とある三兄妹のデンドロ記録:Re   作:貴司崎

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前回のあらすじ:【ラブリーリリカルスターハートステッキ】これで君も魔法少女だ! 妹「いや、完全に鈍器じゃん」


予期せぬ再開

 □ニッサ辺境伯領 【暗黒騎士(ダークナイト)】レント・ウィステリア

 

「それでお兄ちゃん、ひめひめさん達との待ち合わせはセーブポイントの前って事になったんだよね?」

「ああ、ちゃんと電話で『ニッサ辺境伯領のセーブポイントである大樹の前』と言っておいたから間違う事は無いだろ。……それに『ひめひめ一行ウェルカム』と書かれた立て看板も用意しておいたから合流も問題ない筈だ」

 

 そういう訳で一晩明けた翌日、俺達はひめひめ(姫乃)のパーティーメンバーとの待ち合わせ場所に指定したセーブポイントの前に集合していた。

 ……特に捻りのない待ち合わせ場所だがこういうのは分かりやすいのが良いだろう。俺が立て看板持ってるのと割りかし美少女な妹二人とミメーシスとネリルが、その辺で買ったパフェを食ってるから妙に目立ってしまってるがしょうがない。効率優先だ(強弁)

 

「……それで改めて確認しておくけど、皆んなは今回の一件でどのくらいの準備をしたの? 私は昨日対アンデッド用のメイス(おそらく)を買っておいたけど。後は聖水と除草剤」

「俺はミカと違って必要な物が分かる訳じゃ無いからな。ひめひめからも詳しい話は合流してからって事になってるし。……一応、新戦力の【クルエランプロト】以外は聖属性魔法の【ジェム】を少し量産したぐらいだぞ」

「ワシも手伝ったしな。……後は主人殿との『連携』で使える手札を一つ増やしただけかの」

 

 連携で使える手札……ああ、以前ネリルに言われて一度試した()()か。その時はとりあえず上手くいったんだが今の俺達だとそこまで劇的に強くなると言う訳じゃ無くて、状況次第では十分使える手札の一つって感じだが。

 

「二人はちゃんと準備しているのですね。……私の場合はレベルもカンストして装備も更新出来そうなのは無かったので、余ったお金でポーションとか状態異常回復アイテムを買い込んだぐらいですが」

「僕も特に変化は無しかな。……そんな都合よく進化して新能力を獲得とかは出来ないし」

 

 そんな少し申し訳無さそうな雰囲気で言ったのはミュウちゃんとミメーシスであった……まあ、この二人は現行の装備とジョブ構成でほぼ完成されてるからな。

 多少ジョブ構成を弄ったり装備を更新するぐらいは出来るだろうが、超級職の取得や【ミメーシス】の進化や特典武具の獲得ぐらいしないと劇的に強くなるのは難しいだろう。

 

「まああんまり気にする事は無いよミュウちゃん、ミメちゃん。……それに今の二人のままでも十分に強いし、今回の事件では二人の活躍が重要になる気がするしね」

「ありがとうございます姉様。……おや? どうやら待ち人が来た様なのです」

 

 ミカに励まされて雰囲気が元に戻ったミュウちゃんだったが、その直後に誰かが来るのに気が付いた様子でこの場所に繋がる道の一つの先を向いた……言われた俺達もそちらを向くと、そこには雑多な格好をした七人の男女の姿があった。

 その中の小柄なツインテールの少女が俺の持っている立て看板を見て『えぇ……?』と言った表情をしている事や、その内の一人がまるで幽霊の様に宙に浮いていて尚且つリアルで見覚えのある顔立ちをしている事などから、彼等が待ち人である事に間違いは無いのだろう。

 ……そうしていると何故か彼等はこちらにどう声をかけようか悩んでいる素ぶりを見せていたが、そんな中で件のツインテ少女が溜息を吐きながらこちらへと歩いて来た。

 

「とりあえずこっちではレントだったわね。……ていうかその立て看板は何よ。目立ちすぎでしょ」

「昨日その辺の雑貨屋で安く売ってたから買ってみた、フレンドリーかつ分かりやすいだろう? ……それにしても随分盛った……じゃなくて削ったな」

「うっさいわ」

 

 そのツインテ少女──ひめひめ(加茂姫乃)を見下ろしながら俺はごく普通に話し始め、それを見た他の向こうのメンバーも少し安心した様子でこちらに向かって来た。

 

「今回は手伝ってくれてありがとうねぇ、蓮……じゃ無くてレント君」

「お久しぶりですシズカさん。まあ暇でしたので」

「再開を喜ぶのは良いけどまずは自己紹介から始めましょう。顔見知りだけで話してたら事が先に進まないわ」

 

 その中でも顔見知りであったシズカさんと軽く挨拶をした後、ひめひめの提案でまずはお互いに自己紹介をする事になった。

 

「じゃあ俺からか、ひめひめのリアフレで現在のメインジョブは【暗黒騎士】のレント・ウィステリアだ。こっちは俺のテイムモンスターであるネリル」

「どうもなのじゃー、モグモグ」

「その妹で【戦棍鬼(メイス・オーガ)】のミカ・ウィステリアです。宜しくね!」

「同じく妹の【魔導拳(マジック・フィスト)】のミュウ・ウィステリアとその<エンブリオ>のミメなのです。宜し……ッ⁉︎」

「どうしたのミュウ……え?」

 

 ……そんな自己紹介の最中にミュウちゃんが()()()()()()()()()()顔を歪めたのだが、ほんの些細な事だったので気が付いたのは付き合いが長い俺とミカ、そしてその<エンブリオ>であるミメーシスだけで、それ故に俺達の自己紹介を聞いた彼方は普通に自己紹介を返して来た。

 

「それじゃあ次はコッチね。レントのリアフレで【大魔弓手(グレイト・マギアーチャー)】のひめひめよ。ミカちゃんとミュウちゃんは久しぶりかしら。それでこちらが今回の件の依頼主である……」

「レジェンダリア死霊術師ギルド所属の【高位霊術師(ハイ・ネクロマンサー)】ペルシナ・デミテルです。今回はこちらの“不手際”を解決する為に協力してくださるそうで誠に有難うございます」

 

 そうしてひめひめから紹介されたペルシナさんは非常に丁寧に挨拶をしてくれたので、こちらもしっかりと頭を下げて挨拶を返しておく……話を聞く限り今回の依頼は彼女にとって重要なものであるだろうし、そんな依頼を信頼しているひめひめからの紹介とは言え初対面の人間が受けたのだから不安はあるだろうから丁寧に対応しておいた方がいいだろう。

 ……その甲斐もあったのか、或いは気を使って貰ったのかペルシナさんの雰囲気は少し柔らかいものになり、今回の依頼の報酬などの話を少しした後に他のパーティーメンバーの紹介に移っていった。

 

「じゃあ改めて【幽霊術師(ゴーストマンサー)】のシズカです。こうして幽霊になってるけど、これは<エンブリオ>によるものだから安心してね。パーティーではゴーストを使った支援担当よ。レント君とは久しぶりだけど妹ちゃん達とは初めましてかな」

「えーっと、じゃあ次は俺かな。【城塞衛兵(キャッスル・ガード)】のでぃふぇ〜んどです。主に前衛での壁役をやってます。今回は宜しくお願いします」

「……【白氷術師(ヘイルマンサー)】クロードだ。パーティーでは魔法による支援を担当してる。足は引っ張らないでくれよ」

「こら、クロード! どうして最後に余計な一言を付けるのよ。……ウチの愚弟が済みません。私は【大戦僧兵(グレイト・ウォリアーモンク)】のクラリスと言います。パーティーでは基本的にアタッカーですね」

 

 そんな感じで多少ギクシャクした様な所もあったが概ね自己紹介は問題なく進んだ……まあ、ひめひめやシズカさん以外の初対面のメンバーとは今後の行動で徐々に信用を築くしか無いからこんな物でいいだろう。

 ……そうして、彼等パーティーの最後の一人である今のひめひめと同じくらいの背丈の赤髪の少女が自己紹介に移った時に()()は起こった。

 

「最後は私ですね。パーティーでは前衛を務める【狂信者(ファナティック)】アリマ・スカーレットです、宜しくお願い……あの、どうかしましたか? ミュウさん」

「……あ……え……嘘……?」

 

 アリマちゃんが自己紹介を行った直後、彼女を見たミュウちゃんの顔色が誰にも分かるレベルで真っ青になって何やら譫言を言い始めたのだ。

 ……その気になれば自分の代謝機能すら任意で制御出来るミュウちゃんがこうなるなんて只事では無いと判断した俺とミカは直ぐに駆け寄って声を掛け、それを見たひめひめとアリマちゃんも何があったのかと近付いて来た。

 

「ちょ、ミュウちゃんどうしたの⁉︎」

「一体何があったんだ? とりあえず落ち着いて事情を話せるか?」

「え⁉︎ ちょ⁉︎ どうしたの?」

「……あの、私何かしてしまいましたか……?」

 

 そんな風に何かあったのかをミュウちゃんに聞く俺達だったが、彼女は何かを堪える様に顔を俯けながら肩を震わせて黙り込んでしまっていた……どうもアリマちゃんの方を必死に見ない様にしているみたいだが、向こうの反応を見るに彼女とは今日が初対面の筈だし……。

 

(……いや、ミュウちゃんの観察力なら動きの癖からアバターの中身を特定出来てしまうか。いつかのシュウさん着ぐるみバレ事件の時みたいに。となるとミュウちゃん……祐美ちゃんがここまで動揺する事なんて“あの一件”ぐらいだから、もしかしてそういう事か?)

「……ネリル、向こうの人達にこっちの声を聞かれない様には出来るか?」

「ふむ? まあ問題ないが……何やら厄介ごとの様じゃな。風属性魔法で適当な雑音にしか聞こえぬ様にしておこう」

 

 おそらくミュウちゃんがこうなったのはリアル側の問題だと俺は考え、とりあえずミュウちゃんの側に俺達三兄妹のリアル情報を知っている(おそらく)人間が集まってる事を利用して、ネリルに小声で向こうで困惑した表情で様子を伺ってる他の面々に声が聞こえない様に頼んでおく。

 彼等には少し悪いがこれからする話は割とデリケートなリアル側の問題だからこのぐらいの対策は取らせて貰いたい……さてと、何処から話を聞き出すかな。とりあえず事情を知ってる姫乃に……。

 

「……ミュウ、いや僕の<マスター>である加藤祐美はそこのアリマ君に謝りたい事があるみたいだよ。厳密に言えば中身の赤城真里亞って子にみたいだけど」

「ふぁ⁉︎」

 

 ……とか思っていたら、これまで妙に大人しく突っ立っていたミメーシスがいきなりリアル側の情報をほぼ全オープンする感じでぶっこんで来たので、思わず俺は口から変な声が出てしまった。

 確かに改めて考えるとシステム的に<エンブリオ>は<マスター>と記憶を共有したりある程度意識を読む事が出来るらしい以上、当然ミメーシスはミュウちゃんの心情を把握してるって事なんだろうけど……普段は一歩引いた視点でミュウちゃんに追随する事が殆どな彼女がいきなりこんな事を言うとは流石に予想外なんだが……。

 

「……あの……祐美ちゃん……何ですか……?」

「〜〜〜〜ッ!!?」

 

 そんなカミングアウトで俺とミカとひめひめがどうするべきか分からず狼狽えている間に、いち早く気を取り直したアリマちゃんがミュウちゃんにそう聞いた……瞬間、ミュウちゃんは悲鳴を閉じ込める様に口をつぐみながら全速力で身を翻して走り去ってしまったのだった。

 ……ヤベェ、ホントにどうしよう(滝汗)

 

「あ⁉︎ ……待って……」

「ちょ、これはどういう事なの⁉︎」

「……俺が聞きたいぐらいだが……多分、ミュウちゃんが昔巻き込まれた()()()()があっただろ。そこのアリマちゃんが一緒に巻き込まれた子だったっぽい」

 

 逃げるミュウちゃんに手を伸ばすアリマちゃんの横で、ひめひめが小声で聞いて来たので俺も素早く推測を答えた……あの事件にはこいつも後始末で関わってるから大体の事は知ってるので、俺の言葉を聞いたひめひめは『え⁉︎ マジで⁉︎』と言いながらも事情を理解してくれたらしい。

 ……とりあえず大分ややこしいリアル側の話になるのでひめひめにはあっちで呆然としている事情を知らない組への執り成しと説明を任せて、まずは同じく事情を知ってるミカに話し掛ける。

 

「それでミカ、これも想定通りなのか?」

「私の“直感”もそこまで万能じゃないよお兄ちゃん……基本的に『危険』なもの以外にはまともに反応しないし、今回のは別にそうじゃないしね。どっちかと言うと『ミュウちゃんにとって必要なこと』じゃないかな」

「……まあな」

「それにこの一件が()()()()()()()()()()な気もするし」

 

 まあ、ミカの“直感”がそう言っているならこのトラブルも必要な事なのだろうし、俺もミカもミュウちゃんが『あの一件』を未だに引きずってるのを気にしてたからそれが解決出来るのなら歓迎するべきなんだが……このタイミングだと面倒ごとが多いんだよなぁ(泣)

 ……とにかく、ミカの方にはリアル側でそれなりに親しかったアリマちゃんへの説明を任せて、俺は今のトラブルのある意味では元凶とも言えるミメーシスへと向き合った。

 

「……それで、何故いきなり事情をぶっちゃけたんだ」

「僕はミュウの<エンブリオ>だからね。彼女が“真に望む事”の手伝いをするのが僕の役割だからだよ」

 

 そんな俺の質問に対してミメーシスは何時ものミュウちゃんの後ろに控えている時の様な何処か一歩引いた様な態度では無く、その目に確かな()()が垣間見える堂々とした態度で答えた。

 

「僕はミュウの『今のままの自分では兄や姉に置いていかれる』『でも普通の人とは違う自分は嫌だ』という危機感と嫌悪感から誰かと同じになる能力を持つメイデンとして生まれ、『普通の人とは違う自分が信じられない』『誰かこれ以上間違えない様にその背を押してほしい』という思いから常に側にある(融合している)人格を持ったガードナーとして在る<エンブリオ>だ。……故にミュウが普通に歩める時には黙って後ろで支えるし、恐怖で動けなくなるならミュウが行きたい方向へとその背を躊躇無く押すのが僕の役割だよ」

「……成る程、これは少し君の事を見誤っていたかな」

 

 普段ミメーシスが大人しかったのは『背を押す必要が無かったから』って事か……思い返してみると、今まで俺やミカと一緒にいる間にはそんな事をする必要がある出来事は無かったからな。

 ……だからこそ、今この場でミメーシスは積極的に動いているんだろうが。

 

「後、僕はミュウの<エンブリオ>だから彼女が今何処にいるのかが分かるから、出来ればそっちのアリマって子を連れて行きたいんだけど」

「ホント一転してアグレッシブになったな。……とりあえず向こうの人達を説得して話を纏めるから少しだけ待ってくれ」

 

 ……まあ、俺としてもミュウちゃんが過去にケリをつけて前に進める様になるのは願っても無い事だし、その為なら頭を下げるのも苦労するのも全く構わないんだがな。ここは『お兄ちゃん』として頑張りましょうか。




あとがき・各種設定解説

兄:シスコン全開
・ちょっと今回はシスコンフィルターのせいで判断力とかが低下してたけど、この後は頑張って説得と執り成しを行なった。

妹:流石に今回のは予想外
・そもそも危険では無いし『今後の展開』的にも『妹の内心』的にもやっておいた方が良いイベント扱いだったので“直感”は反応しなかった。

ひめひめ:とりあえず兄に協力して説得担当
・兄とパーティーメンバーに頭を下げたお陰で大事にはならずに済んでいる。

アリマ・スカーレット:予期せぬ再開にめっちゃ困惑
・それでも妹とミメーシスの説明で状況を理解したので……彼女がどう行動するかは次回。

末妹:予期せぬ再開に即逃亡
・元より着ぐるみの中身と少し戦い方を見ただけの人物を同一人物だと判断出来る観察眼を持っているので、親しい仲で長時間一緒に居た経験のある人であればアバターの僅かな動きのクセなどでリアルを割り出す事が出来てしまう。
・他の天災児達と比べて精神面が成熟していないと言うか、普段は敬語や戦闘時の精神制御で誤魔化してるが基本的には小学生女子のメンタル。
・戦闘面の才能ならハイエンドに匹敵するのだが、それと精神面が釣り合っていないので今のところ総合的には天災児達の中でも下の方のスペックしか無い。

ミメーシス:今までと違って背景では無い
・これまでは単に必要無かったから最低限の行動しかしてこなかっただけで、実は末妹の為に必要と判断すればガンガン行動するタイプである。
・最初から末妹が進むべき方向が分かっているのに踏み込めない時、その背を押す事が自分の最も大きな役割だと思って今まで行動していただけであり、常に自分が“生まれた理由”に忠実な<エンブリオ>だった。


読了ありがとうございました。
次回からは末妹の過去編ですね。今章は末妹掘り下げ&活躍回なので、<UBM>戦はもうちょっと待って。
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