とある三兄妹のデンドロ記録:Re   作:貴司崎

96 / 131
前回のあらすじ:兄「……勝ち筋が見えんな」妹「諦めなければ例え小数点の彼方だろうと可能性はあると思う!」末妹「姉様それパクリですよね」


勝算の見えない戦い

 □<サウダーテ霊林>深部

 

『◼️◼️◼️◼️『■■■■■■『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎『《Branch Needle》『《Vine Whip》』

「ええいっ! 数の多い……《簡易聖別》《ウィールドスピア》!」

 

 自身の前方を埋め尽くす様に存在する黒と紫の森──【冥樹屍界 バイオハーデス】が無数に放ってくる枝の矢と木製触手に対して、クラリスは()()()()()()()()()()()()()()()逆に接近し、自身の<エンブリオ>である槍【ロンギヌス】に【戦僧兵(ウォリアーモンク)】のスキルで聖属性を付加した上で超音速で振り回す事で邪魔になる触手を打ち払いながら死霊化した木々を薙ぎ払った。

 ……現在彼女は『コストにしたHPの四分の一だけ自身のSTR・END・AGI・【ロンギヌス】の攻撃力を上昇させる』固有スキル《我が命を捧げ無双の力を(サクリファイス・ブーストアップ)》に()()のHPを捧げる事で、物理ステータスが一万以上という前衛系超級職並の能力を有している。

 

『《Branch Needle》『《Vine Whip》『◼️◼️◼️『《Curse Bullet(呪詛弾)Curse Bind(呪縛付与)

「げっ⁉︎ 呪いはMP判定なの! 《ブレッシング》!」

 

 だが、クラリスが超級職相当のステータスで幾ら木々を砕こうが森の奥から次から次へと追加で【バイオハーデス】が現れる為にキリがなく、更に物理攻撃では倒せないと判断するや相手は攻撃手段を【呪詛】を齎す呪いの弾丸と【呪縛】を与える呪いの連射に切り替え来たのだ。

 咄嗟にクラリスは司祭系統の聖属性の防護を掛けて呪い・闇属性を軽減するスキルを使って凌ぐが、拡大・成長を続ける【バイオハーデス】の最大MPは既に()()()()()()()()()レベルにまで達しており、大量に全方位から放たれる事もあって只の下級呪術ですら呪怨系耐性がある【大戦僧兵(グレイト・ウォリアーモンク)】の彼女でも無視出来ない威力になっていた。

 

『《Curse Bullet》『《Curse Bind》『《Curse Bullet》『《Curse Bind》』

「ぎゃあ! しかもスキルの残り時間が!」

「いいからこの“結界”の中まで下がれ馬鹿姉! 《アイス・ブリザード》!」

 

 加えてクラリスに《我が命を捧げ無双の力を》の効果時間は自身の合計レベル分の秒数──カンストしている彼女の場合は500秒であり。クールタイムも24時間と長大なので時間切れの際に敵に囲まれていれば当然詰む……故に慌てて彼女は後方の《魂の森(ソウル・フォレスト)》の内部に走って行き、それを追いかけて来た触手は援護を担当していたクロードが氷混じりの強烈な冷気を吹き付けて氷漬けになりながら砕かれた。

 

「……うむむ、これで自己強化も使い切ったし、後は『状態異常回復』と『結界展開』しか残ってないから直接戦闘能力は皆無になったわ。どうしよ?」

「とりあえず消費した分を回復させながら【司祭(プリースト)】か【肉壁(ライフ・ウォール)】のスキルで援護でもしてろ! ……済まん! こっちは姉が出涸らしになった!!!」

「……でぃふぇ〜んど、他のフォローはいいから東側の穴埋めに向かって。《アローエフェクト:フリードロウ》《光炎之矢》!」

「了解」

 

 そんなクロードの声を聞いたひめひめは《魂の森》に於ける西側の戦場で戦っているミカを囲もうとしていた木々に援護の矢を放ちながら、でぃふぇ〜んどを東側からの【バイオハーデス】の侵食を抑える役回りへと向かわせた。

 ……そう、現在彼等は半径30メテル程度に展開された《魂の森》の四方に散らばり、その()()()()()の森を侵食し終えた【バイオハーデス】相手に絶望的な防衛戦を演じている所だったのだ。

 

『おお、流石はひめひめさん狙いが凄く正確だね! 《スターハートアタック》《インパクト・ストライク》!』

『◼️◼️◼️⁉︎『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⁉︎『◾️◾️◾️◾️◾️……『《Branch Needle》『《Vine Whip》』

『……と言っても、状況は大して好転しないんだけど! 《双棍撃》《インフェルノ・ブレイク》!』

 

 そんな《魂の森》西の外側ではミカが援護射撃によって出来た隙に、左手の【ラブリーリリカルスターハートステッキ】のスキルを使ってからファンシーな音とエフェクトを撒き散らしながら【バイオハーデス】の内数本を聖属性と衝撃波で粉々に砕いた……これは単純な本人のSTRに加えてメイスの攻撃力と強度を強化する基本スキル《戦棍強化》と、その効果を()()()()()にまで拡大する《戦棍鬼の怪腕》と言ったパッシブスキルでの底上げもある。

 それでも未だに生い茂り増殖を続ける【バイオハーデス】は反撃に枝矢と蔓鞭を多方向から見舞うが、ミカは持ち前の“直感”で安全位置を即座に把握して退避、更に【双棍士(デュアルストライカー)】のスキルによって両手で同時にアクティブスキルを行使して炎を纏わせた【ギガース】と【ステッキ】の両方を振り回して辺りの木々を焼き払う。

 

『◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎『◼️◼️◼️◼️◼️『■■■■■■!!!』

「《ウィングド・スラッシュ》! 《レーザーブレード》! ……うぐぐ、やっぱり精神系状態異常は効きにくい……と言うか、“一部”にしか効いてない感じ?」

 

 北の外側で戦っているのはミュウとアリマの親友(に戻った)タッグである……アリマの方は物理ステータス上昇の《フィジカル・バーサーク》、STR・AGI大幅上昇&消費SP軽減の《狂乱セシ聖戦士》、強力な危険察知や罠感知などの感知能力を与える《絶望セシ預言者》、物理・魔法被ダメージ割合軽減&END大幅上昇《狂喜スル守護聖人》、HP自動回復&病毒・呪怨系状態異常耐性上昇の《狂イ果テル司祭》、AGI大幅上昇&制限系状態異常耐性上昇の《狂走スル巡礼者》と言ったスキルを使う事で得た超級職に迫るステータスで剣を振るい木々を片端から斬り裂いていた。

 更にそれらのデメリットである【狂乱】【絶望】【被虐】【狂気】【惑乱】などを【シャカ】のスキル無効にしつつ、敵のみを対象とする様に設定した《伝播スル狂信》によってそれらの状態異常を【バイオハーデス】に与えてもいたのだが…。

 

「そうですね、時折木々の何本かの動きがおかしくなってますが、どうも【バイオハーデス】全体には効果が届いていない様です……おっとアリマちゃん危ない《スライスハンド》《正拳突き》《アッパー》《コークスクリュー》!」

「ありがとう、ミュウちゃん《サンダースラッシュ》!」

 

 ……その隣で拳に聖属性と炎を纏わせてアリマでは対処しきれない不意打ちなどを的確に見切って殴り飛ばしているミュウの言う通り、相手が自身を認識している事が条件である《伝播スル狂信》では【バイオハーデス】全体に効果が届いてはいなかったのだ。

 

『うむむ……【バイオハーデス】はステータスが部位毎に異なるから《模倣》がやり難い、部位別に対象にも出来るけどそもそもステータスが低いし。……《纒装》の方も弱い攻撃を連射するタイプだから余り意味がないか……ごめん、相性が悪くてイマイチ僕のスキルが刺さらないや』

「仕方ありませんよミメ。MPは《聖拳》と《フレイム・フィスト》に回しましょう。相手のステータスなら貧弱な素の私でもなんとかなるでしょうし、アリマちゃんの妨害もこの戦場に限れば結構効いてますから」

『■■■■『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⁉︎『▪︎▪︎▪︎▪︎▪︎!』

 

 どうにも相性が噛み合わない事に凹むミメーシスを励ましつつ、ミュウは呪弾や枝矢を躱しながら精神汚染を受けた妙な動きをしている部位とそうで無い部位を即座に見切り、正常な部位だけを聖炎を纏った拳で撃ち砕いてその場の戦況を優位にしていく。

 

『◾️◾️◾️◾️『《Fear・Scream(恐慌の叫び)》『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!!!』

「あ、精神系は効かないので。ただやっぱり幾ら戦っても奥から奥から追加が来るから結局はジリ貧だね……こうしてミュウちゃんとゲームをするのは楽しいけど詰み確定じゃ……」

「《精神統一》《心頭滅却》……それは私も同じですよ。折角の仲直りしてから始めての共同戦線なので、出来れば勝ちたいのですが……」

 

 そんな見てる方がほっこりする様な会話をしながら、彼女達は倒した奥から新しく追加で生えてきた【バイオハーデス】が聞いた相手に【恐怖】の状態異常を与える叫びを使って来たのに対して各々で精神防御で防ぎながら、お返しに凶悪な多重精神汚染と聖炎の拳を叩き込んだのだった。

 

 

 ◇

 

 

【とりあえず東側にはでぃふぇ〜んどを向かわせたわ。三人がかりなら暫くは抑えられるでしょう】

【了解、他にヤバくなった所があったら俺の方からヴォルトかクルエランを回す……と言っても、その前に壊滅かもしれんが】

【しかし《魂の森》の四方を壁で囲み、その間に戦力を配置して敵を削る防衛戦というアイデアは上手いのう。お陰でかなり長く戦い続けられておる】

 

 そんな念話をしているのは南側で自身のテイムモンスター達と共に戦っているレントと西側で戦っているひめひめ、そして《魂の森》の中央でそれの維持と全体支援ついでに《テレパシー》スキルで二人を繋いでいるネリルの三人だった……指揮官ポジの二人からの指示や、二人への会話をネリルが念話で繋げる事で人員を分けた状態でもスムーズな連携が出来る様になっているのだ。

 ちなみに現在の彼等は《魂の森》の北東・北西・南東・南西の境界付近四ヶ所にでぃふぇ〜んどの【パラスアテナ】による城壁を築いて、その間の東西南北から戦力を出して【バイオハーデス】を攻撃、危なくなったら《魂の森》内部に戻って防戦するという、所謂『籠城戦』を行う事で古代伝説級<UBM(ユニーク・ボス・モンスター)>相手に長時間戦う事が出来ていたのだ。

 

【……まあ、援軍のアテも敵を倒す術もない籠城戦は敗北までの延命策でしかないがの】

【そんな事は分かっている……が、ウチのミカが勝算があるっぽい事を言ってたしな】

【ミカちゃんが言うならまだ何とかなるかもしれないけど……その辺り詳しく分からないの? ミカちゃん】

【うぇ⁉︎ いきなり念話は……わっとと⁉︎】

 

 いきなり念話を繋がれたミカはそれに一瞬気を取られた所為で危うく【バイオハーデス】の触手に捕まりそうになったが、その寸前でひめひめの《光炎之矢》による精密狙撃が触手を砕いたので難を逃れた。

 ……ちなみにレント・ひめひめ・ネリルの3名は念話で現状を打破する術を話し合いつつ他のメンバーに指示を出しながら、更に自分達の役目である戦闘も完璧にこなしてたりするが。

 

【ちょっと⁉︎ こっち結構ギリギリの戦いなんだからいきなりはやめてよね! 私はお兄ちゃん達みたいに念話と並行して戦闘とか器用な事は出来ないんだから!】

【このぐらいなら並行思考と高速思考に慣れればいけるだろう……む、ヴォルトちょっと下がれ。《セイクリッド・バースト》】

【ごめんねー、とりあえず暫くは私が受け持つからー……とりあえず《炎勢之矢》と《スプレッドアロー》で焼き払いつつ話を聞くわ】

【このリアルハイスペックチート共め、こちとら“直感”以外は凡人なんだよ……後、正直この戦いの先はよく分からないんだよ。“今は無いがこのままなら勝算はある”気がするけど、何かこう曖昧なんだよね】

 

 ミカ曰く自身の“直感”は色々と不安定だから明確に『ビジョン』が観える時もあれば曖昧な感覚だけの時もあり、今回は後者との事……これ以上は分からなさそうなので、三人は念話を切って話し合いを続けた。

 

【でどうする? このまま戦い続けるだけなら『ペルシナさん達の準備が整うまでの時間稼ぎ』とかを言い訳にすればいけるけど? 元々みんなそれ覚悟で来てるしね】

【それは構わないが……問題はこのまま戦い続けられるかだな。あの【バイオハーデス】はこれまで“下級職レベルのスキル”しか使って来てない】

()()()()()()()U()B()M()()()()()()()()()()()()()()のう】

 

 そう、スキルを多数同時発動していたから分かりにくいかったかもしれないが、これまで【バイオハーデス】が使って来たスキルは最初にひめひめの必殺スキルの効果を軽減した広域防御結界以外は《カースバレット》《カースバインド》《フィアー・スクリーム》など呪術師・死霊術師系統の下級状態異常スキルか、《ブランチアロー》《ヴァインウィップ》などの森司祭系統の地属性樹木操作下級魔法スキルだけであり、三人はこれ以上のスキルを持っているのではないかと警戒していたのだ。

 

【私の必殺スキルの時には対応して防御して来たし、大元の【ハデスブランチ】を取り込んだ大木を私が消滅させたから下級スキルしか使えなくなったんじゃ】

【それなら良いんだがな……問題は使()()()()のか使()()()()のかが分からん事だ。後者なら警戒しない訳にもいかんし……ネリル、例の“融合スキル”の準備は?】

【既に発動待機状態にあるから互いに触れればいつでも使えるぞい……じゃが、ミュウとミメのそれと違ってMPを継続消費するから長期戦には向かんぞ】

【それでも最大MPはある程度上がるならお前には十分だろう。もし向こうが本気を出して来たら使う】

【了解じゃ】

 

 

 ◆◆◆

 

 

 ■【冥樹屍界 バイオハーデス】について

 

 さて、そんな用心深い三人の警戒は()()()()()……元【冥王(キング・オブ・タルタロス)】である【冥樹死王 ハデスブランチ】と【ハイ・アンデッド・ジャイアントウッド】の融合体が大元である【バイオハーデス】は当然上級以上のスキル、死霊術や植物操作に関しては超級クラスのスキルも使用可能だ。

 ……それでも【バイオハーデス】が下級スキルの大量使用しか行わないのは、【バイオハーデス】というモンスターの存在意義が『全ての生物を自分と一体化させて同じ永遠を生きる』という考え(怨念)に基づいて動いているからだ。

 

 そして【バイオハーデス】が生物と遭遇した時の行動パターンは【ハデスブランチ】から受け継いだ知識を元にした機械的なものであり、まず『その生物を《冥樹侵食・屍界拡大(ハデス・ハザード)》によって取り込む』事が最優先。それで抵抗する様なら『状態異常スキルや弱めの攻撃スキルで可能な限り肉体を保ったままで制圧する』次善策を実行する様になっている。

 ……これは《冥樹侵食・屍界拡大》で取り込む際に肉体が綺麗な方が得られるHPなどが多いという理由の以外にも、【バイオハーデス】が多生物を『共に生きる為に取り込むべきモノ』としか思っていない……つまり基本的に敵として見ていないからでもあった。

 

 加えて“共に生きる”……自身という存在を保存する事が優先的な行動パターンに設定されているので、自分自身を大きく自傷する様な大規模攻撃に関してはブレーキが掛かる仕様になっている事も下級スキルの大量使用を優先する理由になっている。

 ……もし【ハデスブランチ】を取り込んだ大元の巨木が残っていれば、ひめひめの必殺スキルへ事前に結界を展開して対応した様にある程度行動パターンに融通を効かせる事も出来たのだが、大元の巨木が破壊されてそれ以外の部位だけでは判断力も大きく落ちる事からそう言った事も出来なかったのだ。

 

 しかし、判断力が落ちて融通が効かなくなっているとは言え【バイオハーデス】自体の行動パターンは変わらない……つまり『自身を攻撃している生物の脅威度』が『自身の肉体を増やして共に生きる優先度』を上回る事があるならば、“共に生きる対象”ではなく自身を脅かす“敵”として侵食や自傷によるダメージを脇に置いた“対処”に移るだろう。

 ……例えば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、その上で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()時ならば。

 

 

 ◇◆◇

 

 

『▪︎▪︎▪︎『▪️▪️▪️『◾️◾️◾️『◼️◼️◼️『⬛️⬛️⬛️『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎!!!』

【むっ! おいマズイぞ、どうも向こうが本気になったらしい。 超級クラスの魔法を撃とうとしておる!】

【何だと⁉︎ どんな魔法が来るか分かるか?】

 

 そんな【バイオハーデス】の異変に真っ先に気が付いたのは各種観測系魔法で常に敵を見張っていたネリルだった……彼女は念話でそれをレントとひめひめに伝えつつ、その観測結果と自身の有する膨大な知識から【バイオハーデス】の成そうとしている事を読み取っていく。

 

【これは……闇属性呪怨系と怨念変換複合の魔法砲撃かの。自分の肉体の一部をコストにする最終奥義(ファイナルブロウ)に準ずるスキルじゃな。単純な威力だけでも超級職の奥義を上回るじゃろう。……しかも複数展開しておるな】

【それで何処から何発放たれるかとか分かるかしら?】

【……この《魂の森》の()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。流石にこんなものを全方位から撃ち込まれれば《魂の森》でも耐えきれんぞ】

【【ッ⁉︎】】

 

 そんな【バイオハーデス】が使おうとしているのは【ハデスブランチ】が対【妖精女王】様に開発した『アンデッドをコストにして超強力な呪怨・闇属性複合砲撃を放つ』オリジナル超級魔法《デッドリー・ワールドエンド》。彼が<UBM>になった後アンデッドである自分自身に合わせて【大死霊】や【死霊王】のスキルを参考に作ったモノである。

 ……尚、もしこの《デッドリー・ワールドエンド》の八つ同時使用を【ハデスブランチ】が行うなら肉体の大半と当時有していた背景の全てをコストにしなければならないだろうが、【バイオハーデス】にとってはM()P()()()()()()()5()()()()()を消費すれば使える程度の、自傷ダメージを含めても許容範囲内の損害で“敵”を排除出来る都合のいい手段でしかないのだ……まあ、流石に【バイオハーデス】と言えどもこのレベルの魔法の八つ同時使用には時間が掛かるが……。

 

『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎『⬛️⬛️⬛️⬛️『◼️◼️◼️◼️!!!』

【《遠視》と《透視》で見たけど少し離れた所にそれっぽい黒い魔力の塊が見えたわね。加えて未だに木々はこっちへの攻撃を行なっているから発射阻止は無理そう……ネリルちゃん、念話を全体に】

【もうやったぞい】

【ありがとう……相手が全方位から超威力の闇属性魔法を撃とうとしているわ! 全員《魂の森》の中央に急いで退避! 守りを固めるわよ!!!】

 

 全方位を囲まれて逃げ場もなく、包囲を突破しての発射阻止も出来ない今の彼等には全力で防御するぐらいしか対処の方法は無かったのだが。

 ……幸いと言うか、もとより彼等はデスペナ覚悟で戦っていたのでその指示に対する混乱も無く、全員が直ぐにネリルがいる《魂の森》の中央に集まる事が出来た。

 

「よし! 全員集まったわね! でぃふぇ〜んど、まずは壁を「うむ、中央に面子を集めたのは良い判断じゃ。……さて主人殿、早速融合じゃ」

「分かった。……お前達は戻っていろ《送還(リ・コール)》ヴォルト、クルエラン」

「うむ、準備は良いようじゃな。では行くぞ……《フュージョニック・ユニオン・エレメンタル》!」

 

 ひめひめの言葉に被せる形で真っ先に動いたのはネリルだった……彼女がテイムモンスターをしまったレントの手を取って融合スキルを発動させると二人を光が包み込み、次の瞬間そこには髪が銀色に染まり両目の色が赤と青になったレントの姿があった。

 ……それを見て驚く他のメンバーを後目にネリルと融合したレントが地面に手を突いた瞬間、展開されていた《魂の森》の範囲が半径10メートルぐらいにまで()()されたのだ。

 

「結界が狭く……⁉︎ これは……?」

【《魂の森》の範囲を圧縮して効果を高めただけじゃよ。主人殿と融合して肉体強度と最大MPを増やせばこのくらいはな。気休めかも知れんがついでに結界も追加しておこう《ハイエンド・セイクリッド・バリア》】

「おい、ぼーっとしている暇はないぞ。向こうの攻撃までもう時間が無い……《詠唱》終了。《ホーリーゾーン》!」

 

 驚くメンバーに融合したネリルが《テレパシー》で簡潔に説明した後に既にある城壁の外側に更なる聖属性の結界を展開し、それと同時に他のメンバーに注意したレントも呪怨系状態異常を軽減するフィールドを形成した。

 

「おっとそうだったわね。でぃふぇ〜んど!」

「了解! 《フリーダム・ランパード》最大展開! 更に《奇跡の城壁》!」

「私も行くわ! HP八万消費! 《我が命を捧げ聖なる守りを(サクリファイス・ホーリーシールド)》!!!」

 

 それを聞いて即座に気を取直した他のメンバーも直ぐに各々の防御スキルを使用して行く……まずでぃふぇ〜んどが既に展開していた城壁と圧縮された《魂の森》の間のスペースに可能な限りの【パラスアテナ】を全方位に追加展開し、それに加えて【城塞衛兵(キャッスル・ガード)】の城塞への魔法ダメージ軽減スキルを行使して防御を固める。

 また、クラリスがそれらの城壁と自分達の間に消費したHPの十倍の耐久値を持つ聖属性の結界を作り出す固有スキルを使用して自分達を囲った。

 

「《足引きの呪縛域(ディーセライセーション・ゾーン)》! 《ドーンウォール》!」

「クラリスさんHP! 《サードヒール》!」

「私は全体防御とか出来ないのよね……《堅樹光球》!」

『それは私も同じなんだけど……《ヘビーディフェンダー》!』

「まさかこのスキルを使う事になろうとは……《結跏趺坐結界》!」

 

 更にクロードは飛び道具の減速狙いで固有スキルを使いつつ闇属性の防御魔法を使い、アリマはサブジョブである【司祭】の回復魔法でHPを減らしたいクラリスを回復させ、ひめひめは特典武具のスキルで自身に光の障壁を張り、ミカは余り効果はないかなと思いつつ【重戦士(ヘビーファイター)】の装備強度上昇スキルを【ドラグテイル】に使い、ミュウは魔法ダメージ半減と状態異常耐性を三倍にする【僧兵(モンク)】のスキルを使う為に胡座をかいて座り込んだ。

 ……そうして彼等は自分達に出来る限りの防御系スキルを重ねがけして【バイオハーデス】の攻撃へと備え……。

 

『◼️◼️◼️◼️……『『『『『『『『《DEADLY・WORLDEND》!!!』』』』』』』』

 

 ……その直後、全方位から超級魔法と比べても尚数倍する威力を持った、極大の闇と呪いと怨念によって凡ゆる生物を抹殺する八条の砲撃が放たれ、展開されていた防御の尽くを粉砕してその名の通り彼等の世界を闇に包んだのだった。




あとがき・各種設定解説

兄&ネリル:融合スキルを初披露
・この《フュージョニック・ユニオン・エレメンタル》は精霊術師系統超級職【精霊王】の奥義である配下エレメンタルとの融合スキルと、解析した末妹の《憑依融合》を合わせて開発したネリルのオリジナルスキル。
・なので融合中は全ステータスが足し合わされスキルも共有される上、兄とネリルの意思は別々に存在してそれぞれ別々にスキルを使ったり出来る。
・だが、ステータス自体はステータス半減の兄と魔法特化のネリルの物理ステータスが低い事もあって、それぞれジョブと自身の割合上昇スキルが重ねがけされる最大MP以外のステータスは大して上がらず、維持にMPもかなりの量を継続消費するから長期戦も不可能。
・なので一度事前に使ってみた二人からは『普通に分かれて戦った方が強いのでは?』と思われていて微妙スキル扱いされてた。
・今回は最終奥義である《魂の森》の圧縮を行う為には強靭な肉体が必要だった事と、少しでも魔法の効果を上げる目的で融合した。

ひめひめパーティー:かなり強い
・侵食目的だったとは言え古代伝説級相手に包囲状態でも十分以上大した傷も負わずに戦い続けられる技量と胆力がある。

《ブレッシング》:司祭系統のスキル
・特定の生物に弱めの浄化効果を付与して闇属性や呪怨系状態異常の効果を軽減する聖属性の基本魔法スキル。

《精神統一》《心頭滅却》:汎用スキル
・【僧兵】【格闘家】などいくつかのそれっぽいジョブで覚えるスキルで、それぞれ自身に短時間『軽度の精神系状態異常回復&精神干渉効果軽減』と『精神系状態異常耐性&炎熱耐性上昇』の効果。
・どちらかと言うと東方の方が覚えるジョブが多いスキル。

我が命を捧げ聖なる守りを(サクリファイス・ホーリーシールド)》:【ロンギヌス】の固有スキル
・展開した結界の形状はある程度変形可能で最大維持時間は(合計レベル)秒であり、破壊されるまでは途中解除不可能でクールタイムはやっぱり24時間。

【バイオハーデス】:“戦闘”をする気なら古代伝説級に相応しい能力で戦える
・怨念に縛られている上に【ハデスブランチ】の知識をベースにしたある種機械的なプログラムで活動するせいか、“共に生きる対象”と“排除すべき敵”への対応がかなり違う。
・現在の自然魔力が豊富な環境であれば、今回使った《デッドリー・ワールドエンド》×八での消耗も十分もあれば完全に回復する模様。


読了ありがとうございました。
古代伝説級は超級職パーティーとほぼ同等の戦力らしい……原作に於ける最近の超級職<マスター>達の活躍っぷりを見てるともっと戦力を盛らないとダメかなって思った。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。