THE IDOLM@STER Glitter of Platinum 作:織部よよ
掛川さんは百合にとっての善澤記者のような立ち位置。
ちなみに言うタイミングがなかったのでここで言いますが、百合は日本語とフランス語のバイリンガルです。
追記
今回結構急ぎ目に執筆したので誤字報告がどばどば上がってます。まじすんません次からは気を付けます"(-""-)"
「おはようございます!」
「おはようございます、プロデューサーさん」
ある日の朝。
いつものように事務所の扉を開けて入ると、これまたいつものように小鳥さんがワークスペースからわざわざ顔を出して応じてくれる。そんなに丁寧じゃなくてもいいのに、全く良い人だ。
「今日はあまり仕事の入っている子はいませんね……ああっ、言ってて悲しくなってくる…」
「そうですね…ですが、俺もアイドルの皆もまだまだこれからですから。あのホワイトボードが真っ黒になるように頑張ります」
手早く自分の机に鞄を置き、同時に手帳を取り出す。今日は確か、午前中に貴音の仕事があったな。他には…と思ったが、今日は貴音だけのようだ。仕事がないのに伴って、今日は事務所も閑散としている。貴音もまだ来ていない。
何かお茶でも飲もうか…と思ったとき。
「あら、プロデューサーさん。おはようございますわ」
「うお……いたのか百合。おはよう」
後ろから澄んだ声をかけられて振り向けば、我が765プロ屈指のビジュアルを誇るお嬢様の百合がとてもきれいな姿勢で立っていた。肩にイヤホンがかけられているあたり、どうやら俺の挨拶も聞こえなかったみたいだ。まあ百合も例に漏れずとてもいい子だから、挨拶を返してくれないわけないが。
「確か今日は、貴音さんのお仕事が入っていましたわね?」
「ああ。それより、百合は随分と早い時間に事務所にいるんだな。予定はないんだろ?」
「ええ。ですがわたくし、ここで紅茶を飲むのが日課になっていまして。ついつい足を運んでしまうのですわ」
へえ、そうだったのか。
そう言えば、あずささんや貴音を始めとするほとんどのアイドルが、百合の淹れる紅茶は美味しいと口にしていたっけ。本当に彼女は多才だ。
「もしよろしければ、今からお淹れします?まだ作れますが…」
「いいのか?」
「ええ。普段からお世話になりっぱなしですから。それに、自分の淹れたものを人に楽しんでいただくのは嫌いではありませんので。それでは、少々お待ちになってくださいな。砂糖とミルクはどうします?」
「俺はどっちも普通の量で頼む」
「あ、私もおかわりもらっちゃっていい?百合ちゃん」
「りょーかいですわ」
そう言って百合は給湯スペースへと向かっていった。
「…ほんっとうに、百合ちゃんって出来た子ですよね…」
見れば、小鳥さんがこれでもかというくらいに顔を緩ませている。あれ、こんな顔をするような人だったか…?まあいいか。気持ちはわかるしな。
「気が利いて上品で綺麗で、貴音ちゃんと並んで立つと本当の姉妹みたい…」
「はは、姉妹ですか。確かに言い得て妙ですね。俺もここに来た当初は似たような印象を抱きました」
そう、あの2人は外見はおろか性格も似ている。どっちも自分の力量を理解し、大変なことも己を信じて乗り越えようとする夢追い人のような性格。それでいて口調はそれぞれ和洋で綺麗に分けられている。いい意味で
「そう言えば、百合は他の皆よりも遅れて765プロに入ったんですよね?オーディションを受けたんですか?」
「あら、プロデューサーさんはまだ聞いていませんでしたか?あの子は社長が直々にスカウトされたんですよ」
「社長が?それはまた、異例というか珍しいというか。うちって基本的にオーディションやら面接やらで選抜していたはずでは?」
「社長曰く『オーラでティンと来た』そうです。ある日突然連れてきたものですから、最初は私もびっくりしました……思えば、百合ちゃんも随分と成長したわね…」
どこか遠い眼をする小鳥さん。まるで保護者のような慈愛に満ちた雰囲気を醸し出していて、やっぱり765プロの縁の下の力持ちなんだなと実感する。
「お待たせしましたわ。今日はセイロンティーですの。たぶんこっちがプロデューサーさんのものですわ」
「ああ、ありがとう」
「ありがとう、百合ちゃん」
なまじ百合と小鳥さんが所作の良い飲み方をするものだから、俺も気が引き締まって丁寧に味わおうを意識してしまう。こんなにいい意味で気が休まないお茶があっただろうか。
けど、紅茶の方はとても美味しい。ミルクが入っていてもしっかりと紅茶特有の深い味わいを感じられるし、砂糖も上質なものを使っているのか紅茶の風味を損なっていない。
「どうです?わたくしの淹れたものは」
「ああ…すごく、美味しい。これはアイドルとしての武器にもなるかもしれないな…」
ただ純粋に、そう感じた。
「ごきげんよう」
突如として開かれる事務所の扉と合わせて響く声。百合と比べた時に、彼女の高く澄んだ声に対し妖艶さが前に出ている声。
貴音だ。
「あ、おはよう貴音ちゃん」
「ごきげんよーですわ~」
「おはよう貴音」
「……なぜ百合はそのような弛緩した声なのですか?」
「紅茶を飲んで朝からまったりしてるだけですわ~…貴音さんもお飲みになりますの~?」
「そういうことであれば、勿論頂きますが」
「まだ仕事の時間には余裕があるから大丈夫だな」
何か……良いな、こういう雰囲気。
貴音も百合もいい意味で大人びているし、小鳥さんも十分な大人の女性だから場の空気がとても落ち着いたものになる。亜美や真美を始めとした未成年組が作る賑やかな雰囲気も微笑ましいが、個人的にはこういうゆったりと過ごせる雰囲気のが良いな。
そのまま貴音も加わった文字通り即席のお茶会を楽しんでいると、やはりあっという間に時間は過ぎるもので。
気が付けば、そろそろ出発の時間の目安に差し掛かろうとしていた。
「ぷろでゅうさぁ…そろそろ時間ですか」
「そうだな。それじゃあ、貴音の撮影についていきますね」
「はーい。お仕事頑張ってね、貴音ちゃん」
「プロデューサーも頑張ってくださいまし」
しっかりと2人に挨拶を済ませて、貴音と一緒に事務所を出発した。
*************
「そう言えば、貴音って何か好きなものはあるか?」
スタジオに向かう車を運転しながら助手席に座る貴音に聞いてみる。せっかくの機会だからこういうタイミングで聞いておかないとな。アイドルたちに合った仕事を取ってくるためにもな。
貴音だと、やはり風情のあるものなんかになるのだろうか。例えば、天体観測とかなら似合うだろうか。
「
「……ラーメン……ラーメン?」
予想外の単語が出た。見た目とのギャップが凄まじいな…。
心なしか貴音のテンションが高いように見える。
「らぁめんとは調和。らぁめんとは探求。
「へぇ……そうだったのか。それじゃあ、今日の昼飯はラーメンにするか」
「……!よいのですか?」
「ああ。一回見てみたい気もするしな」
何より、アイドルとの相互理解を通してもっと皆のことをよく知りたい。そういう仕事への“熱”が、俺のやる気に火をつけてくる。特に貴音は謎が多いからな、こういう機会にひとつ知れるのは本当にありがたい。
見れば、貴音は先ほどよりも幾分やる気に満ち溢れた顔つきに変わっていた。
「
「はは、その調子で撮影も頑張ってくれ……っと、そろそろ着きそうだな。降りる準備をしておいてくれ」
*************
「らっしゃいやせー!2名様ですか?こちらのテーブルにどうぞ!」
店員に促されるまま2人掛けのテーブル席に座る。平日ということもあってか、人の賑わいはそれなり程度で納まっている。
見れば、俺たちが店内に入ったのに気が付いた他の客が全員こちらを__正確には俺の後ろにいる貴音を__若干惚けたような目で見ていた。プロデューサーとしてはアイドルが注目されるのは嬉しい限りだが____
『おい…あの銀髪の美女やばくね?』
『ああ…なんというか、オーラがすげえよな…』
『隣にいるのは彼氏か?彼氏の方もかっこいいじゃねえか…』
『さしずめお嬢と執事ってところか。今日はラッキーだな』
……うーん、これはアイドルとしてというより貴音本人がいろいろ規格外すぎて注目されてるだけなんだよな……。流石にアイドルとしてはまだまだこれからってところか。
向かいに貴音を座らせ、先んじてメニューを渡しておく。
「俺が奢るから好きなものを頼んでもいいぞ」
「真、感謝します。さて、どれにしましょうか……」
「こらこら、せめて鞄を置いてからだろ」
「…そうですね…少し早とちりをしていました」
真剣な目でメニューを見たり、逸った行動に気が付いてちょっとテンションが落ち着いた貴音が、ベクトルは違えど年相応の少女に見える。本当にラーメンが好きなんだな。
「貴音、今日の撮影はどうだった?何か問題とか、手ごたえとか」
ラーメンを待つ間に、今日の振りかえりをする。こうして逐一うまくいったところや問題点を洗っていくことは大事だ。次回への糧になるからな。
「そうですね……今日は、特に致命的なミスはなかったように思います」
「ああ、それは俺も見ていてなんとなく分かったよ。カメラマンの反応も良かったし」
「ええ。それで、今回は百合のすたいるを参考にして、
「そうか……前に撮ったのが例の宣材のときだから、今日が初めてか。1回目だから、もう少し回数を重ねないと自分に合うかどうかはわからないな…でも、そうやってどんどん新しいことを試すのは、俺は良いと思う」
「そのようなお言葉、感謝します。して、ぷろでゅうさぁは今回の撮影はどのように感じましたか?」
「ああ、貴音には悪いが、今回はカメラマンに結構いい印象やインパクトを与えられたんじゃないかと思う。撮影が終わった後本人から『いや~ナムコさん!ボクびっくりしちゃったよ、あんな映える子がいるなんて!これはまた、ナムコさんを撮らせてもらってもいいかな?』って」
「まあ……それは真、喜ばしいことですね」
「ああ。だから確実に前には進んでいる。俺もアイドルの皆もまだ駆け出しだけど、自分に出来ることを着実にどんどんやっていこうな」
「真、その通りですね。歩めばいつかたどり着けると信じています」
「ははっ、担当するアイドルがそんなだと、俺ももっと頑張らないとな」
『お待たせしました~』
と、ラーメンが来たな。食べようか。
「今日はこのような食事に誘っていただき、真感謝します」
「気にしないでくれ。それより、俺はこれから事務所に戻るが貴音も車に乗るか?」
「いえ、
「ああ、お疲れ様。気を付けて帰れよ」
貴音が大通りの道を反対に歩いていくのを見届けて、車に乗った。今日は悪くないコミュニケーションを取れた気がして、帰りの運転は少しだけ気分が上がっていた気がした。
*************
「1,2,3,4、1,2,3,4……」
踊る。
「腰、腕、指……」
踊る。
「1,2………あっ」
汗で足が滑った。
「………いったいですわー…おえっ…」
アドレナリンが切れた。
「はぁ…はぁ……指がちょっと伸びてなくて…ふぅ……腕の上がりが小さくて…おえっ……ステップの幅あってましたっけ…?」
足を滑らせたまま、アドレナリンが切れて上体を起こせないまま__それでもなんとかうつ伏せになって__近くに置いてたポータブルDVDプレイヤーを持ってくる。トレーナーさんに頼み込んで撮らせてもらった見本のダンスと、頭に留めているダンスのポイントを思い返しながら、先ほどの鏡に映った自分のダンスと比較して精査していた。ちょっと待って吐きそ…。
「おぅえええ……体力がなさ過ぎて地面と道家思想…もとい同化しそうですわ…」
いつまで経ってもこの体力が切れたときの体の重みは慣れる気がしない。元々体力を要することは苦手だったから仕方ない。
「…とりあえずアクエリ飲みましょう…」
ちょっと一息。
今日は仕事もレッスンもなく、家にいても特にやることがない__わけではないのだが、まあ今はダンスが気がかりなのもあってスタジオの鍵を借りて自主トレをしていた。
今練習しているのは、全体曲の「
でもさー…決まるとかっこいいんだ、これが。特に「ゆーにてぃまいん!」のとこ。両手を合わせてキラッってウィンクするところ。
すごいよ?その瞬間「これだ」ってなったもん。これがアイマスだ……って、謎の感慨を覚えた。
ま、それと私の技量の低さは一切関係ないんですけどね、HAHAHA。
……はぁ。
「笑ってる場合じゃないんですわよねぇ…さて、もう一回…今度はテンポを上げて、元に近いBPMでやりましょう…ふぅ」
*************
「ふふふふふん、ふふふふふふん…」
鼻歌で軽く雰囲気を出しつつ、正確さを重視して踊る。今はサビだ。
先ほどさらった足りないポイントを押さえつつ、ない体力を前借りして見本通りに踊る。そうしないと体になじまない。
そのまま1番を踊り終えたタイミングで__パチパチと、拍手をする音が……?
「すごいです百合さん!」
「…春香さんですの?」
扉の方に顔を向けると、「ザ・普通のアイドル」代表と言っても過言じゃない私たちのリーダー(予定)、天海春香ちゃんが拍手しながら立っていた。いや、何故いるし。
「春香さんも自主練をしに来たんですの?」
「はい…実は扉の前まで来て鍵を借りていないことに気が付いたんですけど、中を見たら百合さんが踊ってるのが見えて。そのまま見入っちゃいました」
たはは~…と苦笑いをしながら頭を掻く春香ちゃん。妙に似合っているのが春香ちゃんらしいというか。
でも、1つ気になる発言が出たな。
「見入るほどのものだったでしょうか。1番までで、体力的な問題も含めて10個ほどボロがあったような気がしているのですが」
「え、ええっ!?そんなにあったんですか!?」
「……ありましたよね?え、もしかしてわたくしの錯覚だったりします?え、マジンコですの?」
えー…だとしたら相当私疲れてるじゃん。もう1時間はやってるしちょっと長めの休憩取ろっかな……。
「え!?いや、たぶん百合さんの方が正しいと、思い、ますけど……」
「春香さんが自信なさげに答えるのも、それはそれでどうかと思いますが…」
しっかりしてくれリーダー(予定)。
「ま、いいですわ。せっかくなら一曲踊りませんこと?」
「その良い方だと、私たち舞踏会に参加してるみたいになっちゃいますよ…?」
「あら、こちらの誘い文句はよく言い慣れていますから。ついつい出てしまうのですわ」
「え!百合さん、舞踏会とか参加したことあるんですか!?」
「そうですわね、あれはもう5年も前のこと……って、あるわけないでしょう。流石に今の時代にはないですわ」
「……百合さん、ノリツッコミとかするんだ…」
「わたくしのことは構いませんわ。それより、ダンスを合わせるなら40秒で支度してくださいまし?」
「まさかのドーラおばさんも!?」
おら、早く合わせるぞ。時間は有限だからな。
*************
そのまま春香ちゃんのアップで20分程度、合わせで40分程度時間を使い、1時間ほど経って今日はお開きになった。頑張ったので帰りにコンビニでデザートを買った……てへりんこ。
マイハウスに颯爽と帰り着き、昨日多めに作ったカレーとかを寄せ集めて夕ご飯を準備する。
ご飯を食べ、デザートを食べ、シャワーを浴び。一通りのやることが終わった後、WA〇KMANを取り出した。そのままある曲をかけ、イヤホンを装着する。
「____♪」
明るめの…テクノ調?というジャンルなのだろうか。電子音楽的な曲調の曲を耳に入れる。ただし、歌詞はなく__インストだけ。
「『くすんだ坂を上って 一瞬先の未来を見る』」
「『白んだ空に立って 数瞬先の世界を見る』」
「『遅れた光 高い壁を貫いて』」
「『白金の煌めきを 今____』」
この度私が持つことになった個人曲「Glitter of Platinum」の歌詞を口ずさみながら、メロディラインを頭に叩き込んでいく。かっこいいんだこれが。
歌詞も私好みの、未来に向けて頑張る内容。電子音楽調と相まって、この曲をしっかりと歌いきる日が待ち遠しい。待ち遠しい!
「『水平線の先でいつか Platinum Glitter!』____」
……よし、今日も気持ちよく聞けた。後は適当にゲームでもしようかな。ふふふ、これは枕を高くして眠れそうですねえ!いつものことですけど!
まだ見えぬ曲の真の姿。どういう風に歌っていけばいいかとか、いろいろ考えながらゲームをして、いつものように12時くらいにベッドに入った。
おやすみなさいませ。スヤァ……(‘ω’)
*************
「今度、降郷村でのステージイベントに全員で参加することが決定した!現段階でのイベントスケジュール企画をプリントしたから各自見てくれ」
「『前半MC:織部』……ですって……?緊張しすぎてハシビロコウ待ったなしですわよ……?」
2話後書き回収。
百合の個人曲を作らないといけないなと思って、まあこの時期にはもうあるだろうということで作りました。超王道な克己の曲です。歌詞っぽいフレーズを考えるのに苦労しました。
次回、3話分です。でもただの3話分じゃない。
あと次回ビジュアル公開出来たらいいなぁ。