とある三兄妹のデンドロ記録:Re   作:貴司崎

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前回のあらすじ:末妹「ようやく心の中のしこりが取れた気分です……もう何も怖くない!」ミメ「死亡フラグかな? そんな事は僕がさせないけど」


作戦会議/未だに残る繋がり

 □ニッサ辺境伯領 【戦棍鬼(メイス・オーガ)】ミカ・ウィステリア

 

「……色々とご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」

「ホントにごめんなさい!」

 

 ニッサ辺境伯領にある冒険者ギルドの貸し出し用個室、そこでミュウちゃんとアリマちゃんの二人は私達に向けて深々と頭を下げながら誤っていました……うん、二人の表情や雰囲気を見るにキチンと仲直りは出来たみたいだね。

 ちなみに此処は流石に外での話し合い(謝り倒し)は周りの人に迷惑という事で、冒険者のちょっとした話し合い用としてギルドが貸し出しを行っている部屋の一つを借りただけである。

 

「全く、あちら(リアル)で知り合いだったかなんだかは知らないが、こちら(ゲーム)内にあちらの揉め事を持ってくるなよな」

「本当に申し訳ないのです」

「えーっと、ホントにゴメンね、クロード君」

 

 ただ、会議室の椅子の一つに座り憮然とした表情でそう言うクロード氏に関してはどうしようかな……言ってる事そのものは彼の方が正論ではあるんだよね。ネットリテラシー的に。

 ……これまでの会話から彼が悪意を持って文句を言ってる訳ではなく、多分ネトゲでのマナーやルールとかに凄くうるさいタイプみたいって事は分かってるんだけど、どうしたものかな……。

 

「全く、もうその辺のしときなさいなクロード。二人もちゃんと謝ってるし、レントさんもお詫びに彼等のパーティーは今回のクエストでは可能な限り雑魚敵の相手や、<UBM(ユニーク・ボス・モンスター)>戦での支援に徹してくれるって事で話は付いてるでしょ。これ以上グチグチ言わない」

「でも姉ちゃん、ネトゲのマナーは……」

「別にこの二人は意図的にマナー違反をした訳じゃないでしょうに……ゴメンねー。コイツったら昔ネトゲで嫌な目にあってから、なんかこんなしつこい性格になってさー。そんなんだからスクールで友達出来ないんだよ」

「ボボボボッチちゃうし!!!」

 

 そこでクロード君を執り成してくれたのは姉のクラリスさんでした……ちなみに支援に徹するとかはお兄ちゃんの交渉の結果。<UBM>戦でMVPをひめひめさんのパーティーの取らせやすくして、今回へ特典武具を譲りますよーっていう感じの。

 ……まあ、“可能な限り”という伏線は入れているし実戦ではどうなるか分からないけどね。そもそも私達は特典武具にガッつく程に困ってないから特に損は無いのだ。

 

「はいはい、二人ともそこまでね。……今回の一件には私も少し関わってるから強くは言わないけど、私達はペルシナさんからのクエストを達成する為に集まったんだからそこを忘れちゃダメよ」

「うぐ……分かったよ、もう何も言わないさ。受けたクエストはちゃんと熟すべきだしな」

 

 最終的にひめひめさんが話を纏める事によって、ミュウちゃんとアリマちゃんの予期せぬ再開から仲直りまでの一連の騒動は終わりを告げたのでした。

 ……そして、随分遠回りした様な気がするけどようやく本題である『【冥樹死王 ハデスブランチ】討伐』に関する話し合いが、依頼主であるペルシナさん主体で行われる事になった。

 

「ごめんなさいねペルシナさん、とりあえずこれでようやく本題に入れるわ」

「いえお気になさらず、無茶な依頼を頼んだのはこちらですから。……では改めまして、貴方達にはかつて私の師匠“だった”<UBM>【冥樹死王 ハデスブランチ】の討伐に協力して欲しいのです」

 

 そう言ったペルシナさんは私達に頭を下げてから、彼女自身と師匠であるヘイデスさんの関係とその身に起こった出来事を話し始めました……彼女の事情は事前に聞いてはいたけど、改めて本人の口から聞くと色々と居た堪れないね。こう誰が悪いと言うよりも間が悪かった感じがして。

 ほらー、彼女の話を聞いたミュウちゃんとアリマちゃんが『こんな事情を抱えてる人の前で私情で騒動起こしちゃったかぁ……』みたいな表情でめっちゃ申し訳無さそうに縮こまってるし。

 

「少しいいだろうかペルシナさん。事情は分かったし【冥樹死王 ハデスブランチ】を討伐するのは一向に構わないが、その詳しい能力や現在地などは分かっているのか?」

「ああ、レントさん達にはまだ詳しく説明してませんでしたね。……まず【ハデスブランチ】の能力ですが襲撃事件の際に戦った人達から聞いた情報によると強力な呪いや配下アンデッドの強化、更には森林内に於ける各種バフや植物操作などを使っていたそうなので、おそらく生前の師匠の能力はほぼ全て使えると考えられます。師匠は【冥王(キング・オブ・タルタロス)】などの死霊術師系をメインに【森司祭(ドルイド)】系統をサブに入れていましたから」

 

 そうして一通りの過去話が終わった後、お兄ちゃんの質問もあり本題とも言える【冥王】ヘイデス氏の成れの果て、<UBM>【ハデスブランチ】の能力の解説へと移っていった。

 

「また、師匠はアンデッドに植物の要素を持たせた【プランツアンデッド】と呼ばれる種類のオリジナルアンデッドを作り出す技法を編み出しており、<UBM>になった際に自分自身にもその術方を使ったのかアンデッドと植物が混ざり合った様な外見をしていたそうです」

「ふむ、アンデッドと植物の融合か。アンデッド化した植物などはそれなりに居るがそれとはまた違うのかの。その術式などの資料とかがあれば見たいのぅ」

「え? ……え、ええ、師匠の家から回収した資料などはありますが、読めるんですか?」

 

 ペルシナさんの解説を聞いていたら、突如ネリルちゃんが何やら目を輝かせながら詳しい情報を催促し出していた……ヘイデス氏が作ったと言う『植物を合成したアンデッド』には魔法のプロである彼女の琴線に触れる様な“何か”があったみたいだね。

 ……そんなネリルちゃんを見て少し困惑した様な表情を見せたペルシナさんだったが、いきなり真剣な表情になって聞き返した。

 

「うむ? まあこの大陸で使われておる言語なら読めるぞ。……内容を理解出来るかの意味であればワシに理解出来ない魔法理論は早々無いと言っておこうか。これでもワシは転生個体じゃからそれなりの知識はあるぞ」

「《輪廻転生(リインカーネイション)》済みのエレメンタル⁉︎ レジェンダリアでも十年に一体、詳細な知識を受け継いでいるなら百年に一体見つかるかどうかなのですが……分かりました、資料はこちらです」

 

 そんな言葉を聞いて何か納得した様な表情を浮かべたペルシナさんは、意を決した様子でアイテムボックスから少し古めな紙束の資料をネリルちゃんに手渡し、それを受け取った彼女はかなりの速さで紙束をパラパラと捲りながら目を通していった。

 ……自然系エレメンタルの本場であるレジェンダリア出身のペルシナさんだから、ネリルちゃんみたいな特殊なエレメンタルの存在も直ぐに理解出来た(勝手に理解してくれた)みたいだね。

 

「ふむふむ……ほほう、植物をアンデッド化させる訳ではなく、生きている植物をアンデッドと融合させる形式なのかの。分類としてはフレッシュゴーレムに近いか。……《光合成》のスキルを応用して日照下での活動可能なアンデッドに仕上げておるようじゃな。……それ故に光耐性がアンデッドとしては高く、水分を含む生きている植物だから多少なりと火属性に耐性も……欠点としては複雑な構成である分、製作者以外が運用する事は難しい感じじゃな。破損の修繕とかはアンデッドと植物操作の両方のスキルがいる様じゃし」

「ネリル、一人で納得してないで俺達にも分かりやすく説明してくれ……と言っても聞いてないか。ペルシナさん、コイツは無視してもいいので説明の続きをお願いします」

「あ、はい」

 

 実の所、ネリルちゃんって自分の趣味(魔法関連)に関しては割と凝り性と言うかマッド気味って言うか……まあとにかく、そんな彼女をスルーしつつペルシナさんからの説明によると、その【プランツアンデッド】とやらは通常のアンデッドと比べると以下の様な特性を持っているとの事だ。

 

 ①《植精死霊》というスキルでアンデッドと植物の両方の特性を持ち合わせていて、どちらかの種に対応したスキルであればその効果を受けられる。

 ②《光合精気》という光を吸収してエネルギーに変えるスキルを持っているので、アンデッドでありながら日照下で弱体化せず、逆にパワーアップ者もいたり光・火属性攻撃にもある程度耐性がある。

 ③制作方法はアンデッドモンスターに相性が良くて魔力資質が高い植物を融合させる形式で、融合させた組み合わせに応じてステータスへの補正や新規スキルを獲得する事も。

 ④だが、制作や維持にはかなり手間が掛かるので量産は難しく、ヘイデス氏ですらそう多くは運用出来ないレベル……といったところらしい。

 

 そんな情報を聞いて部屋にいるメンバー(資料を熱心に読み込んでいるネリルちゃんを除く)は真剣な表情で考え込んでいたが、そんな中でいち早く自分の考えを整理出来たらしいひめひめさんが口を開いた。

 

「ふうん、かなり強力なアンデッドではあるけど量産は難しいか。確か【ハデスブランチ】は【妖精女王】に配下ごと手酷くやられたって言ってたし、今なら戦力は減ってるから普通に倒せるかな」

「それなんですが……レジェンダリアでの【ハデスブランチ】の襲撃事件の際、配下の【プランツアンデッド】は()()()はいたらしいです。そのアンデッドは全て【ハデスブランチ】が逃げる際の囮として【妖精女王】に殲滅されている様なのですが……」

「量産が難しい【プランツアンデッド】をそれだけ作れるという事は、<UBM>になった事で【ハデスブランチ】にそれが可能になるスキルが発現してる可能性が高いという事じゃな!」

「ネリルお前ちゃんと聞いてたのか」

 

 資料を高速で読み込みながらも周りの話をキチンと聞いていたらしいネリルちゃんが言う通り、おそらく何らかの方法で【プランツアンデッド】を量産化するスキルを【ハデスブランチ】は持ち合わせている可能性が高いだろうというのがペルシナさんの考えの様だ。

 ……しかし、私達が相手にする<UBM>って配下量産系が多いよねぇ。まあ私の“直感”は『自分か周りにとって危険度の高いモノ』を察知するから、予想被害が広範囲に及びそうな軍勢タイプを感知しやすいから何だろうけど。

 

「それに、おそらく師匠は自身を【ハデスブランチ】に改造した際に、かつて【妖精女王】から賜った【アムニールの枝】の一部を使用している筈なので、おそらく本体の実力も相当なモノだと考えられます。……残念ながらレジェンダリアでの戦いでは基本的に配下の【プランツアンデッド】達に戦いを任せ、自身は前線には殆ど出てこなかった様なので能力の詳細は分からないんですが」

「まあ、そこは出たとこ勝負しかないんじゃないかな。とりあえず今ある情報の中から対策を立てるべきでしょう。【プランツアンデッド】の弱点とかないの? ネリルちゃん」

「あくまでアンデッドじゃから普通に聖属性やアンデッドメタは効くじゃろ。光属性や炎属性も普通のアンデッドと比べれば耐性があるだけで、それなりに効きはするじゃろうし。……後、植物の特性を合わせ持っている以上、そちらのメタも効くのではないか?」

 

 そんな感じで私がネリルちゃんに対策とかを聞いてみたら、実にあっさりとした答えが返ってきた……早速【高濃度除草剤】が役に立つかもしれないね(私の場合は直接殴った方が強いかもとか言わない)

 ……そうやって【ハデスブランチ】対策を話し合っている所で、お兄ちゃんが()()()()()()()をペルシナさんに聞いていた。

 

「そう言えばペルシナさん、【ハデスブランチ】への対策を話し合うのは良いんですが、肝心の相手の居場所とかは分かってるんですか? まあ、わざわざアルター王国に【ハデスブランチ】が居ると確信して来た以上は、何らかの探知手段があるんでしょうが……」

「それ関しては貴方達にはまだ言ってませんでしたね。……私は生前、師匠からこの【比翼の羅針盤】というアイテムを貰っていたんです。これは昔の【匠神】が作った一品で登録してある人間の位置情報が分かる他、超長距離念話を可能とするマジックアイテムなんです。……師匠が<UBM>に堕ちてからは念話機能は使えなくなりましたが、位置情報を指し示す機能は生きてるので……」

 

 うん、手のひらサイズの方位磁石みたいなアイテムをじっと見ながら呟くペルシナさんを見て、室内の空気が再び重くなったね。

 ……とにかく、その【比翼の羅針盤】が指し示す方角に【ハデスブランチ】は居るという事らしい。彼女に討伐が任されたのも【羅針盤】が使えるのが最初に設定した人間だけだからという理由もあるのだとか。

 

「まあ、それで目撃情報とこの【羅針盤】による探知で【ハデスブランチ】がアルター王国に居るであろう事を掴んだんです。……現在はどうもこのニッサ辺境伯領の東側に居るみたいですね。しかもかなり近い」

「東側と言うと……確かここらの地理が載ったパンフレットを買っておいたんだが」

 

 お兄ちゃんが机の上にこの辺りの地理や情報が詳しく書かれた旅行者用パンフレットを広げたので、私達はそれを覗き込んでニッサ辺境伯領の東側に何があるかを確認してみた。

 ……すると、まだ資料を読んでいたネリルちゃんが唐突にパンフレットの情報の一つを指差したのだ。

 

「多分ここじゃないかのう、この自然ダンジョン<サウダーテ霊林>。……この研究資料の最後に『高純度の霊木と高い魔力を宿した土地で儀式を行う事によって死者蘇生がなされる』とか書いてあったし、確かそれが目的で<UBM>になったんじゃろ? ここから東にあって条件を満たすのはここしかないぞ」

「確かに……この<サウダーテ霊林>はアルター王国内にある森林地帯でありながら、レジェンダリアの森林地帯に匹敵する自然魔力を保有するが故に自然ダンジョン扱いになった場所。【ハデスブランチ】の目的を達成するならこれ以上の場所はありませんね」

 

 そういう訳で【ハデスブランチ】が居そうな場所はあっさりと見つかった。私の“直感”でも間違い無いって出てるし、あの【羅針盤】ってアイテムが優秀過ぎるお陰で何とかなった感じか。

 ……尚、後でこっそりネリルちゃんに『その術式で本当に死者蘇生が出来るのか』を聞いてみると、『“死者蘇生”の概念の度合いにもよるが、これで出来るのは高性能な【プランツアンデッド】だけじゃろうから魂がおらん者達を生前と同じ様に蘇生させるのは無理じゃな。精々見た目が同じぐらいが限界では無いか? ……そもそも、そのレベルの死者蘇生は【天りゅ……ともかく、こやつの目的が果たされる事はないじゃろうな』との事。

 

「<サウダーテ霊林>には少し準備する時間を設けても、今から向かえば昼前には着くぐらいの距離か。向こうに戦力を用意されない為にも、後は私の必殺スキル的にもその方が良さそう。……他のみんなはどうする?」

「俺達は問題無いがペルシナさんは……」

「私も問題ありません。一刻も早く【ハデスブランチ】を止めなければ」

「それじゃあ決まりだね」

 

 紆余曲折あったものの、こうして私達は【冥樹死王 ハデスブランチ】を討伐する為に自然ダンジョン<サウダーテ霊林>へと向かう事になったのでした……ただ、私の“直感”も『これが最善』とは出てるんだけど、それと同時にどうもイマイチ不透明な気がするんだよね。

 ……私の“直感”が微妙なのは何時もの事だけど、何というか()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というか……上手く討伐が成功すれば良いんだけど。




あとがき・各種設定解説

妹:とりあえず買った物が無駄にならなそうでホッとしている

クロード:ネトゲのマナーにうるさい
・彼がそうなったのは昔ネトゲで嫌な思いをした他に、レジェンダリアのロリショタコン変態に粘着されたからでもある。
・その変態達はひめひめに処刑された上で、光の変態であるLSに『ロリショタを見守るならともかく迷惑を掛けるとか論外ですぞ』と言われて“再教育”を受けた。

【冥樹死王 ハデスブランチ】:植物とアンデッドを操る伝説級<UBM>
・生前のヘイデスの能力・技量・スキルをほぼ全て引き継いでいるが、妻子の魂を見つける事が出来なかった故に失望した所為か《観魂眼》だけは引き継がれていない。
・その代わり生物に自らの肉体(最大HP)をコストに作り上げた『種子』を埋め込む事で、強制的に【プランツアンデッド】へと変貌させて使役する《死界ノ冥種(ハデス・シード)》というスキルを有する。
・このスキルはある程度の実力差が無いと成功率は大幅に落ちるが、それでも植え付けた者に【死樹化】という特殊状態異常を与えるので戦闘にも使え、減った最大HPもアンデッド化した肉体のお陰で時間経過により回復する。
・これは生者を強制的に死者植物へと変えてその魂ごと支配するスキルであり、かつての死者の魂に敬意を払って送り出して来た【冥王】の心は最早無い。

【比翼の羅針盤】:高級連絡用アイテム
・指定した二人の人間の遺伝情報(血など)を登録して、その片方が使った時にもう片方の居場所を指し示して、更には超長距離の念話が出来るというアイテム。
・念話が届く距離なら相手の正確な位置情報や距離などを知る事が出来て、それ以上の距離でもどの方角にいるのかだけは分かるという凄いアイテム。
・その特性上相手に自分の位置を常に知られてしまうので余程信頼関係を気付いた者同士でしか使えず、ヘイデス氏は死霊術師ギルドからの連絡用も兼ねて最も信頼する弟子に渡した。
・今は相手が死したので念話は使えないが居場所を指し示す機能は動き続けており、かつての師を終わらせる為の一助となっている。


読了ありがとうございました。
次回から本格的な自然ダンジョン攻略&<UBM>戦に移るのでお楽しみに。デンドロweb版も新しいの始まったし楽しみ。
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