THE IDOLM@STER Glitter of Platinum   作:織部よよ

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ハリボテお嬢様ムーヴがどっかいく回


幕間2 ② 邂逅

 

 

 

 

 

 

「掛川さん、こちら私の所属しているナムコプロダクションのプロデューサーさんと、散々語っていた四条貴音さんです」

 

「あんらァ~~~実物もすっごく可愛らしいじゃないの~~ン!?こ・れ・は・アテクシの腕もブルドーザーみたいにうるさく鳴っちゃうわねン!」

 

「ええ、掛川さんのその手腕を遺憾なく発揮してください!というわけでこちら、わたくしの同志にして恩人の掛川正美さんですわ」

 

「………なんというか、すごいオーラのある人だな……」

 

「……真、面妖な方ですね」

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

午後1時。または13時。

 

私は24h表記のが好きだ。

 

 

今日は掛川さんと念願のご対面である。私としては久しぶりの友人に会うような少しの照れ臭さと多大な期待を抱いていたために、心持ちは比較的楽だったのだが、姫ちゃんとプロデューサーはそうではないだろう。

 

一応「とっても素敵な人ですわ(オネェだけど)」と伝えてあるので問題なくすぐに気に入られるだろう。あれ、これオネェってこと言ってないな……妙だな(すっとぼけ)。

 

掛川さんは既に都内の小規模の撮影スタジオを借りているらしく、更にはもうそこで待機しているらしい。なんで私たち3人がそこに赴く予定になっていたのだった。

 

 

「ええと、確かこの辺りでしたわね……あ、たぶんこのビルですわ!」

 

「意外とうちから遠くはないんだな」

 

「確かにそうですわね。まあわたくしたちはあまり使うことはないでしょうが……とにかく、掛川さんが中で今か今かと待ち構えていらっしゃると思うので早速行きますわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5階建てのビルの中の、3階のとあるスタジオ。

 

その扉を数回ノックし、心なしか軽い心持ちで中へと入る。

 

 

「失礼します」

 

「待ってたワ~~!!お久しぶりのブリ大根ねエ~~!!」

 

「うおっと、いきなりですね」

 

「そりゃ百合ちゃんに会えるんだから待たずにはいられないわン……それにしても、見ない間に随分と大人っぽくなっちゃってェ!これじゃますます貴方がアテクシたちの下を出ちゃったのが惜しいわァ!」

 

「やっぱりこの見た目は綺麗に保ってこそ十全に輝きますから……それに関しては、ほんと、すみません……」

 

 

昔、毎日のように視界に入れていた、180をゆうに越しているであろう巨躯。比較的彫りの深い顔には、久方ぶりの邂逅に対するテンションの高さがよく見えている。それでいてその所作にはどこか洗練されたものを感じる、紛れもない私の恩師。

 

扉を開けた途端、掛川さんがすぐ近くで出迎えてくれた。というかその距離感から見るに私たちのこと出待ちしてたな?

 

 

「………」

 

「…………」

 

「掛川さん、こちら私の所属しているナムコプロダクションのプロデューサーさんと、散々語っていた四条貴音さんです」

 

「あんらァ~~~実物もすっごく可愛らしいじゃないの~~ン!?こ・れ・は・アテクシの腕もブルドーザーみたいにうるさく鳴っちゃうわねン!」

 

「ええ、掛川さんのその手腕を遺憾なく発揮してください!というわけでこちら、わたくしの同志にして恩人の掛川正美さんですわ」

 

「………なんというか、すごいオーラのある人だな……」

 

「……真、面妖な方ですね」

 

 

おい、口が開いていないぜい。まあ確かにね、そりゃこのインパクト見たらね、しゃーないっすわ。

 

 

「……はっ!あ、あの初めまして!織部百合さんのプロデューサーを務めている者です!」

 

「四条貴音と申します。本日は真、良き日になるよう願っています」

 

「あら、ご丁寧にどうもン♪アテクシは掛川正美。雑誌『pecola』及びいくつかの雑誌のメインコーディネーター兼カメラマンにして、百合ちゃんの同志よン!今日は本格的には撮らないけれど、この子たちの魅力を存分に引き出してあげるわン!」

 

「は、はい!宜しくお願いします!」

 

 

なんかプロデューサーさんが借りてきた猫みたいになってるのちょっと面白い。まあでも実際そんな気分なのかもしれないね。

 

私にとっては最近では2度目……いつかの日に宣材を撮ってから2回目の、懐かしい空気だ。あのときもそうだったけど、やっぱりこうしてシマに戻ってくるとテンション上がっちゃうわね!

 

 

「掛川さん、今日は私服で来てくださいとのことでしたが、確かいくつかそちらで別の衣装を用意してくださっていると」

 

 

 

「アテクシの方で何着か似合いそうなものを持ってきたわン!」

 

「楽しみです!そんなのもう勝ち確じゃないですかヤダー!」

 

「貴音ちゃんの魅力をアテクシの手で引き出す……実際に会ってみて、アテクシの予感は確信に変わったわァ……早速持ってくるわねン!」

 

 

スタジオの奥へと軽やかな足取りで向かっていく掛川さんを見送りつつ、後ろでさっきっから口を開けていない2人に向き合う。

 

 

「ま、こういう方ですわ。基本的にテンションは高めですがそのセンスと経験は一流のそれです、安心してくださいな」

 

「いやいやいやいや……ちょっと待ってくれ……」

 

「?どうされました、プロデューサーさん?」

 

 

いやでも聞きたいこととかは確かにいっぱいあってもおかしくはねえな……なんせ掛川さんは謎の多い人で、私の数少ない友人枠と言っても過言じゃない。どんなものを撮って来たかとか、いろいろ聞きたいのだろう。

 

 

「百合……普段のお嬢様がかった口調は何処に行ったんだ?掛川さんの前だと普通に敬語を使ってたような気がするんだが……」

 

「いつもの百合と、かなり印象がかけ離れていますが」

 

「……あー」

 

 

そう言えば、事務所では一回も見せたことはない気がする。アイドルになるってんで、なるべく口調を維持しようと(目上へのタメ語になる状況に度々後ろめたさを覚えながら)普段通りのように立ち振る舞ってはいたんだけど。

 

流石にね、掛川さんの前ではね。

 

 

「掛川さんは私の知り合いの中でもトップクラスに尊敬しているので、敬語を使いたくなってしまうのですわ。後この口調は、まあ……いろいろ深……くはないですが、それなりに事情がありますので」

 

「……キャラ作りか?」

 

「違……違いますわ、たぶん。端的に言うと、子供のころから絵本に憧れてこのような口調をマネし続けた結果、こっちの口調がデフォルトになってしまっただけですわ。そこいらの同類とは年期も格も適正も比較になりませんことよ。いえ同類と呼ぶことすらおこがましいですわね」

 

 

こちとら19年選手やぞホゲェ……この先出てくる新幹少女のうんたらちゃんがどれくらいか分からねえけど、もしこっちに突っかかってくることがあったら圧倒的な身体能力とお嬢様ムーヴで完膚なきまでにプライドをへし折ってやるから覚悟しておけ(自尊心高めムーヴ)。

 

 

「まあ、流石に貴音さんには負けますが。だってこちとら、本当に()()()()()()なんですもの」

 

「……なるほどなあ、でも未だに信じられないよ」

 

「それも仕方がないことですわねえ……わたくしもどうしてこうなったのか、過去の自分に問いかけたいくらいですから」

 

 

ちなみにこれは半分嘘。このお嬢様口調で困ったことがあんまりない以上、別にいっかなって。そんなんだから(特に)高校ではいろいろあった面倒なことも、とりあえずどうにかなったし。

 

案の定、と言うべきか、バネPはひどく驚いた反応を返してくれた。意外にも姫ちゃんも、である。

 

 

「お待たせン!じゃあ早速撮らせてもらうわァ!」

 

「はい、楽しみです!さあ、行きますわよ貴音さん!」

 

「え、ええ……」

 

 

ん?なんか姫ちゃんの様子がおかしいぞ?まあいいか、大方私のことについてだろう。

 

すぐそこに待っている私のステージへと向かっていった。

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

「良いわァ!もっとダイナミックなポーズを撮ってみてン!」

 

「こうですか?」

 

「いーーーわぁぁぁァ!!貴音ちゃんもその内なるオーラが存分にまき散らされてるわよォ!」

 

「感謝いたします」

 

 

____百合は、まだ(わたくし)たちに心を開いていない。

 

それが、先までの会話までで判断した()()でした。

 

 

織部百合(おりべゆり)

突如として事務所に現れた、13人目のあいどる。名に違う異国じみた出で立ちに、大衆が羨むであろう端正な容姿。それが(わたくし)の抱いた第一印象でした。

 

しかし百合はその風貌とは裏腹に、誰にでも親しみやすい性格で瞬く間に事務所に馴染みました。それには全く違和感を抱きませんでした。

 

 

ですが、百合には明らかに不審な点が1つあるのです。それは、(わたくし)の見た限りでは、誰と歓談するときも常に距離を開けていること。

 

まるでそれ以上は別世界と言うように、必ず一定の距離を保っているということです。

 

一説には、「ぱーそなるすぺーす」という自分だけの精神的空間が広いということもあり得ます。ですが百合は、それとは違うような……何がどうとは、未だに解明しかねますが。

 

 

限りなく普通に見せかけて、(わたくし)たちから最も遠いところにいる___それこそ、如月千早を差し押さえて___百合。

 

 

「そしてそこでターン!」

 

「こうですねっ!」

 

「完・璧・よぉぉぉぉぉぉォ!!」

 

 

このように楽しそうにしている百合を、私は偽の感情だとは思っていません。ですが____

 

 

 

 

 

____いつの日か、貴方は真にこちらに来るでしょうか。

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

「……貴方たちの“輝き”、このカメラとアテクシの心にしっかりと刻み付けたわン!これなら大丈夫そうねェ!」

 

「すごい……すごいですね掛川さん!百合と貴音の魅力が更に上がったなんて!」

 

「ふふふ、アテクシにかかればこんなものよン。百合ちゃんも貴音ちゃんもアレでまだ未成年なんだから、これから更に熟成されていくと思うと……ああっ、アテクシも負けてられないわァ!」

 

 

結論。大満足。

 

掛川さんも私も。

 

 

これで後は掛川さんに任せられる。私たちは私たちで、アイドルとして日々売込みし続けるだけだ。本職もちゃんと頑張らないとね。

 

それにしても、さっき一瞬だけ姫ちゃんの表情が曇っていたような気がする。何か気になることがあったんだろうか?

 

 

「貴音さん、本日の撮影はどうでしたか?いつもより気分が高揚しませんでしたか?」

 

「ええ、掛川正美殿の敏腕、この身でしかと受け止めさせていただきました」

 

「なら良かったですわ」

 

 

うん、本当に良かった。これで不快な思いをさせていたらたまったものじゃない。

 

 

「掛川さん、改めて今日はありがとうございました。この後軽くお茶でもどうですか?」

 

「お誘いはありがたいけれど、生憎まだいろいろやることがあるのよねン……」

 

「……そうですか……ならまた日を改めて。この後も頑張ってくださいね」

 

「ありがとう百合ちゃん。本当にいい子ねェ!」

 

 

残念だぜ。せっかく久しぶりに腰を下ろして談笑出来ると思ったけど仕方ない。今日は大人しくお別れしよう。

 

 

「それでは、さよなら!」

 

「また近々ねン♪プロデューサーさんも貴音ちゃんも♪」

 

「ええ、ありがとうございました!」

 

「真、良き時間でした」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……百合が、他人と距離を取っている……?」

 

「ええ。恐らく確実かと」

 

 

スタジオを出てすぐに「寄るところがあるので失礼しますわ」と百合に言われ、早々に貴音と2人になったとき。

 

唐突に、そんなことを彼女から聞かされた。

 

 

「……そんなことあるのか?俺から見れば、誰にでもフレンドリーに接しているように見えるが」

 

「それは、確かにそうでしょう。しかし注意して観察すると、必ず一定距離を開けていることがわかるのです………これを今報告したのは、ぷろでゅうさぁに注意をしていていただきたいからです」

 

「注意?」

 

「もしかすれば、彼女はなんらかの事情を抱えているのかもしれません。もし本当にそれが存在して、明るみになるようなことがあれば……百合の活動は大きく均衡が崩されることでしょう」

 

「……そういうことか。確かにそれはあり得なくはないな。ありがとう貴音」

 

 

 

 

 

アイドルを陰で支え導くのがプロデューサーの仕事だ。もし百合ほどの人物に何か起これば、それはターニングポイントになり得るかもしれない。

 

少し気を遣わないいけないな、と少し決意をした。

 

 

 

 

 

 

 

 








たぶん百合の距離の取り方は結構分かりやすいです。ただでさえナムコの皆は距離が近しい傾向にあるので、際立つんでしょうね。それが彼女自身の親しみやすさと雰囲気で隠れてしまっているのでしょう。

というか何気に2人から心配される百合マジ百合してる(他意なし)。



ちなみに、百合は結構プライド高いです。自分の容姿や「生き方」に対する自信と信頼があるので。


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