□王都アルテア 【
「……うん、とりあえずこれで一先ず完成かな」
「まあ、試作品件データ収集用としてはこんな物じゃろう」
『…………』
俺達が<ニッサ辺境伯領>に向かう少し前の事、王都にあるレンタルアトリエ(金を払えば一定期間使わせて貰える生産施設の事)の一つで俺とネリルは目の前に鎮座するようやく完成したゴーレムを見て達成感を抱きつつ一息吐いていた。
……尚、ゴーレムを作ろうと思ったのは手に入れた特典武具【クルエラン・コア】の未開放スキルの解放条件が“ゴーレムの作成”に纏わる物だという事もあるのだが、もう一つネリルからの
「それでネリル、コイツ自身はモンスターのゴーレムなんだよな? ……その割には動かないが」
「【
「『コア』ね……以前の<クルエラ山岳地帯>でゴーレムに入れた【魔神石】とやらを改造した物だったか」
「うむ、あの時の【魔神石】は魔力を中途半端に使ってしまっておったからの。だから外部魔力タンクとして使うより、一時的にゴーレムのコアにする術式をベースに本格的な『ゴーレムコア』に改造した方が良いかと思ってな」
ネリル曰く、この『ゴーレムコア』とは文字通りゴーレムの中枢部分になるパーツの事であり、今回は使いかけの【魔神石】をそこに残った魔力で改造して“器”とし、その中に何処からか取ってきた精霊を詰め込んでゴーレムの自立思考を行う核及び魔力源として再構築した物だとか。
……なので、このゴーレムは普通のゴーレムと自然系エレメンタルが融合した“ハイブリッドゴーレム”みたいになっているらしく、ステータスの内HP・STR・END・AGIなどの物理ステータスは躯体部分、MPに関してはコアのエレメンタルが基準となった数値になっているのでかなり高いステータスを誇る様だ。
「……しかし、MPと比べると物理ステータスは少し低いか……躯体の方は主に俺が担当したからなぁ。まだゴーレム作り関係のスキルレベルが低いのが原因か」
「だからこその『ゴーレムコア』じゃよ。……コアを別のより高性能な躯体に付け替えれば戦闘経験を積んだ思考はそのままにステータスを強化出来るし、躯体と核が分かれているお陰で躯体側を自由に改造出来るしな」
ちなみに躯体の方の素材は<墓標迷宮>の植物階層で取ってきた【ウッドゴーレム】の素材をエドワードに頼んで金属化して貰った【樹木戦像の鋼】を素体に、ネリルが【クルエラン・コア】戦の戦利品である『古代伝説級金属と対魔法金属の箱だった物』の一部を加工して手足と胴体に鎧の様に纏わせる様に融合させた物になる。
元はゴーレムだった【樹木戦像の鋼】を使ったお陰でSTR・AGIなどのステータスは上がり各種動作もより俊敏に、古代伝説級と対魔法金属の積層装甲を組み込んでいるのでHP・ENDが上がり《魔法耐性装甲》のスキルすら組み込めたとネリルは言っていた。
また、ゴーレムの見た目は身長三メートルで手足が太く、茶色の木目の様な色合いな金属の身体とその胴部・頭部・手足に鈍い銀色をしている金属の装甲が張られていると言った無骨な外観で、いかにも『試作型』といった感じで個人的には好みな感じだ。
「……それに、主人殿の手が入らなければ特典武具のスキルは使えんじゃろう?」
「まあね。……この《クリエイション・ゴーレムアーミーズ》を活かすためにはもう少し各種スキルレベルを上げる必要あるか」
そう言いながら、俺は今も履いている焦げ茶色のズボン──特典武具【創像地衣 クルエラン・コア】を軽く叩いた……この【クルエラン・コア】の新しく解放されたスキル《クリエイション・ゴーレムアーミーズ》は二つの効果を内包したスキルである。
まず一つ目の効果は『人型のゴーレムを作成した場合の品質及びスキル効果を約二〜三割程上昇させる』という物だ。お陰で人型に限れば今の俺でも素材を厳選してネリルの保持があれば亜竜級相当のゴーレムをどうにか作る事が出来ている。
……そしてもう一つの効果は『自分が作った人型のゴーレムに
「とりあえずこのゴーレムには騎士系統の《聖騎士の加護》とか《ダメージ軽減》と言った前衛壁役に向いたスキルと、高いMPを活かすために【
「パッシブスキルの方はともかく、アクティブスキルはどの程度使えるかはまだよく分かっておらんからの。……その為の自立思考付きコアであるし、スキル構成がダメなら躯体だけ作り直す事も出来るしな」
ちなみにゴーレムに付与出来るジョブスキルの種類や数は作成したそのゴーレムの出来で変わってくるらしく、少し前に練習がてら適当な素材で作った物には下級職のスキルをスキルレベルを下げた状態で一つ二つしか付与させる事は出来なかったが、このゴーレムに付与出来るスキルには上級職の物も含まれておりスキルレベルもそのままで五つ以上付与する事に成功している。
……後、多分だが付与出来るジョブスキルの種類とかはゴーレムの性質にも影響を受ける感じだと思われる。氷で出来たゴーレムには火属性魔法スキルは付与出来なかったし。
『……GO……』
「お? どうやら『コア』と『躯体』が馴染み終わったみたいじゃな」
そうこうしている内に目の前に鎮座するゴーレムは僅かに唸りを上げながら身動ぎし始めた……ようやく『コア』と『躯体』の接続が終わった様だが……。
『……GGGU……』
「……生物系のゴーレムは作成した時点で作成者に使役されている設定になっているが、内部の精霊を含めてコアを作ったのはネリルになるからこの場合はどうなるんだ?」
「そこは心配要らぬよ。きちんと主人殿に従属する様に“調整”しておるし。……内部に入れた精霊も
「いやちょっと待て、それは聞いてないぞ」
確かに中に入れる精霊にはゴーレムと相性の良いものを選んでおいたとは言ってたが、俺が倒した<
「まったく主人殿は心配性じゃのう。……そもそも【クルエラン・コア】由来と言っても【魔神石】に一部残っていた残留思念とヤツが収められていた例の箱を触媒に《精霊紹介》を行っただけじゃから怨念とかは無いぞ。お陰でゴーレムの操作に長けた精霊を呼び込めたし、ちゃんと契約で縛っておるぞ」
「なら良いんだが……ネリルって意外と凝り性だよな」
「前世では人間と技術交流してみたり、そこで得た技術を地下深くで数十年ぐらい弄り回すぐらいにはな……おっと、接続も終わった様じゃな。調子はどうじゃ?」
『GO』
そうして話している間にゴーレムは完全に目覚めたらしく、ネリルの問いに何か答えらしき唸りを上げてからはただジッとしていた……出来を確認する様にネリルがペタペタと身体を触っても動かないし、特に悪意や害意も感じないのでどうやら俺の懸念は杞憂だった様だ。
……とりあえず俺も《看破》などを使ってゴーレムのステータスを確認していったのだが、突然ゴーレムは俺に向けて控えめに唸りを上げて来たのだ。
『……GOGOGO……GOGO』
「うおっ……ええと、何か言いたい事があるのか? すまんがゴーレム語は履修してなくて……」
「そもそも発声機能は積んでおらんから唸りしか上げられんのじゃが……まあ、コアの精霊の意思を読み取るぐらいは出来るのじゃがな」
そう言ったネリルはゴーレムに手を当てながら目を瞑ってコアに宿る精霊の意思を読み取ろうとしていった……一体、俺に何が言いたいのか。
「……ふむふむ、成る程のう。……主人殿、このゴーレムは忠誠を誓う代わりに
『GO』
「……成る程、そういう事もあるのか」
ネリルは【クルエラン・コア】をかつて<クルエラ山岳地帯>にあった<山岳国家クルエラ>が作った魔道具が変質した物ではないかと言っていたし、おそらく国を守る為に作られたであろう魔道具の未練としては納得のいく内容か。
……しかし、“名を残す”と言われてもどうするか……そうだな。
「それならお前の名前を【クルエラン・プロトゴーレム】としておく。まだ試作段階だから“プロト”の文字が付いているが、今後改良を加えていっても名前の『クルエラン』に関しては残し続けて、呼び名もクルエランにする事を約束しよう……どうだ?」
『……GO!』
「『それで良いです。ありがとう、今後とも宜しく』だそうじゃ。……ふむ、思ったより自立意思の発達が早いの」
……そういう事があって俺の従属モンスターに新しく【クルエラン・プロトゴーレム】が加わったのだった。
◇
『GO──!!!』
『KIISYA──!!!』
そうして仲間になったクルエランは【
……古代伝説級金属は一部に薄くしか使われていないとは言えENDは4000ぐらいあるし、《聖騎士の加護》を始めとする防御系スキルと合わせれば亜竜級モンスターの攻撃も受け止められるか。
『GOO!』
「……ふむ、アレは《フィジカルブースト》じゃな。魔法系アクティブスキルも十分使用可能と」
『KISYA!!!』
「ただ強化して殴り掛かったは良いが普通に避けられてるな。AGIが低い事もあるがそれ以前に格闘技術面が余り高くないか」
自身のSTR・END・AGIを上昇させる即時発動可能な魔法を使ったクルエランは【亜竜突撃兜虫】に殴り掛かったが、大振りなその一撃は咄嗟に飛び退った相手には当たらなかった。
……まあ、ゴーレムはAGIが低かったり動作自体が余り精密でない傾向があるのが普通だからしょうがないけどね。前衛壁役として耐久性特化に作ったから尚更。
「戦闘技術に関しては自立意思が経験を積めばなんとかなるじゃろ。……いっそ攻撃魔法か武術系アクティブスキルでも覚えさせるか? まだ容量はあった筈じゃが」
「攻撃魔法に関しては俺とネリルがいるからな、これ以上増やしても余り意味はないだろう。……それより前衛壁役に特化させるのが良いと思うがな。後はセンススキルでも習得させるのはありか」
ただ、俺が覚えてるセンススキルは《剣技能》《盾技能》ぐらいだから、武器とか使いにくいゴーレムには向いてないか……いっそ格闘系のジョブでも新しく取ってみるかな。五体があれば使えるから俺のサブウェポンとしても問題ないだろう。
……そんな品評を俺とネリルがしている間にもクルエランは【突撃兜虫】の角による打撃にも一切怯まず、逆に攻撃を受けながらカウンター気味に打撃を放つ事で相手に当てる事に成功していた。
『GOO──!!!』
『KISYA⁉︎』
「おお、今のは上手いな。これは格闘系スキル習得も視野に入れるか」
「内包した精霊はゴーレム運用に長けておるから、それも悪くないじゃろうて。……ただ、攻撃系スキルは持っとらんからそこそこ高いENDを持つ相手には致命傷を与えられん様じゃ」
確かにクルエランの拳は当たってはいるが単にSTR任せの攻撃だからか、相手の甲殻に阻まれてそこまでダメージを負わせられない様だな……まあ、前衛壁役としては十分な性能があると確認出来たしそろそろ終わらせるか。妹達も暇そうにしてるし。
「それじゃあ最後に連携の確認でもしておくか。……ヴォルト、アイツの動きを止めろ」
『了解……《サンダー・クロウラー》!』
俺の指示を受けたヴォルトは雷を纏わせた蹄を地面に叩きつけながら
『KIIE⁉︎』
「クルエランは俺の射線が取れる位置までそいつを殴り飛ばせ! ネリルは俺に火属性強化」
『GOOO!!!』
「あいあい」
そうして俺は魔法の準備をしながらそんな指示を出し、それを聞いたクルエランは動きが止まった【突撃兜虫】を真横に殴り飛ばした……ふむ、ちゃんと俺と【突撃兜虫】の間に誰もいない位置まで飛ばしてるな。
……実はワザと曖昧な感じの指示を出してどのくらい対応出来るか見たんだがほぼ満点の回答だ。ここまで判断出来るとは自立意思って凄いな。
「ほれ《フレア・ブースター》じゃ」
「助かる……《魔法威力拡大》《魔法射程延長》《ブレイズ・バースト》!」
『KISYAAAAA!?』
殴り飛ばされた【突撃兜虫】はそのまま地面に叩きつけられ蓄積したダメージによって動きは鈍り、その隙を突いて俺はネリルの火属性強化魔法を含む各種魔法強化スキルで威力を増幅させた
……そうして戦いを終えたクルエランがこっちに戻って来たので、ちょっと労いの言葉と妹達への紹介とかもしておこうか。
『GO』
「ああ、よくやってくれたクルエラン、正直想像以上だったよ。……という訳で、新しく俺の手持ちになった【クルエラン・プロトゴーレム】君だ。みんな仲良くする様に。
「お兄ちゃん、ゴーレム作って戦力に加えたのは聞いてたけど、また凄いの作ったね」
「えーと、宜しくお願いしますのです」
「パーティー的には前衛壁役なのかな?」
高性能なゴーレムを作った事は妹達にも言っていたが、クルエラン自体をキチンと見せるのは初めてだったからな……興味深そうにペチペチとその身体を触るミカや、礼儀正しくお辞儀をするミュウに対してもクルエランは特に嫌がる様子を見せないし、とりあえず初顔合わせは上手くいったかな。
「クルエランは見てもらった通り前衛壁役だから後衛のネリルの護衛とかで出す事が多くなるかな。俺達のパーティーには明確な壁役がいなかったから、これで戦術のパターンも増えると思う」
「うんそうだねお兄ちゃん……クルエラン君は
「それは良かった。……出番が来たら呼び出すから、それまでは【ジュエル】で待機していてくれ。《
『GO』
いつも通り意味深な事をいうミカに対して頷きつつ、俺はクルエランを【ジュエル】内に帰還させた……AGIはそこまで早くないから移動時には置いてけぼりになりかねないしね。
……そんな感じで新メンバーとの顔合わせを終えた俺達は再び<サウダーテ森林>を進んで、一路<ニッサ辺境伯領>へと向かっていったのだった。
あとがき・各種設定解説
兄:ゴーレム作り始めました
・【クルエラン・プロトゴーレム】作成以前にもいくつかジョブクエストやスキルレベル上げ、及び《クリエイション・ゴーレムアーミーズ》のテストがてらゴーレムを作っていたが資金稼ぎの為に殆ど売ってしまっている。
《クリエイション・ゴーレムアーミーズ》:【クルエラン・コア】の第二スキル
・スキル解放条件は『ゴーレムを一定数生産』と『一定数以上のジョブスキル習得』であり、人間の代わりの防衛戦力として人型の兵隊系ゴーレムを作る事に特化した【クルエラン・コア】由来のスキル。
・スキル適応の条件である“人型”に関しては割と緩く、手足と頭部があって二足歩行なら全長10メートルの巨人型とかでも該当する。
《フィジカルブースト》:自己強化魔法
・自分自身だけを対象とする単体バフ魔法スキルで、他者を対象と出来ない代わりにSTR・END・AGIを一度に強化出来て即時に発動可能。
・【魔法剣士】や【魔戦士】などの魔法を使う前衛系ジョブの多くで習得可能なスキル。
ネリル:意外と凝り性
・現在の最大MPは大体10万と言った所なので大規模な魔法行使はまだ出来ないが、それでもゴーレム作成・金属加工共に世界で上から数えた方が早く技量を持っているので作成する物の質も異様に高い。
・だが、本人的には兄の成長を促す意味もあってそこまで本気で生産作業は行なっていない模様。
【クルエラン・プロトゴーレム】:“山岳国家クルエラ”の残滓
・兄とネリルが大体2対8ぐらいの割合で協力して作り上げたゴーレム。
・HP・ENDに特化させた壁役ゴーレムであり、本編中に紹介した各種防御スキルの他に【ウッドゴーレム】由来の《自動再生》スキルがあるので耐久性なら純竜クラスに迫る。
・ただ、攻撃面に関しては製作時に力を入れていない事もあって大した事は無いが、そもそも三兄妹は攻撃力過多なのでパーティーバランス的には丁度いい感じ。
・自立意思にはネリルが直々に各種動作プログラムを組み込んだのでスムーズに駆動し、兄の指示を正確にこなす判断力も備えているがまだ生まれたばかりなので所々にアラがある。
・だが、コアの自立意思には学習機能があり、躯体の改良も可能なので今後の成長に期待。
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