とある三兄妹のデンドロ記録:Re   作:貴司崎

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前回のあらすじ:妹「ひめひめさん達も今頃王国は向かってるのかな?」兄「多分なー、パーティーは変態ではないとやたら強調してたが」末妹「変態…?」


到着! ニッサ辺境伯領

 □ニッサ辺境伯領 【戦棍鬼(メイス・オーガ)】ミカ・ウィステリア

 

「はい、そういう訳でやって来ましたニッサ辺境伯領! 姫乃さんはもう着いてるんだっけ?」

「予定ではこちらの時間で明日辺りに着くと言っていたが……後、こっちでのアバター名は『ひめひめ』と言うらしいから気を付けろよ」

 

 あれから特に何かトラブルに会う(野生の<UBM(ユニーク・ボス・モンスター)>が飛び出して来たりする)事も無く、私達はニッサ辺境伯領に到着していた。

 ……しっかし、ここはレジェンダリアが近いからか亜人の数が多いね。ギデオンにも結構居たけどこっちは見た限りでも三割ぐらいがケモミミ生えてたりするし。

 

「ネットリテラシーには気を付けなければいけませんからね。それでは兄様、今日はどうするのですか?」

「今日はもう遅いからしばらくしてからログアウト。明日からの休日に向こうと合流して例の<UBM>を探す予定になってる」

「その辺りはちゃんと計算してるんだね。主にお兄ちゃんとひめひめさんが」

 

 とりあえず夕飯は向こう(現実)で食べ終わってるので、デンドロ側の時間で後10時間ぐらいはログイン出来るからその間は各々観光でもしていよう、ついでの例の<UBM>の情報も少し調べようとなってその場は解散となった。

 ……本当に三倍時間は便利だよねー。学校のある私達でもちょっとした空き時間で長くゲームが遊べるのは最高だと思いましたー(小並感)

 

「さて、私はいつも通り(直感のままに)街を回ってみるかな。何かあるにしてもこれが一番早いしね」

 

 まずは観光しつつ出店とかを冷やかしに行こうかな。<墓標迷宮>篭りでお金には余裕があるし、何か面白そうなとか使えそうな御当地アイテムでもあれば買っておこうかな。

 

 

 ◇

 

 

「はいお嬢ちゃん、【ジェムー《マナ・ディフュージョン》】三つと【高濃度除草剤】と【高品質聖水】がそれぞれ五つづつだ」

「ありがとうねおじさん。これはお代だよ」

「へい毎度あり……しかし、<アクシデントサークル>対策の空間中の魔力避けアイテムに、対植物系モンスター用と対アンデッドモンスター用アイテムとは、これからレジェンダリアにでも行くのかい?」

「今はそんな予定はないかな。……ただ何と無く()()()()()()()買っただけだし」

 

 訝しげな表情を浮かべる魔道具屋のおじさんに礼を言いながら、私は買ったアイテムをアイテムボックスに収めてその店を後にした……まあ、相変わらずの“直感”が『これこれこういう物を買った方が良い』と告げて来るので買っただけなんだが。

 ……どれも結構な高級品だったので数は揃えられなかったしそれなりの出費にはなったが、『このレベルじゃないと意味がない』と出たからしょうがないよね。

 

「ふむん、一通り見て回った範囲だとここではレジェンダリア産っぽい高性能なマジックアイテムを多く取り扱っているみたいだね。『レジェンダリアから取り寄せました!』『あのレジェンダリアでも使われてるマジックアイテム!』みたいなポップが沢山あったし」

 

 ちなみにデンドロの《真偽判定》はこんなポップにも対応しているので、嘘を書いてもすぐに見破れるから殆ど本当の事しか書かない模様……尚、書いた人間が本当だと思っていれば《真偽判定》には引っかからないので、元から商品が偽物で店員が気付いてないとかなら偽りの紹介文もあり得るんだけどね。

 ……まあそんな事はどうでも良い話ではあるんだが、この街を一通り歩き回って見ても件の<UBM>に対する“直感”の反応は買い物に纏わるモノだけだったね。

 

(つまり例の<UBM>の知っておいた方が良い情報とかはこの街には無い、情報がこの街に知られない様に目立たず潜伏しているという事。……私の“直感”ではこの街自体へ()()()()()()()()()()()()()()()()()って出ているんだけどね)

 

 具体的に言うと、今回の案件を解決出来なかった場合はこのニッサ辺境伯領が『半壊』ぐらいはする気がするんだよね……城壁の上に魔力式の砲台とかを備え付けられていたりと、かなりの防衛力を持ってそうなこの街を半壊させるとか分かっていたけど今回の敵は大分厄介そうだ。

 ……問題は『この街が半壊する事』は分かるんだけど、それが『どんな相手で』『どんな手段で』そうなるのかが現時点ではさっぱり分からないって事なんだけど。

 

(まあ、私の“直感”が最終的に上手く行くにしても、その過程に与えられる導きが結構曖昧なのは今に始まった事じゃ無いから別に良いんだけどね……多分、レジェンダリア組が合流してからが本番な気がするし)

 

 とりあえず今の私に出来る事は『来るべき時』に向けて出来る限りの準備をしておく事だけだろうと気を取直し、私はこの街でやっていたバザーに足を踏み入れた……こういった出店には意外と掘り出し物が質のいい中古品とかがあったりするんだよね。

 ただ、商品のチェックをちゃんとしている普通の店と違って偽物とか不良在庫も普通にあるから、本当にいい物を手に入れたければ《鑑定眼》と欲しい物に巡り合うリアルラックは必須とか言われてるけど。

 

「まあ、私は《鑑定眼》とかは持ってないけどね。一応【鑑定のモノクル】はあるけど」

 

 最も、私の場合は“直感”のお陰で『買った方が良い商品』が何と無く分かるから掘り出し物を見つけるのは非常に得意なのである……装備枠が着ぐるみ(特典武具)とかで殆ど埋まってるから、そもそも普段使いで装備出来そうなヤツが少ないっていう別の問題があるけど……。

 

「ふーむ、これは【魔法カメラ】ね。中古品だけど性能は良さそうだし面白そうではあるから買っておこうか。……こっちのは【オキシジェン・リング】、込めたMP分だけ装備者に酸素を供給するのね。一応買おうか。……これは【幸運のお守り】ね。割と良くあるLUC値上昇アクセサリーだけど性能はそこそこだしデザインが気に入ったから買いで」

 

 ……ちなみにこれらの代物が今回の事件で役に立つとかは無いんだけど、せっかくだから現実では(お小遣いの関係で)余り出来ない衝動買いと言うのをやってみたかっただけである。

 

「ククク、ちょっといいかなお嬢ちゃん」

「ん?」

 

 そんな風にバザーを見て回っていた私だったのだが突然変な笑い声と共に声を掛けられたのでそちらを振り向くと、そこには全身真っ黒なフード付きローブを着ている一人の男が、フードの奥で怪しげな笑みを浮かべながら裏路地にあるゴザの上に座っていた。

 ……左手に紋章があるって事は<マスター>みたいだし、ゴザの上には商品が並んでいるから多分バザーの出品者なんだろうけど。

 

「それで、何か用なの?」

「へぇ、こんな怪しげな男に声を掛けられて平然としているとは、やはり俺が見込んだ通りの女みたいだなぁ」

 

 まあ、見た目や言動はあからさまに過ぎるぐらいに怪しいんだけど“危険”は一切感じなかったからね……ていうか自分が怪しい事自体は自覚あったんだ。

 ……そう私が少しの呆れと疑問を抱いていると、目の前の男は笑みを浮かべながら話を続けて来た。

 

「おっと、“何の用か”だったが、俺は『闇商人』だからもちろん商売さ。今のお前に一番必要とされている物を売ってやろう」

「……うーん、そもそも闇商人って自称する様なモノじゃない様な気がするけど。というかそんな怪しげな格好で路地裏に店を置いても誰も寄り付かないでしょうに」

 

 ……実際、さっきからこの自称『闇商人』さんを見たバザー客は『あ、ヤベーやつだ』みたいな表情で遠ざかっているし。

 

「俺はこういう闇商人ロールプレイをしたいからデンドロをやってるんだからこれでいんだよ。……それにこの程度の怪しげな見た目だけでチャンスを不意にする程度の相手なぞ、俺の『客』には相応しく無いからなぁ」

「いや、怪しげな格好の男に話しかけられたら逃げるのが普通だと思うけど」

「その割にお前は逃げなかったじゃないか。俺は()()()に関しては自信があるからな。一眼でアンタが只の<マスター>じゃないって事に気がついたぜ」

 

 何やらドヤ顔で語る闇商人さん(自称)に対して常識的なツッコミを入れたらそう返された……うーん、彼から『危険』は一切感じないから悪意はないと思うんだけど発言はすっごい自信満々なんだよね。初対面で私の“直感”に気がついた訳じゃないとは思うけれど……。

 

「……じゃあ本題に入るけど、貴方は一体何を売ってくれるのかな?」

「ほう、こっちの流儀に乗ってくれるとはやはり俺の目は正しかった様だな。……見たところアンタはメイス使いで戦闘に極特化してるみたいだからな。おそらくこの武器が合う筈だ」

 

 私の問いに対して相変わらずの不適な笑みを浮かべながら、闇商人さんはおもむろにアイテムボックスから『商品』を取り出した……そうして出てきた物は長さ約1メートルぐらいで白い持ち手に金色の星の装飾が散りばめられて、先端には大きなビンク色のハートが取り付けられた上でその周りに何やらカラフルでファンシーな装飾があしらわれている一本のステッキだった。

 ……というか、完全にどっかのアニメの魔法少女が使ってそうな、或いはそこらのオモチャ屋さんの女の子向けコーナーで売ってそうなプリティーファンシーな見た目何ですけど……。

 

「今回オススメする消費はこちらの【ラブリーリリカルスターハートステッキ】で「あ、今回はご縁が無かったって事で」ちょっと待って⁉︎」

 

 私はそのふざけたステッキを見た時点でさっさと踵を返して立ち去ろうとしたのだが、闇商人(笑)さんが必死で呼び止めて来るので思わず足を止めてしまった。

 ……それに非常に、ひっじょ〜に不服なんだけど、私の“直感”がこのステッキを『買った方が良い』って囁いて来るんだよね……とりあえず話だけでも聞いてみますか。

 

「言っとくけど私は完全に物理特化なビルドだから、こんな魔法少女のステッキを渡しされても困るんだけど」

「それに関しては《看破》したから分かっている。……というか、コレは名前に『ステッキ』と付いてはいるが実際の武器種別は『メイス』だからな。しかも物理的ステに特化した」

「え? 《鑑定眼》……うわ、本当だ」

 

 闇商人さんに言われた通り【鑑定のモノクル】で見てみると、確かにこの【ラブリーリリカルスターハートステッキ】の武器種は『メイス』となっており、装備攻撃力も1000以上ある完全な物理攻撃仕様であった。

 

「ちなみに装備スキルとしてMP消費で攻撃に強力な聖属性と【硬直】効果を付与する《スターハートアタック》、相手を殴る度にファンシーなエフェクトと効果音がなって周囲の弱めな呪怨系スキル効果やアンデッドを浄化するパッシブスキル《ラブリーリリカルエフェクト》、女性にしか装備出来なくなる代わりに高い破損耐性と盗難耐性を獲得する《魔法少女は砕けない》と言ったものを取り揃えている」

「……スキルの名前とか効果音とか凄まじくアホくさいのにスキルの効果だけはモノ凄く有用だね……」

 

 悔しい事にこれから戦う【ハデスブランチ】はアンデッドだから相性は非常に良さそうなんだよね……まあ、本気を出したら着ぐるみ装備で暴れ回るから見た目を気にしてもしょうがないかな。

 事実、コレを装備したところで私の外見は『ドラゴン風の着ぐるみがラブリーな魔法少女ステッキを振り回して敵を撲殺する』という、非常にシュール極まりない感じになるだけだし。

 

「しかし、こんなアホな装備を何処の誰が作ったのか」

「製作者はレジェンダリアの<魔法少女連盟>というクランだな。ちょっとした伝手で失敗作を安く買い取ったんだ」

「とりあえず何処からツッコミを入れたら良いのか分かんないけど、闇商人さんはレジェンダリアに居たの?」

「つい先日までな。……アソコだと怪しげな格好をする<マスター>が多過ぎて、俺程度の『闇商人ムーブ』では全然怪しく見えないから国を移る事にしたんだ」

 

 何その地獄絵図……レジェンダリアから来るひめひめさん達は大丈夫だよね? お兄ちゃんは『性癖がまともな者達を集めてパーティーを組んだらしい』って言ってたけど、ちょっと不安になって来たよ。

 

「うーん、魔法少女ロールプレイをネトゲでするぐらいならまだ普通の範疇だし、ミュウちゃんも仮面のライダー的ロールプレイをする人もいたと言ってたから大丈夫な範囲かな? ……後、気になる事が聞こえて来たんだけど失敗作ってどういう意味?」

「(アソコには魔法少女衣装を着た筋肉モリモリマッチョマンの変態とかも居たけど言わなくていいか)ああ、失敗作と言ってもアイテムとしての性能面には一切問題はないぞ。……ただ、この【ステッキ】はクラン内の『物理で戦う魔法少女も良いよね』勢が作ったんだが、完成した後に『コレ魔法少女の杖じゃなくて単なるメイスでは? そもそも販促アイテムで殴るのは良い子のみんなが真似するかもしれない以上はアウトでは?』という意見が出て失敗作としてお蔵入りになったらしい」

「ええぇ……」

 

 まあ確かに、もうそろそろ生誕四十年になる某『プリティでキュアキュアな肉弾系魔法少女モノの大御所』も販促アイテムを打撃武器として使う事は可能な限り避けてるから、そういう考えになるのもしょうがない……と思い込んでおこう。深く考えると頭が痛くなりそうだし。

 

「……んで、肝心のそのステッキのお値段は?」

「え⁉︎ マジで買う気なの……ああいや、値段に関しては100万リルで良いぞ」

「へぇ、性能の割に随分と安いんだね」

 

 何か一瞬闇商人ムーブが崩れた気もするけど、性能と比べれば【ラブリーリリカルスターハートステッキ】がかなりの格安だったのでスルーしようか。

 

「ククク、俺は闇商人だからな。必要なモノを必要な人間に売るのが仕事なのさ。……それにここで売らないともう売れる気がしないし……」

「安さに免じて後半は聞かなかった事にしてあげるよ……はい、コレ代金」

「ククク、毎度ありぃ……」

 

 そういう訳で私は新武装【ラブリーリリカルスターハートステッキ】をゲットしたのでした……しかし、着ぐるみといい私の装備欄がドンドンネタに走った感じになって来たよねぇ。性能だけを見て外見が異様な事になるのはRPG良くある事だけどさ。

 ……後、件の闇商人さんは私が商品を買った後に少し目を離した隙に消えていた……最も光学迷彩で姿を消して走ってる事には気付いてたけど、多分闇商人ムーブのつもりみたいだからスルーしてあげたけど。

 

「さて、そろそろ時間だし今の買い物で所持金も残り少なくなったから、今日はもうログアウトして明日に備えようか。……せっかく大金を払って買ったんだから活躍してもらわないと許さんよ」

 

 そうして私は手に持った【ラブリーリリカルスターハートステッキ】にちょっと恨み言を言いつつアイテムボックスにしまい、お兄ちゃんとミュウちゃんに連絡を取ってからログアウトしたのだった……出来る限りの準備は整えたけど、どうなるかは明日の()()次第になりそうかな。




あとがき・各種設定解説

妹:新装備(尚見た目)を手に入れた
・今回の様に“直感”の赴くままに街をぶらつく事は良くあり、その度に将来的に必要になるかもしれないアイテムや新しい事件のネタを手に入れる子。
・なので、事件に遭遇する度に『こんな事もあろうかと!』みたいなノリで対応出来るアイテムを出したりする。
・全力戦闘時の格好がネタまみれな事に関しては余り気にしない様にしているが、内心『何とかならないか』と思ってる。

【ラブリーリリカルスターハートステッキ】:変態が作った頭の悪い高性能装備
・装備制限として合計レベル300以上が課せられている。
・《ラブリーリリカルエフェクト》で出て来るエフェクトは☆と♡の形で短時間で消えるが当たると弱い浄化効果を発揮する他、効果音を聞いても同じ浄化効果がある仕様。
・《スターハートアタック》によって発生する【硬直】は拘束系状態異常の一つで、1秒未満という短い時間だけ動きが止まる効果がある。
・作成者の<魔法少女連盟>は<YLNT倶楽部>とは比較的仲が良いが、『私達が好きなのは魔法少女であってロリショタじゃない』という細かい性癖の不一致により別クラン。

闇商人さん:アバター名は『ダーク・バイヤー』
・なんか意味深な事を言いながら高性能なアイテムを格安で売り付ける、どっかのなろう系小説でいそうな怪しげな商人ロールプレイをする為にデンドロをやっている人。
・尚、彼の<エンブリオ>は『視覚を介するジョブスキルを強化する』特性を持つTYPEルールの【視覚過敏 イーヴィルアイ】というもので、コレにより強化した《看破》や《鑑定眼》で手持ちの装備を売れそうな人間を見定めて声を掛けている。
・妹の時もアイテムボックスの肥やしになりそうな【ラブリーリリカルスターハートステッキ】を使える『戦棍士系統ジョブに付いている高レベルの女性で、特典武具【クインバース】を持っている凄腕』と判断して、それっぽい意味深な事を言いながら声を掛けただけである。


読了ありがとうございました。
かっぽーで【抵抗術師】【障壁術師】などの新情報が公開されたので、これまでの本文の一部をそれに合わせて変更しました。
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