五条美城は白サギ嬢   作:アランmk-2

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メリークリスマス
今回は話と全く関係ないおまけみたいな話です



おまけ&小話集
☆四宮かぐやと早坂愛の真冬のプレゼント大作戦


 12月24日。

 クリスマスイブである。

 キリストの降誕祭として教会ではイースターに並んで重要視されるこの日付ではあるが、クリスチャンの少ない日本においては、恋人と過ごす日としてなじみ深い。

 本来の意味から遠ざかり、商業主義に侵されている現状を嘆く者も少なくないが……。

 とは言え今回の話は、その欧米諸国の一大イベントとカップル文化が混じり合い独自に発展した日本のクリスマスの恩恵を受ける少女達の話である。

 

 東京は港区に、麗らかな少女が二人――

 

 

 ☆

 

「クリスマスプレゼントって何をあげたら正解なのかしら?」

 

 クリスマスイブの日の出の前に、ラフな恰好で四宮かぐやは、早坂愛に聞いてみた。今の時間は七時前、藤原邸での聖夜の時に少し余裕はあるけれど、何をもって喜ばれるか、いまいち踏ん切りつかぬまま、そのまま今を迎えてしまった形である。

 

「心が籠もっていたらなんでも良いんじゃないですか?」

 

 かぐやの従者、早坂は今日このめでたき日取りであっても、朝も怪しい五時に起きて普段と変わらず働きまわる。師走であっても変わらない。むしろこれから更に忙しくなるだろう。

 だが今日の夜ばかりはかぐやも彼女に暇をだしていた。

 かぐやが白銀と過ごすように、早坂も五条美城と過ごす予定であった。

 

「今はそんな低いレベルの話をしてるんじゃないの」

「低いレベル……」

「もっと戦略的にどうするかって話をしているの」

 

 普通、手堅く、常識的な、そんな言葉を一蹴すると、空に描いた事項を確認するように人差し指を立てて言葉を続ける。

 

「これを貰ったらついついテンションが上がって、ついついキッスしちゃう――

 ――みたいなプレゼントを求めているの」

「ついついテンションが上がって、ついついキッスしちゃう……城でもあげればいいんでしょうか?」

「城!?」

「ノイシュバンシュタイン城くらいあげないと……」

「あなたの所だけだからそれ!!」

 

 氷のかぐや様も崩れ去る早坂のぶっ飛び発言に、思わず声を荒げてツッコんだ。

 日本建築界の王であるだけでは飽き足らず、バイエルン王にでもなろうというのか。

 まあノイシュバンシュタイン城は古そうに見えて鉄骨組みのコンクリート製という、どちらかと言えば現代建築なので金さえあれば作れない事もないだろうが。

 

「ちなみに早坂が欲しいプレゼントは何かないの?」

 

 こほんと一声ドイツ南部まで飛んで行った話題を呼び戻し、仕切り直しと早坂に問いかけた。

 

「ワイヤレスノイズキャンセリングイヤホン。もしくは耳栓ですかね」

「……早坂の趣味は特殊だから参考にならないわ」

「そうでしょうか?」

「不満そうな声を出されても。じゃあ聞きますけど、そのプレゼントのどこにロマンティックでキッスしたくなる要素があるの?」

 

 早坂セレクションの意図はかぐやには不可解すぎた。前者はまだガジェットオタクの早坂らしいと言えなくもないが、後者に於いてはもはや意味が分からない。

 彼女の陳述を待つ必要があった。

 あー、と話し始めようと早坂が口を開くと、止まらないロマンティックが体中駆け巡ったのか、顔を赤くしてしなしな揺れながら口元おさえてニヤケ出す。ちょっとキモイ。美少女でなければ通報物だ。

 

「まず夜中に二人きりになります」

「すでにロマンティック!」

 

 この世に百パーセントは無い。……が、早坂のこの話が自分達の役に立ちそうにない事だけは百パーセント確信したかぐやだった。

 その夜中に二人きりになれる関係になるためのプレゼントを探しているのに、そこを飛び越えるなと。

 

「お互いの耳にワイヤレスイヤホンを入れます。一組しかない場合は何も入ってない耳に耳栓を詰めると効果的ですから真似してみてください」

「何々? 何の話が始まるの?」

「そうしたら音楽をかけるんです。もちろん美城の好きなドビュッシーの月の光を」

「知らない知らない! 五条くんの好みは知らないけど!」

「夜闇に零れ落ちる月の光のようなピアノの旋律に耳を傾けながら胸元に飛び込めば……」

「だから……そこに至る……んもう! 続けて!」

 

 かぐやは諦めた。

 

「聞こえてくるピアノの音に鼓動を合わせるととても落ち着きますよ。何かもう……色んな事がどうでもよくなってきます。音は鼓膜だけでなく体を震わせる事でも感じる事が出来ますから、話したいときにはおでこや頬に触れ合わせて話すんです」

「えっ……辛……聞いてるの辛い……」

「慣れてきた頃に穏やかになった心音を差して『私ではドキドキしませんか?』と言ったら……ふふっ……絶対にキスしてきますよ?」

「よく分かったわ」

「それは良かったです」

 

 絶対に参考にならないという事が分かった。

 

「逆のパターンもありますけど」

「いい!! もういい! もう充分理解できたからいりません!」

「そうですか……」

 

 どこかしょんぼりした様子で早坂は一旦口をつぐんだ。

 

「そう言えばかぐや様は何が欲しいんですか?」

 

「ノイズキャンセリングイヤホン。もしくは耳栓ですかね」

 

 これには早坂もニッコリ。

 ただかぐやの欲しい理由はとっても後ろ向きな物であった。

 

 クリスマスイブ前哨戦 かぐやの敗北

 

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