ゼロから始まる『ありふれた』異世界生活   作:青龍の鎧

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イシュタル  20%

100%になった時…………

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なので更新します!


2話 『笑顔』

俺の名は菜月 昴。

 

今、俺はイシュタルというオッサンから目を離せないで……いや、目を離そうとしてくれなかった。

 

というか……間違いなく(メッチャ睨んでるよぉぉぉ!?)

 

俺は己の最初の発言に滅茶苦茶後悔した。

でもみんなは気持ちわかるだろ?

 

教室からキミが悪い人の顔がいきなり現れたんだからさ!

 

まぁ、イシュタルというオッサンに壁画の説明をされた時、愛ちゃん先生が真っ青になって俺に無理矢理頭を下げさせて……

 

「次からはみんなが驚かない場所…ブベラ!?」

 

俺が軽口を言おうとしたら先生に頭を叩かれてまた無理矢理頭を下げさせられた。

まぁ、その際に……

 

「昴くん!ちゃんと謝ってください!!」

 

俺の名前を呼んでくれたことに俺は、感極まりかけて先生に後で改めて謝ろうと決心したのだった。

 

イシュタルのオッサン?

…………実の所、俺はあのオッサンが気に食わなかったのかもしれない。

何か……異世界召喚という出来事で、俺はとてつもない嫌な予感を感じてしまったのだったから。

 

一応、俺はキチンと謝って睨まれながらも許してもらえた。

 

現在、俺達は場所を移り、十メートル以上ありそうなテーブルが幾つも並んだ大広間に通されていた。

 

この部屋も例に漏れず煌びやかな作りだ。素人目にも調度品や飾られた絵、壁紙が職人芸の粋を集めたものなのだろうとわかる。

 

おそらく、晩餐会などをする場所なのではないだろうか。上座に近い方に愛ちゃん先生と光輝……かな?彼を含む四人組が座り、後はその取り巻き順に適当に座っている。俺は……ハジメっていういじめられっ子と同じ席だ。

 

…………ハジメ、俺はハジメに謝らないといけない。

昔の俺なら、上手く立ち回らないお前が馬鹿なんだと思っていたけど……

よくよく考えたらハジメ一人ではどうしようもなかったのだ。

 

そのハジメは何故か俺の……いや、何故か持っていた鞄の存在に驚いていた。

 

ここに案内されるまで、誰も大して騒がなかったのは未だ現実に認識が追いついていないからだろう。イシュタルが事情を説明すると告げたことや、リーダーシップを張るのが得意な光輝……だったな、が落ち着かせたことも理由だろうが。

 

教師より教師らしく生徒達を纏めていると愛ちゃん先生が涙目だった。

 

大丈夫、愛ちゃん先生!

俺は愛ちゃん先生の事は何があっても俺の、いやいや俺達クラスの先生だと思ってるからな!

 

全員が着席すると、絶妙なタイミングでカートを押しながらメイドさん達が入ってきた。そう、生メイドである! 地球産の某聖地にいるようなエセメイドや外国にいるデップリしたおばさんメイドではない。正真正銘、男子の夢を具現化したような美女・美少女メイドである!

 

こんな状況でも思春期男子の飽くなき探究心と欲望は健在でクラス男子の大半がメイドさん達を凝視している。もっとも、それを見た女子達の視線は、氷河期もかくやという冷たさを宿していたのだが……

 

因みに俺は銀髪の美女・美少女ではなかった為「サンキュー」と下心なしのフランクなお礼を言った。

 

その様子に女子達は……何故かドン引きしていた。

 

ハジメも傍に来て飲み物を給仕してくれたメイドさんを思わず凝視……しそうになってなぜか背筋に悪寒を感じ咄嗟に正面に視線を固定していた。

 

チラリと悪寒を感じる方へ視線を向けると、なぜか満面の笑みを浮かべた香織がジッとハジメを見ていた。ハジメは見なかったことにしていたが……

 

はぁ……

俺はつくづく今までの彼等による負のスパイラルを思い出して、せめて香織……かおりんの想いをハジメに伝えた方がいいなと俺は思った。

 

余計なお世話?

そうかもしれないと自覚はしているが……少しでもハジメの負担を減らせればと俺はハジメと二人っきりになった時にこっそり伝えようと思った。

 

大丈夫。

口止めはするし、バレなきゃ問題ナッシング!

 

そんな悪巧みを考えていると、全員に飲み物が行き渡ったみたいでそれを確認した後、イシュタルのオッサンが話し始めた。

 

「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」

 

そう言って始めたイシュタルの話は実にファンタジーでテンプレで、どうしようもないくらい……勝手すぎるものだった。

 

要約するとこうだ。

 

まず、この世界はトータスと呼ばれている。そして、トータスには大きく分けて三つの種族がある。人間族、魔人族、亜人族である。

 

人間族は北一帯、魔人族は南一帯を支配しており、亜人族は東の巨大な樹海の中でひっそりと生きているらしい。

 

この内、人間族と魔人族が何百年も戦争を続けている。

 

魔人族は、数は人間に及ばないものの個人の持つ力が大きいらしく、その力の差に人間族は数で対抗していたそうだ。戦力は拮抗し大規模な戦争はここ数十年起きていないらしいが、最近、異常事態が多発しているという。

 

それが、魔人族による魔物の使役だ。

 

魔物とは、通常の野生動物が魔力を取り入れ変質した異形のことだ、と言われている。この世界の人々も正確な魔物の生体は分かっていないらしい。それぞれ強力な種族固有の魔法が使えるらしく強力で凶悪な害獣とのことだ。

 

今まで本能のままに活動する彼等を使役できる者はほとんど居なかった。使役できても、せいぜい一、二匹程度だという。その常識が覆されたのである。

 

これの意味するところは、人間族側の"数"というアドバンテージが崩れたということ。つまり、人間族は滅びの危機を迎えているのだ。

 

「あなた方を召喚したのは"エヒト様"です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。おそらく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですよ。あなた方という"救い"を送ると。あなた方には是非その力を発揮し、"エヒト様"の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい」

 

イシュタルはどこか恍惚こうこつとした表情を浮かべている。おそらく神託を聞いた時のことでも思い出しているのだろう。

 

イシュタルによれば人間族の九割以上が創世神エヒトを崇める聖教教会の信徒らしく、度々降りる神託を聞いた者は例外なく聖教教会の高位の地位につくらしい。

 

俺は"神の意思"を疑いなく、それどころか嬉々として従うのであろうこの世界の歪さに言い知れぬ危機感と止まらない怒りを覚えていると、突然立ち上がり猛然と抗議する人が現れた。

 

愛子先生だ。

 

「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

ぷりぷりと怒る愛子先生。彼女は今年二十五歳になる社会科の教師で非常に人気がある。百五十センチ程の低身長に童顔、ボブカットの髪を跳ねさせながら、生徒のためにとあくせく走り回る姿はなんとも微笑ましく、そのいつでも一生懸命な姿と大抵空回ってしまう残念さのギャップに庇護欲を掻き立てられる生徒は少なくない。

 

"愛ちゃん"と愛称で呼ばれ親しまれているのだが、本人はそう呼ばれると直ぐに怒る。なんでも威厳ある教師を目指しているのだとか。

 

…………俺にとっては3か月も引き籠もっていた俺の名前を忘れずに覚えてくれて、尚且つ、その間の溝も関係なく庇ってくれた最高の先生なんだけどな。

 

 

今回も理不尽な召喚理由に怒り、ウガーと立ち上がったのだ。「ああ、また愛ちゃんが頑張ってる……」と、ほんわかした気持ちでイシュタルに食ってかかる愛子先生を眺めていた緊張感のない奴らだったが、次のイシュタルの言葉に凍りついた。

 

「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」

 

場に静寂が満ちる。重く冷たい空気が全身に押しかかっているようだ。誰もが何を言われたのか分からないという表情で、俺は怒りがさらに湧き上がり始めたのを自覚しつつ、イシュタルをバレないように睨みつける。

 

「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」

 

愛子先生が叫ぶ。

 

「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」

 

「そ、そんな……」

 

愛子先生が脱力したようにストンと椅子に腰を落とす。周りの生徒達も口々に騒ぎ始めた。

 

「うそだろ? 帰れないってなんだよ!」

「いやよ! なんでもいいから帰してよ!」

「戦争なんて冗談じゃねぇ! ふざけんなよ!」

「なんで、なんで、なんで……」

 

パニックになる生徒達。

 

俺も平気ではなかった。

 

当たり前だ。

 

俺は両親とわかり合い、やっと自分の殻を破って前に進んで、みんなに……特に先生やハジメに今までの事を謝ろうと考えて教室に入ったのに結果、この有様だったのだ。

 

ちなみに俺は引き籠りもあり、勿論オタクであるが故にこういう展開の創作物は何度も読んでいる。それ故、予想していた幾つかのパターンの内、最悪のパターンではなかったが…………俺は怒りを抑えられなかった。

 

ちなみに、最悪なのは召喚者を奴隷扱いするパターンだったりするが……正直俺にとっては元の世界に返してもらえないんじゃ奴隷と同じ様なものだ。

 

……いや、待てよ?

最悪なのって召喚者がさっぱりおらずに不意に異世界に召喚される系なのでは?

と俺はふと、頭に浮かんだのだった。

 

誰もが狼狽える中、イシュタルは特に口を挟むでもなく静かにその様子を眺めていた。

 

俺は、なんとなくその目の奥に侮蔑が込められているような気がした。今までの言動から考えると「エヒト様に選ばれておいてなぜ喜べないのか」とでも思っているのかもしれない。

 

…………もし俺の予想している奴の本性が当たっていたら、そいつは狂人だ。

 

『あぁ、脳が……脳が……!脳が震える!!』

 

『顔が可愛い。愛なんて、それが全てでしょ?』

 

コイツらは、あの狂人共と……同等の事をした。

 

初めの奴は福音書の指示に従う……神託がそれだ。次のやつは正に今の状況とピッタシだった。

 

自分の価値観を無理矢理人に押し付けて、最終的に破滅へと誘う……最低最悪の、俺が最も憎んだ連中共と、同じだ。

……って、俺はいつそんな経験したよ!?

 

…………引き籠もり期間中、寝過ぎたか?

 

何がともあれ、夢の、いやあれは悪夢だな。とにかく!

このままじゃみんなが……いや、確実に誰かは死ぬ。

 

俺はまだみんなの事を深く知った訳じゃないし、仮に元の世界に戻れたとしてもそのクラスみんなと上手くいくとは限らない。

 

きっと、みんな俺のことは呆れ果てて、最終的に空気として扱うだろう。

きっと、誰かが何かのきっかけで、小悪党組辺りが俺のことを蔑み……虐めるだろう。

 

南雲の様に。

 

だけど、だけど……

その瞬間、俺はふとありもしない……誰かの笑顔が浮かび上がった。

 

金髪のツインドリルヘアーの心が震えた笑顔。

 

あの時、夢の中で俺の背中を押してくれた少女とその姉の笑顔。

 

緑の服装をした……きっと友達になれそうな尚且つ弄られやすい優男と、金髪で荒々しいけど、少年相応にニカっとした二人の笑顔。

 

さっきの少年と同様の金髪……口元が似ていたのであの二人は姉弟か?

その背の高い女の人と、可愛らしいオレンジ色の髪をしたおませな女の子の笑顔。

 

どこかの村の人達と亜人の村みたいな所にいる人達の笑顔。

 

そういえば青髪と桃髪の少女の真ん中にピエロもいたけど……

何故かイラッとしたが……考えても仕方ない事だ。

 

そして、忘れられない夢の中で描いた理想系の銀髪の美少女と……猫の笑顔。

 

俺は、その誰かが死ぬのは、失うのは、傷つくのは嫌だった。

嫌だったから俺は…………ってそれは夢の話!

 

でも、今の俺にはここにいるクラスのみんなには、先生には……

 

(生きていて欲しい)

(笑って欲しい)

(今度こそ、俺はみんなと……向き合いたい!)

 

…………異世界には帰れない。

でも、このままじゃ馬鹿の言いなりで……誰かが死ぬ。

 

それを乗り越えるには……

どんな言葉で!?

どうしたら!!

 

『友達の前で、カッコつけるのなんかやめちまえよ、ナツキ・スバル』

 

カッコつけ……そもそもカッコつける相手がいる訳でも……

そもそもコイツらは友達じゃあ……

 

『スバル。そもそも、お前は学校へ行ってどうしたいんだ?』

 

『俺は、俺は今度こそ……』

 

…………馬鹿だ。

俺、本当に馬鹿野郎だ。

 

この絶望を乗り越えるには、みんなとの一致団結!

でもそれを話す前提条件として、俺が、俺がここにいる事を……みんなに伝えないといけない。

 

勇気を出せ!

勇気を出せ!

 

勇気を……

 

俺はふと、思い出した。

あの始まりを……

 

『『いってらっしゃい』』

 

俺が、『菜月 昴』が……ゼロから始めようと誓い、両親に感謝と大丈夫だよと心に込めたあの言葉を。

 

(…………ここからだ、親父、お母さん。俺、随分遠くに飛ばされたけど行ってくるよ)

 

そしていつか、『ただいま』と、両親に沢山の友達に合わせる為に……!

 

未だパニックが収まらない中、俺……『菜月 昴』は立ち上がりテーブルをバンッと叩いた。

 

みんなは意外な人物の顔を見て…………怯えた。

 

(…………こりゃいけないな。みんなを怖がらせちまう)

 

俺はハジメの静止も厭わずに前へ歩き出す。

 

 

俺の顔が、みんなを怯えさせない様に。

俺の生まれつきの睨んだら、怖い顔を……

 

「イシュタルの……イシュタルさん。アンタは自分の親に、『いってきます』って言ったことあるか?」

 

みんなを怯えさせる元凶に、俺は生まれつき恐れられた顔を見せつけた。

 

今の俺には沈黙こそが『失敗』だ。

だから俺は止まらない。

『菜月 昴』は、みんなを救う為に……ゼロから動き始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

イシュタル  40%




さて、今回は昴の様子が色々とおかしい場面がありましたがこれはミスとかではありません。

後々のフラグです。
正体の考察はリゼロの6章の行方不明だった片割れの存在を思い浮かべてみてください。

リゼロを元としたオリキャラクターの名前を一部変えて登場させるか?

  • リゼロのキャラ名をそのまま出す。
  • キャラ名を一部変えた方がいい。
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