Fate/Memento   作:九良川文蔵

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此処なるは

 

 

 

 例えば。

 ヒトは自分自身以上に優先順位の高い他人を作ることはできるのだろうか。……作る、できる、という言い方が冷たく感じるのであれば、こう言い換えるべきか。

 

 ──ヒトは、自分よりも他人を愛せるのだろうか。

 

 

 

「マスター!」

 セイバーからいい加減明らかに怒気を含んだ声が飛ぶ。その声で我にかえる。ああ、またぼんやりとしてしまった。

 他人事だとわりきれば済むことではあるが、やはりくれあと灰音のことが気にかかる。それ以外にも気になることがひとつ。

 

 

「ふはははははは! はははははは! 圧制者よ! 汝を抱擁せん!」

 

 

 ……このサーヴァント。なぜか明らかに私、及びセイバーとアーチャー、ライダーばかりを狙っている。

 マスターを潰す方が効率的なのは明白だが、まほらばやエミリ、くれあには目もくれず。何か法則があるのだろうか。サーヴァントと正々堂々、という矜持があるにしてもマスターである私を狙うのは不自然だし──。

「マスター! どうかいい加減になさってください! せめて多少の自衛を!」

「ああごめんなさい!」

 ──ああもう、考えている暇がない! 巨躯の男が拳だのなんだのを振り回して襲いかかってきていては落ち着かないし、何よりこのサーヴァント、強い──!

 真名不明、クラス不明の巨躯のサーヴァントが棍棒を振り下ろす。轟音。地面が揺らぐ。

 それをセイバーが真正面から剣で受け止めて、その隙にアーチャーが光の矢を、ライダーが銃弾を撃ち込む。

「すみません! 少し話をしたいのですが!」

「ははははははは! はははははははははは!」

 先ほどから声を張り上げて意思疎通は図っているが、大男は笑うのみ。この話の通じなさは──バーサーカー、だろうか。

 

 

「ちょっと──(アタシ)を、無視するんじゃ、ないわよッ!」

 

 

 しびれを切らしたランサーが攻撃を仕掛ける。仮称バーサーカーはそれを受けて弾き返す。そして反撃を仕掛け──ると思った、のだが。

 ぴたり、と動きが止まった。これ好機と畳み掛けるのが正攻法だろうが、こちらはできることならば彼を仲間にしたいのだ。誤って殺してしまうことは避けたい。周りも同意見らしく、全員が様子見のために動きを止める。

「──圧制者(マスター)よ! 君に問う!」

 仮称バーサーカーの声が轟く。

「この娘は、()()()であろうか!」

 マスター。

 彼は今確かに、マスターと言った。

 瓦礫の陰から人影が現れる。ゆらり、と蛇を思わせるしなやかながらもどこか陰気な動きで。

「……()()だ。サーヴァントであろうと彼女は子供だよ、バーサーカー。殺してはいけない」

 低く、重く、気だるげな声。彼がマスター。そしてやはり、このサーヴァントはバーサーカーだ。

「貴様」

 ゆらり、とまたしなるような動きでバーサーカーのマスターは私を指さす。

「わ、私?」

「そう、貴様だ。なぜ、おかしいと思わない? なぜ、そう平気な顔をして居られる?」

「おかしい、ってどこが──」

「……異常者め」

 なんだか飛んでもない罵声を浴びた気がするのだが、今は傷ついている場合ではない。

 前髪の長いぼさぼさの髪はぱさついて、私に負けず劣らずの痩せぎす。背は多少私の方が高いか。切れ長の目に薄い口唇。髪を整えてきちんとした格好をすればなかなかの美男子であろうに。

「貴様、分からないか? 本当に分からないのか?」

「分かりません。何がおかしいの?」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()! 貴様、大人として、何も感じないのか!」

「──!」

 私だけが大人。

 それを認識していないわけではなかった。自分がしっかりしなくては、と思ったこともあった。

 しかし──子供のマスター、子供のサーヴァントが居る。そこに疑問を持ったことはなかった。なぜそこに思考が至らなかったのだろう。……なぜ。

『お前また説教されてんのな久堂。バーサーカーだけだと厳しかったが──まあマスターが顔見せて会話する気があるんなら、糸口は見える』

 通信機越しのエーミールの声。

「ああ……そちらにもまだ子供が……。こんな世界狂っている……あってはならない……子供が……殺し合うなど……」

 バーサーカーのマスターはひたすら嘆いている。エーミールが言うほど会話する気があるのか怪しいところだが……。

「ねえ、話聞いてくれないかな──じゃなくて、ええと、聞いてください。あたし達、あなたと殺し合いしに来たわけじゃない」

「……何? ああ帽子の君、お名前は? いや、名乗るときは自分からが鉄則だね。僕はカリュプス。カリュプス・ラウィーニア。翻訳家を生業にしているつまらない男だよ。さて、君は?」

「お、おお、急に優しくなった……もしやロリコン?」

「そ、そんなわけない! 僕はただ子供が好きなだけな、──いや、好きというより守りたいと思っているだけだよ」

 ……私と話していたときより声がワントーン高い。しかし、会話の突破口が見えた。

 そして──カリュプス・ラウィーニア。七五三千早からのメモにあった名前だ。

 などと私があれこれ考えている間にまほらばやエーミールが事情を説明し、それを聞き終えたカリュプスは大きく深呼吸をして頭を抱えた。

「そうか……そうなんだね……殺し合いではない……僕の協力で子供達が助かるのであれば……しかし、()()()がなんと言うか……」

 ──あの子?

 エーミールの声が私の思考に被さるように響く。

『おい、サーヴァント反応だ。アサシンか。道理でギリギリまで気配が──』

 足音。本当に唐突に現れたように感じる。

 それでも一度認識すれば大きな圧がのしかかり、一瞬にして空気が重くなった。

「くふ、ふふふ──邪魔じゃ。有象無象めが」

 これが七騎目のサーヴァント──アサシン。

 

 

「──退け。此処なるは、妾の道ぞ」

 

 

 

 






名前:遠木まほらば トオキ・マホラバ

年齢:17歳

身長:159cm
体重:52kg

特徴:女/灰色のキャップ帽/図抜けた頭の回転の速さ/エリザファンクラブ会長/大食らい/音痴

好きなもの:全部
大好きなもの:エリザ
苦手なもの:なし
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