※従属キャパシティについて感想で指摘があったので本文の一部を修正。
1日遅れのリザルト
□<イースター平原> 【
無事<墓標迷宮>から帰還して疲れもあったのでそのままログアウトして一晩が経った翌日、俺達は
……一応、俺達にとって切り札となる情報なので秘匿しておきたいので、とりあえず人目につく街中を避けてフィールドの人気の無い所に来た感じである。
「……《魔物索敵》《対人索敵》共に反応無しっと」
「じゃあ大丈夫そうだね。……じゃあまずはミュウちゃんが手に入れた特典武具の紹介からかな」
「はいはいなのです。……私が先日手に入れた逸話級特典武具【黒晶首巻 ブラックォーツ】のステはこんな感じですね」
そうしてミュウちゃんがアイテムボックスから取り出したのは、まるで水晶の様な光沢を持った黒いスカーフだった……そして見せて来たステータスはこんな感じだった。
【黒晶首巻 ブラックォーツ】
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非生物を透過する呪いの刃を振るう黒晶の概念を具現化した逸品。
装着者に闇と呪いへの耐性を与えると共に、僅かな間だけ命無き攻撃を透過する。
※譲渡・売却不可アイテム
※装備レベル制限なし
・装備補正
MP+30%
闇属性耐性+100%
呪怨系状態異常耐性+50%
防御力+10
・装備スキル
《人間探知》
《
「……まず装備枠は外套部分で、スキルはMPを消費して周囲にいる人間範疇生物の位置を把握出来る《人間探知》と、10秒間だけ自身への生物及び闇属性以外の攻撃を透過する《暗黒転身》といった所です。後《暗黒転身》は無消費発動ですがクールタイムが10分あるので連発は出来ないですね」
『ステータス補正的にはMP+30%が嬉しいね。これで少しは僕のスキルも使い易くなりそう』
そんな事を言っているミュウちゃんと融合している(フィールドなので念の為)ミメは嬉しそうに【ブラックォーツ】を装備して首に巻いていた。
……さて、実は態々こんな所に来たのはもう一つ理由があるのだ。
「……さあ、次はいよいよ俺の特典武具【ヴァルシオン】の第2スキル《刃技才集》によるスキルガチャの時間だぜ! デンドロ時間で1ヶ月間貯めて来た経験値が火を噴くぞ!」
「イエーイ! ……正直言って私は忘れてたけどね!」
「どんなスキルが出るのか楽しみですね!」
……うん、ぶっちゃけ俺もこのスキルの事はちょっと忘れてた。実はこの《刃技才集》って昨日には既に使える状態だったし、俺のテンションが妙に高いのもそれを誤魔化す為だからな(妹達が誤魔化されるとは言っていない)
……ま、まあ! あの時は疲れてたからさっさと休みたいと思ってたからしょうがないよね! それに初めて使う特典武具のスキルがどんな風に発動するのかとか分からないから街中で使う訳にも行かないし、だからこそ態々フィールドまで来たんだからな。
「まあ、とにかくスキルを使ってみよう……《刃技才集》起動」
俺は自分のキャラじゃない変なテンションをさっさと辞めて、サクッと首から下げられた【ヴァルシオン)を手に取って《刃技才集》を使用した……するとその【ヴァルシオン】から淡い様々な色の光の粒子が溢れ出して、俺の身体を取り巻きながら徐々に包み込んで行った。
……思ったよりも演出が派手だなぁ。もっとただサクッとスキルが追加されるだけだと思ったのに、これは人気の無い屋外に来たのは正解だったな。もし街中でコレやったら目立ち過ぎる。
「虹演出来た! これはSSRか星5確定だね! (ソシャゲ感)」
「おお、なんか綺麗ですね。……しかしこの虹色の粒子、モンスター倒した時とかに身体に流れ込んでくるエネルギーと“感じ”が似てますね」
なんか妹達が好き勝手言っているのを他所に、俺の身体を取り巻く光の粒子は徐々にその量を増やしながら全体で見るとまるでオーロラの様に次々と色を変えていった。
……そしてしばらくしたら粒子の色が『透き通った黒色』に変わった所で、周りを取り巻いていた粒子が次々と俺の肉体に吸収されていった。
「……ふむ、粒子? は全部身体に吸収されたみたいだし、スキルの説明を見たら『クールタイム30日』って書かれていたからこれで終わりみたいだな」
「それでお兄ちゃん、肝心のスキルは?」
「ちょっと待て……えーっと、ステータス欄にジョブで習得したもの以外のスキルがあったな。名前は《黒晶刃》Lv1か」
「もろに【ブラックォーツ】からのヤツですねソレ」
スキルの説明文には『MPを消費して肉体から物体を透過する闇属性の刃を展開・変形する魔法』って書かれているけど、取り敢えず使ってみて効果を確かめて行くしかないか……えーと、じゃあ右掌から生やす感じで……。
「……《黒晶刃》ってなんか生えて来たな」
「黒い水晶の刃って感じ? まあ予想通りだけど」
「やっぱりあの【ブラックォーツ】のスキルですね。質感とかがそっくりです」
そうやってスキルを使用したら右掌から長さ50センチメートルぐらいの黒い刃が生えてきた……妹達が言う通り外見や質感はあの【ブラックォーツ】の身体にそっくりなので、そこからラーニングしたものだと分かるな。
……この《黒晶刃》はミュウちゃんが触れるので生物には干渉するみたいだが、試しに剣を触れさせてみると擦り抜けたのでやっぱり物体透過能力を持ってるみたいだな。
後、説明文に“変形”と書かれていたから試しに『曲がれ!』と念じてみるとMPが微量消費されて刃が曲がってフック状になったり、そんな感じでしばらく刃をグネグネさせていると30秒ぐらいで効果が切れたのか消滅した。
「……ふむ、消費MPは変形分含めても少なめで発動までの時間は非常に早いが、その分効果時間は短くクールタイムも長めな魔法といった感じか。攻撃力や実際の使い勝手は戦闘で使ってみないと分からないがな」
「じゃあその辺りのモンスターで試し切りしてみたら? せっかくフィールドにるんだし」
「そうですね。私も特典武具のスキルを試したいので」
「そうだな。……ついでに新しく就いた【獣戦士】の《獣心憑依》とやらも試してみるか。《
『BURURU(お任せを、狩りですね)』
妹二人の提案に対して、俺も新ジョブのスキル効果を試したい事もあってヴォルトを召喚した……この《獣心憑依》は従属キャパシティ内のモンスター一体のステータスの何割かを自身に加算する強力なジョブスキルなのだが、肝心の【獣戦士】のキャパシティが低すぎて強力なモンスターを使役する為にはジョブ枠全てを直接戦闘向きではないテイマー系ジョブで埋めねばならない事から産廃扱いされていたモノである。
……まあ俺の場合は合計レベル3000分のジョブの内いくつかをテイマー系ジョブにしても一向に問題は無いしな。現在でも【従魔師】【騎士】【聖騎士】のお陰で
「それで新しいジョブの使い心地はどうかな、お兄ちゃん」
「今の所スキルレベルが1の10%強化だからステの上昇数値は僅かだが、これが【
「……まあ、兄様みたいに大量のジョブに就けないと従属キャパシティが足りず強力なモンスターを使役出来ないので人気が無いそうですが」
「必要な従属キャパシティがゼロのガードナー系統<エンブリオ>と組み合わせるとかすれば流行りそうだけどな。……融合型のミュウちゃんとミメには相性悪そうだが」
『それはちょっと残念だね』
……そんな会話をしながら俺達は手に入れた新しい力を試す為にフィールドを進んでいった。
◇
そうして歩きながら襲い掛かって来たフィールドのモンスターを《黒晶刃》で辻切り()していったお陰で、このスキルの有効な使い方も大分わかって来た。
まず攻撃力に関しては消費MPに比してかなり高く、そこら辺の下級モンスターなら耐性でも無い限りは撫で斬りに出来た。また自分の肉体のどんな場所にも生やす事が出来る上、変形の応用でオリジナルの【ブラックォーツ】みたいに鞭っぽく中距離攻撃してみたり、変形の際に切り離して投剣みたいに投げるとかも可能(流石に切り離すと変形は不可)
後、オリジナルと違って生物や闇属性以外にも光属性・聖属性なども透過不可能……というかそれらに当たったら砕けたので、流石にこの辺りはオリジナルと違って普通の闇属性魔法と同じ判定という事だろう。
『HIHIEEEENN! (《サンダーバースト》!』
「よっしゃ、電撃で動きが止まったな《黒晶刃》《ドラゴン斬り》!」
『GYAAAAAA!?』
そして今は喧嘩を売って来た【メイル・デミドラゴン】数体相手にしてヴォルトと共に試し斬りの最中である……こいつらはドロップアイテムの遺骸を取り込んで外骨格を生成する防御型の地竜なんだが、まずヴォルトが電撃を外骨格に通電させる事で動きを封じて、その隙に俺が物体を透過出来る《黒晶刃》で本体を切り裂いて始末した。
……まあ基本的に『ただ闇属性の刃を生やしたり動かしたりするだけの魔法』なので、自力で振ったり変形させたりして動かさないと攻撃力は発生しないので近接用の奇襲スキル的な使い方になるだろうか。そこは剣技系のジョブスキルを使ったりも出来るメリットにもなってはいるが。
「鎧があるならそれごと砕く! 《インパクト・スマッシャー》!」
『GAAAAAA⁉︎』
「とりあえず内部攻撃ですかね《発勁》……ああ、鎧をパージして早くなりましたか……ではAGIを同じにして殴ります《正拳突き》」
『GA、GYAAAAAA!!!』
そんで向こうではミカが《インパクト・スマッシャー》──【
また別の所ではミュウちゃんに《発勁》で外骨格を無視してダメージを与えられるのに嫌がった個体が《
……うむ、各々で亜竜級を倒せる程度には俺達もデンドロでの戦闘にだいぶ慣れて来たな。
「……よっし終了! 何時もの通りお兄ちゃんのスキルがオンになってるのでドロップアイテムは無しです!」
「まあ、昨日の<墓標迷宮>でそれなりに稼いだから問題は無いだろう。……スキルの確認も大体終わったしそろそろ王都に戻るか」
そうして突如現れた【メイル・デミドラゴン】の群れを排除した所で俺達は王都に戻る事にした……主な理由はミカとミュウちゃんのメインジョブがさっきの戦闘でカンストしたからでもあるが。
「さて、次のジョブはどうしましょうか。……無難な所で【
「……うーん、どうしようかな。【
そんな感じで二人は次のジョブに悩んでいる様だった……まあ就くジョブに悩むのはデンドロの楽しみの一つだからな。こうやってゲームのキャラの育成計画を建てている時が一番楽しいっていうのもあると思う。
……尚、俺の場合は就いただけでレベルを上げていない下級職が沢山あるから、まずはそれらのレベルを上げるとこからかなぁ……。
『BURURU。BURURURU、BURURU(私もレベルが上がりましたよ。体感ですが亜竜級に進化する時期も近いと思います)』
「そうか、進化も近いか。……じゃあ騎乗戦闘の練習とかもやった方がいいか」
確かモンスターの進化の方向性は保有するスキルや技術によって決まると聞いたし、騎乗の練習をすればそっち方面のスキルを覚える方向に進化出来るかも。
……ちなみに俺は《魔物言語》のスキルレベルが上がったので、ある程度ならヴォルトが話している事を理解出来る様になっている。意思疎通を積極的に行ってスキルレベルを上げた甲斐はあったな。
「とりあえず騎兵系統のジョブ……いや、まずはモンスターのスキルを強化・操作出来るジョブの【
『BURURURU(その辺りはお任せしますよ)』
本当に何度思ったか分からないがレベル上げをしなくてはならないジョブが多過ぎて困る……そんな事を考えていると、向こうで話していたミカとミュウちゃんがこちらに来て話しかけてきた。
「お兄ちゃん、やっぱりギデオンに行くべきだよ! ……真っ当に対人の討伐数を稼ぐなら決闘が一番手っ取り早いしね。PKとかしたくないし」
「格闘系ジョブも対人戦の戦歴が転職条件に関わる事が多いので、私も決闘が出来るギデオンには一度行っておきたいです」
「……まあ、そこまで言うならいい加減ギデオンに行くか。ヴォルトとの連携やらレベル上げや資金稼ぎが理由で延び延びになっていたしな」
ここまで予定が伸びたのは、新しく仲間になったヴォルトがどのくらい
……ま、この辺りは身軽な<マスター>だからこそだがな……ただ……。
「デンドロの方の準備は直ぐに終わるから問題は無いんだが……お前達、
「「ギクッ!」」
「まあ、デンドロに入り浸っている時点で予測はしていたがそっちも疎かにはするなよ。……というか、小学校の夏休みの宿題ぐらい7月中に大半は終わらせておけよ。俺は大学の課題は終わらせたぞ」
「……偏差値70代がデフォなお兄ちゃんを基準にされても……」
「……小学校の宿題って量だけは多いんですもん……」
そんな事を話しながら俺達は王都に帰って来たのだった……
あとがき・各種設定解説
三兄妹:この後兄が準備している横で妹達は頑張って宿題した
・また、ヴォルトは『この三人なら自分主人や仲間として見ても問題ない』と言える程度には三兄妹の事を信頼出来る様になっている。
【黒晶首巻 ブラックォーツ】:特典武具としてはサポート系
・《人間探知》は人間範疇生物の位置情報と反応の大小による大まかな強さぐらいしか分からないが、その分消費MPに比して効果範囲が広く隠蔽も余程のものでなければ見破る。
・《暗黒転身》はあくまで“自分への生物及び闇属性以外の攻撃”だけを透過するので壁や床や相手の防具とかは擦り抜けない他、自分が行なった攻撃が擦り抜ける事とかも無い。
・尚、こんなスペックになったのは物理ステータス上昇は《天威》があるから無駄、【治癒阻害】の呪いは《転位》を使うと自分にも掛かる、《気配操作》《消音》は素で出来るという末妹の能力にアジャストされた形。
《黒晶刃》:スキルガチャの中では当たりの部類
・ちなみに闇属性魔法ではあるが刃による斬撃自体は単なる物理攻撃なので、生身のENDやダメージ軽減スキルなどには阻まれる。
・ラーニングスキルだからかスキルレベルの上昇はやや遅いが、ジョブレベルや他のスキルには影響は無い。
・ラーニング時の光の粒子は溜め込んだリソースを身体にスキルとして反映させる時にああなっているだけでありレアなスキルなら虹演出とかでは無い。
《ドラゴン斬り》:【騎士】のスキル
・文字通りドラゴン系に高い威力のある斬撃を放つ【騎士】をカンストさせてドラゴンの討伐経験がある事で覚えるスキル。
《インパクト・スマッシャー》:【剛戦棍士】の奥義
・装備強度減少と衝撃波で装備を破壊して、更にその衝撃波で生身にもダメージを与える感じの強力なスキル。
・だが、その特性上対人向きでありSP消費も大きいので妹は今まで使わなかった。
読了ありがとうございました。
ちなみに《黒晶刃》のモデルは『ワールドトリガー』という漫画に登場する『スコーピオン』という