五条美城は白サギ嬢   作:アランmk-2

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ここすき、感想、評価ありがとうございます。嬉しいなと何回も見返してます。


早坂愛は浮かれてる

「あーあ、かぐや様。私の方が先に彼氏ができてしまいましたね」

「むむむ……」

「やはりもっと分かりやすく行動をされた方がよろしいのでは? 彼みたいに」

「うー……」

「告白させる、そのためにあらゆる策を考える……のは構わないのですが、書記ちゃんにめちゃくちゃにされているじゃないですか」

「くぅ……」

「曲がりくねった導火線を引くから足を引っかけられるんです。真っすぐ目標に向かっていけば彼女だって根は善良なのですから……」

 

「あーー!! 早坂うるさいわよ!」

 

 四宮かぐやはネチネチと口やかましい自らのメイドにがなり立てる。帰って来てからというもの、早坂は若干……いや、かなり……やっぱ滅茶苦茶鬱陶しかった。

 話の諸所で『彼』という単語が頻出するし、告白うんぬんに関して少しの上から目線から放たれる言葉が鼻についた。

 

「大体何であなたに五条さんは告白したのよ! 会ってまだ一週間も経ってないでしょう!?」

「何でも幼等部で見た金髪の子を見て一目惚れしたそうです。以来その名前も知らない女の子の事が気になっていたとか。それが私だと言ってましたね」

「何それ!?」

 

 なかなかの羨まエピソードの披露にかぐやは早坂の事を羨望の眼差しで見つめる。

 

 もし会長が同じ事を言ってくれたら……

 

 …………

 ……

 …

 

『実は俺達ずっと昔に出会っていたんだ。文化祭で見た女の子……それが四宮で、俺の初恋だ。頼む。付き合ってくれないか』

 

 …

 ……

 …………

 

 あっ良い! 良いですよこれ!

 

 かぐやは意外と俗っぽい運命とかに憧れがあった。

 

「う……羨ましい」

「そうですか? 言われた方は結構困りますけど」

 

 そう言うと早坂は美城と付き合う切っ掛けにもなった金髪をかき上げる。まとめたサイドポニーの一房を目の前に持ってきて……

 

「本当に……困った人……ふふっ」

 

 うっすらと微笑んだ。

 

 何そのまんざらでもない顔ー!?

 かぐやは姉妹のように育って来た女性の初めてみる表情に困惑した。

 

「ですがご安心くださいかぐや様」

「何が!? 今の何に安心できる要素があったの!?」

「彼は早坂家が四宮に仕えていることを知っていますので、かぐや様を第一に考えて構わないと言っています」

「あらそう」

「これからもいつも通りかぐや様のために働かせていただきますから」

「なるほど。五条の息子も、それは殊勝な心掛けですね……はっ!」

 

 あ。

 まずい。

 

「そうですね。そういう所、好感が持てます」

 

 ほらすぐ自慢してくるじゃなーい。もー。

 

 それはかぐやの過剰反応であったが、早坂も自分の浮かれ具合を過少評価していたのですれ違いの泥沼に陥りかけていた。

 

 読者諸兄に誤解のないようにお伝えしておくが、別に早坂は美城の事は特に好きではない。

 しかしかぐやが白銀に対してしかける恋愛頭脳戦の一端を担っているうちに、恋愛に対して憧れが増幅。そこに降ってわいた契約恋人の話。恋愛の過剰摂取(オーバードーズ)を引き起こし、早坂から冷静な判断力は失われていた。

 結果!

 

「かぐや様もお気持ちを表に出されては……ああ、出来ないんでしたね」

 

 無自覚マウンティング愛ちゃんが爆誕してしまったのだった!

 ゴリラ(学名:ゴリラゴリラ)もかくやというマウント力である。

 

「い、言うじゃない早坂。ですがあなたは殿方の方から告白してもらっただけ。それも一目惚れとかいう理由で。私に何をもって偉そうな口が利けるのかしら」

「そうでした。何もしていないのに彼氏が出来てしまい申し訳ありません」

「ぐはっ!!!」

 

 早坂(学名:ハヤサカハヤサカ)の口撃はとどまる所を知らない。この世の恋する全ての女子を敵に回しかねない発言だった。かぐやも長年の付き合いが無ければ早坂を許されざる物として四宮の歴史の闇に葬り去っただろう。

 

「も……もういいわ。下がりなさい」

「かしこまりました。おやすみなさいませかぐや様」

 

 早坂はスカートの端を持ち上げて一礼すると部屋を後にしようと踵を返して……

 

  ティロリン♪

 

「あ、みぃからライン……」

「みぃ!?」

 

 もう早坂から何も聞きたくないと思っていたかぐやでも聞き捨てならないセリフであった。

 みぃ!? みぃって何!?

 

「どうかしましたか?」

「どうかしかしてないわよ! 何なのその『みぃ』って」

「何と言われましても……彼の名前の美城から取ったあだ名が『みぃ』ですよ」

「シラフで言ってるのそのセリフ!?」

「かぐや様落ち着いてください」

「これが落ち着いていられますか!」

 

 ふん! とかぐやは早坂が持っていたスマホをぶん盗って画面を見た。

 

< 五条美城―早坂愛
.

 

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おやすみなさい。愛。 21:22
      
 

21:22
      
 

Aa          

 

 

 ラブラブじゃないですかやだー!

 何あのハートマーク!? いちいち分ける所がガチ感あって引くんですけど。こんなライン早坂も同じ事思うに決まって……

 

「ふふっ。まったくもう……」

 

 ダメだったー! むしろ積極的に受け入れていく所存だー!

 

 早坂が自分からぶん盗り返したスマホを見て微笑むのを、かぐやは愕然といった表情で見つめていた。もしかしたら古の占い師が未来視でかぐやのこの顔を見て愕然という言葉を残したのかもしれない。そういうレベルの愕然の表情であった。

 おやすみなさいっと、小さく口にしながら早坂は美城に返信する。数秒後についた既読の文字を満足そうに見つめてスマホをポケットにしまった。

 

「私は連絡取りますけど、かぐや様は取らないんですか? 取ればいいのに……」

 

 早坂め、サル山でもない所でこのレベルのマウントを……信じられん……。

 

 カッチーン

 怒った。憤慨した。怒髪天を突いた。

 かぐやは自分が頭に来たのをこれほど客観的に捉えられた事は無いと思えるくらいに、穏やかな心を持ちながら怒りの境地に達していた。今なら空も飛べるはずだし、かめはめ波だって打てるに違いない。

 

 何ですって早坂?

 この浮かれポンポコリンと化したダメイドさん、もう一回言ってごらんなさい。

 その瞬間あなたはエジソンは偉い人だという常識くらい四宮かぐやは怖い人という事を思い出す事になるでしょうけど。……ふふっ。

 

「早坂? 何か言ったかしら?」

「かぐや様は会長の連絡先をご存知ありませんよね」

 

「ふうん……そう……そういう事を言ってしまうのね……」

 

 さようなら早坂。もうあなたはお終いよ。

 

「みぃが知っているので教えてもらいました。かぐや様の携帯にメールで送っておきます」

「ほんとぉ!?」

 

 あーもう早坂はやっぱり有能! 好き! 私達はずっと一緒よ!

 

「かぐや様、今とてつもない掌返しをしませんでしたか?」

「何を言ってるのかしら早坂? 姉妹同然に育って来たあなたに掌を返すなんてありえません」

「それならよろしいのですが」

 

 かぐやから邪の波動を克明に感じていた早坂であったが、そういう面倒くさい事はしょっちゅうだったのでスルーを決め込む事にした。主人にとって都合の悪い事は忘れるのが長く侍従業を続けるコツだ。

 

「でも……ラインという物は興味がありますね」

「かぐや様? 何か仰いましたか?」

「決めたわ」

 

 静かに決意を込めた瞳でかぐやは早坂を見つめる。

嫌な予感がした。

 

「会長にスマホを持ってもらいましょう。早坂、一番安いスマホを取り扱ってるお店を探して」

「ですが……」

「言い訳は聞きたくないわ。そうよ私達に足りない物はスマホだったのよ! 早坂。あなた詳しいでしょ。会長にふさわしいスマホを見繕ってちょうだい。何でしたっけ?かくやすしむ?だったかしら」

 

 アナログ人間なかぐやが知っている単語を目一杯使っている様子は、微笑ましいと言えば微笑ましいのだが。

 

 お可愛い事を申し上げていますが、格安シムは安いスマホの一要素です。

 

「しかしそう易々と変えられないでしょう。会長だけでなく周りの事も考えないと……」

「なるほど。つまり個人的事情ではなく社会的事情を持たせればいいのね?」

「と言いますと?」

「早坂。今すぐ放課後の時間に手が空く者を呼んで来なさい。会長の登下校中にスマホの必要性を説き続けるの。サブリミナル効果の如く」

「はあ」

「何のんきな顔してるの早坂。サブリミナル効果は自分に報酬がある場合にはその効果を何倍にも増幅させるという研究結果があるのよ。何かラインで良い感じの付き合いが出来てそうな同年代がいる事で報酬を理解できる形に落とし込むの」

「つまり……」

 

 にっこり。

 かぐやは笑った。

 

「会長の登下校ルートに張っていなさい」

 

 渾身の諦めなさい宣言。なんと四宮かぐやは交際したてのカップルの放課後を奪うつもりらしい。

 

「会長が抜けそうなルートに付けておきます」

 

 ため息をつきつつも早坂はすぐにタブレットで世田谷区から港区の秀知院へ通う道を調べ始めた。

 そんな様子を見てかぐやはクスクスと淑やかな笑い声をあげる。怪訝そうな顔をした早坂が顔を上げて主人の顔色を窺うと、かぐやは意地の悪い笑みを浮かべた。

 

 

「あら早坂。彼に放課後会わないの? 私は会長と会いますけど」

 

 

 自分で命令しておきながらこの言い草。ダブルスタンダードを極めし者だけが言える言葉だった。

 ブーメランが綺麗に自分の頭に突き刺さった事を自覚して、早坂は苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

 

 

本日の勝敗 引き分け

 

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