五条美城は白サギ嬢   作:アランmk-2

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ボランティア部は付き合いたい

「ようやく会長がスマホに買い替えてくれました」

 

 早坂愛は開口一番そう五条美城に伝えた。

 時は夕方、放課後である。場所はボランティア部の部室である。二人にとっていつもの光景になりつつある日常の一幕であった。

 美城は書面をまとめながら、その赤い瞳で契約恋人の顔を見上げる。

 会長がスマホを買った。それはつまり早坂愛が、かぐやのわがままを完遂したという事だ。金銭的と精神的なハードルを乗り越えさせるのは優しい問題では無かったが、見事この侍従は乗り越え改めて自らの有能さを(かぐや)に知らしめる形となった。という事である。

 これで進展しなかったら馬鹿だと言ってやればいい。沖田艦長もそう言ってる。

 

「それは良かったですね」

「使える人員を総動員した甲斐がありました」

 

 使える人材は誰であろうと問答無用。朝に魚を捌かせたシェフに格安スマホを捌かせるし、庭園の管理を行う庭師にラインで報告を行うガバガバ危機意識管理職の真似だってさせる。

 まさに総動員。まさに総力戦。しかし貧乏家族に月二千円の出費を強いる事など四宮の力をもってすれば造作もない事である。

 図らずも白銀と知り合いになってしまった早坂は、彼の道すがらにある携帯販売店舗の前に立って通り過ぎようとする前に一声かけて足止めし、軽く世間話をしながら美城と上手くいっている様子を画面を見せつけながら惚気るという手法をとる事にしていた。

 そして少しばかり興味が湧いた所でショップ店員に扮したシェフが安いスマホあるよとそそのかし、庭師にスマホあると便利だと一般通過スマホ活用おじさんの役をさせる。

 そうした涙ぐましい努力の末、白銀御行はようやくスマホを購入してくれたのだった。

 

「ええ、本当に……」

 

 早坂は若干遠い目をしながら、窓から見える生徒会室の入っている棟を見た。今ごろかぐやは白銀のIDを聞くか聞かれるかですったもんだしているはず。

 

「私も微力ながら会長にスマホの利を説いていました。役に立っていたら嬉しいですけど」

「ちなみにどんな事したんです?」

「会長をハブにしてクラスグループを作りました」

「何でそんな可哀そうな事しちゃうんですか」

「明日の課題や小テストの話をして次の日『会長、昨日のラ……あっ……そういえば会長スマホを持っていませんでしたね。申し訳ありません』と言うだけの簡単なお仕事です」

「鬼? 鬼ですね」

「誰が鬼殺の剣ですか!!」

「そういう著作権モラルを問われるセンシティブな話題は止めてください」

「はい」

「素直!」

 

 スマホの話題が出たので、早坂は何となくスマホを取り出して美城とのグループを開く。

 開いて一番『好き』の文字が目に飛び込んで来て、何とも言えない気分になったのですぐ電源を切った。

 歯の浮くような甘々なやり取りの中に、本人達にだけ分かる暗号が仕組まれている無駄に高度な技術を要するラインであった。

 会話の中に鍵は隠されているのだが、ラインを見ただけでは完璧に解読する事は出来ない。二人が共有している暗号解読表四つを正しく符号させなければ、正しく情報を抜き取る事は出来ないように二人で(と言うより主に美城が)考えた物だ。

 しかしどの解読表を用いるかのコードは『好きだよ』か『好きですよ』の前後に愛の名前を入れるか入れないかのパターンによって決められているので、分かっていてもこう胸をかきむしりたくなるようなむずがゆさを覚えるのは致し方ない事だろう。

 この五条美城という女みたいな見た目をした男にはそう言う事に躊躇という物がまるでなかった。

 

「それで、今日は何も無いんですよね」

「いえ。ありますよ」

「なら呑気してていいんですか?」

「向こうからこちらに来てくれる手筈になっていますから」

「それは……」

 

 どういう?と続けようとしたときに、ボランティア部の扉が軽くコンコンとノックされた。

 

「また風紀委員さんではないでしょうね」

「どうでしょう? 愛、迎えに行ってはくれませんか」

「全く……。んっ……あ、あー。カンシャしてよねー」

 

 短い吐息を漏らして喉のチューニングを済ませると、頭の軽そうな声を出しながら扉の方へ向かう。いつ見ても完璧な猫の被り方だ。美城は自分がチャラくなるとしたらあの方向性にしたほうがウケがいいのだろうか、などと考えていた。

 

「はいはーい。誰ですか~」

 

 部室の引き戸を開くと、そこには二人組の女子がいた。ロングヘアーを真ん中分けにした明るい茶髪の女子と、ぱっつん前髪にした艶やかな黒髪の女子がいた。

 紀かれんと巨瀬エリカ。この二人はマスメディア部の生徒だ。と早坂が逡巡している時に、パッとフラッシュが焚かれ目の前の二人に警戒態勢をとる。

 

「ちょっと何だし!」

「あ……申し訳ありません。五条さんが来るものと思って撮ってしまいましたわ」

「かれん気を付けてよ。彼女さんの機嫌を損ねたら五条くんだって取材させてくれないかもしれないんだから」

 

 早坂は一喝すると、二人はしおらしくなって何度も頭を下げてきた。ここで責めても自分の外聞が悪くなるだけだろうと冷静になった頭で考えると、少しだけ怒っている容貌を残したままで室内へと迎え入れる。

 

「どうぞ」

「丁寧なお迎えに感謝いたしますわ」

「今日はよろしくね」

 

 カメラとメモと、それにボイスレコーダーを携えたマスメディア部の二人が座っている美城の所まで行く。早坂としては要監視対象の部活の構成員が、自らのテリトリーに入ってくる事に言い知れようの無い不安感みたいな物があったが、それを認めるのも癪なので余裕ぶって美城の隣に立った。

 

「この度はお越しいただきありがとうございます」

「いえ、この前書いた記事は好評を博しましたので、また五条さんに取材出来て嬉しく思いますわ」

「前……?」

「五条くんが転校してすぐに書いた『氷雪の転校生! その正体は男の娘!?』の事ね」

「何その馬鹿丸出しみたいなタイトル!? みぃもよく許したね!」

「私が考えました」

「自分で、かーい!」

 

 ギャルモードの早坂はツッコミのテンションが高い。普段とのギャップに美城はクスクスとおかしそうに笑うので、早坂はいつももにょもにょした気持ちになるのだがいまさら仮面を脱ぎ捨てる訳にもいかないので、パワーで押しきっている。

 

「あらまあ。仲が良さそうで何よりですわ」

「付き合うって聞いたときは質の悪い冗談かと思ったけど」

「酷いです。私こう見えて男なんですよ?」

「それ自体質の悪い冗談みたいな話だけどー」

「ではそれと付き合ってる愛も質の悪い冗談ではありませんか?」

「怒った?」

「怒ってないですよ」

「ホント?」

「ええ、もちろん」

「コホン……お二人とも、コホン」

 

 流れ変わったな、という潮目を呼んでかれんは空咳を二つ打った。男女交際のパターンを知るのはかれんにとっても白×かぐ妄想に、より一層の説得力と深みを生み出すだろうから望む所ではあるが、パッと見女の子同士の絡みはインモラルに過ぎる。失礼とは思いつつも話の本題に入ろうとした。

 

「えーっと、今日は新部活が発足された事についての取材を受けていただける、という事でよろしいですわね」

「はい」

「ボランティア部って言ってるけど、実際はお手伝いばっかりじゃない? そこの所どうなの」

「何と言いましょうか、私こちらに転校当初会長にお世話になっていまして。いえ今もお世話にはなっているのですが。それでですね、会長のように人助け出来たらなと思いまして」

「まあ! 会長の威光に触れられました五条さんは、その光を追いかけようと言うのですね! 素晴らしいですわ!」

 

 一人大盛り上がりのかれんを見て、早坂は端的に言って『はぁ?』であったがエリカなどは慣れた物で記事に出来そうな感じに手直しした分をメモに書き込んでいた。

 

「そう言えばその会長だけど、何だか忙しくなるんじゃなかったかしら?」

「どういう事ですか? 古瀬さん」

「ほら、テラスのあるパーティー用のホールあるでしょう? あそこってそうそう使われないから申請すればすぐ貸してくれるのに、次の日曜から二日借りられないんですって」

「何か秀知院特有の行事でもあるのでしょうか?」

「私は寡聞にして存じませんが……」

「それにバイリンガルやトリリンガルの人にパーティーの誘いが来てるそうよ」

「それは絶対に何かありますね」

「で、そういう何かある時に駆り出されるのって基本生徒会じゃない?」

「「「うーん……」」」

 

 いやボランティア部の取材は?

 早坂は普通に会長の話をし始めた三人に困惑しながらも、なぜか言い出せずにはいはい頷いていた。白キチとかぐキチと眞妃キチの間にはファンデルワールス力めいた不思議な引力が働いているので、早坂が割込めないのも仕方がないと言えば仕方がなかった。

 

「そうだ、聞きに行けばいいんですよ。行きましょう」

「え? 何、どこ行くのみぃ?」

「それは私にも分かりません」

「ええ……」

 

 

 

「かれん、エリカ。五条君と一緒って事は取材中?」

「渚さん。そうなんです」

「今皆で使えないパーティーホールの謎を追っている所」

「……ボランティア部の取材は?」

 

 真っ先に会ったのはかれんとエリカの友人、柏木渚だった。最近は一番の親友の眞妃を田沼翼に取られた事でご立腹であったが、今日はご機嫌な様子でにこやかに笑っている。それもエリカの話を聞いて引きつった物に変わったが。

 昼食を囲んでいた時の話と全く違う調べものをしているので、また二人の思考がどこかにぶっ飛んでしまったのかと邪推したのだ。

 その時の会話を思い出す。

『今日は放課後に五条さんの所に新部活の話を聞きに行きますわ』

『この前の転校生記事は好評だったから皆も楽しみにしてて』

 ……うん。どうしてパーティーホールの謎を追っているの?

 幻術か新手のスタンド使いの攻撃の可能性があった。

 

「そういう渚さんはこれからどちらに?」

「今から眞妃と勉強会なんだ」

「眞妃様と?」

「そう。最近の眞妃は『翼くん翼くん』ばっかりだったけど、今日は自習室を取ったから一緒に勉強しよって」

「良かったわね」

 

 エリカがそう言うと、渚は胸元に抱えている勉強道具をぎゅっと抱きしめて、一層笑顔になった。ちらりと美城の方を向いて、意味深に口角を上げる所が無ければ素直に可愛いと言えるのだが……。

 

「それで、何を調べてるんだっけ?」

「そうそう。二階にホールがあるでしょ? あそこが日曜と月曜に使えなくなってるから何かあるのか調べてるの」

「……何で?」

 

 ごもっとも。

 

「何してるのよあなた達」

「眞妃様!」

 

 廊下で話し込んでいる一団に、呆れたような声がかかる。

 その四条眞妃の声に、いの一番に反応したのは美城だった。余裕の返事だ。年季が違いますよ。

 全くそんなつもりは無かったのだが、渚には何となく当てつけのように感じられて、彼の白い頭を瞬き少なく見つめた。控えめに言って狩人の目であった。

 かれんは寒気を覚えた。

 

「実はかくかくしかじかという訳でございまして」

「へえ、そんな事がね」

 

 そんな目で見られているとは夢にも思わない美城は、まるっと眞妃に説明して、憚る事無く見上げる彼女の英知の一端を借り受けようとキラリと瞳を輝かせた。

 

「聞きに行けばいいんじゃない?」

「と言いますと?」

「だって美城がいるんだから、あの人に聞きに行けばいいでしょ」

「あの人……あっ、そうですね」

「まったく、そんな事に気が付かないなんて、かれんの恋愛脳かエリカのおば様脳でも貰ったのかしら」

「お恥ずかしい限りで……」

「ちょっと待って下さい眞妃さん今それ言う必要おあり?」

「というかあの人って誰よ」

 

 エリカは眞妃と美城にのみ通じる話に首を傾げる。内輪ネタというのはする方は楽しいがされる方は訳がわからないんだから、と説明を求める。

 

「ここの事務長。昔勤めてたのが五条家の所なのよ」

「なるほど、五条さんとはお知り合いという訳ですわね」

「ねえ眞妃、そろそろ」

「そうね。じゃあ私達は自習室に行くから」

 

 渚が眞妃の袖をくいっと引っ張ると、もうお開きと眞妃は手を広げて軽く振った。早坂とエリカは振り返し、かれんと美城は頭を下げる。

 

「マキちゃん」

 

 さらりと男の声がかかった。眞妃は喜々としてそちらを振り返り、渚の顔は固まる。

 やはりというか、そこにいたのは田沼翼だった。

 

「翼くん! どうしたの? 今日は用事があるから先に帰るって」

「そのはずだったんだけど、急に無くなって……」

「じゃあ今日は一緒に帰れるの?」

「うん。でも今日は少し勉強でもしてから帰ろうかと」

「じゃあ一緒に勉強しない? 自習室とってあるの。ね、渚、いいでしょ!?」

「えっ……と、うん、いいよ」

「ありがと! 早速自習室行こ翼くん」

 

 眞妃はぐいぐい翼の手を引いて自習室へと向かって行った。翼の成績は上位五十位に入れない程度だ。眞妃の事、今日は彼に付きっ切りで勉強を教えるだろう。

 

「あの……渚ちゃん?」

「^^」

「ヒェッ……」

 

 エリカは恐怖に打ち震えた。雷に怯える小動物のように丸くなって廊下の隅で震えている。

 何だろうこれは。渚はせっかく大親友と二人で過ごせる時間が出来たと思った矢先に彼氏に分捕られて、女の友情の儚さを感じていた。

 幻術か新手のスタンド使いの攻撃を疑った。もしかしたら下弦の壱の術かもしれない。

 いや、違うな……下弦のアレはもう少し自分に都合の良い夢を見させるはずだった。もしそうならとりあえず翼の存在を無かった事にしてしまうだろう。という事はこれは現実だ。

 

「え、えーと、私達はそろそろ取材の方に戻ろうかと……」

「申し訳ありませんでした」

 

 かれんが頭を下げると、美城も同じようにペコリと頭を下げた。

 今となっては、もしももアシモも無い話ではあるが、取材どうこうが無ければスッと自習室に行って翼とここで鉢合わせる事は無かったのではなかろうか。渚は思う。

 そもそもこの五条美城があの奥手の彼に色々吹き込んだから四条眞妃を取られたのではないか。あれが無ければ今でも仲良し四人組の均衡は保たれていたはずであったのに。

 

 眞妃はどうもこの五条美城という子がお気に入りみたい……。

 

 渚はすうっと目を細めると、美城の顔をよく検分した。

 それは控えめに言って獲物を屠る狩人の目であったし、緋色の瞳を狙う幻影旅団の目であった。

 美城は怖気に震え、かれんは寒気を覚えた。

 

「じゃあウチら取材に行ってくるねー」

 

 埒が明かないと思ったのか、早坂は何も分かっていないフリをしつつその場を後にした。震えているエリカと美城の襟をむんずと掴んで引きずって行く様は、母猫が子猫の首を咥えて縄張りに帰って行く姿を想起させる。

 

「あーあ、私も行こ」

 

 二人きりではなくなったとは言え、せっかく眞妃と勉強できる時間を逃したくは無かった。つまらなそうに渚はため息を吐くと、眞妃が取ってくれた自習室へと向かった。

 

 

 

「ああそれですか? 姉妹校との交流会があるんですよ」

 

 あの悩んだ時間は何だったのか。疑問は一瞬で解決した。

 美城が恐慌状態から回復して向かったのは事務員、用務員が詰める事務室であった。そこでわざわざ事務長の鹿苑莞爾(ろくおんかんじ)を呼び出して、物の流れから解き明かそうと探偵気取りで聞き取りを始めると、あっさりと教えてくれたという訳である。

 

「ありがとうございます」

「いえいえ」

 

 事務長は人の良さそうな笑みを浮かべて会釈すると、自分の机に戻った。

 

「秀知院の姉妹校と言えばフランス校ですね」

「って事はー?」

「フランス語をお話になられる会長とかぐや様を拝めるチャンスですわ!」

「美しいフランス語を話されるかぐや様……しゅきぃ……」

「でもどうしてこんな大がかりな行事が知らされてないのでしょうか?」

「そんな事より五条くん、もっと大切な事があるでしょ」

「何でしょう?」

「かぐや様の尊さが海を越えてフランスにまで伝わってしまう事よ!」

「古瀬ちんもアレだねー」

「これは今すぐ取材体制を整えなければなりませんわ! お二人とも今日はありがとうございました」

 

 かれんとエリカは本来の目的を忘れてきゃあきゃあと嬉しそうに駈け出した。記事採用にこぎつけれそうなネタを放り出してしまうのはいいのか。しかし美城は眞妃が困っていたら、今抱えている物を何とかこじつけて放り出し、ウッキウキで眞妃の手伝いに馳せ参じる自信があったので何も言わない。

 

「良かったんですか?」

「ちゃんと届けておきましたから大丈夫ですよ」

「届けるって……何を?」

 

 

 

 

 

「部長! スクープを掴みましたわ!」

「まだ公式にアナウンスされてないイベントの存在が!」

 

 かれんとエリカは早速掴んだ情報をマスメディア部に持ち帰っていた。もちろん一番に向かうのは部長の朝日雫の下である。

 

「そう」

「今すぐ取材体制を整えましょう!」

「パーティーの作法に明るい人とフランス語が出来る人と、それから……」

「二人とも?」

 

 ピンと張りつめたような声が、朝日の口から二人に刺すように飛び出した。

 なにやら様子がおかしいと思った二人は、居住まいを正して部長からの言葉を待つ。

 朝日はいつも騒がしい二人が黙ったのを見届けて、デスクから一つの封筒を意味ありげに取り出した。

 

「私、二人にマスメディア部部長として公式にアナウンスした仕事の存在があったよね?」

「は……はい」

「これなーんだ?」

「部長、まさか私達より先に交流会の事を知ったんですか?」

「ううん。二人のそれは初耳」

「では何でしょう? 部長、教えてください」

「女子バレー部の一年生が届けてくれたんだけどね」

「女バレの子が?何で?」

「『転校当初、親身になってくれた会長のように、人の役に立ちたかった』」

「「あっ」」

 

 かれんとエリカは一時間もしない前の事を思い出した。

 今日の仕事は……

 

「新しく発足された部活の話を聞きに行ってって私頼んだよね?」

「えっと……」

「二人は部長と知り合いだから頼んだのに、この原稿の字、二人のじゃないよね。作ってもらったの?」

「それは……」

 

 それは違うと言い切りたかったが、熱くなって本来の目的を見失ったのは事実で、この原稿はもしもの時のために美城が用意しておいたのだろうという事がかれんにもエリカにも分かったので、悪しざまに言うのは彼女達の良心に反していた。

 

「スクープを掴む前に、しなくちゃいけない仕事があるって、もう一度教えてあげないといけないみたい」

「「ご……ごめんなさい!」」

 

 二人の謝罪が重なってマスメディア部に響いた。雷の如く頭を垂れた、急転直下の謝罪であった。

 これは自分達の落ち度である。美城を攻めるつもりは毛頭なかった。

 けれど……できれば……自分達の所に持ってきてくれたら怒られる事は無かったのに……。かれんとエリカはちょっとだけ美城を恨んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「役に立ってるといいんですけど……」

「やっぱり鬼ですか?あなたは」

 

 

 本日の勝敗 かれんとエリカの敗北(こってり絞られた)

 




小難しいだけで事務長の名前は適当です。
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