□<ネクス平原> 【
謎の怪盗であるシルビィさん(多分厄ネタっぽい)を拾ったら【ゴブリンキング】率いるゴブリン達が襲い掛かってきた今日この頃……まあ、今の私達なら亜竜級モンスター率いる三十体程度の下級モンスターなら、例え多少強化されていたとしても大した問題無く撃破はできる。
……問題はコイツらが私がぶっ殺した<
『『『『『GAAAAAAAAAAAA!!!』』』』』
「《クエイク・インパクト》! まったく、文字通りの“復讐鬼”ってヤツかな。《ウィールド・メイス》!」
忿怒の形相を浮かべてこちらに突っ込んで来るゴブリン達に対して、私はまず地面を【ギガース】で叩いて前方に衝撃波を発生させる《クエイク・インパクト》で接近してくるゴブリンの足を止めて、間髪入れずに【ギガース】を横薙ぎに振り回して連中の何匹かを薙ぎ払った。
……だが、ゴブリン達は味方が吹き飛ばされ様が一向に意に介す事すらなく、変わらぬ忿怒の表情で私に向かってただひたすらに突っ込んで来た。
『GAAAAAAAAAAAA!!!』
「うわぁ……ヘイトがまったく減らないや。《インパクト・ストライク》!」
『GAAAAAAAAAAAA!!!』
とりあえず私は突っ込んで来た中で一番近くにいた【ゴブリン・ウォーリア】を殴り潰すものの、すぐさま横の死角から【ゴブリン・ランサー】が槍を突き刺そうと躍り掛かって来た……まあ、私の“直感”でそう来る事は事前に分かっていたから前に出て回避は出来たんだけど、更に背後に回ったゴブリンがしつこく攻撃して来たりするから中々面倒な状況なんだよね。
……流石に私一人に全方位からゴブリンだと迫り来る“危険”が分かっても手数が足りないね。下級のゴブリン相手なら多少のダメージを覚悟すれば無理矢理切り抜けられるだろうけど、それはちょっと面白くないので……。
「お兄ちゃん! ミュウちゃん! ボスに突っ込むので援護お願い!」
「分かりました。……まあ、姉様にしか目が向いていないので倒すのは楽ですしね。《ライトニング・フィスト》《ハードナックル》!」
「こっちで可能な限り数は減らすから後は頑張れ。《グランド・クロス》!」
『『GAAAAAAAAAAAA!!!』』
援護を頼みつつボスを殴り倒しにいく事にします! ……そんな私のいきなりな提案だったけど付き合いが長くて戦闘センスも高い二人はきっちり対応してくれて、お兄ちゃんが地面から発生された聖属性攻撃《グランド・クロス》で前方のゴブリン達を排除し、後方には拳に雷を纏わせたミュウちゃんが陣取ってくれて私への追撃を防いでくれた。
……これで巨大な両手斧を振り上げながら
『GAAAAAAAAAAAA!!!』
「《ウェポン・ブレイカー》!」
そうして接敵した【ゴブリンキング】が振り下ろす両手斧と私が振り上げた【ギガース】が激突して激しい火花を散らしながらも互いに弾き飛ばされた……むむ、今のSTRなら押し勝てると思ったんだけど向こうもかなりSTRが高いみたい。鎧とかも纏ってるから重武装だし重量差もあるかな。
……まあ、向こうは振り下ろしでこっちは振り上げだったからね。それに打ち合うには支障は無いぐらいの差だしこのまま殴り合おう。
『GAAAAAAAAAA! GAAAAAAAAAAAA!!!』
「うむっ! まあっ! 打ち合うっ! 事はっ! 出来るんっ! だけどねっ!」
その後もまるで親の仇の様に──まあその通り何だけど──私に向けて大斧をただひたすらに打ち付けて来る【ゴブリンキング】に対して、私はその大斧の起動を“直感”で先読みしつつそこに【ギガース】を叩きつける事でそれら全てを弾き返して行く。
……お兄ちゃんやミュウちゃんみたいに戦闘技術があれば避けたり受け流したりして反撃に繋げるとか出来るんだろうけど、先読みは出来ても技術的には大した事無い私じゃあこうやって力任せに撃ち払いながら
「ここっ! 《アームズブレイク》!」
『GU⁉︎ GAAAA!!!』
そうして向こうが焦れて全力で大斧を叩きつけるタイミングで、私も【
ちなみ最初に使った《ウェポン・ブレイカー》は武器・防具問わず耐久力を減らす【
……そして私は持っていた武器が壊れた一瞬の隙を突いて【ゴブリンキング】の懐に潜り込み……。
「これでトドメ! 《インパクト・スマッシャー》」
『GYAAAAAAAAA!?』
装備防御力減少+衝撃に寄って敵の装備と肉体を纏めて破壊する奥義《インパクト・スマッシャー》を叩き込んで、鎧ごと【ゴブリンキング】の胸部を粉砕した……ENDを減少させる《ストライク・ペネトレイション》もあるから十分に致命傷だね。
……むむ、でも頭部がギリギリ残っているからかまだ生きてるね。キチンと潰して禍根は絶っておこう。えいっ。
「……あ、あれ? 確か【ゴブリンキング】にはダメージを部下に移し替える《ゴブリンキングダム》のスキルが……」
「ああ、そこはミカの<エンブリオ>の力ですね。……それに配下のゴブリンもそろそろ全滅しますし。《ブレイズ・バースト》」
『『GYAAAAAAAAA!?』』
そんな私を見て【ゴブリンキング】の知識があったからか驚いているシルビィさんのフォローをしながらも、お兄ちゃんは得意の火属性魔法でゴブリン達を複数体焼き払って行く。
「向こうも終わりましたしこっちも片付けましょうか。《ラッシュナックル》!」
『BURURU……HIHIIIIN!!! (そうですね……《ライトニング・ジャベリン》!)』
『『『GYAAAAAAAAA!?』』』
そして残りのゴブリン達もミュウちゃん雷を纏った拳のラッシュや、ヴォルトの雷属性魔法によってあっさりと打ち倒されていった……【ゴブリンキング】が居なくなって強化が無くなればこんなものだよねー。
……それからしばらくの後に全てのゴブリン達は【ゴブリンキング】の後を追っていったのだった。
「……よし、全部倒したしこれで一件落着……」
「な訳ないだろう。……余計な茶々を入れた連中を倒しただけで、一番重要な話がまだ残っているからな」
「そうですねぇ。しかし、シルビィさん自身が話す気がないなら無理して聞く訳にも「あ、あの!」……んん?」
そんな風に私達が今後どうするかを話し合っていると、いきなり何か焦った感じがするシルビィさんが話に割り込んで来た……まあ、向こうから何か話す気ならそれでいいんだけどね。こっちからは話を切り出し辛かったし。
「何でしょうか? シルビィさん」
「ミカさんの<エンブリオ>はスキルを無視して対象にダメージを与えられるんですよね。……お願いします! どうか貴女の力で
……そうしてシルビィさんが切り出した話は中々衝撃的なものだった……さてさて、どうしたものかね。私の“直感”には反応してないから危険は無いと思うんだけど……。
◇◇◇
□<ネクス平原> 【
さて、いきなり焦った様子で妙な事を言い出し始めたシルビィさんを落ち着かせる為に、俺達はキャンプセットの椅子をアイテムボックスからだして自分達と彼女を座らせつつ“あの金庫”について詳しい話を聞く事にした。
「それで、あの金庫を破壊して貰いたいという話だっだが、そもそもあの金庫はなんなんだ? それが分からない以上はその依頼を受ける訳には行かないぞ。……下手をすると犯罪になる可能性もあるし」
「それは……」
これに関してはちゃんと聞いて置かないといけないしな。もしあの金庫が盗品なら犯罪の片棒を担ぐ事になるし……とりあえず【
……ミカは“直感”で彼女の発言に危険は無いか、ミュウちゃんは彼女の雰囲気から不審な点が見られないかを探る感じだな。目配せされた二人み頷いたし、後はシルビィさんがどう出るかだが……。
「……分かりました。確かに今の私は何も事情を知らなければ金庫を盗み出した犯罪者に見えるでしょうからね……実際、そう間違ってはいないんですが。……この金庫は私の父の物で
しばし考え込んだ後、意を決したらしい彼女は自分が何故その金庫を持っていたのかを話し始めた……しかし、自分の父親の金庫を盗み出したとは穏やかでは無いな。
……とりあえず俺の《真偽判定》には反応が無いし、妹二人も何も言っていない以上は本当なのだろうからもう少し話を聞くべきだろうな。
「私の実家であるマグノリア家は父が一代で財を成した裕福な商人の家で、ほんの数年前まではその父と母と私の三人で仲睦まじく暮らしていたんです。特に父と母は大恋愛の末に結婚したので娘の私から見ても非常に仲のいい夫婦でした。……しかし、数年前に流行病で母が亡くなってから、そんな幸せな生活は脆く崩れ去ってしまったのです……」
彼女はそんな事を悲しげな表情で語っていった……少なくとも俺の《真偽判定》には反応は無いし、妹二人も何も言ってこない以上彼女の話は真実なんだろうから引き続き聞いていこうか。
「母を失った父はそれまでとは別人の様に塞ぎ込んでしまいました。仕事も手につかず私が声を掛けてもまともに反応してくれなくて……そして、いつの日か父はこの金庫の中に入っている“ある物”に溺れて、ひたすらに家の資産を食い潰す様になってしまったのです」
「ある物?」
「はい、それはかつて探検家だった父が<墓標迷宮>で手に入れた物で、父が商売をキッカケになったアイテムなんです。……何でも
……んん? 何だろうな、そんな特性で資産食い潰すアイテムにはちょっとだけ聞き覚えが……。
「……えーっと、シルビィさんそのアイテムの名前は?」
「はい、そのアイテムの名前は【ガチャ】と言って、投入したリルに応じたアイテムを何処からか召喚する誰が作ったのかも分からない謎のアイテムです」
やっぱりかー。しかしこのデンドロにもガチャとかあるんだな……それでティアンがガチャ破産とか運営は何考えてるんだろうね。どうせ言っても意味ないだろうけど。
……この事実を聞いて妹二人も大分微妙な顔をしているが、それが目に入っていないのか或いはそれだけ切羽詰まっているのかシルビィさんは更に話を続けた。
「どうやら父は母を失った悲しみをかつて自分を成功に導いた【ガチャ】に縋る事で誤魔化しているみたいで、最初はただ1日1度使う程度だったのですが次第に頻度が増えてきて……今では仕事もまともに行わず破産寸前まで資産を食い潰してガチャに耽る日々を父は過ごしているんです。私も何度も辞めるように言ったのですが聞き入れてもらえず……」
まあ、<マスター>から言わせるとガチャで破産しても笑い話で済むんだろうが、この世界で生きるティアンにとっては笑い事じゃあ済まないよなぁ。
……シルビィさんの深刻な表情と話から、いつの間にか妹二人もそれに気付いて真剣な雰囲気になって話の続きを聞いているし。
「……なので【ガチャ】を破壊して父の目を覚まさせようとしたんですが、父は普段から貴重品をこの金庫に入れて身内にも触らせないので手を出す事は出来ませんでした。……そこで【
「……はえー」
「中々アグレッシブな感じですね」
何というか色々と凄いシルビィさんの話に俺たちは一周回って感心してしまった……実際、そんな理由だけで戦闘向きでは無い上級職二つのレベルをカンストさせるとか、ティアンの身では物凄く大変だっただろうに……。
……まあそれと彼女の依頼を受けるのは別問題なんだがな。流石に俺達が犯罪者扱いになるのは嫌だから色々と確認しないと。
「でも、その金庫の中にガチャ以外の貴重品とか入っていたなら何処かに隠すのは問題じゃないの?」
「大丈夫です。……今のうちの資産は最早破産寸前で、この中にあった貴重品も父が全て売りに出してガチャ資金に変えた後だと確認済みです」
「よくそこまでレベルを上げられましたね。……というか、物理系統のジョブにして金庫を盗まずに破壊すれば良かったんじゃ……」
「レベル上げに関しては知り合いの傭兵団の皆さんに協力して貰いましたし、そもそも私には強力な戦闘系のジョブへの適性が無かったので。……後、この金庫は
……妹達が適当に質問して彼女もそれに答えているが、今の所《真偽判定》には引っかかっていないな。その二人も特に何も言わないし少なくとも彼女に悪意は無いんだろうが……俺も質問してみるか。
「事情は大体分かった……が、そもそも親父さんの所から無駄で金庫を持ち出した時点で泥棒扱いでは無いのか? はっきり言うが俺達は自分達が犯罪者扱いされる事に関して基本的には拒否させて貰うぞ。……というか、今の貴女に必要なのは親父さんとしっかり話をする事だと思うが」
「ええと……すみませんご迷惑をお掛けして。……一応、父の元には私が何でこんな事をしたのかを書いた《予告状》を置いておきましたし、世話になった傭兵団の人達にも同じ内容の手紙を渡しておきました。……後、このガチャさえ無くなれば父も私の話を聞いてくれるのでは無いかと思って……」
ふむ、少しきつめに聞いてみたが《真偽判定》には反応無しと……事前に周囲の人間に行動の意図を伝えておくなど周りの事をある程度は考えてはいるみたいだが、その反面こんな無鉄砲な行動に出るぐらいには追い詰められてるって感じかね。
……さてと、多分この調子だと俺達が手伝わなくても一人で金庫を始末しに行きそうだしな。どうしたものか……。
あとがき・各種設定解説
三兄妹:前座のゴブリン達は一蹴
・尚、本番はこれからの模様。
《アームズブレイク》《ウェポン・ブレイカー》:戦棍士系統の装備破壊スキル
・他にも【戦棍士】で覚える防具の耐久力を減らす《アーマーブレイク》というスキルもあり、《ウェポン・ブレイカー》はこれと《アームズブレイク》を複合して強化した上位スキルという扱い。
・メイスという武器種は対人戦における装備破壊や防具を無視した内部攻撃に長けた武器種という設定。
シルビィ:ガチャ破産寸前の身内を止める為に奮闘している
・兄の見立て通り冷静に行動出来ているように見えてかなり思いつめており、ガチャを“忌まわしき呪物”と呼んだりモンスターが彷徨くフィールドで重い金庫を持って出てしまったりと視野が狭くなっている。
・性格は普通に善人であり色々と周りに対して気が効くタイプなのだが、その分自分一人で問題を抱え込みやすいタイプ。
ガチャ:忌まわしき呪物()
・後の時代で呪われた強力な装備を使いこなす“不屈の英雄”にすら膝を突かせて、或いは虜にしてしまう(ある意味)恐ろしい呪いのアイテム。
・皆さんも無(理の無い)課金を心掛けましょう。
読了ありがとうございました。
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