき王女を一度誘拐されたとあって騎士団は王都・王城の警備の強化を急いで行っていたらしいからな。
ちなみにこの話は先日司祭系統ジョブクエストを受けた時に一緒になったティアンの【司教】さんに聞いた話で、掲示板とかでも犯行声明が出たとかで<マスター>間でも結構話題になってた。
……しかし、そんな馬鹿をやる<マスター>がいずれ出るとは予想していたが、まさかいきなり王女誘拐をやらかすとは。その指名手配された“ゼクス・ヴュルフェル”とかいう<マスター>は余程アレなヤツなんだろうな。
「……やっぱり誘拐事件の話は広がっているんですね」
「あ、すみません。不謹慎でしたね」
「いえ、あの事件は王城に居る王族は安全だと慢心していた私達近衛騎士団が愚かだったのが原因の一つですから、それについての批判は甘んじて受けましょう。……それに貴方に頼み事があるのは本当ですし」
いかんいかん、王女の誘拐事件なんてどう考えてもこの騎士団詰所で出す話題じゃ無いだろ俺! ……ぬぬぬ、やっぱり無理なレベリングのし過ぎでちょっと疲れているのか? ジョブクエストまでやるのは辞めとくかなぁ
……とにかく、リリィさんが何か用があるのは事実みたいだし、とりあえずそれを聞いてから今後の予定を考えようか。
「……それで、俺に頼み事と言うのは?」
「はい、確か以前のクエストでレントさんの<エンブリオ>に“倒したモンスターのドロップアイテムを経験値に変換する”スキルがあると言っていましたね。……そして、そのスキルはパーティーを組んでいる者にも有効であると。妹さん二人のレベルも<マスター>としては非常に高いですし」
「ああはい、そうですが」
そのスキルとは最近のレベリングで経験値増幅の《
どうもデンドロのモンスターが倒された時にはアイテムの方に内包するリソース的なサムシングが多く割り振られる仕様だからな。それも高位のモンスターだと【宝櫃】という形でより多く。
……ふむ、何となく彼女が何を頼みたいのかは予測出来るな。
「もう気付いているかもしれませんが、レントさんに頼みたいのは騎士団のメンバーのレベリングの手伝いです。……先日の誘拐事件もあって騎士団全体の地力の強化も必要だという話が出たのですが、警備体制の強化などで時間や人員の余裕が少なくなって中々ジョブレベル上げが出来ない状況だったのです。……経験値増大のアイテムもありますが高い上にそこまで劇的な効果はありませんし」
「それで俺の<エンブリオ>で短時間の内にレベルを上げたいと」
あの手のアイテムって使い捨てで高価な割には効果が微妙だからな。俺もレベリングの足しになればと覗いてみたが《ジョブチェンジロッド》買ったばかりで懐に余裕が無かったし辞めたが。
「そういう事です。……クエスト内容としてはこちらで選んだ騎士団の人間とパーティーを組んでのモンスター討伐になりますが、出来れば何度かに分けて行う形にしたいですね。時間に関しては出来るだけそちらに合わせますが、メンバーを招集する必要があるので早くとも明日からになるでしょう。報酬に関しては現金を予定していますが、何か他に欲しい物があれば言ってください」
「……それじゃあ【聖騎士】に転職する為の推薦状とかは?」
リリィさんに何か欲しい物はと聞かれたので転職用の推薦状を要求してみた……【聖騎士】にはちょっと興味があったし、俺としては現金よりも上級職の転職条件を満たせる方がいいしな。
「現金の代わりの報酬としてなら構いませんよ。私が一筆書くだけですし、前回のクエストの事もありますから
「……分かりました、そのクエストをお受けします。報酬は推薦状で」
【クエスト【騎士団員のレベル上げの手伝い 難易度:三】が発生しました】
【クエスト詳細はクエスト画面をご確認ください】
「ありがとうございます。……それでは明日のこの時間からで大丈夫でしょうか?」
「……ふむ、この時間なら空いているので大丈夫です」
「では、明日のこの時間までに再びこの詰所に来て下さい。そこで狩り場などは詳しく説明します」
そんな感じで俺はリリィさんからのクエストを受ける事になった訳だ……とりあえず今日はもうログアウトして寝るか。今休んでおけば三倍時間込みで丁度いい具合にログイン出来るだろう。
……まあ、その前に妹達に事情を説明しておく必要があるだろうがな。
あとがき・各種設定解説
兄:最近ではアンデッドのグロも気にならなくなっている
《ピュリファイ・アンデッド》:【司祭】のスキル
・周囲のアンデッドに対してステータスデバフを掛けて、更に自身のレベルとスキルレベルを基準にして低位のアンデッドを一定確率で成仏させる聖属性魔法。
【ジョブチェンジロッド】:兄のお高い買い物
・装備補正などは皆無だがMPを消費して装備者のメインジョブとサブジョブを変更出来る《ジョブチェンジ》の装備スキルを持ちクールタイムは一時間程。
・昔に【ジョブクリスタル】の研究の一環で作られて少数量産されたが『そもそも屋外でのジョブ変更なんてサブジョブのレベルを上げている時に何かメインジョブのスキルが必要になった時ぐらいだし、それなら使い捨てでも十分では?』という意見が出て、コストも馬鹿にならないのでそのまま生産中止になった代物。
・尚、<マリィの雑貨屋>に置いてあったのはマリィも【ジョブチェンジロッド】の制作に関わっていたからで、余った在庫を引き取ったのだが売れずに困っていたらしい。
リリィ・ローラン:誘拐事件のせいで仕事量が増えた
・そんな中で騎士団員の地力を上げる為の案の一つとして兄の<エンブリオ>に目を付けていて、休憩を取っていた時に偶々見つけて声をかけた形。
・また、信用出来る<マスター>との繋がりを深める目的もあり、特に誘拐事件の所為で<マスター>へ不信を抱く一部の騎士団員への対応策の一つでもある。
第三王女誘拐事件:デンドロ内外で結構噂が広がっている
・尚、本当に第三王女を取り戻したのはとある<マスター>なのだが、その彼が『あんまり目立ちたく無いんで、俺がこの件に関わった事は秘密にして欲しいク……ワン』と言ったので広まっていない。
・これは第三王女誘拐という大事件が大っぴらになった時の悪影響や、情報を知った一部の<マスター>が軽率な行動に出かねないという理由で、暫くの間は指名手配はしつつも出来る限り騎士団内で解決するために一般には噂を広がり難くする思惑もあった。
・……のだが、この事件の犯人が『あ、誘拐事件の情報があまり広まっていませんね。これではこの私の悪名が世界に広がりません』とか言ってデンドロ内外で事件の事をさっさと公開した為、やむ終えず騎士団はとある着ぐるみの人以外の情報を積極的に公開する方針に切り替えた。
読了ありがとうございました。感想・評価・お気に入りに登録・誤字報告などはいつでも歓迎。