とある三兄妹のデンドロ記録:Re   作:貴司崎

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前回のあらすじ:黒黒「前回のリベンジだ!」末妹「……マジウゼェ……」


ギデオンでの三兄妹・その三

 □<ジャンド草原>

 

 時刻は夜、場所はギデオンの西に位置する草原地帯<ジャンド草原>、そこでかつて倒したPK(プレイヤーキラー)シュバルツ・ブラックの襲撃を受けたミュウ・ウィステリアは相手の使ったスキル《輝ける才覚よ、消え失せよ(レベル・ブラスト)》によって右腕を奪われてしまった。

 

「なっ……!」

「《アクセルスラスト》!」

 

 そして、ミュウが動揺した隙を突いてシュバルツはスキルにより攻撃力を上げた木槍──【滅神呪槍 ミスティルテイン】で彼女を貫こうとする……が、その直前にミュウの目から一瞬で動揺の色が消えた。

 ……そして彼女は冷徹で感情の無い様な表情のまま、一切の淀みなく即座に現在の戦局に於ける()()()を実行していく。

 

「《暗黒転身(ダークネス・シフト)》」

「チッ!」

 

 ミュウは槍が自分の身体を貫く直前に首に巻いた【黒晶首巻 ブラックォーツ】の非生物による攻撃を透過する《暗黒転身》を使いながら()()、シュバルツの槍を擦り抜けながら最短距離で接近して《双魔拳》によって強化された冷気を纏う左拳を振り被った。

 

「《レバーブロー》」

「《魔力放出》! ……グハッ⁉︎」

 

 そのままミュウは強烈な左フックを相手の脇腹に叩き込むものの、シュバルツは()()()()()()()()《魔力放出》を使って無理矢理左に飛ぶ事で威力を殺す事に成功していた。

 ……だが、それを見たミュウはすぐに彼から距離を取る様にバックステップし、更に【僧兵(モンク)】の《セルフヒール》でHPを回復させつつ吹き飛ばされた右腕の断面に左手の冷気を押し付けて凍らせる事で無理矢理に止血を行った。

 

『ミュウ! 大丈夫⁉︎』

(ええ、大丈夫ですよミメ。止血は終わりました……しかし、我ながら少々油断が過ぎましたね。……まずは状況確認を行いますよ)

 

 そうしてシュバルツからある程度に距離を取ったミュウは、自分を心配して声を掛けて来たミメに答えつつ冷静に状況の確認を行った。

 

(現在右腕欠損、止血は終わりこれ以上の継続ダメージは無し、右腕が無い事による重心の変動は()()()()()。向こうは吹き飛ばしたけど“こちらの動きを読んで”自分で飛んでいたからダメージは軽微、今はこっちの様子を見ながらポーションを飲んで回復中。……《暗黒転身》を使った武器使いに対するカウンターは以前()()()()()()()()()()()()()()()()()()()で使ったのでそこから分析されましたか。よっぽど私の事を研究して来た様ですね)

『一応、さっきの体内からの攻撃は“ストック”しておいたよ。それとやっぱりアイツのデバフは自分にも掛かってるよ。《転位模倣(エフェクト・ミラーリング)》はMPの無駄だから切るね』

(分かりました。……自分含めてのデバフ、制御を手放すデメリットと引き換えの効果強化ですかね。決闘でも無差別破壊が得意な<エンブリオ>がありましたし。ですが先程私の右腕を奪った攻撃は……ヤツのスキル効果適応条件は槍への接触、吹き飛んだのは右腕の()()()()、後はさっき付けていた籠手を仕舞っている……)

 

 そう、彼女の兄をして“戦闘系天災児”と呼ばれるミュウの才能は単純な体捌きだけでなく、こう言った“戦闘時に於ける思考の速さと鋭さ”や“戦闘中に何があっても動揺から即座に立ち直る精神性”も含めたモノなのである。

 

(事前に私を接触状態にするスキルを使った事から、あの“レベル・ブラスト”は槍に触れた相手に……名前からしてレベルを基準にしたダメージを与えるスキルですかね。向こうにダメージが無い様に見えるのはあの籠手で槍からのダメージを防いだ事と、()()()()()()ダメージ軽減系のアクセを付けてましたか)

『ミュウも戦闘になる前、念の為にダメージを減らす系の使い捨てアイテム【身代わり上級人形】と【身代わり羽飾り】を装備してたもんね。二つとも今は発動し終わって砕けてるし。……でも、ミュウの腕は内側から吹き飛んだよ?』

(なので恐らくダメージの発生場所が違うのでは? 槍に触れている場合は槍から、そうでなければ体内……無制御が特性ならランダムな場所とかですかね。狙って体内攻撃出来るなら胴体か頭部を狙うでしょうし。あの金属製の籠手は槍からのダメージ身代わり用だったとか)

 

 この彼女の推測はおおよそ当たっていた……【ミスティルテイン】の第三スキル《輝ける才覚よ、消え失せろ》は『【ミスティルテイン】に触れた対象全てにその合計レベル×50の固定ダメージを与える』という効果であり、ダメージの発生場所は【ミスティルテイン】触れている場所か、そうで無い場合は()()()()()()()()()()()()()で発生する仕様なのだ。

 ……この“ランダムな位置”というのが中々の曲者で、生物の体表面と体内の体積の差からダメージの発生が高確率で体内で発生するので多くの装備や防御系スキルが効果を発揮し難いのである。

 また、シュバルツ自身は【ミスティルテイン】を両手で持つ事でダメージを分割しつつ、その接触点からのダメージを掌に金属板を仕込んだ特注の籠手と【身代わり竜鱗】などのダメージ軽減系アイテムを複数装備する事で凌いでいた。

 

(……ヤツはこっちを相当研究して来てるみたいですし、こちらは『周囲の迷惑を気にする』など油断して先制を許したのではこうなるのも当然ですか。こんな有様では現実(リアル)の“師匠”に怒られそうなのです)

『それでどうするの、ミュウ? アイツも回復を終えてこっちに向かって来そうだけど』

(向こうは私の決闘を見て分析している様ですし……そうですね、丁度思い出したので“師匠”が最初に教えてくれた()()()()使()()()()『水面流古武術護身心得』を実践しましょうか)

 

 そして現実の時間で10秒程度の思考を終えたミュウは、回復を終えたシュバルツに対して欠損した右腕をかばう様に半身になって構えを取った。

 

 

 ◇

 

 

(よし、腕を一本奪ったし例の『透過スキル』も使わせた。カウンターは貰ったがそれも予想して横に飛んだからダメージは軽微。……向こうはまだやる気みたいだが、このままなら押し切れる)

 

 構えを取ったミュウに対して冷静に状況を把握しながらシュバルツは同じく【ミスティルテイン】を構えた……彼のPKとしての最大の武器はこの分析能力と冷静さであり、目的の為ならどんな手間の掛かる事前準備も厭わない性格であるとも言える。

 ……今回の襲撃に関しても事前に彼女の試合映像を何度も見返して徹底的に動きを分析するのは()()として、このリベンジの一戦の為()()に稼いだ資金の殆どを使って高価な装備(使い捨て含む)を整える事すら当たり前の様にやっていた。

 

(ゲーム内でユニークスキルやら極振りで活躍してイキってる有名人を、事前の分析と対策によって普通のキャラで打ち倒す快感……これだからオンラインゲームでのPKは辞められないんだよな。……まあ、このゲームの<マスター>でユニーク(固有)スキルを持ってないヤツは居ないんだが。<エンブリオ>的に)

 

 尚、彼の基準的にミュウは優先してターゲットにするべき『イキってる』タイプとは少し外れていたりするのだが、最近のギデオンで有名人である事には変わりないし、前回やられたリベンジも兼ねているのでヤル気十分である。

 

(だが、まだ油断は出来ない。彼女はフィガロとの決闘試合では今みたいに片手を切り落とされても当たり前の様に戦闘を続行していたし、既に不意打ちによる動揺からは立ち直ってるからな。リアルで格闘技でもやっているのか俺よりも動きのキレが鋭いし、ここは失われた右腕側から慎重に攻めていくか。例のカウンター系らしきスキルもあるし)

 

 そして徹底的にミュウの情報を分析したが故に、自分にとって圧倒的に有利に見える状況であっても十分に敗北の可能性はあると考えて、一切の油断なくシュバルツは再びの戦いに挑もうとしていた。

 ここまでの彼の行動や判断には決して落ち度は無く、むしろこの場に於ける最善の対応を取っていると言えるだろう……が、強いて彼の分析の間違い(と言えるかは分からない程度のもの)を指摘するなら、ミュウは“格闘”では無く“戦闘“の天才であるという点だろう。

 ……故に決闘試合と前回の戦いだけでミュウの戦い方を分析していた彼は、彼女が次に取った()()を予測する事が出来なかったのだ。

 

「……護身心得その一! 危なくなったら大声を出しながらさっさと逃げる!!!」

 

 そう、ミュウはそんな事を大声で叫びながら左手の《フリーズ・フィスト》を解除して身を翻し、そのまま全力疾走でギデオンの方角へと“逃亡”し始めたのだ。

 ……その光景を見たシュバルツは余りにも予想外の行動だった為に一瞬だけポカンとした表情を浮かべるものの、即座に逃げる彼女を追い掛けに入った。

 

「おいコラ! 待てっ!!!」

「待つわけないでしょバーカ!!! 危なくなったらまず逃げるのが現実に於ける護身術の基本です!!!」

『身を守るなら最適解かもしれないけど、ちょっと言葉が汚いよミュウ』

 

 そんなミメの苦言をスルーしつつ後ろのシュバルツの制止の声に罵倒で返しながら、ミュウは右腕を失っているとは思えない綺麗な走りで逃走を続けていった……まあ当然彼女も散々付け狙われて腕を奪われた事に内心かなり怒っていた様だ。

 ……だが、彼もいくつかのゲームでPKとして名を馳せた者、自分に罵倒を向けられる事も逃げる相手を追う事にも慣れていたので、走りながらも即座に右手で彼女を指差した。

 

「止まれっ! 《カースバインド》!」

「む、呪いですか」

『大丈夫、レジスト出来てる』

 

 そしてシュバルツは《カースバインド》──指を指した相手に軽度の【呪縛】を掛ける【呪術師(ソーサラー)】の基本スキル──で足止めを試みるが、融合と装備した【ブラックォーツ】によって呪怨系状態異常耐性が上がっているミュウにはレジストされてしまった。

 ……だが、彼もスキルレベルの低い呪術はあくまで僅かな時間稼ぎの為に使ったに過ぎず、その一瞬で彼は本命である《瞬間装備》によって取り出した“投槍”を振りかぶっていた。

 

「喰らえっ! 《ブースタージャベリン》!」

 

 そしてシュバルツは【魔法槍士(マジックランサー)】のMPを使って投げた槍を加速させるスキル《ブースタージャベリン》を使って、手に持った投槍を逃げるミュウの背中に向けて投擲した……その投槍は魔力によって急加速しながら正確に彼女の背に迫り……。

 

『ミュウッ⁉︎ 後ろ!』

「問題有りません。“音”で把握出来ています」

 

 その投槍の()()()()()()()()()()()()()()()()ミュウが走りながら身体を反転させた所為で外れて、そのすぐ脇を通り過ぎて行った……が、その回避行動によって彼女の走行速度が落ちたと見たシュバルツは、更に《魔力放出》まで使って一気に距離を詰めて行く。

 ……しかし、それを見たミュウは笑みを浮かべながら、走っている最中にアイテムボックスから取り出していた【ジェム】を残った左手で彼に投げつけた。

 

「護身心得その二! 変質者が迫って来たら手近な物を投げつけよう!!!」

「誰が変質者だっ!!! ……って、【ジェム】だと⁉︎」

 

 変質者扱いに思わず言い返したシュバルツだったが、飛来した物体が【ジェム】だと分かると慌てて避けようとした……のだが、《魔力放出》によって推進力を得ていた身体は簡単には止まれなかったので、やむ終えず【ジェム】を槍で弾き飛ばそうとした。

 ……だが、ミュウが起動までの時間すらも計算に入れて投げていた所為で、槍が触れる直前に【ジェム】──彼女の兄がお守り代わりに持たせていた【ジェムー《クリムゾン・スフィア》】が起動した。

 

「なっ……⁉︎」

「たーまやー……《人間探知》も使っておきましょう」

 

 解放された【紅蓮術師(パイロマンサー)】の奥義は“上級職までの最大威力の魔法”という巷の評判通りに凄まじい熱量の爆炎でもってシュバルツを飲み込んだ……が。

 

「……ゲホッ! ……クソ、予備の【身代わり竜鱗】を付けてなければ即死だったぞ」

 

 その爆炎の中からシュバルツは身体のあちこちを焦げ付かせながらも、念の為に付けていた【身代わり竜鱗】によって無事に五体満足で離脱した……この一戦の為に手持ちの資金とアイテムをほぼ全て使って装備を整えていた事が功を奏した形である。

 ……だが、そこに《人間探知》で彼の生存と詳細位置を把握していたミュウが()()()()()()()()()()()()()()()()爆炎とそれによって生じた煙に紛れて接近して、彼が反応するよりも早く左手でその首を掴んだ。

 

「なっ⁉︎ ……カハッ」

「《ライトニング・フィスト》」

 

 そのままミュウは気道を締め上げてスキル発動に必要な発声を封じると共に、その手に纏わせた雷をシュバルツに流し込んでその身体を【麻痺】状態にした。

 ……そして動きが鈍った彼の身体の重心を崩す事で片手一本で地面に押し倒して馬乗りとなり、槍を持った腕の肘部分を自分の膝で抑え込んで完全に抵抗を封じた。

 

「ァ……カ……」

『《攻撃纒装(アタック・テスクチャ)》』

「《握撃》」

 

 そうして最後に先程ストックした『自らの右腕を奪った18000越えの固定ダメージ』を上乗せした《握撃》──握力を上昇させて掴んだものを握り潰す格闘スキル──で、彼の首ごと頭部と上半身を吹き飛ばしてその身体を光の塵へと変えたのだった。

 

「……水面流古武術・護身心得その三『それでも、本当にどうしても戦う時になってしまったら、とにかく一手でも相手の虚を突いてそこから確実に仕留めろ』……長くパーティーでの野生モンスター戦や興行要素のある決闘で戦ってたからちょっと忘れてましたね。やはり戦いは奇襲・不意打ち・騙し討ちとかの方が効率的ですね」

『……まあ、ミュウがそう思うならそれでいいんじゃない?』

 

 シュバルツの肉体が完全に光の塵になって消え去るまで油断なく見ていたミュウだったが、完全仕留めたと確認すると立ち上がってそんな台詞を言った……融合していたミメが苦笑いしているのは内緒だ。

 ……だが、戦闘が終わった所で彼女はつい失われた右腕を見て溜息を吐いてしまった。

 

「……ハァ、確か部位欠損は通常の回復魔法やアイテムでは治せないんでしたね。本当に高い授業料になってしまいました。……まあ、<マスター>なのでデスペナすれば元通りではあるんですが……」

『お兄さん達にはどう説明しようか…………ん? なんだろコレ……?』

 

 そんな風にミュウが頭を悩ませていると融合しているミメが何かに“変なもの”気がついた様に唸り始めた。

 

「どうしたんですか、ミメ?」

『うん……ええと、何かがあっちの方にある……? ミュウ、さっき戦いを始めた場所まで戻って見てくれないかな?』

「? 分かりました」

 

 そのミメの言葉に従い、ミュウは早足で先程戦闘を開始した地点まで戻っていく……そこで彼女達が見つけた“もの”とは……。

 

「コレは“千切れ飛んだ私の右手首”ですね。……流石にこうなって仕舞えば再生は無理っぽいでしょうか」

『……いや、もしかしたらイケるかもしれないよ。その右手首にも()()()()()()()()()()のを感じるんだ。……流石に遠隔で操作とかは出来ないし、自己治癒だけでは再生は無理っぽいけど……』

「それは……ああ、確か融合している時の私の種族は『エレメンタル』になっていましたね。……コレはもしかしたらワンチャンあるかもしれません。ちょっと兄様に頼んでみましょうか」

 

 ……そうして『とある可能性』に思い至った彼女達は千切れた右手首を持ちながら、ギデオンに居る兄の元へと急いで戻って行ったのだった。

 

 

 ◇

 

 

「……とまあ、そんな感じで私はこのザマという訳なのです兄様。……ちょっと油断と慢心が過ぎたのです」

「……事情は大体分かったが……いきなり腕が千切れた状態で手首を差し出して『兄様ちょっと治してほしいのです』は無いと思うんだが」

 

 三兄妹がギデオンでの長期滞在の為に借りていた宿屋の一室、そこではミュウは兄であるレント・ウィステリア相手に先程までの事情を説明していた所だった。

 

『ゴメンねお兄さん。……でも、手首から感じる“僕の気配”は徐々に薄くなってる気がするから急いでたんだよ』

「別に責めている訳では無いんだがな。……まあ良い、そういう事情ならさっさと始めるぞ。とりあえず傷口を縛って止血した上で凍っている部分を溶かす」

「お願いしますのです」

 

 そう言うとレントはアイテムボックスから取り出した紐を手慣れた動きでミュウの右腕を縛って止血し、その上で解凍の魔法で凍っている断面を手早く溶かした。

 ……そして更に【ジュエル】からヴォルトを呼び出して《獣心憑依》の効果で自分のステータスを引き上げつつ、いくつかのアイテムを使って次に発動する魔法の効果を増大させていく。

 

『……必要なのは私のMPだけの様なので待機しておきますね』

「済まんなヴォルト。じゃあミュウちゃんは手首を持っていてくれ。……さてと、今の俺の最大の回復魔法で治るかどうかは分からないが、やれるだけやってみるとしよう……《魔法威力拡大》並びに《詠唱》終了。《仮想秘奥・神技昇華(イミテーション・ブリューナク)》【聖騎士(パラディン)】のレベルを40消費……《フォースヒール》!」

 

 そうして可能な限りの強化が成された《フォースヒール(上級回復魔法)》がミュウの身体に降り注いだ……すると、千切れ飛んだ筈の右腕がみるみると再生していき、同じく再生し始めた右手首とくっ付いて元通りの右腕となったのだ。

 

「おお! 本当に治りましたね!!! 正直いけるとは思ってなかったんですが!」

『僕も《憑依融合(フュージョンアップ)》こんな能力があったなんて初めて知ったよ。ただ融合してステータスをちょっと上げるぐらいだと思ってた!』

「無事に治った様なら何よりだ。……確か一部の自然系エレメンタルの特徴だったか?」

『魔力で肉体を構成するタイプのエレメンタルはMPさえあれば肉体を再構築出来ると聞いた事がありますが』

 

 そう、肉体が非実態のエネルギーでで構成されたエレメンタルである【ミメーシス】と融合している状態だと、ミュウの肉体はそのタイプのエレメンタルに近似した特性を持つ様になっており、多少の部位欠損であれば強力な回復魔法で直す事も出来るのだ。

 ……最も、ここまであっさりと腕一本が回復したのはレントによって過剰に強化された回復魔法の恩恵も大きいが。

 

「いやー、本当に助かりましたよ兄様。後で今回下がったレベル分のレベリングはお手伝いしますね」

「それはいいんだが……今回ミュウちゃんを襲って来たPKであるシュバルツ何某はどうする? もしまたやって来たら……」

「今度は油断しないのです。……次は私の認識範囲内に入った時点で問答無用にPK()します」

『お、おう……』

 

 ……そんな事を()()()()()()()()で言ったミュウに対して『これなら大丈夫かな。……むしろシュバルツ何某ご愁傷様』とレントとヴォルトは思ったそうな。




あとがき・各種設定解説

末妹:次からはこんな舐めプはしないと誓った
・融合時はエレメンタルになっていてその特性を持つ肉体によって損壊にもある程度の耐性があり、四肢欠損ぐらいなら高位回復魔法があれば再生可能。
・ちなみに『現在』は戦闘時にしか頭の回転が働かなく“している”ので、今回のシュバルツの様な盤外戦術は少し苦手としている。

水面流古武術:末妹が現実で習っている古武術
・元々は“力の無い人間でも肉体を上手く使う事で最大の力を出す技”を伝える古武術で、はるか昔に貴人の護衛を生業としていた一族で立ち上げたらしい。
・だが、護衛するなら『的確な逃げ方』とか『そもそも危険に会わない事』を護衛対象に教えた方が良いのでは? となって、危険を回避する立ち回りを含めた護身術が主体になった。
・末妹の“師匠”は前述の『古武術』の方を覚えている人で、末妹に“肉体と頭脳を自分で自由に使う”方法を教えた。
・ただ、“師匠”は『護身するならこんな技術よりも防犯ブザーでも持ってた方がよっぽど役に立つし、そもそも今のご時世セキュリティシステムが発達してて護身術なんて需要が無いんだよな。……なので、これからは女性向けのダイエットエクササイズ主体で行くぜ!』とか言ってたりする。

【身代わり上級人形】【身代わり羽飾り】:身代わりシリーズ
・それぞれ『ダメージを5000減らす』『ダメージを半分にする』効果の使い捨てアイテムで、資金稼ぎの狩りの時に手に入れたドロップアイテム。
・ミュウは《攻撃纒装》の仕様上あえて攻撃を受ける必要が出て来るので、こういったアイテムをいくつか携帯して必要に応じて装備する事にしている。

シュバルツ:惜しくもリベンジならず
・こんなPKになった理由は昔始めたばかりのMMOで極振りユニークスキルでイキってたプレイヤーにPKされたから。
・だが、彼はかなりの負けず嫌いだったのでその相手にも後日きっちりお礼参りをして、その際にPKの魅力に取り憑かれて自分もPKになった。
・PKとしては極振りユニークスキルなトッププレイヤーやイキってる害悪プレイヤーを優先して狙い、更に一度負けると必ず念入りに対策してから再戦して来る賛否両論あるタイプ

《輝ける才覚よ、消え失せろ》:デンドロあるある初見殺しスキル
・カンスト相手なら25000の固定ダメージが高確率で体内に入るかなり厄介なスキルで、無差別スキル故にコストは固定ダメージ系スキルとしては控えめになっている
・【ブローチ】や【身代わり】シリーズなど体内ダメージを防げるアイテムは苦手だが、自分へのダメージを抑えるのにも使えるので一概に弱点とも言えない。
・欠点はクールタイムが10分と長めな事と、発生点がランダムなので効果が安定しない事、再使用にはもう一度槍を触れさせる必要がある事、そしてレベルでダメージが決まるのでレベル上限が低いモンスター相手では大した威力が出ない事。
・それ故にシュバルツはこのスキルを『ダメージを与えられればラッキー。最悪【ブローチ】が消費されるだけでもいいか』ぐらいに思っている。


読了ありがとうございました。
ちなみにヴォルトが喋っているのは兄が通訳が面倒だからと翻訳アイテムを買い与えたからです。決して括弧を書くのが面倒になった訳では……。
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