私の答えはこれや!(投稿ボタンポチッ)
身を切るような冷たさに、少女は肩を竦めると、白色吐息を吐いた後、きょろきょろ辺りを見渡した。
繁華を極める街並みを行き交う人もまた旅人なり、と簡単な古文の表現を使っては情景を描く。
東京のど真ん中の駅の道すがらには、自分のように恋人との予定を過ごす人や、家族でケーキを囲む温かい家庭を持つ人もいたりするのだろう。人生という道を行く旅人である。
ほうっと息を吐きながら、ただ待ちぼうけも悲しくて、落ち着きなど無き子猫の様に、聖夜に足踏みする少女。みぃとこの頃忘れてた彼のあだ名を口にして、早坂愛は恋人を探す。
美城と愛の恋人二人が待ち合わせしているのは、四宮別邸の最寄り駅周辺であった。
愛が住みこむ四宮別邸は港区の泉岳寺付近で、対して五条美城が住まう邸宅は白金にある。白金は泉岳寺のすぐ西に位置する高級住宅街で、二人にとって徒歩圏内だ。
今日の予定はクリスマスらしくイルミネーションを見て、ホテルのレストランでディナー、そのまま最上階のスイートに泊まり、帰るのは明日という四宮にしては人としての良心を取り戻したのかと驚くほどの二日連続休みをフルに活用した物となっていた。
鉄面皮の愛といえど、これで浮かれるなという方が無理である。
冬風が一陣駆け抜けて寒さを連れてくる。
愛は日本よりもはるかに寒い地域のアイルランド人の末裔ではあるが、生まれも育ちもここ日本、加えてその血はクォーター、耐えるに何ら寄与することなく真冬の日和に震えてた。
これでも着こんできた方なのに、と白い息を吐きながら自分の服装を見下ろす。
グレーの膝下まであるスカート。黒のタイツの足元に少し高さのあるブーツ。白のタートルニットがふわふわと温かそうで、それを邪魔しないノーカラー(襟なし)コート。
どこかこじゃれたヌケ感があって、吊り上がった青い目の印象をほぐす柔らかな雰囲気を纏っていた。
クリスマスイブの繁華街に、一人でいる美少女である。道行く人が何人も『おっ』と思って振り向くが、愛にとっては箸にも棒にも歯牙にも掛からぬ事でしかない。
褒めて欲しいのは一人だけなのだから。
待ち合わせ場所を間違えたかも?
ナンパどもの舐めるような視線から逃げた所でそう思った彼女はスマホを取り出して、数日前に交わしたラインのやり取りを見返す。
そこには間違いなく駅で待ち合わせと書いてあるのだが、数回駅前を往復しても、あの特徴的な白い髪には出会えていない。見たとしてもせいぜい御歳を召された普通の老人くらいだった。
来ていないなら電話でもしてみようか……
「ちょっとさっきの見た?」
「見た見た。何あれ?」
「あれじゃない? オタクの集まりでしょ。なんか白髪のウィッグつけたコスプレもいたし」
……やっぱりいいや。来てるみたいだし。
こんな時期にコスプレイベントがあるとは愛は寡聞にして知らないが、であるならきっとその騒動の中心には美城がいるに違いない。彼はそういう男だった。
「さっきの人が来たのはこっちの方だけど……」
「セイヤ!」
「「「「セイヤ!」」」」
「セイヤ!」
「「「「セイヤ!」」」」
「うわっ。何あれ?」
図らずしもさっきすれ違った女性達と同じ事を言ってしまった。
人通りを少し外れた広場で5人程の男の集団が、空手の胴着を来て正拳突きをしている奇妙な光景だったので、彼女を攻められないだろう。
知らない人が見たら100人が100人同じ感想を抱くと思われる。知っている人が見ればお勤めご苦労様ですくらいの軽口を叩いたかもしれないが。
男達がしているのは、性の六時間に対抗する文化としてオタク界隈で生まれた正の六時間という行為だった。
その内容は聖夜に『セイヤ!(聖夜)』と掛け声をあげて正拳突きをし続けるという、それだけの内容である。
「セイヤ!」
「「「「セイヤ!」」」」
「
「「「「セイヤ!」」」」
くだらな……。
行動の全貌が大体読めた早坂は呆れたような顔をして頭を振るが、ここに美城がいるのなら無視はできない。
セイヤ!セイヤ!とやかましい声を努めて無視しながら視線を送ると、黒髪、黒髪、黒……帽子、黒髪、黒髪。
いたわ。
「カー〇゜の四番はすずーき」
「「「「セイ! ヤ!」」」」
「何してるんですか、美城」
黒い帽子の持ち主に、愛は夜風のような冷たい声をかけた。
突然金髪碧眼美少女に声をかけられてオタク達はビビり散らかす。生涯において、これほどの美少女に声をかけられた事は三度もないのでさもありなん。
その中で一人、全くビビった様子のない黒帽子の人は正拳突きの残身を解いて、さっと帽子を脱いだ。
その下から、さらさらと白髪が空から雪が零れ落ちるように現れる。
「愛、遅かったですね」
「遅くない! もう、駅の前を何回も往復したんだから」
「それは申し訳ありません」
帽子を小脇に抱えながら、怒っている愛に悪びれる様子もなく答えるのは、もちろん五条美城であった。
「すみません。待ち人が来ましたのでこれで失礼します」
「いえいえそんな」
「こちらこそありがとうございました」
「イリヤと正拳突きできたって自慢します」
イリヤ? と愛は頭の上にはてなを浮かべる。
美城は胴着の彼等に手を振って、そっと頭に帽子を乗せた。
彼の今日の恰好は、黒い毛並みのコサック帽。上は白いマフラーで隠れた首回りからケープコートやポンチョの様に垂れ下がる布を胸元辺りで切った、肩当てにも似た特徴的な肩回りを搭載した膝まであるヴァイオレットのロングPコートを羽織っている。そしてここは何の変哲もない白いスラックスに皮のショートブーツ。
美城の好みであるミリタリー系のファッションなのだが、その恰好はスカートを履いていない事を除いて丁度イリヤスフィール・フォン・アインツベルンと同じであった。
プリヤではない。ステイナイトの方である。
大男の肩に乗って登場したり『やっちゃえバーサーカー』とか言っちゃう姿である。
愛を待ってうろうろしていた美城は、遠くから聞こえてくる声につられてここに来たのだが、その時彼に気が付いた正拳突き集団の一人が『コスプレしてるしこの人もオタクだろう』と声をかけたのが始まりであった。
最初は断ろうかと思っていた美城だったのだが、しばらく外を歩いて寒くなって来た事と、やった事のない物事に対しての興味の二つに負けて、こんな事に興じていたのだ。
「と、いう訳です」
「……」
「愛?」
「私を放っておくくらいに楽しかったの?」
こうして合流してくれたに至るまでの詳細を話していた美城だったが、話し終えた後で愛の顔を見るとプクーっと膨れて不機嫌ですと全身で表現していた。彼のコートの袖を摘まんでいじけている。
普段の彼女を知る者はその余りの変わりように心底驚くだろう。
早坂愛は硬い外面に守られた、柔らかい内面を持つ少女で、甘えたがりの本性がこういう二人きりの時に顔を出すのだ。それを知る人は母親である早坂奈央と、主人であり姉妹のように育って来た四宮かぐや、そして恋人の五条美城の三人に限られる。
そしてその三人の中で甘えなど許されない主人を除いた二人に、愛はべたべたと甘えるのだ。今は甘えが反転していじけモードになっていた。
「そんな訳ありませんよ。ほら、こうして愛が来てくれたらすぐに止めたじゃないですか」
「私はずっと探してたし。変な男がナンパしようって睨んできて怖かったし!」
「それは本当に申し開きのしようもありません」
「ほったらかして平気? 少しでも早く会いたいってなってくれない?」
「愛?」
「私は……私は……早く会いたかったのに……」
いつもこんな風に甘えられる訳ではない。
早坂愛と五条美城が付き合っているというのは秀知院内で公然の事実のように扱われているが、それはギャルモードの早坂愛の事である。
学校では余裕ぶったカースト上位を演じなくてはならない。影響力がそこそこあって、けど表舞台に立たないくらいのポジションに収まっていなくてはならない。忙しくともかぐやの為にあらゆる問題から目を離してはいけない。かぐやが生徒会にいる時は前までは二人きりだったのが、悲しいかな今のボランティア部は二人の愛の巣ではなくなっている。
美城に他の誰にも見せない心を見せている所は、他の誰にも見られたくないので、自然と学校のある日は甘える事が出来ない。
結論として、滅多にない休みを活用して彼に目一杯甘える事が彼女の精神安定剤なのだ。
それなのに美城ときたら、どうだ。
「私だって早く愛に会いたかったですよ?」
「嘘」
「嘘じゃありません。駅には早めに来ていて……ほら、正拳突きを百発打ってきました」
「だからそれが!」
微妙に角度の悪い位置にスマホを置いて撮影した正拳突きの様子を見せてくるではないか。
悪いと思ってない……訳ではない。そんな非情な人間ではない。
ただ彼は、その美貌によって生じる他人からの好意の波に乗って楽しむ事に躊躇の無い人間なのであって、今回はアニメキャラに似ているからと向けられた感情に乗っかっているにすぎない。それの本質は愛が美少女だからと享受してきた特別扱いと同じである。
ただ異なるのは、愛はそれを利用しようとし、美城は発展させようとする点だった。
つまり人と関われば関わるだけ、美城にとって特別になりうる人が増えると言う事でもあった。
愛は、それがいつも面白くない。
「何で私をほっといても楽しそうなの?」
「後で楽しさをおすそ分けしようかと思いまして。ですからより楽しめば愛も楽しくなってくれるかと」
にへらっと笑う顔を、可愛いと、好きだと、大好きだと、そう思うのはいつもこちらだけなのだろうか。愛は美城の愛情を疑った事は無いが、その質に関しては少し疑問に思う事がある。
ただそれを美城本人に言えば心外と怒られるだろう。彼はただ愛され慣れているから、ベタベタしなくても愛情を信じる事が出来るだけである。
対して愛は、愛され慣れていない甘え下手なので、今まで目に見える形で注がれてこなかった愛情という物があると信じたくて、ベタベタと美城に甘えるのだ。
「そんな事しなくていい……。私は美城がいるだけで……」
少しだけ顔を俯かせて、ボソッと聞こえるか聞こえないかくらいの声で愛は呟いた。こんな恥ずかしい事は聞かれたくなくて、けど分かって欲しくて、繊細な乙女心の照れ隠しはそんな形で行われた。
「愛。ごめんなさい。ねえ、機嫌を直してください」
可愛い彼女の、そんないじらしさを見せられて何とも思わないほど、美城という男は鈍感でも薄情でもなかった。
そっと彼女の手を取って、手袋越しの感触にもどかしく思いながらしっかりと握ると、俯いた愛の顔がこちらを向く。だが上向いたのは顔だけで、まだ心が俯いたままなのは半年も付き合えば分かろうもので、もう少し心を砕く必要がありそうだ。
早坂愛にとって愛情とは、共に何かをする事なのだ。だから美城が一人で何かしていた事が面白くないし、のけ者にされたと疎外感を抱く。
だから一緒に何かをしようとする事が大切だ。
「イルミネーションは、君と一緒に見たいから」
いつもと違う言葉遣いで、自分だけに聞かせてくれる声色で呼びかけられて、俯いていた気持ちが上を向いた。
丁寧な言い方が少し砕けて、女の子にしか見えない彼の、男らしい所が触れてくる時、愛は否応なしに鼓動が高鳴る。
いつもの慇懃無礼とも取れそうな態度が、美城にとって嘘という訳ではない。しかしいくつか持っている一面である事に間違いなく、それを自分に見せてくれる事が、たまらなく嬉しかった。
「ずるい」
「分かっていてやっていますよ?」
「だからずるい」
こういうの好きだよね、と言ってそうされるのは、あざといとかそんな事を通り越してあくどかった。
それに揺れる自分のチョロさに、呆れる物さえ抱くのだが、好きになった方の負け、骨身に沁みて分かっていた。
ただ上げていただけの顔に気持ちが着いてきた。瞳の焦点がぴたりと目の前の赤い瞳に合うと、いじけていた心の焦点も恋人の方向へしっかりと合う。
手を繋ぎたくて、レザーを二枚隔てた先にある指がもどかしくて、愛は右手の手袋を取った。
一瞬だけ目を真ん丸に見開いた美城は、すぐにその顔を微笑みに変えて、左手の手袋を取る。
そっと、人差し指からお互いが触れ合うと、身を切るような寒さを癒し合うように優しく掌を合わせて、どちらが先に指を絡めるかという事さえ楽しむようにしばらくそうしていた。
先に動いたのは愛だった。
彼女の小指が美城の小指に絡まると、タガが外れたようにするすると残りの指も絡ませて、この手さえ自分の物だと言いたげに握り締めた。
クスクスと隣から聞こえる忍び笑いに応えるように、美城も愛に負けず劣らずな白い指を絡ませる。寒いね、と言い訳をするように固く結べば、繋いだ掌から熱が上がってきて、照れくささに頬が染まった。どちらも。
愛はふわふわと風船にでもなったような浮遊感に身を任せて心地よくたゆたっていると、不意に風が吹いたみたいに何かに引かれて思わずつんのめる。
とん、と何かにぶつかったので顔を上げると、ニコニコ顔の美城がいじわるに言った。
「ぼうっとしてると危ないですよ?」
何それ、自分でやったくせに。嬉しさを噛みしめながら、愛はそんな事を思う余裕がようやく出て来た。
余裕が出てくると欲が出てくるのが人間である。
こと恋愛において、負け負け続きの愛ではあるが、だからといって余裕の顔をされ続けるのはプライドが許さない。自分の何を使ってでも、この余裕な顔した恋人に一泡吹かせてやりたくなった。
「ここから十分くらい歩いた所にイルミネーションの通りがありますから、ゆっくり見て行きましょうか。幸い予約までは時間がありますし」
前を行く美城が優しく手を引くと、愛もそれに倣って歩き出す。ただしゆっくりと。
普段よりも明らかに遅くなった歩みに、私の事を気にかけて、そんな意味が込められているのだろうと美城は微笑ましい気持ちになった。別に今は急いでいる訳でもない。甘えん坊のお姫様のために、足取りをゆっくりとした物に変えた。
愛の思惑通りに。
歩くという行為は無意識的に自分のペースというもので行っている。基本的に男性は女性のそれに比べ速いペースで歩いているので、意識せずに歩けば女性を置いてけぼりにしてしまう。
だから男性は意識を割いてあげましょう、というのは恋愛マニュアルに載っている初歩の一つだ。
意識を割くとどうなるか。
集中が散漫になりやすくなる。それは人間である以上、美城もそうだ。
「ねえ、そう言えばそろそろサッカーの大会があるんだっけ?」
「そうです! 愛も知っていたんですか? 今年も冬の高校サッカーに帝様が……」
そこに、更に美城の好きな話題を振って集中を散らしてやる。今も当然連絡を取り合っている幼馴染の夢舞台について語る彼を見て、愛が思うのは可愛いでも微笑ましいでも楽しいでも無くて、一番油断した時に、という獣染みた考えだった。
「……だったんです」
冬の高校サッカー選手権大会の出場を決定づけるシュートがゴールに突き刺さった話を終えた美城は、少しの達成感のこもったような息を吐く。
今だ。
今度は愛の方が美城の手を引き、すると彼の体がグラついた。
するりと一切の淀みなく愛は腕を絡ませて、
――ちゅっ
首筋のあたりに噛みつく獣のように、しかし優しくキスをした。
「え? あ、愛?」
「美城ってば『帝サマ』の事ばっかり」
驚いた彼は、どこか呆然とした顔で空いた右手で愛がキスした首筋をなぞった。リップの艶めきが手袋のレザーに移る。
うろたえている美城は面白かったが、それだけで満足せずにもう一つ爆弾を落とす。また私をほったらかして、と攻め立てたのだ。
同性の中で一番好きな四条帝の事を話すように仕向けたのは他の誰でもない愛である。普段の美城ならそう突っ込んだに違いないが、今の彼は恋人を悲しませてしまった前科一犯の負い目から愛の言葉に『またやってしまった』と反省すらしていた。
「それは……ごめんなさい」
「ふふふ」
しょんぼりしながら謝った美城に、目論見の一つが上手くいったと愛はほくそ笑む。
ただこれだけではやり足りない。
ぎゅっと、ぎゅーっと繋いだ美城の左腕を抱きしめた。
困ったような笑顔のまま、何か言おうと美城が顔を向けると、あっと気が付いた顔をして、彼の真っ白な顔が真っ赤に染め上げられる。美しい白い顔の損な所だった。
誤魔化すように目線を前にして歩き出そうとする美城を、見逃してあげるほど愛は優しい性格はしていなかった。
「どうしたの?」
ニヤニヤしながら腕に更に力を込める。すぐそばにあるそっぽ向いた顔にねだる様に金色の髪を擦りつけた。
いつになく強気な攻めに、いつも余裕綽々といった様子の美城もタジタジである。
「愛」
「なに?」
「その……」
「んー?」
「当たってますけど」
「何が?」
「何って……その……」
あくまでも自分からは何も言わないつもりのようだ。
愛のやりたい事がおおよそつかめた美城は、照れくささに負けてしまわないように気合を入れて、そっと彼女の耳元に囁く。
「胸が」
「知ってる」
そこそこに勇気を出して言った言葉なのに、さらりと受け止められて、美城は『ですよね』と諦めたように自分の負けを認めた。
慎ましやかだがおっぱいはおっぱいである。二の腕で押しつぶされる柔らかさに、むずむずと落ち着かない気持ちになっていた。
「私の負けですから、少しでいいので離れてください」
その言葉を聞いた瞬間に、愛の心中は達成感に満たされた。一般的に言って良くない部類の達成感だが。
「ふふっ……どうして? ねえ、美城」
設定目標を達成した愛は調子に乗って負けにしおれている恋人の事をいじめた。
基本的に二人の関係は、駆け引きをすれば余裕のある美城の勝利という形に終わる事が多い。珍しく転がり込んできた勝利に愛はその味を楽しんでいた。
「顔真っ赤だよ」
「愛も、ですよ」
「へっ?」
勝利の余韻がふっと吹き飛ばされた。図星である。
早坂愛は普段の生活から策を弄する、言葉を弄する、仕草を弄する。しかし体で相手を弄する事はした事が無かった。そこは従者家とはいえ四宮の幹部一家。安売りして良い体ではない。
つまるところ、こんな事をするのは、愛だって恥ずかしいのだ。
「愛、顔真っ赤ですよ」
「う、うっさいし」
「あはは、可愛い恋人を持てて私は幸せ者ですね」
「さっきまで私の胸で鼻の下伸ばしてたくせに、いきなり余裕ぶらないでよ」
「伸ばしてません」
「伸ばしてた」
伸ばした、伸ばしてない、赤い、赤くない。そっちも、そちらこそ。
美城と愛の二人は、そんな過去の自分が見たら呆れかえりそうな水掛け論を繰り広げていた。
ただ、誰がみても羨むような幸せそうな笑顔が、二人の美しい顔を彩っていた事は、いついかなる時の五条美城も早坂愛も否定し得なかっただろう。
本日の勝敗 早坂愛&五条美城の勝利。
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