人間誰しも。自分の中身を、堂々と吐き出せばいいのです。
酔いどれサラリーマンは他人や周りの目など顧みず、自らの仲間に見守られながら、その日のストレスを吐き出すのです。
違うものも出てしまうのは、愛嬌です。
「これは…いやしかし、私の知るゴリラではない…いや、だが…確かにゴリラでないわけでは…ない、のか?」
その日、功善はVから課せられた仕事を消化して、ようやっと得た休暇にも関わらず、最近東京をゆるーく騒がせているアル存在について頭の容量の大半を割いていた。
「はぁ、何故こうなったのやら…」
昨日、いつも通りに務めを果たし僅かな達成感と、日々内に秘めている己の存在に対する苦悩に揺らいでいた私は、目に痛い色付けがされた一枚のパンフレットに目が縫い付けられた。
古く、廃れた外観とは裏腹に、長蛇の列が連日できることで最近話題となっていることは小耳に挟んでいたが、ここの近辺からは何駅も離れているはずのソコのパンフレットは、もう一枚しかなかった。
いつもなら見向きもしない動物園のパンフレット。
何も考えずに明日の休暇を過ごすのであればうってつけかもしれないな。
そんな気持ちで、その派手なパンフレットを喪服のように黒いコートの懐におさめ、その場を後にした。
後にわかることだが、この時の何気ない私の決断がこうも後になって大きな波乱を起こしていくとは、この頃の私は露ほどにも思っていなかった。
極端に物の少ない自室の椅子に腰掛けパンフレットを開いた。
当動物園のイチオシ‼️
"学名 GODZILLA=gorilla=gorilla"
「ッ⁉️⁉️⁉️」
ーーーゥアェ?…おっとと、自分でも理解不能な言葉が出てしまった。
私は、生まれてこの方動物園というところには行ったことがない。
しかし、ゴリラ、gorillaという黒くて大きな猿がいるということくらいは知っている。
争いや、血生臭い足跡しかまだ残せてはいなくとも、その程度ならばヒトに紛れるためにした努力の過程で知ることができる。
しかし、こんな動物?は初めて聞いたし、知った。
全くもってわからない。
流石にこの理解不能で、さらに言えば摩訶不思議な内容は言われもない興味に私を掻き立てるのに十分だった。
柄にも無く、半ば飾り物と化していたパソコンを開いて探し物をした。
情報はすぐさま集まったが、どれもこれも眉唾物だった。
曰く、文字を書いて自分の学名を提示した
曰く、絵を描いた
曰く、ギネスを堂々塗り替える3.6mの巨体
曰く、テレビ企画の取材で同じ展示室のゴリラを軽々担いでみせた
曰く、人間の言葉がわかる
曰く、猛獣用の握力計を破壊した
曰く、頗る綺麗好きで日に三度の沐浴と歯磨きもする
曰く、展示窓越しに子供とジャンケンをしていた、そして負けた
曰く、曰く、曰く、いわく、イワク……
信じがたい事ばかりだが、様々なサイトに載っていたゴリラを持ち上げる姿の動画や、なんらかの意思があるかのように、ウホウホとハッキリとした、そう正に人間のような発音で、滑稽に胸を叩いて回り周囲のゴリラにハブられる姿の動画など。
調べていくうちに、いつの間にか驚愕から、もはやクスりと笑ってしまうようなその、ゴリラ?の姿に和んでいる自分がいた。
「くくっ、明日は休みだったはずだ。たまには変わったものでも見てみるのも悪くないだろう。」
……小さくとはいえ、笑ったのはいつぶりだろう。
明日、この動物園に行ってみよう。行けば何か、そう、ナニカがわかるきがする。代わり映えのない、いや、自らが今無理やりにでも変えようとしている現実にも、こんな何者とも違う、変わった存在があるのだ。
"唯の"の存在があるのだ。
いきなりの対面。思ったよりも早い進み具合に自分も戸惑っております。誤字脱字がありましたら…誠に申し訳ありません。読者様の脳内補正で整えてやってくだちい。
ま!細かいことはゴリラ道に則って、堂々と気にしないようにしましょう。