THE IDOLM@STER Glitter of Platinum 作:織部よよ
オリ主の基本プロフィールはあとがきに載せておきます。また別の情報はのちのち。
もう一本、別の原作のものを書いているので、あちらとは交代で投稿します。大体10日前後になると思いますのでご了承ください。
昔から、「お嬢様キャラ」というものに憧れていた。
清楚な雰囲気を地で行く家庭環境。英才教育に裏打ちされた知性。たいていは外見も非常に整っていて、見るものを外見と人格両方で魅了するような……とここまで書けば、実際に存在する名家のお嬢様や社長令嬢というよりも漫画やアニメのキャラをイメージしていることがわかると思う。俗に「お嬢様口調」と呼ばれるような独特の気品ある口調も特徴的だ。
とは言えそのモノホンのお嬢様に会ったことのある庶民なんぞほとんどいないだろうし、大体の人は概ねさっき挙げたようなイメージを持っているのではないだろうか。
そんな神秘の象徴とも言える「お嬢様キャラ」。
「はぁ……困りましたわ…」
____まさか、自分が結果的にそうなってしまうなんて、誰が想像ついただろうか…。
いわゆる「転生」という現象。前世ではタダのオタク…いや、それに関わる仕事をしていたはずの一般ピープルが経験するとは夢にも思っていなかった。
そこまでならまだ良かったんだが、どうも神様というものに気に入られてしまったのか、外見だけはとんでもない美少女になっていたのだ。
おおよそ日本で生まれ育った人間が持つようなものではない、白金色に輝く髪(プラチナブロンドと呼ばれるタイプの色だ)。それと補色になる碧色の瞳。だいたい日本人と外国人を足しておおよそ半分で割ったような目鼻立ち……どう考えても、元一般人には過剰装填である。
どうやら転生した先は国際結婚の家庭だったらしく、父親が日本人で母親がフランス人であることを後で聞いた。しかも、両親揃って顔がいい。一人娘の目から見ても思わず「推し」になってしまいそうなくらい。
ただ1つ、生まれたときに激烈な問題があることが発覚した。
「
…そう。神様はいたずら好きでもあったらしい、ただの転生ではなく「TS(性転換)」という要素まで付けてきた。
もちろん、性別が変わっているということを知ったときはひどく驚いた。けれど前世から常々美少女には一種の憧れがあったし、なんなら今では私が他人に対して自慢できる代表的なものになっている。ビバ美少女。
比較的裕福な家庭には生まれたが、私は別にお嬢様というわけではない。ではなぜそういう口調になってしまっているかというと………まあ、端的に言うと私のフェチズムだ。
びっくりするくらいのプリティーフェイスを持って生まれてしまった私は、すぐに自分の顔に可能性を見出し、5歳のころからよく絵本を読んではお嬢様やお姫様の口調をマネするようになった…いや、意図的にマネしていた。言語野が発達していない時期から話し方を変えるとどうなるだろう、と。
そして見事にやらかした。すっかりそっちの口調が定着してしまい、学校の同級生や先生に要らぬ誤解を与えてしまうようになっていたのだ。それではダメだと思い、中学を卒業したあたりから口調を矯正し始めた。
その結果、お嬢様口調と自分の口調の二つを切り替えられるようになったのだ。全くいらない技である。ただし長年お嬢様口調でやってきたため、大概の場面ではそちらが出てきてしまう。テンポ良い会話が求められるときや親の前ではしっかり普通の口調にしているが。
ちなみに一人称も肉体の性別に合わせている____というわけではなく、自然とこうなっていった。
この世に生まれ落ちてから18年。前世の記憶なんて、よほど印象に残っているものしか思い出せなくなっていた。自分が元男であること、自分の職業…などなど。“私”として過ごしているうちに、自分がかつて男であった感覚も薄れていったので、今は性別についてはあまり気になっていない。どちらでもあるという感覚さえ少しある。
前世でいろいろあった分、今世では自分の性癖に正直になって生きていこうと思った。
そして今現在。
自分の身の上を思い返しながら、東京の中でもあまり見慣れないところの街並みを歩いていた。
一時期移り住んでいた奈良県からはるばる単身でこちらにやって来たのには、特に理由はない。強いて挙げるとすれば、「3年前まで住んでいたから」「一人暮らしをしたくなったから」だろうか。
端的に言うと、私は母の影響(と自分に対する自信)によってティーンズのモデルをしていたのだ。マイマムは元カリスマモデルなのである。
母親譲りの美貌を武器に、前世とは違う職業を選んだ。幸いモデルとしてはそこそこ人気を博していたような気がする。3ちゃん(この世界では2ちゃんではないらしい)でエゴサしたらアンチが少なかったので間違いない。ソースが3ちゃんなのでどうかとは思うが。
中学入った辺りからモデルとして活動を始めたが、3年でそれなりに売れて稼げてしまったので中学卒業と同時に活動を休止した。それに合わせて、父のかねてからの願いにより奈良県に居を移したのである。なんでも良い木が育つ産地であるとかなんとか。
それからいろいろなんやかんやエンヤコーラあって、この度出身地へと舞い戻ってきたのだ。
それから何の気なしに歩いていると、道路沿いにある居酒屋を見つけた。
「『たるき亭』…?はて、どこかで聞いたことがあるような……」
かと言って自分が今まで住んでいた地域では「たるき亭」という名前は見かけたことはない。ではなぜ?
その居酒屋はとある雑居ビルの一階らしく、上にもいろいろな会社が入っていそうだ。そう思って何の気なしに上を見上げていったとき、窓に「765」という文字がでかでかと写っているのを視界に収める。
「ななひゃくろくじゅうご……?いや、違う…たるき亭…765…」
違う、違う、違う。
絶対にどこかで聞いたことや見たことのあるものだ。なんだ、18年より前の、前世の記憶も隅々までさらっていけ…。
「そこの君!あー、そこのきれいな金髪の」
「…もしかして、わたくしのことでしょうか…?」
くそ、今必死に見覚えのあるフレーズを思い出そうとしていたのに誰だってんだ!
という感情は1ミリも表に出さず、普段通りの口調で対応する。そこに立っていたのは、渋い色のスーツを着た1人のおじさま。無視してしまいたかったがまあ反応したものは仕方がない。
「いや何、私はこういう者でね?端的に言うと、アイドルにならないかね、君!」
そう言って手渡された名刺には、「765プロダクション 高木順二朗 社長」とはっきり書かれていた。
高木、順二朗……アイドル……あっ。
完全に「アイドルマスター」の世界じゃないですかヤダー……。
閉じ切っていた記憶の箱が次々と開かれる音が、脳内ではっきりと聞こえたような気がした。
*************
せっかくなので、高木社長のお話を聞こうと思い765プロの事務所に一緒に入ることにした。
「すまないねえ、今はエレベーターが故障していて階段を上らないといけないのだよ」
「いえ、わたくしは構いませんわ。ビルの階段を歩くのもまた風情、というもの」
「良いとこのお嬢様かね?うちのアイドルの四条くんを彷彿とさせるよ」
タン、タンと小気味よいリズムで段差を上っていく。ああ、この階段がそうなのか…。いまいち実感がわかないが。
「ここが、我が765プロダクションの事務所の入り口だ。入ってくれたまえ」
「あら、お気遣いありがとうございますわ」
高木社長がドアを先に開け、私に入るように促す。こういうのを見るとやっぱり社長っていい人だなと思うね。
「ただいま、小鳥君」
「あ、社長!おかえりなさ____!?」
「ごきげんよう、この方にスカウトをされてここまでやって参った者ですわ」
今日履いているロングのフレアスカートの裾をつまみ、お辞儀。口調だけでなく動作や仕草まで一通り習得してしまったもののうちの1つである。あゝ悲しきかな。
「しゃ、しゃしゃしゃ社長!?そこにいる…いえ、いらっしゃるスーパーお嬢様は一体どちら様で!?」
「たるき亭の前に立っているところをスカウトしたら、話を聞きたいと言ってくれたのだよ。どうかね、既に逸材のオーラを醸し出しているだろう?」
す、すごい……本物だ…本物のピヨちゃんがいる…!2☓歳ということを感じさせない美貌に親しみやすい雰囲気…!でも私の見かけのオーラと所作に当てられて(原作内で)見たことがないくらいにかしこまっている…珍しいもんだ(すっとぼけ)。
「こちらはうちの唯一の事務員である音無小鳥くんだ」
「お、おお音無小鳥です!」
さっきっからどもりっぱなしだよピヨちゃん。まあ気持ちはわからいでもないけど……そう言えば、まだ社長にも自己紹介していなかったね。
「小鳥さん、ですね?わたくしは織部百合と申します。此度は社長さんにお声掛けをいただき、興味深かったのでお話をと思ったまでですわ」
「おりべ、ゆりさん…!字面の高貴さと可憐さがオーバーマスター…うっ」
あ、ピヨちゃんがあまりの衝撃に机に倒れ伏してしまった。ハリボテのお嬢様ムーヴなために全面的に申し訳ない。起こそう。
「大丈夫ですか?こちらにつかまってください」
「しかも優しい…!絵にかいたような上流階級…!!」
「容姿だけでなく人格も相応…うむ、やはり私の目と直感に狂いはなかったようだ!」
…これ傍から見たら「初対面で崩れ落ちた人に対して手を差し伸べる心優しいお嬢様」に見えるのか。うわぁひどい勘違い……すみませんお嬢様ではなくて。
「それで、社長さん。早速お話をお伺いしたいのですが…」
「おお、そうだったね!では奥の部屋に行こうか」
発禁指定の本でありそうなフレーズだ…げふんげふん。生まれ持った顔に見合わないどえらい思考をするのはいつも通りである。
よくアイドルたちが善澤さんにインタビューを受けている例の場所へと踏み込む。ここは用途からして応接間と言ったところか。とりあえず高木社長は変なことをするようなおじさんではないので、予定調和のようにそれぞれ対面で腰を下ろした。
「さて、それでは織部くん。私から話をする前に、改めて軽い自己紹介をお願いしたい」
「かしこまりました……改めまして、織部百合と言います。出身は東京都で一時期奈良県に住んでいましたが、すぐにこちらで一人暮らしを始める予定ですわ」
他に何か言おうか……前世の公式サイトにはスリーサイズや趣味なども基本プロフィールに記載されていたような気がするから、そこらへんも伝えようかな。
「身長は165㎝、体重は50㎏。スリーサイズはおそらく86-59-85で、趣味は紅茶を飲むことと写真を撮ることです。好きなものは風情のあるもの、苦手なものは虫ですわ……おおよそこの程度でよろしかったでしょうか?」
「ず、随分と詳しい情報だが…ひょっとして、アイドル志望だったりするのかね?」
「いえ…まさか。そんなことはありませんわ?わたくし、少々そちら側にたしなみがあるだけですの」
実際は現実ではなく二次元の方の話なのだが、あながち間違ってはいないだろう。
「ふむ、深窓の令嬢というわけではなく、それなりに俗世にも理解のある…か。こりゃますます手放すのが惜しい人材だ」
「ふふ、ありがとうございますわ。それで、アイドルにならないかというお話は…」
「おお、そうだったね!うちはアイドルの事務所なんだが、いかんせんまだ皆駆け出しでね。まだ余裕がある状態なのだよ。そんな状態で偶然君を見つけたから思わずスカウトさせてもらったというわけだ」
ふむ…となると時期的にはやはりアニマスの1話かそれ以前で確定か。さっきちらっと見たホワイトボードもかなり空白が多かったし。赤羽根Pがいたら少なくとも1話以降は確定だが…。
「今、プロデューサーのような役職の方はおりますの?」
そう聞くと高木社長はバツの悪そうな、はたまた困ったような表情を浮かべた。おや?
「いやぁ、実はそのことで困っていてね…今は秋月律子くんが1人でプロデューサー業を担っているのだが、やはりどうにも人手不足感が否めないのだよ。私も頑張って新しい人材を探してはいるのだがね…」
これは1話より前で確定だ。まだバネPは来ていない。となるとかなり初期の方だから、今から混じってもそれなりに仲良くはやれるか…?いや、私が入ることで物語に影響が出ないだろうか。
あれこれ見当違いな疑問点を抱えていると、アイドルになるのをまだ考えていると思われたのか高木社長が慌てて付け足してくる。
「あぁでもうちのアイドルたちは皆いい子だからね!?何も憂う必要はないと私は思うがね?!」
さて、私が介入することで生まれる弊害はなんだろうか。
現状私はプロデューサーにガチ恋する予定はないので美希の障害にはならない。それにリーダーにも上るつもりはないので春香も同様。他は皆いい子だからたぶん受け入れてくれるし、私の外見であれば十分基準は超えていると見ていいだろう……あれこれ断る必要ない?
あ、でも唯一貴音とはキャラ被りがしてしまうか。とはいえこの口調はハリボテだけど、姫ちゃんは“ガチ”だろうしなあ。いいタイミングで私のイメージをぶっ壊すことを前提に活動していけば大丈夫か。
これなんか行けそうですねぇ?
「…すみません、お母さまに話をしても宜しいでしょうか?」
「もちろん。いい返事を期待しているよ」
「ありがとうございますわ、少し席を外しますね」
一旦席を立ち、事務所を出る。扉から階段をそのまま上り、一個上の踊り場に着いたところで携帯電話を取り出した。古き良きガラケーの時代である。
母親の番号にかけると数コールですぐに繋がった。
「もしもし」
『もしもし百合。調子はどう?疲れてない?』
「うん、大丈夫だよ。大丈夫なんだけど、ちょっと母さんに話を通さないといけないことが起きちゃって」
『私に?いったい何が?』
「実は……アイドルにならないかってスカウトされたんだよね…」
『あら。まあ百合ならおかしくないわね。それでなんていうところなの?』
「ナムコプロダクションってところ。新鋭の事務所らしくて。でもまあ、社長もいい人みたいだし、何より事務員の音無小鳥さんって人が激烈に綺麗で、見てて面白い人だから悪徳事務所ってわけではなさそうなんだよね」
『音無小鳥……って、もしかして“あの”音無小鳥かしら?』
「……“あの”?」
『私たちが東京に住んでいたころ、昔の仕事関係の人とたまに飲みに行く機会があったのだけど、行きつけのバーで度々生歌が披露されるの。そこで歌っていたのが音無小鳥という女性だったはずよ』
「……え゛っ」
母さん、ピヨちゃんのこと知ってたのか…。しかも行きつけの飲み場所が例のバーとまで来た。これは…運命感じますね。決めました。
『いいわ、音無さんの人となりは何度か会話して知っているし、そんな人がいるならあくどくはないでしょう。頑張りなさい、お父さんには私から話をしておくから』
「うん…いやまあアイドル目指すけどね」
私の意思を確認する前に進めてしまうのは母さんの昔からの困ったところだ。まあ私は性格上それでもついてけるからあれだったけど。
何はともあれ、驚くほどすっと話が通ってしまった。父さんはともかく、母さんは昔はすごい過保護だったような気がするから拍子抜けである。いつの間にか私もちゃんと独り立ちできると認識されていたのかね。
アイドルを目指すからにはこちらも相応の態度で臨まねばてっぺんは目指せない。ここのみんなは志が高いのだ。モデルをやっていたときは自分の外見のスペックに全任せしていたけど、ここからは私も努力が必要。特に体力に関しては…うぐぐ。
何はともあれ、そうと決まれば早速しゃちょさんに伝えに行こう。そう思って階段を下りて事務所のドアに入っていく。
「社長さん。話がまとまりましたわ」
「__わたくしも、アイドルになりましょう」
*************
白金色の絹糸をたなびかせて事務所に入っていく美少女の姿を、階段の下からしっかりと捉えていた人物がいた。
「…真、面妖な……」
近い将来「銀色の王女」という異名を持つことになる、765プロきってのミステリアス・レディ。四条貴音だ。
今日は午後からレッスンがあるために事務所に前乗りしようとしていた彼女は、事務所に見知らぬ人物が入っていくこと自体にはあまり疑問を抱かなかった。しかし一瞬だけ見えたあまりにも異質な髪色に、彼女の中では親近感と同時に疑問が強まっていった。
「あのような姿、ここでは一度も見かけたことはありませんが…」
「あ、四条さん。こんにちは」
「おはようございます、天海春香。今、何やら怪しい者が事務所に足を踏み入れたのですが……」
「ええっ?大丈夫なんですかそれ!?ええと、警察!?それとも社長に電話!?!?」
「落ち着いてください。怪しい、とは申しましたが。その、盗人のような怪しさではなく、得体のしれない…と言うべきでしょうか…髪が、
「それって、ひょっとしたら海外の人かもしれないってことですか?」
「
「そ、そうですね…!天海春香、ふぁいっ、おー…!」
見当違いの覚悟を決めて事務所のドアを開けた彼女たち。その先に文字通り浮世離れしたプラチナブロンドの美少女がいること__ましてやその彼女が自分たちと同じくアイドルを目指すこと__を知るのは、わずか十数秒後の話であった。
織部 百合 (おりべ ゆり)
出身 東京都 19歳
身長165㎝ 体重50㎏ 86/59/85
元ティーンズモデル。ハーフであり、母親の血を色濃く受け継いだ結果名前の割に日本人離れしたプラチナブロンドと碧眼を持っている。両親(父親が日本人、母親がフランス人)に似て顔が良すぎる。こらそこ女の子は父親似でしょとか言わない。
元男の転生者だが、「織部百合」として過ごすうちに記憶が薄れていった。しかし高木社長とばったり出くわしたことでアイマス関連の知識を徐々に思い出していく。なのでTS要素はほぼない。
モデルとして活動していたころはほとんど自分が楽しみたいがためにやっていたため、切りのいいタイミングでばっさりと辞めている。活動名は母親の旧姓を用いて「ユーリ・ローラン」。界隈ではそこそこ伝説。
随時情報は小出しで。
たぶん高木社長はうすうす百合の違和感に気付いている。