とある三兄妹のデンドロ記録:Re   作:貴司崎

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以前、作者が書いていた兄妹デンドロ小説のリメイク版です。
今度は途中で止まらない様に頑張ります。


序章 2043年7月15日
とあるゲームを買った日:Re


 □地球 加藤(かとう)美希(みき)

 

 ……その光景を一言で表現するのならば『地獄』であろうか。

 焼き払われた森林、穿たれ砕かれた大地、かつて街だったモノの残骸、荒れ果てた荒野……そして、人間だったと思わしき“ナニカ”。

 

『………………』

 

 ……そして、そんな中で一人ぽつんと立っている人影があった。

 その人物は原型を留めない程にボロボロになった鎧らしき物を身に纏い、手には身の丈以上の大きさがある何かの武器の残骸らしき物をぶら下げて、ただじっと立っていた。

 

『……嗚呼、失敗したな』

 

 その人影がポツリと呟いた……その何処かで聞いた事のある様な声には悲嘆と諦念、そしてそれ以上の悲しみの感情があった。

 

『………………』

 

 その人影が空を見上げると、そこには宙に浮かぶ巨大な……。

 

 

 ◇

 

 

「…………ハッ⁉︎ ……夢かぁ……」

 

 ……と、そこで私は夢から覚めてベットから跳ね起きた。慌ててベットの側に置いてあったスマホを確認すると、今日は2043年7月15日水曜日、夏休み少し前の何の事も無い平日であって少しホッとした。

 私の名前は加藤美希、日本のとある街に住んでいる“ごく普通”の女子小学生である。

 

「うーん……久しぶりに結構キツイ夢を見たな〜っと」

 

 私はその夢の内容を振り払う様にベットの上で大きく伸びをすると、そのままベットから降りて洗面所へと向かい顔を洗う。

 

(しかし、あの妙に意味深な夢は一体何だったんだろうかね? ……私の()()が危険を察知したのかとも思ったけど、それにしてはあんな光景が現実に早々起こるとは思えないし……)

 

 そんな事を考えながらも、私は顔を洗って目を覚ましてから部屋に戻り服を着替えてリビングはと向かっていった。

 

「おはようお兄ちゃん、祐美(ゆみ)ちゃん」

「おはようなのです姉様」

「はい、おはよう。朝メシは出来ているぞ」

 

 私がリビングに着くと、そこには先に起きていた私の兄である加藤(れん)(現在大学生)と従姉妹である加藤祐美ちゃん(現在小学生)が用意された朝食を食べていた。

 ちなみに本日の朝食はマーガリンを塗ったトースト、塩胡椒を振りかけた目玉焼き、そしてヨーグルトとバナナとカフェオレである。

 

「あれ? 叔父さんと叔母さんは今日はもう仕事だっけ?」

「はい、父様と母様はもう仕事に行きましたよ。今日は二人とも朝の仕事だそうです」

 

 ……ちなみに私とお兄ちゃんの両親は数年前に事故で亡くなっており、今は祐美ちゃんの両親である叔父さんと叔母さんの下で暮らしているんだ。

 また、その事故にはお兄ちゃんも巻き込まれていて幸い命は助かったものの、その時の後遺症でそれまでやっていた剣道を引退する事になったりもした……あの時、私がもっと……。

 

「それで俺が朝食を作る事になった訳だ。有り難く食べるといい」

「……おっと。はーい、有り難や〜、いただきまーす」

 

 今日は夢見が悪かった所為か思考がややネガティブな方向に向きそうだったので、私は敢えて少しふざけつつお兄ちゃんに対して両手を合わせてからトーストに噛り付いた。

 ……そうして、私はさっさと朝食を食べ終わって使った食器を片付けてから、登校時間になるまでリビングで寛ぎながらお兄ちゃん達と話していた。

 

「そういえば、今日は近所のゲーム屋さんのポイント倍増の日だったな。……今日は大学も早く上がれるし、学校が終わったらこの夏休みにやるゲームでも買いに行くか?」

「おっ、いいね! 夏休み前だから小学校の方も早く終わるし」

 

 私達は三人共ゲームが結構好きな方で、夏休みの様な長期休暇がある時には一緒に家庭内で出来るゲームを遊んだりする。なので休暇の前には何かみんなで出来るゲームを買いに行くのは定番になっているのだ。

 

「……あ、でも祐美ちゃんは道場とかあるんじゃない? 放課後の予定は大丈夫?」

「ダメそうなら欲しいゲームを先に言ってくれれば買ってくるが」

 

 実は祐美ちゃんは護身術をメインで教えている格闘技の道場に通っており、放課後はそちらに行く事も結構あるのだ。なので、その辺りを心配して放課後の予定を聞いてみたのだが……。

 

「今日は道場の方に行く予定は特になかったので大丈夫なのです。……それに師範からは『お前にはもう教える事は特に無い。後は自分自身で己の行く道を見つけるがいい』と言われていますし」

「な、成る程……」

 

 なんか思ったより凄い言葉が帰ってきた……ま、まあ、予定が無いなら三人一緒に行くって事で良いよね! 

 ……という訳で、まだ時間があったので私達は今どんなゲームが発売されているかをスマホで少し見てみる事した。

 

「……えーと『ドラクエⅩⅤ』? 随分ナンバリングが進んだんだな」

「あ、ポケモンの最新作がVRで発売されるそうですよ」

「うーん、私達ってVRとかやらないからなぁ。……ん? <Infinite Dendrogram>?」

 

 祐美ちゃんにポケモンVR(仮称)の事を言われたのでちょっとだけVRゲームのページを除いてみると、そこに本日発売と書いてある<Infinite Dendrogram>と言うVRMMOの紹介が載せられていた。

 ……私はこれまでVRやMMOは全くやって来なかった筈なのだが、その記事の事が何故か酷く気になった。

 

「どうしたんですか姉様。……えーと何々? VRMMO<Infinite Dendrogram>……『五感の完璧な再現』『単一サーバーで億人単位でも全プレイヤーが同時に同じ世界で遊戯可能』『ゲーム内では現実の三倍で時が進む』ですか。……凄いですね、VRってもうこんなに進歩していたのですか」

「……いや、俺もその方面に詳しい訳じゃないから断言は出来んが、どれも今の地球の技術では無理な事だと思うぞ。まあ、普通に考えたら誇大広告なんだろうが……何か気になるのか? 美希」

 

 私の様子が変わった事を察した二人が<Infinite Dendrogram>の記事を見て各々の反応を見せた……だが、私はその記事の文字を追う事すらせずに、ただ記事に書かれている<Infinite Dendrogram>題名部分だけを見つめていた。

 ……その只ならぬ様子を見た二人は、すぐさま表情を真剣なモノに変えて私に問いかけてきた。

 

「……美希、()()()()()()()()()のか?」

「うん、このゲームは買ってプレイした方が良い気がする」

「姉様の“気がする”ですか。……では、このゲームには“何か”があるのでしょうか?」

 

 私のその言葉に二人はそのまま考え込んでしまった……私の“直感”ではこのゲームをやった方が良い気がするのだが、もし危険なモノだったら……。

 ……そこまで考えたところでいきなりお兄ちゃんが勢いよく手を叩いたので、私は思わずそっちを向いてしまった。

 

「よし! それじゃあゲーム屋で買うのはこの<Infinite Dendrogram>にするか!」

「いや! でも、もし危険だったら……」

「ですが、姉様は()()()()()()()と感じたんですよね? ……だとすれば、姉様の“直感”の性質から考えて危険とかは無いのでは?」

 

 お兄ちゃんの提案に思わず言い返した私に対して、更に祐美ちゃんがそう返した……確かに、私の“直感”では今回ゲーム自体には『危険が無い』って感じるけど……。

 ……言い淀んだ私に二人は更に言葉を重ねた。

 

「まあ、初期のVRゲームには健康被害とかも有ったらしいが、今出ているヤツはそういうのは無い様になっているしな。……最悪、クソゲーかネタゲーを摑まされて残念ぐらいで済むさ」

「そうですよ姉様、たかがゲーム一つで大袈裟過ぎますよ」

「二人共……そうだね! たかがゲーム一つにちょっと神経質になってたかな!」

 

 最も、二人が朝の夢見の所為で気分が落ち込んでいた私を気遣って、そう言ってくれてる事にも気づいてはいるけど……そんな二人の気持ちを無駄にする訳にもいかないし、ここは明るく振る舞っておこうかな。

 

「それにしてもお兄ちゃん、妙にVRについて詳しかったけど実は前から気になったりしてた?」

「まあ少しな。……あの事故の“後遺症”が出て以来は、全力で遊びやスポーツ的な運動する事も殆ど無くなったからな。VRでなら或いはと調べた時期があった」

「では、今日の放課後は初めてのVRゲームを買いに行きましょうか! ……何、所詮はゲームですから死にはしませんよ、死には」

 

 ちょっと! せっかく明るく振舞おうとしたのに、何でいきなり話題が暗くなるかなぁ!

 

「まあ、冗談はさておき……姉様、そろそろ学校の時間です」

「あ! ホントだ! 急がないと!」

「じゃあ、俺もそろそろ出るかな」

 

 そうして、私達は各々の学び舎へと向かうために家を出たのだった。

 

 

 ◇

 

 

「はいっ! そんな訳でこちらに用意したのが<Infinite Dendrogram>本体三つになります!」

「わ〜、パチパチパチパチ〜」

 

 という訳で、あれから各々の学校が終わってから近所のゲーム屋に行って<Infinite Dendrogram>のハードを三つ程買って来ました……はい、登校前は結構シリアスな感じがしたんだけど、特に何か描写する事も無く普通に買えてしまいました。

 ……とりあえず<Infinite Dendrogram>と書かれている黒い箱を開けてみると、中からゴツイヘルメット型のVR機器が出て来た。でも、試しに持ってみたら意外と軽かったね。

 

「しかし、一個一万円とか儲ける気が無い値段設定だよな……美希の“直感”の事もあるが、ここまで来れば一周回って本物じゃないかと思える様になったな」

「とりあえず、やって見れば分かると思うのです兄様。……えーっと、確か紹介には最初に所属する国家を決めるんでしたよね。三人一緒にプレイしたいので同じ国家にしましょう」

「選べる国家は騎士の国『アルター王国』、刃の国『天地』、武仙の国『黄河帝国』、機械の国『ドライフ皇国』、商業都市群『カルディナ』、海上国家『グランバロア』、妖精郷『レジェンダリア』の七つあるみたいだね。どれにする?」

 

 私達はホームページなどに載っていたそれぞれの国の詳しい説明などを見て、最初の所属国会をどれにするか話し合う事にした。

 

「ここは王道ファンタジー的な『アルター王国』でいいんじゃない? ほら、以前やったゲームはSF系だったし、ここはファンタジー系にしようよ!」

「それは構いませんが……ファンタジーと言うなら『レジェンダリア』もそれっぽいですよ? 説明文を見る限り神秘的な雰囲気で面白そうです」

「俺達はVRやMMOは初めてだから、なるべく初心者向けの国の方が良いだろう。……その二つだと『アルター王国』の方がスタンダードっぽいか?」

 

 そう言う訳で、2対1で私達の所属国家は『アルター王国』に決まったのだった……別に私達は所属する国家にこだわりがある訳じゃなかったから、祐美ちゃんからも特に反対は無かったしね。

 

「プレイヤーネームはいつもゲームで使っている『レント』『ミカ』『ミュウ』でいいかな? 名前は分かりやすい方がゲーム内で合流しやすいと思うし」

「……待ってください姉様。多人数が同時にプレイするMMOだと短い名前では誰かと被ったりもするのでは?」

「まあ、どれもありがち名前だからそういう事もあり得るか。……じゃあ、そこに苗字でも付けるか? 同じ苗字なら兄妹だと分かりやすいだろう」

 

 確かに祐美ちゃんが言う事も最もなので、私達はお兄ちゃんの提案で何時もの自分のプレイヤーネームに苗字を付けることになったのだが……これがなかなか思いつかない!

 ……いつものプレイヤーネームも本名をもじったものだから、これ以上もじれる所が見つからないし。

 

「……と言っても、全然思いつかないなぁ。私達は本名をもじっただけで丁度いい苗字と名前が決まる様なものじゃないし……」

「そうだな……じゃあ安直だが、苗字の『加藤』の一文字である『(ふじ)』を英訳した『ウィステリア』とかでどうだ?」

 

 ……と思っていたら、お兄ちゃんがあっさりと本名のもじりで苗字候補を出してくれました。流石はお兄ちゃん、略してさすおに。

 

「綺麗な響きだからいいと思うのです。流石です! お兄様!」

「それ以上のアイデアも浮かばないしねー。……じゃあ、私のプレイヤーネームは『ミカ・ウィステリア』になるね」

 

 そして、お兄ちゃんが『レント・ウィステリア』で祐美ちゃんは『ミュウ・ウィステリア』になると……MMOだと現実の情報はあんまり出さない方がいいから、本名で呼ばない様に気を付けないとね。

 ……さて、これでゲーム前の準備は全て整ったね。

 

「それじゃあ、決める事も決めたしそれぞれの部屋に戻って早速プレイしてみようか!」

「はい、初めてのVRゲームですから楽しみなのです!」

「……まともなゲームならな……」

 

 ……そうして、私達は()()()VRMMO<Infinite Dendrogram>をプレイする事になったのだった。




あとがき・各種設定解説

加藤美希:通称『妹』
・小学五年生で外見は身長130cmぐらいの黒髪ロングで黒目。
・尚、彼女が見た夢は特に今後の展開には関わったりしないフレーバー的なモノ。
・生まれつき“直感”が鋭いらしい。

加藤蓮:通称『兄』
・大学一年生で外見は身長180cmぐらいの黒髪短髪で黒目。
・事故の後遺症はたまに腕が少し痺れるぐらいで日常生活には支障は無い。

加藤祐美:通称『末妹』
・小学二年生で外見は身長125cmぐらいの黒髪短髪で黒目。
・通っている道場はとある古流武術の所で、原作に出て来る『樹廻流』とも交流があるらしい。


読了ありがとうございました。
これから頑張って投稿していきますので、またよろしくお願いします。
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