洪水の只中でノアの方舟を粉微塵にする勢いで。
なぜお前が知っている?お前は誰だ?ゴリラとは?ヒト?グール?そもそも人間か?何故裸なんだ?そもそも動物園だぞ?何故?なぜ?ナゼ?
絶え間ない疑問の濁流に呑まれそうになり、すんでのところで冷静さを取り戻した。
あまりの衝撃と、本能的な警鐘が私に赫子を使わせていたかと思うと。
目の前の存在への自分の思考が怜悧に冴えるのを感じる。
命を奪うイメージを浮かべることに一切の躊躇もなかった。
今までそうして生きてきた。
今のこのときだって。
そう思った矢先、ゴリラを思い出した。
ゴリラを見る、その目的は果たしていなかった。
私の意識が切り替わったのを見越したように、其の存在は私は問いかけた。
今は何年だ?既婚者か?娘はいるか?ドイツにはどうすりゃ行ける?
ハトは飼っているのか?ーー?ー?ーーーー?…
自称ゴリラが長い長い質問を私に投げかけてくる間、周囲の人間は一度も私たちの方を気に留めなかった。
退屈で意義の分からない質問に圧倒される中で、ふと思った。
あれだけ、文字を書くゴリラだのなんだのと囃し立てておいて、今はそっぽを向いている。
ヒトはやはり罪深い、グールは生まれ持ってその罪深きものを餌にするのだから、ある意味罪を背負って生まれてくるのかもしれない、と。
私の苦悩は相手に伝わっていなかったようで、男は目を爛々とさせてこう言った。
「俺をここから連れ出してくれ。」
私は、せっかくの休暇を浪費してしまったことに失意を感じていた。
私の求める変化は無かったな、と。
そして、するべきこともわかった、このよくわからない存在を消す事だと。
この男は何かを知っている。
そのことが利益になるか不利益になるかはわからないが、今の私に強烈な未知は荷が重かった。
ヒトの寝静まる夜に向けて、その場から踵を返した。
夜が来るまで私は口を一度も開かなかった。
夜の帳が等しく東京を包んだころ。
功善は死を確信していた。
声は震え、何よりも信をおいていた自分の赫子
だ っ た も の
を目を見開いて見つめるほかなかった。
10分前
天井を破り、ゴリラから離れて一人裸で眠る大男に向かって
「命を貰いに来た…大人しく死ね。」
功善は一切の油断なく自分の赫子に全身神経を集中させ、全力で叩きつけた。
大男は動かない。
正に目前といったところで大男はその大きく分厚い掌で、正にゴリ凛々しさを体現した逞しさでソレを引き掴んだ。
わざわざ目前の数ミリさえも引き寄せて左右で握ると、大男の全身の筋肉が躍動し、目に見えて強靭な功善の赫子を捻りながら引き伸ばし始めたのだ。
グムンッ
圧の強さに赫子の方が耐えかねて、大男の指先は沈み込んだ。
ググククク…ニギィキキキキィ…
徐々に筋肉ともわからない繊維が悲鳴を上げ始めた
ミキぃァ…きぃぃゃゃぁぁぃぃ
硬質なものがゆっくりと引き延ばされ、
キチキチチニキィッ
筋張った肉塊を無理やり裂くような音が響いたかと思うと
ッばつん!
その勢いのままに引き千切られた
片手にグロテスクに無理やり千切られた功善の赫子の残骸をぶら下げて大男はのそりと起き上がった。
そして、昼間と同じく男は功善にハッキリ言い放った。
「俺をここから連れ出してくれ。」
体を再生する余裕はあった。
しかし、未だ底知れぬ圧倒的武力の前に功善は自らの死を悟ったが、男の求めた代償は変容だった。
「…わかった」
力ない返事を返すだけだったが、彼の瞳はどこか澄んでいるように見えた。
戦闘シーンも難しいですね。
もう少し詳細に書けるように努力します。