THE IDOLM@STER Glitter of Platinum   作:織部よよ

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特に書くことがない。


幕間2 ① 着実

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………』

 

「……なあ、お客さんの視線が」

 

「ふふっ、安心してくださいまし。わたくしも貴音さんも半ばわざとですわ」

 

「だよな……」

 

「……ところで、ここには食券はないのですか?」

 

「ラーメン屋ではありませんことよ、貴音さん」

 

 

いわゆるスイーツ屋と呼ばれる店に、私と姫ちゃんとプロデューサーは足を踏み入れる。瞬間中にいた人から向けられる様々な感情の入り混じった視線に、バネさんはすっかり気後れしていた。女性ばかりということもあって、そこまであからさまに悪感情のものはなかったけれど。

 

ちなみに私も姫ちゃんも、プロデューサーに割かし距離を詰めて歩いている(もちろん私はギリギリのラインで止めているが)。なので周りから見れば、非常に誤解されやすそうな状況であるということだ。

 

やはりアイドルたるもの、常に見られる意識を身につけておかなければ(はき違え)。

 

 

「ここは……レジに並ぶまでに選ぶタイプですわね。3○とかと同じタイプですわ」

 

「百合の口から○1なんて単語が漏れると、違和感が半端ないな……というかすっと出てくるってことは、3○にはよく行くのか?」

 

「いえ全く。わたくしは家庭の都合であまりそういったお菓子屋さんには行ったことがありませんの」

 

 

前世では貧しい寄りの普通の家庭だったので、何かイベント事がなければ外食すらまともにしていなかった。そうして付いたのは外食に対する一定の欲望と、中途半端な節約意識だけ。まあ生活費に無駄を割けなかったことを除けばそんなに悪くない家庭ではあったけど。

 

今世?割かしどこにでも連れてってくれた。ただそれでもお母さんの作る料理(フランスの郷土料理含め)がとっても美味しかったのでそれで十分だったが。前世に比べりゃ幸せだ。

 

 

「……沢山あって、(わたくし)には決め兼ねます。ぷろでゅうさぁが選んでいただけませんか」

 

「お、俺か………そうだな、このショートケーキなんかすごく美味しそうじゃないか?」

 

「では、それで……おや?せっとであれば紅茶も同時に楽しめるのですか」

 

「いいじゃないか、それくらいどうってことない。百合は?」

 

「わたくしは、一番好みのモンブランをセットで。どうやら茶葉の種類も選べるみたいですね……このラインナップであれば、普通にアッサムがおすすめですわね」

 

「へえ、そうなのか。そのあたりは百合に任せるよ」

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

「……改めて、今日はお疲れ様。正直途中ひやひやしたが、何とか成功に収まって良かったよ」

 

 

レジで頼んだ品は後から運ばれてくるということで、先にテーブルの方へと移動した。さっきからずっと思っていたのだが、店内のインテリアがピンク色の系統でまとめられていて正直居心地が悪い。せめて白と茶色で無難にしてほしい。もう行かないだろうからいいけど。

 

しかし私の感情に反してプロデューサーと姫ちゃんは特にそういう素振りは見せていない。私だけか。まあいいや。

 

 

「そうですわね……千早さんのあの一言は、流石のわたくしも肝が冷えましたわ」

 

「ですが、その後の春香の立て直しにはこちらも驚かされました。彼女には主導者の素質があると思われます」

 

「……確かにな。うちのアイドルの中でも、春香は突出して周りへの影響力が高いように見える。それが垣間見えたのはとても大きな収穫だったな」

 

 

………ん?

 

さも自然な流れで言っちゃってるけどさ、それ私たち(アイドル)にするような会話の内容なのか?それとも気付いていないだけ?

 

 

「……って、こんな話アイドルにすべきじゃないな。すまん」

 

「いいえ、そんなことはありませんわ……特にわたくしたちのような人には」

 

 

私と姫ちゃんは、正反対の意味で他のアイドルから一歩引いている。当然、姫ちゃんが良い意味で私が悪い意味だ。それに私たち両方とも(特に姫ちゃんは)身体年齢にそぐわない雰囲気を既に醸し出しているので、私たちがアイドルだという感覚が薄れてしまうのも仕方ないと思う。

 

というか姫ちゃん、年齢に似合わず“デカい”よな……いやナニがとは言ってない。強いていうなら身長とかいろいろね。

 

 

「っああ、そうだ。一応、今回が2人の初めての共同作業だったが……どうだった?」

 

 

まあそりゃ聞くよな。

 

ユニットとして活動していくかもしれないという状況で舞い込んできた丁度いいお仕事。私と姫ちゃんのこれからの足並みをそろえたり、協力し合ったりするのに問題があれば面倒だし。

 

けど……。

 

 

「……まあ、特には支障は見当たりませんでしたわね。強いて言うなれば貴音さんが万能すぎてわたくしの出番がないことでしょうか」

 

「百合、それは流石に過大評価が過ぎますよ」

 

「なんでですの?貴音さんの超人っぷりは他のアイドルさん方も時折口にしていますわ。それを身をもってわたくしが体験しただけですの」

 

 

これは紛れもない本心だ。

 

前世から片鱗は見え隠れしていたし、実際に彼女らの窮地における姫ちゃんの泰然さと冷静さは際立っている。それなのに原作じゃ降郷村の衣装がない事件の時にテンション下がってましたよね?そんなものなのかしらん。

 

ともあれ、特に問題なくユニット活動は出来そうだということが判明したのは地味に大きい。

 

 

「俺からしてみれば、百合も十分に持ってるモノはあると思うぞ」

 

「ありがとうございますわ。まあ、パンピーはパンピーなりに頑張ってみますわ」

 

「……ぱん、ぴぃ?」

 

「一般人という意味だ、貴音……まあ、百合はどこからどう見ても一般人には見えないけどな」

 

 

なんでさ。

 

と思ったがそう言われてみれば意図せずしてお嬢様ロールプレイング人生送ってたわ。そこに女性の枠を逸脱した身体能力と人智を超えたかわいさ(過大評価)を備えたらそりゃ一般人呼ばわりはされねえわ。

 

でもなあ……中身がどうあがいても一般人だからな……。

 

 

「……ま、わたくしは単に自分の好きなものに好きなように生きていますから」

 

「それが出来るのはいいことじゃないか。それが転じて、モデルとしても活躍していたんだろう?」

 

 

……そう言えば、ティーンズモデルをしていた割に請け負った撮影の大半が本職モデルの人たちとあまり変わらなかったことを知ったときは驚いたな。

 

いやどうでもいいな。

 

あ、注文したスイーツ来たね。わあモンブラン美味しそう!写真撮る!

 

 

「……それで、ゆにっとの話は現在どのようになっているのですか?」

 

「ああ、順調に話が進んでいると思う。詳しい目処はまだ立っていないが、遅くとも夏を過ぎたあたりにはどうなるか分かるかもな」

 

 

マジ?

 

てことは竜宮小町と割かしタイミング被りそうな気がするね。いいじゃん、かたやビジュアル、かたやステージで電撃デビューして765プロをあっぴる出来るチャンスだ。

 

その前に慰安旅行にも行きそうだけど、まあ激戦の前の最後の休憩とでも思えばいいか。

 

 

「……プロデューサーさん、これは何となくの予感ですが、ユニット結成自体はすんなりと通ると思われます……ですが、よしんば通ったとしてもそこからが正念場ですわよ」

 

「ああ、分かっている。スタートでどれだけ上手くいくかが重要だろう」

 

「先んじて戦の利を取る重要性は言わずもがな、ですね」

 

 

そこは3人とも共通認識のようだ。そうだよね、ただでさえ無名の事務所なのだから、多少実力が足りなくても全力で行くべきだ。とは言え気負い過ぎても空回りするから要調整ではあるんだけどね。

 

 

 

その中でも話題に挙がったのは、ちょうど2,3日後に予定されている掛川さんと私たちの顔合わせイベント。

 

掛川さんによると、顔合わせはとりあえず建前で既にとあるスタジオを借りているらしい。それでその日にいくらか撮って会社に突き付けてくるとのこと。いや三行半かいな。違うわ。

 

私たちは私服で来るように言われている。まあ当たり前と言えば当たり前なんだけど。掛川さんの方からも、事前のスリーサイズなどのプロフィールを参考に何着か持ってくるらしいから期待できそうだ。まあ楽しみにしておこう。

 

 

 

 

 

その日はそれからいくつか目処を立ててから解散した。

 

ごちになりましたバネP!(美味しさによる破顔)

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

翌日。

 

スーパーマ○オブラザーズWiiをプレイしながら、ユニットのことについて考えていた。

 

 

私がこの世界に来てしまったことによる影響その1である、姫ちゃんの早期のユニット加入。

 

姫ちゃんは19話辺りまでの活動があまり明かされていなかった筆頭アイドルであるため、正直何をしていたのか、どういう活動をしていたのかは全く分からない。なので別にユニット結成自体には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

けど……もしユニットを作って、(プロデューサーを含めた)私たちの活動の方を優先してしまう事態になれば、彼女の三人称神視点的な立ち位置が揺らいでしまうかもしれない。

 

それは避けたい。

 

 

「……まあ、要はわたくしが貴音さんに負けないくらいハイスペックになれば万事解決するのですが」

 

 

そううまくは行かないのが人生だ。特に後数ヶ月である程度のところまで持っていこうなんて無謀にもほどがある。ただでさえ、今の状態ではダンスもボーカルも遠く及ばないのだから。

 

 

「あ、ここがスターコインですわね。全く、分かりづらいのですから……」

 

 

そうそう。

 

ボーカルと言えば、私は自分の声についてもいたく気に入っているのだ。

 

女性から見ても比較的ソプラノボイスと言っても過言じゃない、澄んだ高い声。前世で私が好きだったソシャゲのキャラクターのものに似ているというのもあるのだが、とにかく自分で聞いていて心地が良い。なまじ似ているだけに、私のようなお嬢様口調だと逆に違和感を感じることはあった。今はもう慣れたのだが。

 

 

「あっ、危ないですわねパックンさん!もう少しで死ぬところだったんですの」

 

 

1つ、目指したいものがある。

 

個人的に、この声が最大限生かされるような歌い方というのが一つあって、それは「あまり声量を出さずに呟くように歌う」というものだ。具体的なイメージはまだ浮かんではいない。

 

けれど、そう簡単に行くとはこれっぽっちも思っちゃいない。まず息継ぎも安定しないし、ダンスしながらのボーカルもまともに出来っこないというひどい有様だ。

 

それに、そのあたりについては恐らく意識せずともなるようになるんじゃないかな。目指したところと違うものになっても、それは紛れもなく私自身の努力の結果だから。そのときは諦めて受け入れよう。

 

 

だから、いくつか目標を立てる。大目標は、「姫ちゃんと実力的に並び立つようにする」ということにして、「理想の歌い方になるように(ひとまずは)目指す」「ダンスをキレッキレにしたい」など、などなど……。

 

 

「お、クリアですわ。これでワールド6までのスターコインは全部取りきったっぽいですわね」

 

 

今まで漠然としていた私のアイドル像というのが、徐々に固まってくる。いいことだ、目標があればあるほどそこへの道のりがしっかりとイメージできるのだから。

 

 

だから、これから一層頑張らないとね。

 

 

 

 

 

 




次回は掛川さんとたかゆりコンビの邂逅ですね。
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