ゼロから始まる『ありふれた』異世界生活   作:青龍の鎧

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閑話 『小悪党』

オルクス大迷宮への遠征当日。

 

《牢獄》

 

『やぁ、もしもし。調子はどうかね?』

 

爽やかげで声の高い男の声をした者が、牢獄の中にいる《小悪党》に向けて、元気にしているか興味本位で楽しげに何らかの手段を使って、【電話】の様な機能を使い話しかけていた。

 

「馬鹿か。変な《司教》に絡まれて、しかも日常生活では実質奴隷のような扱いされて調子がいいと言えるのか?」

 

《小悪党》は機嫌が悪い声で男に文句を述べたが、

 

『いやいや、君が憎んでいた"男"が徐々に壊れていく様を見て楽しんでいるのではと思って見て聞いてみたんだが……壊れた"女"をもっと見れなくて不満だったかな?』

 

男はさも《小悪党》の感情を見透かした様に彼の心情を推理する。

そして彼はそれを肯定する。

 

「別にそれに関しては文句はない。むしろアンタが送り込んだ例の『鯨部隊』によって俺の顔に一生残る傷を負わせた女に"復讐"を果たしたと聞き、その壊れ様を《司教》に見せられて……初めは何回も、何回も抜いたぜ」

 

《小悪党》は凶悪な笑みを浮かべてあの時の女の壊れざまに、つい興奮してしまった。

 

『抜いた……ねぇ。趣味が悪いよ君?』

 

男は《小悪党》の醜悪さに苦笑いをせざるを得なかった。

 

自身の部下が持つ"記憶操作"の力をエミリアに向けて発動させて、彼女自身を完全に孤立させるという作戦は見事に嵌ったのだが……

正直な所、"二人の人間"が彼女の事を覚えていたのは予想外だった。

 

あの時の衝撃を振り返った男は、そのまま《小悪党》の愚痴を黙って聞き続ける。

 

「だがそれだけだ。この後何があったか分かるか?あの男、あろう事か俺の惚れてた女ともう一人殺したい男を……クソが!!あの二人がイチャイチャしている様を見てたら俺の復讐を成し遂げた喜びは全部無に散ったぞ!」

 

『……おやおや?』

 

「あの壊れていくはずの男は全く折れちゃいなかったんだよ!!それどころか俺を、俺の女を……くそぉ!」

 

《小悪党》は今の現状に莫大な不満を垂れていた。

その理由は明確だった。

 

『はぁ、どうやら"ハジメ"と"カオリ"は君の想定より……』

 

「黙れ、黙れ、黙れぇぇ!!」

 

そう、理由は《二人が付き合い始めた》

その事実が《小悪党》を更なる憎悪を駆り立てる明確な原因そのものだった。

 

『別にいいじゃないか。どうせあの二人は【一度、関係が粉々】になるのは確定なのだから……なぁに、安心したまえ。《哀れな神》が念のために使徒を送り込んで、君も予定通り。だからあの男が奈落に落ちて地獄を見るのは予言通り……』

 

「馬鹿か!?お前の持つ『叡智の書』にはそいつは世界最強級に強くなって、魔王軍も、例の哀れな神も、いずれ俺も……俺はそいつに殺されるんだぞ!?」

 

『だからこれから君には…………どうやら君の迎えが来たみたいだよ?それじゃあ君の健闘を祈るとしよう。頑張りたまえ……"檜山くん"』

 

「おい、待て…待てよ!!ふざけんなよ、適当な仕事をしやがって。あの銀髪女を完全に孤立させて、あの糞引き篭もりの初恋とやらを叩き潰すのがお前らの仕事だった筈だ!おい、待て《蛇野朗》!!」

 

その直後に、一方的に通信を切られた檜山は荒れに荒れたが……

 

「全く、《暴食》は怠惰の極みが過ぎる」

 

牢獄の前に現れた男を見た瞬間、謎の安堵に襲われつつ舌打ちを交えつつ彼に近寄った。

 

男は緑髪のオカッパ頭をしていて、尚且つ真っ黒なローブを見に纏い……黒い本を片手に持ち、笑顔で檜山を見据えていた。

 

「はぁ、確かにアンタは命を賭けて仕事をしそうだがらさっきの奴よりかマシだと思うが……後始末は任せていいんだな?"ーーーーーー"」

 

「…………えぇ、脳がーー震える」

 

檜山は嘆息しつつも己のニヤケ顔を止める事は、もうしない。

何故なら、檜山の復讐相手は本当に、本当に沢山存在しているのだから……少なくともクラスの奴らと先生もいつかは必ず殺すけどな。

 

 

そして男は自分の持っている本を見て、素晴らしい作戦を閃く。

あの糞ニートを更なる地獄へと叩き落とす作戦を。

 

 

ハジメはきっと、俺が手を下すまでもなくあの使徒とこの男によって落とされる。

恐らく、あのアホ神も例の書を読んでいてあの男の存在を本気で恐れているからだ。

 

それに力を封じられて、尚且つ充分に鍛えられなかった俺ではハジメを崖から落とす事は不可能だろう。

 

だがアホ神の使徒ならどうだ?

奴はかなり強いと例の男もーーーーーーも言っていた。

上手く行けばハジメはそいつの攻撃で死ぬかもしれない。

 

ならば俺は…………

 

《復讐者》はーーーーーーに作戦変更を伝える。

 

「怠惰!!あなたには失望しましたよ?福音の書の掲示に勤勉に従わなければ許されない!!そう、それは福音の…………!?」

 

しかし檜山はそれは予定通りと言わんばかりに彼の耳にこう囁き、彼は己の怠惰を呪い、自傷し始めた。

 

「あぁぁぁぁ!!己が行動すれば全て解決するという浅ましく、視野を広げようともせず、彼の福音に新たな記述を気付かず、私は…私は何という怠惰怠惰怠惰ぁぁぁぁ!!」

 

「そんな訳で俺はしっかり福音の記述通りにしたいから数人の部下を連れてくだけだ。それに勤勉なアンタだからこそハジメをより確実に地獄へ叩き落としてくれるって信頼してるんだぜ?」

 

「…………はっ、そういう事ですか。貴方の勤勉で、思慮深く、そして慈悲深い提案にぃ、脳が、脳が震えるぅぅぅ!」

 

檜山は狂喜に震えている狂人を無視つつ、先程、あの狂人に囁いた提案に心底笑いながら、狂人の部下を引き連れて復讐に向かい始めるのだった。

 

(待っていろ、ナツキ・スバル。そして例の顔だけ可愛い脳筋女。お前らの引導は、俺が叩きつけてやるぜ)

 

「あっはっはっはっはっはっはっ♪……脳が、震えるなぁ」

 

かくして、《小悪党》……否、《復讐者》が野に解き放たれたのだった。

 

 

 

その風貌は、まるで『狂人』そのものだった。

 




悪意、始動。

リゼロを元としたオリキャラクターの名前を一部変えて登場させるか?

  • リゼロのキャラ名をそのまま出す。
  • キャラ名を一部変えた方がいい。
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