ゼロから始まる『ありふれた』異世界生活   作:青龍の鎧

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沢山の感想ありがとうございます!
あまりにも嬉しかったので今週も異世界生活を投稿していきます!


2周目 

ナツキ・スバル レベル####
天職:一般人
筋力:《愛してる》
体力:《愛してる》
耐性:《愛してる》
敏捷:《愛してる》
魔力:《愛してる》
魔耐:《愛してる》
技能:《私は貴方を、愛してる》


スキル:【死に戻り】ext...《エヒト……貴方が憎い》


4話 『ごめんなさい』

俺、ナツキ・スバルは死んだ。

救うと誓った筈のクラスメイトや先生を殺して、最後は自分にすら見放されて……

 

まぁ、これであの地獄から抜け出せるのなら及第点だな。

 

『ナツキ・スバル』

 

…………また『声』が、聞こえた。

 

『逃げられる、なんて本気で思ってるのか?』

 

逃げられる?

はっ、そんな事思うわけがない。

 

【死に戻り】

 

このスキルがある限り、俺は生き返り続ける。

 

何度でも

何度でも

 

……それはお前も分かってるだろ?[ナツキ・スバル]

 

『…………そんなことを言ってるんじゃねえよ』

 

…………なぜ呆れる?

どういう事だ?

逃げられないのは【死に戻り】というスキルの存在で……

 

『違う。何もかもが違う』

 

じゃあ何だよ……

俺は、俺は一体"何"から逃げられないんだよ!?

 

『それは…………お前も…………最後の瞬間の…………園…………優………想い………そして…………』

 

声が掠れていく!?

ふざけるな、ふざけるな!!

 

勝手に俺の心に干渉して、何が目的なんだ!?

 

「教えろよ!?俺は、俺は"何"から逃げられないんだぁぁぁぁ!!」

 

俺の誰も届かない叫びは空虚へと霧散し………

 

次の世界の始まりを告げる光に包み込まれた。

 

[ナツキ・スバル]はその様子を見てもなお、『ナツキ・スバル』に言葉を、忘れてはならない事を伝えようとするのをやめなかった。

 

 

 

 

 

その顔は、涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔をしていたが、『ナツキ・スバル』はそんな彼の思いなど知る由もなく………………

 

####

 

俺の意識がハッキリとした後、目に映った光景は……

俺はこの忌々しい絵を眺め、とある男に聞いてみた。

 

「なぁ、檜山。この絵どう思う?南雲は美しいって思ってるけど」

 

「はぁ?馬鹿じゃねえの?南雲のやつ頭どうかしてるぜ。あんなのタダの気持ち悪いおっさん……って菜月!?お前、いつの間に学校に!?」

 

召喚された直後と同じ光景が俺の視界を包み込んで、俺のスキルが【発動】したのだと、事態を早々に飲み込めた俺は…………『クソ野郎』に地雷を押し付ける事にしたのだった。

 

そして俺の読み通り地雷を踏み込んで先生に怒られて、無理矢理謝らさせられていた檜山の顔を見て、俺はスッとして今の状況とこれからの事を考える事にしたのだが……

 

「クスッ」

 

南雲の奴が気付かれないようにこっそり笑っていた。

いや、そこは何で僕の名前使ったの!?と突っ込めよ……

 

どんだけ檜山の事が嫌いなんだよ?

俺も嫌いだけど……

 

こいつが虐められるのはこんな陰湿な所も含まれてるのかな?

救えねえ話だ。

 

@@@@

 

そしてこの後は別室で世界の状況説明を受けた。

先生は変わらず抗議したけどもちろん効果などなかった。

 

(前回はイシュタルを煽り過ぎて、俺はぶたれたんだよな)

 

あの時の雫の顔は…………

はっ、そんな度胸があるなら初めから……いや、あいつらは姑息だから彼女達の前ではそんな事しないんだろうな。

 

…………ちっ

イシュタルのクソみたいな言い分と俺よりも酷い屑の事を頭に浮かべてたらまたイライラしてきた。

 

そして、最終的には光輝がみんなを纏めて…………

くそっ、アイツらの偽善に…………屑のクズさに……俺の惨めさに……

 

 

 

 

イライラする。

 

@@@@

 

それから時間が過ぎて、いつの間にか夜になり、俺は用意された自分の部屋でお母さんの作ったピラフを平らげようとしたけど…………食欲がわかず一つも食べれなかった。

 

(このまま放置しても……でもなぁ……)

 

未だに残っている弁当達を捨てるわけにはいかなくて、朝に食べるかと俺はベッドに入ろうとした時だった。

 

コンコンッ

 

 

ノック?

前回の世界ではなかった筈だけど……

 

俺はとりあえず扉を開けた。

扉を開けた視界に映ったのは……合法ロリと呼ばれるに相応しい外見の畑山先生だった。

畑山先生の神妙な様子……もしかして檜山を嵌めたのバレたのでは!?

 

俺は冷や汗を内心抑えつつ、無下に追い出すのはリスクが大きいと判断して、畑山先生達を中に入れる事にしたのだった。

「………………」

 

「………………あのー…」

 

先生達は無言でうつむいていた。

 

「何しに来たんすか?」

 

そんな先生の様子に痺れを切らした俺は呆れ口調で二人に用件を聞いた。

すると、畑山先生は慌て始めたが、俺がなだめて、そして先生は深呼吸をして、俺の手を取り……

 

「菜月 昴くん。よく、復学を決意してくれましたね。先生……嬉しいです」

 

涙を浮かべながら、微笑んだのだった。

そんな先生の、俺がずっと待ち焦がれた言葉は……

 

はっ、今更何を…………

 

その一言で俺は内心切り捨てた。

もう、切り捨てるしか……俺の心を救う方法がなかった。

 

南雲をイジメを、誰かが本当に苦しんでいるのを分かってやれないくせに。

実の所、先生は誰かに『いい先生』だって思われたいだけの筈だ。

 

前回の周回で俺は思い知ったのだから……

その瞬間だった。

 

『昴くん……ご……めんね……?駄目な先生で…………』

 

突如として前回の記憶がフラッシュバックされたのだ。

 

「………………」

 

この記憶は…………いや、気にするな。

俺は見た筈だ。

あの時の先生の偽善を、俺はこの目でしっかりと……見た筈だ!!

 

俺はその時の事を思い出し、先生達を中に入れるんじゃ無かったと後悔して、これ以上の会話は苛立ちが募るばかりと判断して、追い出そう。俺はそう立ち上がろうとした時だった。

 

「昴くん。ここまで貴方の引き篭もりを許してしまったのは先生の責任です。本当にごめんなさい……私は、私は……」

 

先生は頭を下げ始めたのだ。

そんな様子に、俺の苛立ちはさらに募り続けた。

 

馬鹿を言うな、引き篭もりは100%俺の責任だろ?

寧ろ先生は被害者だ。

 

「ごめんなさい。貴方の苦しみに気づけなくて……」

 

気づく?

どう気づくんだ?

虐められてるわけでもないのに、ましてや先生に相談なんか一度もしてないのに、どうやって気づくんだよ?

 

「私は……駄目な先生です。先生失格です。昴くんを3ヵ月も引き篭もりさせてしまい、その状況を許し続けた私が…………」

 

俺はその時、先生の顔を見た。

そしたら…………

 

前回の世界で見た、あの時の目と同じだった。

 

………………

 

俺は適当に流して、先生を追い払ったのだった。

今の俺には、両親の言葉以外、どれも偽善にしか聞こえなかったから。

 

 

@@@@

 

菜月 昴はどうしようもない『クズ』だ。

それは絶対に忘れては行けない『罪』である。

 

『怠惰』を全力で貪り、優しい両親に甘え続けた。

その罪は償わなければならない。

 

しかし、どうやら俺はその選択先を全力で間違えてしまった。

その結果が……

 

「はっ、次も頼むな……『菜月』〜あはははは♪」

 

ゴミ共の引き立て役……いや、惨めないじめ生活だった。

無論、先生は俺の味方をしてくれてはいるが、俺はもう信用などしていなかった。

 

ちなみに俺は『前回の死』の時間をもう乗り越えていた。

そもそも『前回の死』の原因は俺の暴走を止めるためのとある兵士(多分)の殺害だったので、ただ黙って全てを受け入れていれば特に問題も無かった。

 

今の時間はあの死の翌日である。

俺はメルド団長にアーティーファクトのステータスをみんなに公表するのをやめてほしいと懇願したが、受け入れられなかった。

 

いや、正確には偽善勇者が「隠すのはチームワークに問題が生じる」口を出した事で全てがおじゃんに落ちた。

あの時、底ステータスだった南雲が偽善勇者に余計なことをと静かに睨みつけていたのは滑稽だった。

 

ちなみに俺も、前回同様にアーティーファクトを渡したが……やはりメルド団長に怯えられてしまった。そんな訳で俺が口頭で伝えようとしたら、俺視点でもバグってしまい……前回の世界で知ったステータスをスキルの【死に戻り】以外、全て公表した。

 

あの時に偽造報告をしてもよかったんだが、もう入学当初に起こしてしまった恥はうんざりだった。

 

しかし、その結果がこの陰湿ないじめなら…………

そういえば、なんで檜山は俺のアーティーファクトのステータスを読めたんだろう?

 

そんな事を考えながら、奴らの暴力に身体が持たず、ついに俺の意識は薄れて……

 

 

 

(昴!!)

 

 

 

…………声?

 

@@@@

 

俺は目を覚ました。

そこには一人のセミロングの髪を染めた淡い栗色、そして俺よりだいぶマシだが鋭い目をした女の子が俺の片手を両手で握っていた。

 

「…………えっと」

 

俺が目を覚ましたのを彼女は心の底から安心したのか一息ついた後、自分の手をふと見て、みるみる顔を紅くしていった。

 

彼女が一体どんな葛藤をしているのか俺には知った事ではないが……

俺の呆れを他所に、その葛藤をようやく終えた彼女の口が開き、ぽつりと呟いた。

 

「…………あんたの片手に、蚊が止まってたのよ」

 

「………………」

 

その割には優しく包まれた温かい感触なんだが……

この感触、何処かで、しかも最近感じた?

 

「ちょ…ちょっと、何か言いなさいよ!!あたしが馬鹿みたいじゃない!」

 

彼女の反応を他所に、俺はある恐ろしい想像を……

 

はっ!

それがなんだってんだ。

 

もし仮に、前の世界で同じ事をしていたんなら、それはきっと哀れな俺を見てて、余りにも可哀想だったから手を握った……ただそれだけだ。

そう……そうに違いない。

 

あの目の前の子も、アイツらと同じ……

 

俺はそう『言い聞かせ』、いまは彼女の言葉に……

 

「実際に残念すぎる答えが出たら、だれだってそうなるだろ?ツンデレなら他にマシな言い訳考えとけよ…」

 

言葉に刺を少々交えて突っ込んだ。

しかし、彼女は昴の想像していた反応を裏切り、

 

「…………へへっ♪」

 

何故か嬉しそうな顔をして安心しきっていた。

 

「何で嬉しそうなんだよ。それといつまで、"手"…握ってるの?」

 

俺は今の彼女の行動が、どうにもピンとこなかった。

だって、俺の知るあの目の前の子は……

 

「よかった、あの時と同じ……軽口、また聞けた」

 

軽口?

あの時?

 

何の事……!?

その時、彼女は抱きついて……泣いていた。

 

「よかった……無事でよかった。それに、この"暖かさ"…あの時の…………」

 

(な……何なんだ?彼女は、"園部優花"はなんで俺に抱きついてきて……泣くんだよ!?)

 

昴はこの短時間で彼女の事を不気味な奴だと印象づけて、遠ざけようと…………した時だった。

 

『昴、ごめんね。あの時と今、昴を避けて…逃げて。こうなったのは、きっと臆病な…………あたしの………………だから、昴…………』

 

声が聞こえた。

否、聞いてい…………

 

 

(やめろ!そんな記憶はある訳がない……あってたまるか!!)

 

俺は【記憶】を否定する。

もし、もし…『それ』を認めてしまったら……

 

 

 

俺は焦燥を抑えつつ……彼女を改めて見た、その身体は傷だらけでーーー

まさか……あの現場から、『無理矢理』割り込んだのか!?

 

その時、俺はまた……【記憶】を思い出した。

 

その傷は、前回の世界とほぼ似たような、否……それよりも酷い……取り返しのつかない、傷を……

 

暴走した……この俺を、抱きしめて。

この

 

抱きしめて!!

 

 

「あぁぁぁぁ……」

 

「昴、大丈夫?」

 

俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、抑えろ抑えろ抑えろ抑えろ抑えろ抑えろ抑えろ抑えろ抑えろ抑えろ抑えろ抑えろ抑えろ抑えろ抑えろ抑えろ抑えろこんな真似して許されると思って馬鹿野郎馬鹿野郎馬鹿野郎馬鹿野郎馬鹿野郎馬鹿野郎馬鹿野郎馬鹿野郎馬鹿野郎馬鹿野郎。

 

「待って、昴!!」

 

園部が俺を呼び止める。

恐らく、俺は反射的に飛び出したのだろう。

 

それを彼女は追いかける。

 

「昴!!」

 

園部……何でお前が俺を、前の世界の最後とこの世界の今、優しくしてくれるのか、俺には全く心当たりがない。

 

だが、彼女は俺を『助けてくれた』。

過程がどうあれ、彼女の負った『過去』と『今』の傷が彼女の全てを語り尽くすには十分……否、『過去』にとっくに……

 

俺は気づけば檜山達にいじめられていた場所まで走っていた。

 

「待って!!」

 

園部は涙と鼻水でぐしゃぐしゃの俺を見つけ出して、もう一度……抱きしめたのだ。

 

「昴、ごめんなさい。あの時からずっと、ずっと!」

 

やめてくれ。

 

「あの時から、昴の事を避けて…逃げて……きっと、昴があの時の昴じゃ無くなったのはあたし達……いや臆病だった、あたしの自業自得!!」

 

やめて……くれ。

 

「だから……昴」

 

頼む…………言わないでくれ。

 

俺は祈るように彼女に縋った。

しかし、園部は前回の事など知る訳もなく……

 

「ごめんなさい。ずっと、ずっと……高校入学から3日目のあの日に……庇えなくて、フォロー出来なくて、それからずっと…謝れなくて……ごめんなさい」

 

俺の『醜い』願いは、優しい懺悔の言葉に粉々に砕き破られたのだった。

俺は……

俺は…………

 

 

ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。

 

 

とにかく、俺は園部に一言。

例え、全てを話せずとも……彼女に、これだけは言わないと……心がボロボロの俺にできる事は……

 

 

俺は園部に謝ろうと口を開いた時だった。

 

 

「よぉ、お熱い『カップル』さん」

 

そんな時だった。

憎々しい、彼女の想いを超える憎しみを、俺に植え付けた……『声』がした。

 

「完全に香織に嫌われた俺に対しての当てつけか?なぁ……園部 優花、菜月 昴ぅぅぅ!」

 

その男は、憤怒の形相で俺達を見下ろし、睨んで、手をかざしていた。

 




園部優花の原作ですらあり得なかった、昴に対してのデレデレの態度。

多分これで読者の皆様は色々とお察ししたかもしれないですが、それでも彼女は……園部優花は昴に"#"をする事をーーー。

この謎はまたいずれ。
※この二人の過去はIFでしかあり得ない独自設定が多々入ります。

そして次回、ついに……

リゼロを元としたオリキャラクターの名前を一部変えて登場させるか?

  • リゼロのキャラ名をそのまま出す。
  • キャラ名を一部変えた方がいい。

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