元白浜ケンイチは、(平穏に)白浜ケンイチを見守りたい   作:turara

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太郎は走るぞ!


少女Aの事情

 複雑な路地を越え、森を走り、30分ぐらい走ると太郎の隠れ家が見えてきた。

 

 少女は、俺の走るスピードに目を回しながら必死に掴まっている。

 

 「もう着いたから。」

 

 太郎は巧妙に隠された地下扉を開け中へはいる。かなり広い空間で、そこには質素な机やいす、食料、最低限度の生活ができるものがおいてあった。

 

 太郎は、少女を優しく腕からおろした。少女はヨタヨタと一瞬回ったが、気を取り直したように太郎に向き直った。

 

 「助けてくれてありがとう。私は、シタッタ国に住むターラナと申します。」

 

 少女は、太郎に丁寧にお辞儀した。その挨拶のしかたから、ある程度の身分の子であることが分かった。

 

 太郎は、この少女が自分を頼ってきたことから、何か特殊な能力があるのではないかと疑っていた。何故、他ではなく、見るからに弱そうな俺を頼ってきたのか。

 

 「俺は山田太郎。突然で悪いけど、何があったか説明してもらえるかな?」

 

 太郎は、少女をいすへ座るよう促した。そしてペットボトルのお茶を出す。

 

 本当は、もっと落ち着いた状況で聞き出せばいいのだろうけど、ここが見つかるのも時間の問題だろう。早く事情を聞き出すのに越したことはない。

 

 少女は、一口お茶を飲み息を落ち着けると、改めて彼女自身のことを話し出した。

 

 「私は、シタッタ国で生まれました。シタッタ国は小さな国で、土に恵まれていたことから畑を耕し、自給自足で生活しているような所です。」

 

 太郎は、聞いたことのない国だと思った。太郎は、白浜ケンイチだったころ、いろいろな国を回っていたこともあったので、知らない国があることに驚いた。もしかしたら、すぐになくなってしまう国なのかもしれない。

 

 「問題が起きたのは、その国に私というやっかいな存在が生まれてしまったことです。」

 

 少女は、淡々とそう話す。

 

 「一般的な家庭に生まれた私は、普通の人とは違う特殊な能力を持っていました。」

 

 「能力?」

 

 「はい。私は、未来が見通せる力があります。」

 

 少女は太郎と向き合い目を合わせた。少女の瞳が青くひかる。

 

 太郎は、なるほどなと思う。少女がここまで逃げ延びられてきたのもこの能力があったからだろう。

 

 「私のこの能力は、家族の間で秘匿にされ、私も、この容姿でからかわれることもありましたが、何の問題も起こりませんでした。」

 

 「しかし、何らかの問題が発生して、私のこの能力が悪い奴らに知れ渡ってしまったのです。」

 

 「それが、つい数週間前のことです。私は、ワルイ奴らに狙われ連れ去られる未来をみました。」

  

 少女は、少しふるえているようだった。膝の上で強く拳を握りしめている。

 

 「私が見通せる未来は一週間先の未来です。準備するには何もかも特に時間が足りませんでした。」

 

 「国からでるには入国審査が必要なんです。けれど、そこはワルイ奴が潜んでいるのは誰が考えても分かることです。だから、秘密裏に運ばれる荷物に紛れて国をわたったんです。」

 

 「けれど、それには大量のお金が要りました。命がけで亡命するのですから大金を積まないと乗せてもらえません。」

 

 少女は、そこで家族と別れ、一人で国をわたり、未来を見通せる力を頼りにここまでやってきたらしかった。

 

 「それで俺を頼っている未来が見えたとか?」

 

 「その通りです。」

 

 少女は静かにうなずく。最後の頼みの綱として俺を頼ってきたんだろう。力になってあげないわけにはいかなかった。

 

 「敵は、どんな奴で、どのくらいいるか分かる?」

 

 俺は、ここ少女の話を聞くに当たり、ずっといやな予感は消えていなかった。大したことのない奴らだといいが、もし、闇という組織のようなでかい力が動いているのであれば恐らく俺にはどうしようもない。

 

 しかし、俺の予感は最悪レベルの警告をならしていた。

 

 「わかりません。ただ、シラットという拳法を使っていることはわかりました。私の国でもよく使われる拳法なんです。」

 

 少女はそう静かに言った。

 

 

 

 「シラット」それは、太郎がよく知る拳法だ。かつて自分の妻、美羽が闇に落ちかけるきっかけとなったもの。

 

 太郎は、「シラット」という言葉を聞きたった一人の最悪な相手を思い浮かべた。闇の中でもトップレベルで危ない奴。

 

 シルクァット・ジュナザード

 

 一影九拳最古参の一人で闇のメンバーの中でも最悪なレベルの強さを誇る使い手である。

 

 太郎は、自分が思っていた数倍やばい敵に目が回りそうになった。

 

 (俺が今勝てるのは年齢ぐらいかもしれない。)

 

 白浜ケンイチだったころならなんとかできたかもしれないが、今の自分では足止めすることで精一杯だろう。

 

 というか、彼が相手ならここももうばれているかもしれない。

 

 太郎は久々の絶望を感じ、戦いの準備を備え始めた。

 

 「ターラナちゃんっていうんだっけ?」

 

 「はい。」

 

 俺は、覚悟を決め立ち上がる。恐らく、この子を無事に梁山泊まで届けることが自分にできる精一杯のことだろう。

 

 「外にでたら、梁山泊ってところまで行くといいよ。俺より強い人が多分君を守ってくれるだろうから。」

 

 太郎は、梁山泊までの道のりを簡単に書く。

 

 「出来たら、梁山泊まで送っていってあげたいけれど、念のため。もし、敵に見つかったら、ひとりでそこまで行って助けを求めて。出来るだけ君が無事にたどり着けるまで時間を稼ぐから。」

 

 少女は、太郎が書いた地図を受け取るとそれを強く握りしめる。少女は、ただならぬいやな予感を感じ取ったのか震えていた。

 

 俺は、少女を担ぐと、梁山泊に向けて全速力で走り出した。

 

 

 

 

 

 

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