基本的にゴリラは休日以外家では仕事終わり以降の食事、ロマとのコミュニケーション、最近はヤモリ達に代わりに配達してもらっているゴリラミートの生成、食事、睡眠というスケジュールなので、関わりがある人間は職場を除くとスーパーの店員さんとロマオンリーです。
「ふむふむ…ぃよしっ!」
通帳を見ながら声を上げてしまった。
家にいるのは私だけだが隣のロマは耳がいい。
やっとである…苦節3ヶ月。
思い出したように貯金を始めて以来カイジ並みに食事が貧しいことも少なくなかったがやっと旅費もとい観光費が貯まった。
はぁ、この苦労をもう一度する必要があると思うと流石に気が滅入る。
「何はともあれがんばった!私!…こう言う時はしっかり自分にご褒美を与えなければな。うむ、最近の食事は特に感情が入り込む余地がなかったからな。はぁ〜〜ココへ移住者が増えるとは…噂を聞きつけて来たらしいとはいってもなぁ…」
ヤモリ曰くである。
"ココ20区ではヒトを殺さなければ何もしなくても食事に困らないらしい。"
というウワサがいつのまにか近隣の区に広まったらしい。
さらにさらにである!
相方のクレオがイワイワから教えてもらった情報によると、ここ20区への他区からのグールの出入りが激増しているらしい。
しかもその数や危険度の分類も広く、上も対処に困っているという。
おかげでウワサにすがってやって来た食うに困っているようなグールの中でも弱い部類に入っているものから、ウワサが事実ならそのウワサの基を牛耳り勢力拡大を狙う凶悪なグールや組織力に長けたグールの群れなんかが幾つか侵入したとのことだ。
率直に言って、うわぁ……である。
そもそもは私が悪いのだから仕方がないだろうがな!
あ、それとさっきの話には続きがあったのだ。
クレオ氏の供述によると中でも凶悪なのと強力なのとがそれぞれハッキリしており、外見が明らかにヤバいやつと若いのにどっか渋いイケメンらしい。
……イヤな予感しかしないのだが…。
そんな時であった。
ピンポ〜ン…
電池取り替えもしてないからか細い音しか出ない我が家のチャイムが鳴ったのは。
「?…ロマ〜、鍵は開いてるぞ〜。」
いつもならドアバーンというダイナミック入室しかしないロマにしては珍しくチャイムを鳴らしたので怪しんで声をかけて見る。
「ロマー。開いてるって。入ってこいよ、いつもより大分早いご来店だn...っ、⁉︎」
ーーーそれじゃぁ遠慮なくーー
そんな声が響いたかと思えばドアが吹き飛び、ナニカが一気に距離を詰めてきた。
せっまい玄関からまっすぐ狭い通路を通り抜けた所にある私の寝室兼リビング。
ここまで約5メートル。
そのナニカは瞬く間に私の目前に辿り着くと、吹き飛ばされた衝撃で私の目の前に横臥する羽目となったひしゃげたドアで土足を拭うと包みを私に差し出してきた。
ちょうどいい座布団がなくフローリングの上に胡座をかいている私の目線と目前に佇む侵入者の目線は私が少し見上げるくらいであった。
ロマは胡座をかいた私よりも小さいのに…などと下らない感慨を抱きながら意外にも冷静に状況の理解へ努めようとした時、侵入者が口を開いた。
「つまらないものですが。」
スルっ…
ゴロゴロ…こてん
"私なんかにどうも。"
鍵が開いていると言うのにドアをぶち壊して入ってくるようなヤツにさえお礼を言おうとしてしまいかけた私の目の前には…見知らぬ人間の頭部が三つほど転がっていた。
三者三様の苦痛を顔に張り付け、性別も年齢も推定がかなわないほどにうじゃじゃけている。
「…色々と聞きたいことはあるが、コレは何のつもりだ⁉︎」
あまりの出来事に声を徐々に荒げてしまう。
この時まで私は今まで人死ににはまだ会ったことがなかった。
グールの駆逐自体は経験があるが、多いとはいえども捕縛に比べれば少ない比率である。
命を奪うことに抵抗があるというのが大きい。
一方で今までそれほどの怒りを感じるほどの出来事に遭遇していなかったと言うのが大きい。
私は運が良かったのだ、そう思った。
目の前の頭部に張り付いている、苦痛に歪んだ男とも女とも分からないほど崩れたヒトの顔を見るのは初めてだった。
ただ頭部だと言うことは分かったが、それ以上は今は考えるべきではない。
これが何を意味しているのか、それが問題である。
「?どう言うことって…そのままの意味だけど。」
「これは何を意味しているのかと聞いているのだ!」
そもそも、このような真似を平然としでかすような者は狂人かなにかの類いに思えてしまう。
そんな者に行動の意味を問うたところで無意味と分かっていても私は問わざるを得なかった。
目の前の侵入者は暫しの逡巡ののちに口を開いた。
「だからさっきも言ったけど…つまらないものですが。だよ。」
なんなんだこいつわぁぁぁぁあ!
なんなんだこいつわぁぁ⁉︎
次回、侵入者が誰か、頭部は何なのかを種明かししようと思います。