人。民。国。
謀略。計略。戦争。反逆。破滅。
──王。
強い後悔の念。吐き気がするほどどうしようもない、自己嫌悪。自分の存在さえ否定しなければいけないほどの、罪悪感。
……違うか。もともと私など生まれなければ良かったのだ。
でも、生きたいと思って生きてしまった。あまつさえ、他者を愛してしまった。その果てにあったのがこんな結末だとあのときは愚かにも忘れていた。
せめて私の喉が潰れていれば、せめて私の声が届かなければ。
せめて──せめて──。
ああ、私はこうして嘆くばかり。役立たずの愚か者。
この期に及んで──ああ。
──許されたい、などと。
「……」
また眠っていた、ようだ。
なんだか睡眠時間が長くなっているような気がする。
いや、それよりもさっきの夢──あまり気持ちの良いものではなかった。国があって、王が居て、騎士が居て、民が居て、その全てが砂の城のように崩れていく。
そして自分の出生を後悔しながら死んでいった──。
「……セイバー、居る?」
「ここに」
ああ、居るんだ。寝ぼけまなこで感覚がにぶっている。
それでもはっきりと分かっている。いくら間抜けで注意力散漫な私でも、ちゃんと察している。
「ねえ……セイバー」
「はい」
「……私に嘘ついてない?」
「……」
「君の真名について、なんとなく察しがついたのだけど」
「……」
「君も気づいているでしょう? たぶん、私より早くに。君がそれを隠している理由が分からない。分かりません、私」
「……申し訳ありません、マスター。我が主」
枕元にあった眼鏡をかけてベッドから身を起こし、セイバーを見る。セイバーは──真っ直ぐにこちらに瞳を向けていた。
「霊基に欠けている部分があることは真実です。私の真名も察している程度で確信はない。……それでも九分九厘、
「……どうして?」
「貴方自身で、気づかなければいけないからです」
「何を?」
「貴方自身のことを」
「……」
「それが、私に課せられた最初の役割。最初に託された
「……」
「……信じてくださいますか?」
「信じるよ。──切実に守るものがある人に、どうしてそれが間違いだと言えましょう、でしょ。君が言った言葉」
「よく覚えていらっしゃいましたね……」
「あれ、嬉しかったから」
ベッドから立ち上がりセイバーの肩をぽふぽふと叩く。
「私頑張ります。頑張って、自分で思い出すよ」
「……」
セイバーは黙って微笑み、頷いた。
宿直室の隣、いつもの事務机とモニターの部屋。入るや否や甘いにおいがした。
「あ! 久堂さん! もー、あのあとすぐ寝ちゃうんだからプリン先にみんなで食べてるよ! もちろん久堂さんとセイバーの分は取って置いてるから安心して!」
「うん、ありがとうまほらばさん」
「あ、それからね、じゃーん! エミリちゃんも無事に起きました!」
手のひらをひらひらと振るまほらばの奥には、申し訳なさそうに縮こまっているエミリと相変わらず姿勢の良いアーチャーの姿があった。
「……皆さんには、もう謝罪した、のですが……久堂さんも、改めてごめんなさい。お騒がせしました。本当に、もうこのようなことはないと約束を……」
「あーもう良いもう良い、バカすけ。辛気臭くすんな。ここに居るのはお人好しと馬鹿だけだ。誰もお前にあーだこーだ言う気はねえよ」
「……うん。ありがとうお兄ちゃん。アーチャーも、ありがとう」
「私は別段何もしていませんが」
……相変わらずトゲのある言い方をするなあ、アーチャー。
「久堂さーん! プーリーンー!」
「ああ、はいはい。いただきまーす」
プラスチックのスプーンで掬って食べるそれは非常に美味しかった。甘さ控えめで……それでいてカスタードが濃厚で……すごいなあエーミールくん……。
「エリザも! はい!」
「……
「食べかけだけどあたしのあげる! あたしエリザのこと大好きだからね、あげちゃう!」
「アナタの食べかけ? なめてんの?」
「ご、ごめん……」
「ま、いいわ。アナタがそうしたくて堪らないって言うならもらってあげる」
「ありがとうエリザー! 可愛いーっ! 大好きーっ!」
「……ふん」
まほらばからプリンを受け取り、ランサーは目を細めた。
「アナタ、その空元気やめた方が良いと思うわよ」
「え……?」
「アナタの勝手だけど、一応忠告」
「……な、なに言ってるのさエリザ! あたしは元気もりもり健康ガールだよ!」
「……」
「もしかして心配してくれた!? あーりーがーとーうー!」
「……そう。アナタはそうするのね。別に良いわ。前にも言ったけど、
「ねえ、前から気になってたんだけどエリザのやりたいことって──」
「あーん」
「んむ」
まほらばの言葉を遮って、ランサーはまほらばの口にプリンを突っ込んだ。
「おいひー!」
「残りは
「もちろん! 食べて食べて!」
……ランサーは何かを誤魔化すために、あるいはまほらばが何かを誤魔化すために、お互い話題を逸らした……?
まあ……今は仲良くしているようだし、私が首を突っ込むことでもないか。