ゴリラ的人生哲学   作:ヤン・デ・レェ

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シリアスが描きたいんじゃない!
オラッ!ゴリラを投入じゃあ!


甘えてもいいんだよ?(脳筋)

ウタとはあの後3日間全く会わなかった。

 

すまないことをしたからなぁ、なんというか無邪気なんだとは思うんだけど、外見といい、大人になってからしちゃうとシャレになってないからなぁ。

 

まぁいい、過ぎたことだ。

 

問題はアイツの言う暴れる発言だな。

 

いつ、どこで、何をするのかわからないのは痛い。

 

クレオにも詳細は省きつつ近くに凶悪なグールらしき存在を確認したー的なことを相談したしな。

 

アレが良かったのかはまだわからないけど、分かったことがあれば教えてくれることだろう。

 

それにしても…。

 

私はロマがあの後すぐに説明してくれたことを思い出した。

 

自分と似た境遇のグールは多いと言うこと。

 

彼はその中でも強力な個体の一人であり、自分にとって悪友のような存在だと言うこと。

 

あっ、私はゴリさんがお隣に来てからは一切ヒトを食べてないからね!

 

そう私に言い含めた彼女は愛らしかったことは置いておいて。

 

彼はロマと似ていると言うことらしい。

 

ロマに関して言えばもう結構親しくなったように思う。

 

親しくと言うよりは親密に届くかもしれない。

 

ロマからは何というか若干の私への依存の傾向を感じていると言うのが正直な所だ。

 

お隣さんになり毎日彼女に起こしてもらい、自分の肉を与へる生活をして1週間が経った頃にはぼんやりとそんなことを感じていた。

 

私が彼女に会わない日はなく、また彼女も私を起こしたりするとき以外でも頻繁に私の部屋に入り浸るようになった。

 

彼女はこの前ヤモリの白スーツ組に突入された時に窓ガラスやらがめちゃくちゃに散乱している元の部屋から移動して、一つ私の部屋から離れた所に居を移した。

 

基本的に私が休みの日は彼女と過ごすのだ。

 

最近は一人暮らしでしかも料理も下手な自分とグールでヒトの味覚はわからない彼女とで毎日料理の練習をしたりしている。

 

そんな彼女が私の部屋にいないというのはほぼ無いだろう。

 

特に休日は大半を部屋の中で過ごすのだから、彼女が居ない時に偶然客の訪問があるとは考えにくい、というかそもそも客人などいるはずもない。

 

職場にも住所を教えてはおらず、クレオやイワイワにも誤魔化している内容である。

 

おそらく彼は私の住所についてはロマから聞いていたのだろう。

 

がしかしそれでも謎なのは最後の発言である。

 

彼がもしも、あくまで真面目に遊び心を添えてここの新しい住人として近所に挨拶しなきゃ的な思いを持ち合わせており、かつそれが盛大に滑ってしまったことが今回の一件の正体だとして、彼はどうして私に暴れるからなんて言うのか。

 

いや、自分で言うんだったら止まっていてくれます?

 

自覚している上でも暴れたい。

 

どうしてなのか、ゴリラの私にはわかりかねる。

 

 

 

ロマのことを想う。

 

彼女と似た境遇だという彼、彼がどんな生涯を送ってきているのか、何を思っているのかははっきり言ってさっぱりだ。

 

けれど確かに私に暴れると言ったのだ。

 

私に言うのには意味があるはずである。

 

彼は既に私と拳を交わしている、実力差は実際に痛い目を見て理解したはずだ。

 

……構ってほしい、そんな感じなのかな。

 

私はゴリラだし、それらしいことを思いつくのは構ってほしいくらいが限界だ。

 

彼らは社会から打ち捨てられたのだから、認めてもらえなかっただろうし、見てもらえることも無かったのだろう。

 

特に男の子は本来お父さんを最初のライバルにして育つという。

 

初めて出会う同性の気を許せる相手であるべき存在を彼も知らずに育ったのかもしれない。

 

兄弟もいないようであるし、彼が孤独を感じていることは確かなのだろう。

 

私は過去に孤独を強いられることもなく、コチラでも隣人に恵まれている。

 

私にはわからないことばかりである、私は恵まれた生を生きてきたのだと改めて感じた。

 

知らなくていいことなのだろうな…

 

彼はどうしようも無かったのだろう、もしかしたらあのマネキンの生首だって私へなにかを意図して渡したのかもしれない。

 

私は彼でないので分からないが…何か求めていたんだろうな。

 

私の目からは決して狂人というものに限ってしまえるようには思えなかった。

 

彼の苦悩も思考も理解はできないことだろう。

 

…私にできることは彼の言う暴れる発言を真に受けて受け止める心構えをしておくくらいだと思うのだ。

 

形は違えど彼の思いを受け止めるべきだと思った。

 

彼を理不尽に拒絶することは可能であるが、それは何か違うと思う。

 

頭の中は思考と疑問と矛盾でないまぜになっている。

 

仕事終わりの疲れも相まり余計思考はまとまらず、もう一思いに眠ろうと思った。

 

 

 

その時である、大きな爆発音が鼓膜を打ったのは。

 

着の身着のままでヘルムだけ頭に被せて家を飛び出した。

 

部屋が先日の出来事でめためたになっていたためロマの部屋で寝泊りさせてもらっていたのだが(強制)彼女は今珍しく部屋には居なかった。

 

心配ではなかったが疑問には思っていた。

 

しかし今まさに心情は心配に変わった。

 

未だに音が鳴り響く方向へ人工灯ばかりが煌めく都会の街の中を駆け抜ける。

 

徐々に人の流れが生まれているのが見えた。

 

それらの多くはホストやキャバクラ嬢然としたヒトや仕事帰りなのか酔ったサラリーマン姿の男なんかであり、繁華街付近からの避難であることがわかった。

 

人々はざわめきながら私とは正反対の方向へ流れようと必死になっている。

 

一人捕まえて聞いたが要領を得ず、要するにグールが出たらしい。

 

20区は基本的にグールに襲われる危険が1区並みに低いと言われるようになった。

 

私や白スーツの努力の賜物であると思うと鼻が高いが、昨今は外部勢力の侵入によってその平穏は許されないようになってきている。

 

日夜白スーツ達とゴリラミートの配給に伴ってできた人脈を張り巡らせ区のグールのナワバリ…と言っても不干渉地帯的な意味合いしか今となっては無いが…を管理、割り振りをし、外部勢力に対しての牽制とココのルールへの順応を迫ってきた。

 

先頭になれば捜査官として立ち回ったりヤモリ達に任せたりしてきたが、今回のはそれどころではなさそうである。

 

 

 

たどり着いた現場は繁華街に近くすでにネオンが明るい、住宅地やらがここをCCGの局から切り離しており到着には時間がかかりそうな場所である。

 

所々の店舗がシャッターごと貫かれたり崩れたり、はたまた貸しビルが倒壊していたりとひどい有様である。

 

地面には硬質な赫子によって抉り出されたのか、コンクリートや煉瓦で舗装されていたところが土を曝け出されている。

 

未だに消えない戦闘音に近づくとそれが見えてきた。

 

案の定ココの管理者を任せている白スーツが見え、相対しているのはチンピラ風やヤクザ風なヒト、マスクを顔に被せて赫子を揺らすグールの様である。

 

数は当方が今さっき空から降ってきたヤモリと白スーツを含めて約25。

 

相手方はヒトに思しきが30人強、マスク姿のグールと思しきが約40の計70。

 

戦力比較に勤しんでいると向こう側から明らかに纏う空気が男が人垣から顔を覗かせた。

 

ウタだ。

 

何となく分かる。

 

…そうか、今日だと言うわけか。

 

そうこうしているうちに戦闘が始まった。

 

向こうの目的はわからないが、おそらくウタは個人での参加なのだろうと推測する。

 

これらは予め日時が定められており、母体となるまとまった組織による攻撃が今日に指定されたのが今日だったのだろう。

 

それに伴い一枚噛むことを目的とした混ざりものが多いのはその為だろう。

 

直前に用意したにしては頭数が多いし拳銃やダンビラが得物のヒトもおり反社会的組織も今まで準備して来たと思われる。

 

…目的はグールの協力による人身売買とかかな?

 

全く、迷惑なことである。

 

加えて今日を選んだ理由も明白だ、今日は私の相方も含めて多くの20区の局所属の数人の捜査官が本局にて他区の現状確認のための会議とか何とかに出席しており、日を跨いで不在である。

 

元々本局で勤めていた丸手君や篠原=サンも呼ばれているために不在である。

 

クレオは一気に捜査官が減ることを不安に思っていたが彼の言う通りなったと言うわけだ。

 

………まどろっこしいな。

 

ナキじゃないが言わせてもらうと、難しいことになったんじゃねぇよ!

 

もっとわかりやすくしやがれ!である。

 

怒りに任せていつも通り突進をかます。

 

ヒトもグールも関係なく30メートル直線上にいた奴らをなぎ倒す。

 

私は反社会勢力も許す気などない。

 

慈悲はない、とばかりに拳を、脚を、額を、膝を、肘を躍動させる。

 

2メートル50を遥かに超えた全身筋肉の塊のような肉体から猛打を放ち続ける。

 

白スーツのヤモリたちは勝手知ったる光景だとは思いつつも一歩引いた位置で黙々と私の打ち残しを狩っているようだ。

 

ヒトも死なない程度に痛めつけているようで感心感心。

 

私の方はそれほど器用ではないのだが、コイツラならかまわんだろう?ニチャ

 

なんてな。

 

赫子と弾丸と鉄の刃が迫ってくるが、銃弾はそのまま受けても豆ぶつけられる程度であり、鉄の刃は痛くはないが何というか不快なので抜身を握って持ち主ごと投げ飛ばすか硬い地面に叩きつける。

 

赫子は言わずもがな純暴力によって対処である。

 

甲赫は拳か蹴りでブチ抜き、持ち主を二つに割る。

 

一撃でダメならヤモリ達にパスするが、たまにいる比較的強力な個体は刮いだコンビーフ缶みたいになるまで引きちぎっては捨ててを繰り返し戦闘不能に追い込んでいく。

 

尾赫は其のものを掴んで手元に手繰り寄せてから赫包ごと引き摺り出してKO、ビクッビクッてするだけになるので放置である。

 

一応死んではいない…と、思う。

 

羽赫は基本的に真正面から突っ込んでドン!おしまいである。

 

顔面を右手と左手で全力で挟み込む。

 

両手でパアァァァアン的な奴である。

 

これで頭部が吹き飛んだ瞬間に背中から赫子を毟り取って文字通り一鳥…いっちょう…上がりである。

 

私を見ていて恐れをなしたのか?

 

段々と私に向かってくるやつは減り、白スーツ組の方へ人数が偏ってきた。

 

さっきまで四十人は私を囲んでいたが、ヒトとグールあわせて三十に届いたくらいで白スーツに流れていったようだ。

 

最初に突出した私の背後が主戦場となっているので振り返ると案の定もはや人数差は問題外である。

 

最近は特に外部勢力との小競り合いが多く、以前以上に戦闘経験を積んだヤモリ一門は他区のグールを物ともせず駆逐している。

 

特にヤモリは目覚しく戦闘センスに磨きが掛かっており、まだまだ若い今から成長を続ければSSレート〜になるかもしれないな。

 

私も挟み撃ちの形で掃討に参加しようと思った時。

 

ザッと先程顔を覗かせていこう沈黙していたウタが動いた。

 

戦闘モードに最初から入っているウタは以前とは比べものにならないほど私に喰らい付いてくる。

 

拳による殴打や刺突にも柔軟に赫子を操作して受け止める様はこれまでで最高レベルの捌き上手と言える。

 

ロマやらヤモリの力技のゴリ押しだとか以上の回避能力には驚いた。

 

案外繊細なんだなとか考えつつも左足からの回し蹴りを避けられたところで、ウタの赫子が私の体を掠めた。

 

小さな切り傷だったが久しぶりに負傷を負ったことに驚きを隠せない。

 

ふふふ、ウタはテクニシャンという訳だな。

 

大抵の戦闘を数秒から数分で終える私としては少し楽しくなってきた時だった。

 

顔にクスリとした微笑を浮かべてしまったのはヘルム越しにもウタに伝わっていたようだ。

 

ウタはどこか不機嫌そうに「へぇ…」と呟いた。

 

「フレッド一等!!」そんな声が突如として戦場に響いた。

 

水をさした犯人は最近知り合った捜査官の安浦清子ちゃんだった。

 

モーガン君は今日いなかったと思うので、背後のおそろいコートを着た人だかりから見受けるに今日の居残り組を集めて来たのだろう。

 

私は驚き半分疑問半分であったが、そばに駆け寄ってきた彼女の次の言葉に納得する。

 

「小さな女の子が通報してくれたんですよ。沢山のグールが現れて暴れているから助けてほしいって。」

 

…その子とは会ったかい?

 

「いいえ、疑って誰も出たがらなかったんですけど間もなくオバQみたいなのが暴れてるって別の通報が相次いで…電話の声も緊迫していたので向かったらすでにその場からいなくなっており、変わりに大きな戦闘音が聞こえたのでここまで来れば最初の通報の通りだったと言うわけです。」

 

…ロマじゃぁん。

 

お前は何をやっとるか、そう思ったが確かに大物グール?らしい彼女にできる形で私を助けてくれたのかもしれない。

 

じゃああとよろしく、そう言おうとした直後に一旦距離を置いていてウタが急接近してきた。

 

狙いは清子ちゃんらしい、女の子を狙うとはけしからん。

 

反応できていない彼女の前に陣取って近場の道路標識を引っこ抜いてホームラン!と叫びながらこちらに突き出される赫子にフルスイングしてやった。

 

ゴガッ!と音を出して赫子の先端とともに標識も半ば程から弾け飛んだちなみに標識は減速っぽかった。

 

清子ちゃんは色々びっくりして固まってたけどここは任せてと決め台詞を言い捨ててみるとクインケ片手に白スーツに替わる形で入ってきたヒトとグールとハトの戦闘に混ざっていった。

 

あの子は特に優秀なんだなぁ、そんな感想を抱く華麗な戦い様だ。

 

気を取り直して正面を向くと、目の前まで来ていたウタがやおら顔を真近まで近づけてきた。

 

女を狙ったんだから怒ってよ。

 

端的に言ってそんな内容だったと思う。

 

ウキウキしているような、楽しみをお預けにされているようなそんな空気が漏れ出ていた。

 

ドMかよ…(困惑)。怒ったら大変なことになるぞ?主に君のカラダが。

 

そんなふうに返すとウタは満面の笑みで「来て」と言って腕を大きく広げた。

 

よくわからんが私のせいで特殊性癖に目覚めたのかもしれない。

 

個人的になんだか悪いチャラ男じゃないと思う彼を痛めつけたくはないのだが、頼まれたからにはコレも受け止めるべきだろう。

 

拳を握り直して、おおおおオォォォォと徐々にボルテージを上げて殴りかかる。

 

 

 

 

 

 

 




くっそ長くなってしまった。

早くヨモッチを出したい。
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