□自然都市ニッサ・冒険者ギルド 【
「……はい、そういう訳でどうにか【バイオハーデス】は倒して来たのでクエスト達成です。お疲れ様でした」
「いやいやちょっと待って下さい! 本当に倒したんですか⁉︎」
「本当ですよ。ほらこのサークレットが特典武具です」
事実を告げたらめっちゃ動揺し出したペルシナさんに対して、私は獲得して頭に付けていた木製のサークレット──【霊樹冥冠 バイオハーデス】を見せて私達の報告が真実だと証明しました……私達が【冥樹屍界 バイオハーデス】を倒した後、その肉体になっていた森が纏めて跡形も無く消えた所為で<サウダーテ霊林>の一部が荒野となったりしましたが、流石にそれは私達ではどうにかなる問題では無いのと、先に【バイオハーデス】の討伐報告をすべきという意見が出たので私達はニッサ辺境伯領にまで戻ったのです。
……それで今は冒険者ギルドで何やら慌ただしく作業をしていたペルシナさんとその隣で浮かぶシズカさんを見つけて、こうして【バイオハーデス】撃破の報告をしていたのですが……。
「まあ、ちょっと報告が遅かったわねー。私達全速力でここまで戻って来てから、直ぐに冒険者ギルドなどを介して古代伝説級<
「「「……あー……」」」
成る程、道理で冒険者ギルドに様々な人が居て慌ただしくしている訳ですね……実際、<サウダーテ霊林>全てを侵食しかけていた【バイオハーデス】はあそこで倒せなければ更に酷い事になっていたでしょうし、その脅威をいち早く伝えるのは当然必要でしょうから。
……そうして事情を聞いたニッサ側は党首の娘さんが卒倒しながらも領内の騎士団や様々なギルド、更に王都にまで使いを出して自分達の窮状を知らせながら、領内の<マスター>にまで声を掛けて大規模な【バイオハーデス】討伐隊を結成しようと動いていた……所で私達が『【バイオハーデス】討伐しちゃいました! テヘペロ!』とか言っちゃった訳ですか。これは気まずい(苦笑)
「……それで本当に倒したんですよね? いや、皆さんの発言に対して《真偽判定》が反応しないのは分かってますし、犠牲なく<UBM>が討伐されたならそれに越した事は無いんですが……」
「本当ですよ。なんなら特典武具の詳細でも見せましょうか?」
多分、事態の急展開の連続でまだちょっぴり混乱してる感じのペルシナさんを落ち着かせる意味もあって、私は獲得した特典武具の方の【バイオハーデス】のステータスを見せる事にしました。
……ちなみに急いで戻って来たので特典武具の詳しい能力とかは説明してなかったからか、姉様を始めとする他のメンバーも覗き込んで来ましたけどまあ良いでしょう。それではお待ちかねのスペック表はこちらなのです。
【霊樹冥冠 バイオハーデス】
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凡ゆる生物を自らに同化させる冥樹の概念を具現化した至宝。
自身と周囲の魔力を純粋な力に変換すると共に、装着者の致死の負傷を肩代わりする。
※譲渡売却不可アイテム
※装備レベル制限なし
・装備補正
なし
・装備スキル
《霊樹の万器》
《冥冠の加護》
《デッドリー・ワールドエンド》
ご覧の通り装備補正こそ有りませんが、その分だけ保有する三つのスキルはどれもが非常に強力なのです。
まず第1スキル《霊樹の万器》は周辺の自然魔力を自動収集、或いは任意で装備者のMPを込める事で魔力を蓄積し、装備者のHP・MP・SPを使うスキルの使用時に蓄積した魔力を代わりに消費して使う事が出来るというものでした……『蓄積するのが
そして第2スキル《冥冠の加護》は装備者が致死のダメージを受けた時、代わりにその分だけ蓄積した魔力を消費する事でダメージを無効化するという【救命のブローチ】とほぼ同等の身代わり系スキルでした……最もあちらと同じで一度使えば24時間のクールタイムが課せられますが。
最後の第3スキル《デッドリー・ワールドエンド》は多分あの時に【バイオハーデス】が使って来た砲撃がベースっぽいスキルで、蓄積した魔力と装備者のHP・MP・SPの
(改めて見ると《霊樹の万器》は《模倣》系のコスト確保の為、《冥冠の加護》は《纒装》で攻撃を受ける時があるから、《デッドリー・ワールドエンド》は多分必殺スキルとの併用が前提でのアジャストですかね。本当にそうなるかは分かりませんが自分の最大HPを下げると共に相手のHPも下げて、そこに大出力の対生物特化闇属性攻撃を撃ち込むハメ技が出来るかもです)
「確かに古代伝説級の特典武具ですね、間違いなく。……手間を掛けさせてすみません。ではこれから領主や各ギルドの面々や集まった<マスター>含む人々に事情を説明して来ますので、本当に申し訳ありませんが皆さんも事情を説明して頂けると……」
「まあそこはしょうがないわね……疲れてるだろうけど、もうちょっと頑張りましょ」
そうして私達はペルシナさんと一緒に【バイオハーデス】の討伐完了を色々な人に説明する事となったのでした……まあ、正直言って私達では討伐出来るとは“姉様以外”思っていなかったでしょうから、色々とごたつくのは仕方ないですけどね。
◇
「……あー、やっと一息つけるよー……」
「思ったよりも説明に戸惑ったな」
「お疲れ様でした、皆さん」
そういう訳で諸々事情を領主さんとか各ギルドマスターに説明したり【バイオハーデス】討伐時の様子や<サウダーテ霊林>の現状を説明したりする事大体二時間ぐらい、外も暗くなり始めた辺りで私達はようやく説明を終えて解放されたのでした。
……まあ、特典武具と《真偽判定》のお陰で【バイオハーデス】の存在とそれを討伐した事自体は信じて貰えましたし、領主さんや各ギルドマスターなどのティアン勢からは感謝されましたけど、集まった<マスター>達は『デンドロ初のレイドイベントだと思ってたら既に終わっていた件』『特典武具羨まC!』『超スピードとかそんなちゃちなもんじゃ無い、もっと恐ろしい物の片鱗を味わったぜ』『只のフカシじゃね?』などと少しだけ騒ぎになったりしましたが、別に何か損害を被った人は居なかったので『なんだ、誤報か』という感じでそのまま解散しました。
「しかし、古代伝説級の<UBM>を倒したのに懸賞金とか貰えないのか。【ドラグリーフ】の時は結構貰えたのに」
「そもそも『<UBM>への懸賞金』自体が<UBM>による人的被害が出た場合、早急に討伐する為にギルドや国や領主や被害者が積み立てる感じで出来てるからな」
「つまり被害を出してなかったり、人里離れた場所で突発的に現れた<UBM>を倒しても懸賞金はそもそも掛からないという事よ。【ドラグリーフ】の時も【プラントドラゴン】の大量発生があって懸賞金が掛かってたからだし」
「ええと、一応【ハデスブランチ】の方には懸賞金が掛かっていましたが……」
「討伐したのは【バイオハーデス】なんですが大丈夫なのですか?」
実の所【バイオハーデス】が【ハデスブランチ】を取り込んだというのは状況から考察された推測でしか無いのではとも思いましたが、私達が【バイオハーデス】を討伐したのとほぼ同時期にペルシナさんが持っていた【比翼の羅針盤】──今までずっとハイデス氏だった【ハデスブランチ】指し示していたそれの反応が途絶えたので十分な証拠になるだろうとの事。
……問題は懸賞金を掛けていたのは
「すみません、流石にギルドでの積立金までは持ってくる事は出来なかったので、お手数をお掛けしますが」
「私は別にレジェンダリアに行くのも構いませんよ。アリマちゃんと一緒に居られるのは嬉しいですし。……兄様達は?」
「俺も特に問題無いが……ミカはどうする?
「そっちは多分大丈夫な気がするし、最悪お兄ちゃんに頼るから。私もレジェンダリアに行くよ」
「よーし決まりね! せっかくだから私達が案内するわよ!」
そんな訳で私達は急遽予定を変更して報酬を受け取る為にレジェンダリアまで行く事になったのでした……最もペルシナさんはニッサ側の領主などにまだ幾らかの説明や事後処理の手続き諸々が残っているので、レジェンダリアへの出発はもう少し後の事になるでしょうが。
私的には他国に行くのは初めてなので少し楽しみですし、アリマちゃんも『ミュウちゃんともっと一緒に居られる』と嬉しそうにしていたので私も嬉しくなりましたが、ふと見るとペルシナさんが物憂げな雰囲気で溜息を吐いていました。
「あー……ごめんねー、ペルシナちゃん。『今度は師匠を止めるのに間に合わせてみせる』って言ってたのに【バイオハーデス】……【ハデスブランチ】との決着に連れて行けなくて」
「…………いえ、皆さんの話を聞く限り私がその場に居た所で足手まといにしかならなかったでしょうから。……それに、もう師匠が残したモノが災いを呼ばなくなったのならそれで十分です」
シズカさんの慰め言葉に対し、ペルシナさんはそう言って笑みを浮かべてはくれましたが……ああ、姉様がちょっと気まずそうに視線を逸らしていますね。
でも実際【
「まあ、人間生きていれば後悔を背負ったままだろうと“先”はあるものよ。私は幽霊だけど(笑)」
「……そうですね。……改めて皆さん、今回は師匠が生み出してしまった<UBM>を大した犠牲もなく討伐して頂いて本当にありがとうございました。お陰でこれ以上【冥王】ハイデスの名前が穢されずに済みました」
……まあ、こうして誰も死なず大した犠牲や被害も出ずに【バイオハーデス】との戦いを乗り越えられたのならそれで十分なのでしょうと、目の前で例を言うペルシナさんを見て私はそう思いました。願わくば【冥王】ハイデス氏の魂に安らかな眠りがあらん事を……。
◇◆◇
□■???
【鉄工刃鬼 ジンオーガ】
最終到達レベル:61
討伐MVP:【
<エンブリオ>:【迅雷薄衣 ヤクサイカヅチ】
MVP特典:伝説級【錬鉄双刃 ジンオーガ】
【漂白病粘 ルーゴサイト】
最終到達レベル:53
討伐MVP:【
<エンブリオ>:【純水飲竜 アポピス】
MVP特典:伝説級【白病水砲 ルーゴサイト】
【殲葬鉄竜 メタルドライガー】
最終到達レベル:75
討伐MVP:【
<エンブリオ>:【憑器巫女 ツクモガミ】
MVP特典:古代伝説級【換装機竜 メタルドライガー】
【兜防愚 ビートレス】
最終到達レベル:32
討伐MVP:【
<エンブリオ>:【滅神呪槍 ミスティルテイン】
MVP特典:逸話級【愚防手甲 ビートレス】
【冥樹屍界 バイオハーデス】
最終到達レベル:82
討伐MVP:【
<エンブリオ>:【模倣天女 ミメーシス】
MVP特典:古代伝説級【霊樹冥冠 バイオハーデス】
「……ふむ、予想よりも早く<マスター>のみの手で古代伝説級<UBM>を討伐する事例が出始めているか。地球の<マスター>の成長は予想以上だな、喜ばしい誤算だ」
「いやいや、この時期に出るには割とやばい<UBM>だったからねー。
管理AI達が住まうとある場所で<UBM>の討伐記録を見て笑みを浮かべるジャバウォックに対して、自分が活動している王国でヤバめの<UBM>が出たと聞いて確認しに来たチェシャがツッコミを入れた。
「だが、結果的に被害は最小限で討伐されているのだし問題は無かろう。加えてこの二つの古代伝説級との戦いの中でそれぞれのMVPはメイデンの緊急進化を発動させて勝っているのだから、<超級>を揃えると言う我々の目的にも十分意味のある結果だった。……それに戦いの顛末も十分に
「……まーそうなんだけどねー」
実際、この二体の古代伝説級はデータを見る限りだと偶々居合わせた<マスター>達によって最小限の被害で討伐されているので、チェシャもそれ以上は何も言わなかった。
「しかし、既に古代伝説級すら討伐出来る<マスター>が出始めているとなると、次のハロウィンイベントで隠しボス扱いとして投下予定の<UBM>ももう少し強化しておいた方が良いか? せっかくのイベントボスがあっさりと討伐されても拍子抜けだろうし、期間限定モンスターを配置する初のイベントだからもう少し煮詰めておくか」
「いや、ハロウィンイベントは僕達がポップさせたモンスターを倒して期間限定アイテムを手に入れるのがメインのイベントだからねー。それにこっちでもイベントまで後一カ月ちょっとしか無いんだからさー」
それでも内心『ジャバウォックが煮詰めると変な
あとがき・各種設定解説
【霊樹冥冠 バイオハーデス】:古代伝説級特典武具
・形状は黒い枝が複雑に絡まって出来たサークレットで額部分に紫色の葉っぱを模した装飾が付いていて、防御力は無いものの古代伝説級特典武具として強度は頭突きをしても壊れないぐらいに頑丈。
・装備補正は特典武具としては貧弱だが、装備スキルにデンドロに於ける二大強効果である『コスト蓄積』と『身代わり』を兼ね備えているので超強い。
・第一スキル《霊樹の万器》で自身のMPを込める効果の使用後、それを再度使用してMPを込める為には一時間程のクールタイムがある。
・第二スキル《冥冠の加護》起動時に肩代わりする魔力が足りなかった場合は、魔力を全て消費した上でその超過分のダメージを受ける。
・第三スキル《デッドリー・ワールドエンド》のコストとして支払われる最大HP・MP・SPは一割刻みで最大九割まで、付随する呪怨系状態異常は数十種類の中からコスト一割につき一つランダムで選ばれる。
・《デッドリー・ワールドエンド》発動後の最大HP・MP・SPの回復は【バイオハーデス】の機能を停止する代わりに24時間掛けて行われているので、その間は【バイオハーデス】を装備変更する事も出来ない仕様。
ペルシナ:本懐は果たせなかったが納得はしている
・この後は色々とモヤモヤする気持ちを抱えながらも、それを吹っ切って前に進むために師が自分に残してくれた『死霊術師としての道』を邁進する模様。
三兄妹:この後レジェンダリア行き
・実の所、妹の“直感”は『自身に訪れる危険、或いは他者に訪れるものでそれによって
・そしてかつて事故で両親を失った妹の気質的に“直感”が示すルートは徹底的に生命の犠牲を少なくする事が多くなっており、今回の事例の様に『個人の心情を切り捨ててでも犠牲を最小限に抑える』道筋を示す事も多々ある。
・妹とその事情を理解している兄と末妹は犠牲を減らす為なら個人の心情を容赦なく無視する事も辞さず、基本的に『大多数の最善である次善』を目指す事が多い。
管理AI達:イベント準備で忙しい
・流石に時間が無いからイベント用<UBM>の強化とか無理だろ! とモンスター担当のクイーンから文句が出たので、ジャバウォックも
読了ありがとうございました。
尚、前書きの『妹』は本編には特に関係ないメタ世界の存在なのであしからず。