とある三兄妹のデンドロ記録:Re   作:貴司崎

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前回のあらすじ:兄「騎士団も色々と大変なんだなぁ……。多分、これからもっと苦労する事になるんだろうけど」


昔話と準備と

 □王都アルテア・とある喫茶店 【聖騎士(パラディン)】レント・ウィステリア

 

「……とまあ、そんな訳で俺は【聖騎士】に転職してそのジョブクエストとして近衛騎士団のレベリングに付き合っていたんだよ。……俺の合計レベルもそれなりに上がったし奥義の《グランドクロス》も覚えたから、それなりの収穫があったと言えるだろう」

「こっちは普通に冒険者ギルドのクエストを受けただけだから特に変わった事は無かったかな。……強いて言うならそれなりにお金が稼げたぐらい」

「後は私が【魔拳士(マジックボクサー)】をカンストして、新しく【拳士(ボクサー)】に就いたぐらいですかね。魔拳士系の上級職はまだ条件を満たしていないので、とりあえずアクティブスキルを覚えられるジョブに就いたのです」

「……ただ、どうも【魔拳士】のスキルって多くが魔法系スキル扱いなのか【拳士】をメインにしていると使えないヤツが出て来るのが問題なんだよねー」

 

 そう言う訳で俺は久しぶりに妹達と一緒にパーティーを組んで、行きつけの喫茶店でお互いに別行動していた時の事を報告し合っていた……連携とかの関係上お互いの状況は知っておいた方が良いからな。

 ……ちなみに【聖騎士】のジョブスキルには《聖別の銀光》とか言う対アンデッドに超強いスキルがあるみたいなんだが、何でもリリィさん曰く『騎士団の秘奥』らしくて取得条件は教えて貰えなかったのは少し残念だったな。

 その代わりに他の【聖騎士】のジョブスキルの取得条件は奥義の《グランドクロス》含めて全部教えて貰ったし、奥義取得の為に騎士団のレベリングを【聖騎士】のジョブクエストを回して貰ったけどね……俺は奥義を取得出来て、向こうはレベルが上がるというwin-winの関係だったよ。

 

「さて、じゃあ近況報告はここまでにして本題に入ろうか。……お兄ちゃん、そろそろ王都を出て他の街に行ってみない?」

「……ふむ? それは別に構わないが随分といきなりだな。もう王都には飽きたのか?」

「そういう訳では無いのですが……兄様、私と姉様はこの<Infinite Dendrogram>の世界でなら自分達に与えられた“才能”の意味が見つけられるかもと思っているのです。だからもっとこの世界を見て回りたいのです」

 

 そう言った妹達の表情はこれ以上ないぐらいに真剣なモノだった……あー、まあこの二人の“直感”と“戦闘”の才能って現実だと普通は活躍する機会が殆ど無い代物だから、こっちの世界でなら『自分の才能で何か出来るかも』『才能を存分に使えるかも』と思ってそういう考えになるのも無理はないか。

 ……“人間”の領域を半歩ぐらい超えた才能を持つこの二人と比べれば大して深刻では無かったとはいえ、俺も自分の才能について色々と悩んでいた時期があるから気持ちは分からなくは無いしな。

 

「……まあ、お前達がそうしたいと言うなら兄として助けるのは吝かではないし、俺もデンドロの世界を巡ってみるのは面白そうだと思うから旅に出るのは一向に構わないが。……そうだな、何か参考になるかは分からないが少し俺の昔話でもしようか」

「「え?」」

 

 ……と言っても、そんな御大層な話では無いんだが……俺は努力とかしなくても大抵の事が上手く出来てしまっていたから、小学校高学年から中学に掛けて自分は正真正銘の天才だとイキっていた時期があってな。

 ……うむ、今思い出してもちょっと悶えたくなるぐらいに当時の俺はイタいヤツで、剣道をやっていたのも自分より才能が無い他人を打ち負かして悦に浸る気持ちもあったぐらいだしな。

 

「まあ、そんな中途半端な気持ちでやってる剣が本物の天才に勝てる訳もなく始めて敗北を経験した上で挫折。更に自分よりも才能がある人間に対して醜い嫉妬心を抱いた上、その後にあった航空機事故を言い訳にして剣道から逃げた訳だが……」

「……あれ? お兄ちゃんが剣道辞めたのって事故の後遺症が原因じゃ?」

「実を言うと今は後遺症は治ってるし剣道をやろうと思えば出来るな」

「……えぇ……(困惑)」

 

 俺の話を聞いた妹達が困惑した表情を浮かべているが、それはとりあえずスルーして話を続けよう……そんな昔の俺だが事故の後に出会った友人や、中学・高校での学園生活とその中で自分がやりたい事を探すために行った様々な活動の中で、自分なりに自分の才能への“答え”を得て納得したという訳だ。

 ……うん、今思い出しても当時の俺は実に無様でイタい男だったな。正直こうやって話している間もちょっと心が痛い(泣)

 

「……それで、兄様が得た自分の才能への“答え”とは?」

「うむ……ぶっちゃけ()()()()()()()()!」

「……えぇ……(2回目)」

 

 二人は何か困惑しているが、そもそも『自分がこの才能を生まれ持った意味』とかそんなのある筈ないじゃん! 人間は生まれを選べない以上は偶々そう生まれついただけでしか無いのだし。

 ……大学生にもなった今なら、あんな風に『生まれた意味』とか『運命』とか『やるべき事』とか考えてしまうのは、誰もが中学生ぐらいで一度は考える様になってしまう麻疹の様なモノなのだろうと分かるしな。

 

「……と言っても、他人から言われた“答え”では()()は出来ない事ぐらいは分かっているしな。……お前達がそれで納得出来る様になるのなら兄として可能な限り手助けしよう。まあ、後数年もすれば今の自分を思い出して悶えたくなるかもしれんがな!」

「お兄ちゃん……」

「兄様……」

 

 なんか二人が嬉しい様な呆れた様な表情をしているが、言いたい事は言えたし良しとしよう……それに妹達が抱えている悩みは俺のと比べると遥かに深刻だからな。

 ……余り深刻にならない様に出来るだけ軽い感じで過去話をしてみたけど、二人とも大人びてはいるがまだ小学生だし“納得”するには時間が掛かるだろうしな。一度に色々と話し過ぎてもアレだし、一旦この辺りで話を切り替えよう。

 

「……さて! この話はこれまでにして具体的な旅行プランを練っていこうか。どんな旅行にする?」

「え? ……あ、うん……どうしようか?」

「ええーっと……」

「……お兄さん、それなら王都近くの街に行く感じでいいんじゃないかな。南にある『ギデオン』っていう街とかは決闘が盛んだって格闘家ギルドで聞いたけど」

 

 いきなり話を切り替えた事で妹二人はちょっと困惑してしまった様だが、そこで空気を読んでくれたミメが助け舟を出してくれた事で何とか話題の転換には成功した。

 まあ、それに噂で聞く限りギデオンは決闘好きの<マスター>が多く滞在しているらしいし、デンドロで初めて出掛ける街としては丁度いいだろう。

 

「確かに格闘家ギルドでそんな話を聞きましたね……じゃあ、まずはギデオンに行ってみるという事で良いんじゃないでしょうか。その後に関しては応相談で」

「私も別にそれで良いよ。……()()()()はしないし」

「じゃあ決まりだな」

 

 そんな感じで俺達の最初の旅行の行き先は<決闘都市ギデオン>に決定したのだった……さて、これまでのひたすらなレベリングのお陰で、戦闘能力的にはギデオンに行く()()なら今から歩いて行っても良いぐらいなんだが……。

 

「じゃあ次は移動手段かな。……別にギデオンまでなら徒歩でも問題ないっちゃあ無いんだが……」

「今後も色々な所に行くならちゃんとした移動手段は欲しいですね。ずっと徒歩だと疲れますし……何か良い手段は無いでしょうか?」

「この国での移動手段としては馬車を始めとしたテイムモンスターを利用したものが主流みたいだよ。この前に騎士団の詰所で聞いたー」

 

 確かクエストの時のリリィさんも『騎士系ジョブはAGIが低いから馬系モンスターに乗る事が多い』と言っていたか……まあ、彼女やリヒトさんのペガサスの様に強力な馬形モンスターは少ないので、普通の騎士が乗っているのは下位の馬型モンスターらしいが。

 ……とは言え、そんな下位の馬型モンスターであってもAGI換算で最低2000以上は出せるらしいし、移動・戦闘共に非常に役に立つとの事。

 

「まあ、移動手段としてのテイムモンスターは馬型以外にも結構種類があるらしいがな。……確かそういうテイムモンスターとかの専門店もあるみたいだし、この後ちょっと見に行ってみるか?」

「おお! いいね! そういうのは初めてだから面白そう」

「テイムモンスターを扱う気は無いですが興味はありますね」

 

 そんな訳で、俺達は移動手段を探すために王都にあるテイムモンスター専門店に向かう事に決めたのだった……ただ、肝心の場所がよく分からないので、まずは近くにある<マリィの雑貨屋>に買い物を兼ねて聞き込みに行く事となったが。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 □王都アルテア 【剛戦棍士(ストロング・メイスマン)】ミカ・ウィステリア

 

「……ふむ、マリィさん曰く『この王都のテイムモンスター専門店で貴方達に一番おススメのは従魔師ギルドの近くにある店かしらねー。ギルドの管理下にあって騎士団も利用してるから信頼出来るしー』との事だったな」

「お兄ちゃんの声真似と演技が無駄に上手い件。……それはともかく、ギルド管理下だから初心者向けのモンスターが多くて私達でも選び易いみたいだし」

「まあ、その分だけ品揃えは無難なモンスターばかりなので、ベテランの【従魔師(テイマー)】は別の店に行く事も多いそうですが私達には関係無いですね。別に従魔師じゃ無いですし」

 

 あれから<マリィの雑貨屋>で買い物ついでに王都でおススメのテイムモンスター専門店を聞いた私達は、マリィさんのおススメだというギルド直轄のお店に向かっていました。

 ……さっきのお兄ちゃんの過去話には色々と思う所はあったけど、それは今は置いておいてまずは真っ当にゲームを楽しもうか。

 

「……あ、あそこじゃないかな、従魔師ギルド。看板にそう書いてあるし」

「確かにそうだな。……マップによるとその隣に<ギルド直轄・テイムモンスター専門店>がある筈だが……あそこか」

「入ってみよう」

 

 ミメちゃんが見つけたギルドの隣にそんな分かりやすい名前のお店があったので入ってみると、店内には沢山のショーウィンドウが置かれており、その中には確かテイムモンスターを入れるアイテムだという【ジュエル】が置かれていた。

 ……よく見ると【ジュエル】の隣にはモンスターの写真や能力や値段が書かれた商標が張ってあったので、どうやらこれらの【ジュエル】には全て売り物であるテイムモンスターが入っているみたい。

 

「……実は私テイムモンスターの専門店には、もっとこうモンスターが入っている檻とかが並んでいるイメージがあったんだけど……」

「こんな街中でモンスターをたかが檻に入れただけで放置とかしたら色々ヤバいだろう。必要なスペースや衛生面とかも馬鹿にならないだろうし。……一応、店員さんに許可を取ってその立ち会いの元でなら中にあるモンスターを解放して見定めるぐらいは出来る様だが」

 

 確かにモンスターを格納出来る【ジュエル】なんて便利な物があるなら現実みたいに檻とかを使う必要は無いよねー……さて、店内地図を見てみるとここは初心者テイマー様の低レベルモンスターが売っているエリアみたいだね。

 ……えーっと、他には高レベルモンスターが売っているエリアや【ジュエル】などのテイマー向けアイテムが売っているエリアとかがあるね……お?

 

「お兄ちゃん、騎乗用・移動用テイムモンスターが売ってるエリアがあったよ!」

「でかした!」

 

 そんなこんなで私達は店員地図に載っていた『騎乗・移動用モンスター売り場』に向かった……そこには【ランドウィング】や【ブラックホース】などの移動手段として使えるモンスターが多数【ジュエル】に入った状態で展示されていた。

 

「……ふむふむ、移動用ってだけでも結構色々な種類があるみたいだね。馬とか鳥とかトカゲとか……あとドラゴンまであるよ」

「基本的には地上を移動するモンスターばかりか。……空を飛べるモンスターも居るには居るがどれも亜竜級以上な上、地上型モンスターと比べても遥かに値段が高いな」

「空を飛べて人も運べるモンスターはお高いみたいなのです。……大体亜竜級で300万リル以上、純竜級だと1000万は超えてますね。飛行可能だと更に二倍・三倍の値段がする感じでしょうか」

「今の僕達の資金だと地上用の亜竜級一体ぐらいまでが限界かな?」

 

 ミメちゃんの言う通り私達の有り金を集めてもそのぐらいが限界かな……一応、各々クエストとかを受けたりして稼いでは居るんだけど、その分アイテムや装備で消費する額も多くなってるからね。お兄ちゃんのスキルで経験値優先で稼いでいるのもあるけど。

 ……どうやら商標には各々のモンスターの用途とかも書かれているみたいだし、自分達に必要な物を調べてみようか。別に今日買わなきゃいけない訳でもないから、資金が足りなくても後日また稼いで買えば良いし。

 

「とりあえず移動手段として買うなら馬かな? 俺とミカは騎士系統のジョブのお陰で《乗馬》スキルを持ってるし……使った事はないからレベル1だが」

「スキルレベルに関しては使っていれば上がるでしょ。……四人で移動するなら馬車を使えば良いし、なるべく優れた馬を一体買えば良いかな」

「馬型モンスターの種類は結構あるしね。足が速いのとか力が強いのとかがあるって紹介に書いてある」

「値段も多少お高いですが亜竜級程では無いですしね。……て言うか、亜竜級以上の馬型モンスターは殆ど売ってないみたいですが」

 

 尚、近くの店員さんに聞いて見たところ馬型のモンスターの殆どはあまり強くならないらしく、亜竜級以上まで進化するものは非常に稀らしい。ただその分、足が速くて使役しやすいので一般的な移動手段としては優れているとの事。

 ……勿論【天翔騎士(ナイト・オブ・ソアリング)】のリヒトさんとかが持つペガサス系モンスターなど亜竜級以上の種族もいるのだが、そういった種族が悉く貴重なので殆ど入荷せず値段も亜竜級で最低500万リル以上する事もあると非常に高いのだとか。

 

「……まあ、別に私達は【従魔師】って訳でもないし、とりあえず移動手段として使えれば良いからそこまでのモンスターは要らないかな?」

「強力な馬系モンスターを買う事が出来れば、俺が【従魔師】やら【騎兵(ライダー)】を取る考えもあったんだがな。必殺スキルのデメリットも従属キャパシティには及ばないし。……ただ、今の所は資金不足だしこの案は無しか? まあ育てると言う案もあるが……」

「少しだけ売られている亜竜級の馬は凄い高いですからね。……一頭最低でも700万リル以上しますし」

「亜竜級まで進化出来る馬の見分けでも付けばいいんだけどねー」

 

 そんな感じで自分達が欲しい馬について私達は話し合いをしていき、最終的には『四人乗りぐらいの馬車を引けるSTRがあって乗馬経験の無い私達でも扱い易いもの。戦闘も出来れば尚よしで予算は200万リル以内』という無難な意見に落ち着いた……ただ、それだと亜竜級未満のそれなりに高級な馬型モンスターの殆どが当てはまるので、ここから更に選ぶのに時間が掛かりそうなんだよね。

 ……まあ、時間はあるしゆっくり選んで行けばいいでしょう。テイムモンスター専門店とか始めてくるから色々と面白そうな物があるし、それらを見ながら考えればいいかな。




あとがき・各種設定解説

兄:昔はイタいヤツだった
・今は色々人生経験を積んで真っ当になっており、色々と悩みがちな妹達を導く立場になれればいいなと思っている。
・尚、色々と事情があった余り自分の私生活の事は妹達にはこれまで話さなかった。

妹達:兄の話を聞いて色々と考えている
・それはそれとしてゲームとしてのデンドロ旅行は楽しもうと思っている。

ギルド直轄のテイムモンスター専門店:非常に真っ当なお店
・ギルドのクエストなどで確保したテイムモンスターを売りに出す店で、基本的にはテイムしてあるモンスター及び普通に言う事を聞くモンスターしか置いていない。
・その為テイマーや騎士にとって使いやすいモンスターや【ジュエル】などの各種テイムモンスター用アイテムなどが沢山置いてあり、初心者から上級者まで利用する人は多い。
・……だが、その性質上テイムし難かったり使役し辛かったりする強力なモンスターは置いていないので、そういったモンスターを求める人は別の店に行く事もある。


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