昴は未だに眠れずにいた深夜。
エミリアを隠れ家へ返したパックがまた俺の元へ訪れた。
「おやおや〜?携帯を舐め回すように見て何をしているのかな〜?」
「…………くっ、俺のエクスカリバーが」
「エクスカリバー、が何だって?」
その瞬間、パックの身長が昴と同じサイズ……より少し上になって下ネタをいう昴を見下ろした。
「じょっ、冗談っす」
昴はパックの色んな意味で怖い姿を見て、携帯をしまい謝った。
「よろしい。今日はまだ君に話したい事が山程あったんだよ?」
「奇遇だな。俺も聞きたいことがあったんだけどまだ肝心な事聞けずじまいでその事を思い出したら色んな意味でモヤモヤしてた所……」
「エクスカリバー?どうやらキミの事を過大評価しすぎたかな?」
「くっ……すんませんした!」
しかし、パックは昴の携帯を取り上げて中身を物色し始めた
「没収だね没収。とにかく僕の娘のムフフな…くっ、僕の前に付いている小さな尻尾が!?」
「お前も人の事言えなくね!?」
昴の指摘にパックは沈黙し、昴の携帯を本人に返したのだった。
「さて、可愛らしい猫がムッツリスケベだったのが判明したけど……そんな事の為に来たわけじゃないだろ?」
「当たり前だね。今回はエミリアが戦っている君達が知っている『魔王軍』とは別の『敵』について君に話をしに来たんだけどね」
「……さらっと恐ろしい事実を聞いちまったな」
昴は、ある程度は彼等と檜山の邂逅の時に聞こえた会話の内容から、ある程度覚悟していたとはいえ、魔王軍と同等の敵の存在がいるという事に、昴は内心冷や汗をかいていた。
「へぇ、状況的に君達は完全に詰みと言っていい状況なのに……昴はよく平然としていられるね」
パックは外面だけ平然な昴を見て、嫌味も交えつつ感心していた。
「そんな訳ねえよ。どっちかっていうと情報量が錯綜しすぎて処理が追いつかないってのが今の俺の状態だ」
「そうだね〜、取り敢えずハッキリさせておくけど『魔王軍』だけを倒せば"君達の世界"に帰れるとは思わない事だね」
「…………」
昴は驚かなかった。
自分でも何故だろうと不思議でならなかったが、先生がイシュタルに抗議した時や俺が奴等に文句を言った時、あの時の道具としか思っていない目をしていたのが印象に残ったからかもしれない。
「ここまで来ると、別の『敵』の正体が俺でも推理できちまうんだけどな」
「へぇ、中々察しがいいね?それじゃあ、一緒に『敵』の正体を言ってみようか?」
俺とパックは「せーの」といい、「「エヒト」」と見事にハモったのだった。パックは昴に称賛の拍手を送ったのだった。
「大正解〜」
「はぁぁぁ……何か嫌な予感してたんだよ。いつだったか『盾の勇者』の伝説を記したノベル、本を読んでいく内に黒幕が神様だったっていう展開だったからな。しかも、最初らへんに出てきたその神様とは別の教会関係者は完全に人を道具としか見てない奴らで……見事にあの時のイシュタルを見て、条件ピッタリで、嫌な予感がしてたんだ」
まぁ、イシュタル達には他にも身勝手な大罪司教達と被って見えたりと、様々な理由もあり昴は嫌悪しか見出せなくなったのが、今回の推理を当てる一因となった。
「まぁ、そいつらは『大迷宮』ってやつを攻略していけばいつかは倒せるよ」
「大迷宮?」
「それに関しては、自分で調べてね?これから話すもう一つの『敵』はその大迷宮の一つや二つを"攻略"した……君達が当初、倒すべきだった『魔王軍』とは別の『七罪魔王』だからさ」
「………………パードゥン?」
昴は呆気に取られた。
『大迷宮』の事ではない。魔王軍やエヒトとは別のもう一つの敵の存在……『七罪魔王』という単語が、何の前触れも無く聞こえたからだ。
「…………あれ?そこまで予想してなかったの?」
「できる訳ねぇだろ!?」
昴は突っ込むしかなかった。
黒幕は神様。そんな予想と覚悟はある程度はしていたが、『七罪魔王』については完全に昴の予想からは的外れの存在だったからだ。
「パック、その七罪魔王って奴は……」
「はい、時間切れ」
「…………え?」
パックは昴のオデコにデコピンを喰らわした。
「な…………ん……で……」
「これ以上、話し込むと明日の訓練に支障が出るからさ。アイツらは僕も嫌いだけど……君達が強くなるにはやむなしだしね。また『七罪魔王』については夜。君一人だけか、この前エミリアと友達になってくれた君より目付きがマシな女の子と一緒の時に……今度はエミリアも連れて説明しに行くよ」
「そ……う……か」
昴はもうこれ以上問いただすのは、己の深い眠気のお陰で不可能だと判断したのと、初恋の女の子を連れてまた来ると言ってくれたのもあり眠気はもうMAXだった。
「昴。奴らとまともに戦うには『戦略』と『仲間』の存在は不可欠。君のパワーアップは…………おやすみ、昴」
パックが全てを言い終える前に昴は眠りについた為、パックは布団を昴に掛けた。
(僕はもう時間がない。なのに、なんであんな弱い彼の事を『自分の後継者』として全てを…………)
パックは自分の判断と行動に、まだ迷っていた。
なぜ、自分は『勇者』と積極的に接触をしないのかを。
なぜ、『一般人』である昴に黒幕達の事を話したのかを。
なぜ、彼に……『エミリア』を…………って!
(馬鹿馬鹿。いくらなんでも早すぎだよ!!はぁ、こんな調子じゃあの目の前で涎垂らして寝ていて、今日……娘に惚れてアプローチを掛けようとしている忌々しいオナニーくんに……くそっ、クールになれ。クールになれよ……パック!!)
パックはその瞬間。
あの夢……否、予知夢の事を思い出していた。
そう、それは大迷宮の一つである『オルクス大迷宮の奈落』から落ちていく、『心が壊れかけのエミリア』にあの男が……
(見極めろ、パック。限界が来るギリギリまでそしてこの未来が来ても、絶望に塗れた"エミリア"を救ってくれる『英雄』を、何としてでも……何としてでも!!)
パックは今日も自身の眠りを許さずに行動する。
彼女の未来を、少しでも良くする為に……
今夜は月は見えない。
しかし、見えないからこそ精霊の輝きは煌めいて、今日も彼は暗躍する。
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「う……うぅん。ここは……どこだ!?」
菜月 昴は何故か目を開けたら真っ白な空間しか無かったので咄嗟に叫んでしまった。
「おいおいおい、タダでさえ今の状況で腹一杯だってのに……ひょっとして、自惚れじゃあ無いけど俺の身体って実際、他のクラスメイトよりやばい事になってんじゃあないだろうな?」
昴はとにかくここから出る為に起き上がる。
すると、目の前に『アーティーファクト』がポツンと置かれていた。昴は気になってそれを拾い、名前の欄を見てみると……
「えっ?何でこれに……嘘だろ!?」
そこには『ナツキ・スバル』という自分の名前が書かれていたのだ。
一体何故、自分のアーティーファクトが白い空間にポツリと落ちていたのか……昴は頭を抱えつつ、それを詳しく見てみると……
「こ……これは!?」
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ナツキ・スバル 17歳 男 レベル:10
天職:一般人(嫉妬のーー)
筋力:200
体力:10000
耐性:1000
敏捷:1500
魔力:100
魔耐:♾(魔攻撃のみ700)
技能:【死に戻り】『概念魔法』[+条件を満たして自動発動]「精神汚染」[+七つの大罪(嫉妬・憤怒・強欲・暴食・色欲・傲慢)]・「器用貧乏」[日常技能を自動的に取得]《+技能収束》=[+プチアーティスト][+プチ料理人][+プチ錬成師][+ゲームマスター][プチ指揮者][+特化型魔物使い]extra…・「言語理解」[+自動コミュニケーション]・気配感知[悪意・殺意特化]・英雄資質[+ One for all, all for one ※条件を満たして自動発動][+不屈の精神]
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※運命の反逆者
神の言葉や福音書などの予言を行動をもって破壊できる。
※世界の理から外れし者
例として、魔物の肉をデメリットもメリットの効果を受け付けず普通に食べられる。という、トータスの常識を一部反転させる事ができる。
※心を救う【英雄】
闇・悪に堕ちた彼の愛する者を彼の行動次第で光に導ける。
※七罪ーー
精神が弱ると精神汚染が酷くなり、最終的に暴走するが……彼の精神の根本を解決すると精神汚染の一部が消える。
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「どういう事だ!?何でステータスはともかく、今まで見れなかったスキルが!?」
昴は余りにも膨大な情報量に混乱していた。
どんな力が使えるのか、何でレベルが上がっているのか、謎が謎を呼び頭を抱えてしまいかけた時だった。
「いや、ステータスも大概やばい事になってるだろ?それにレベルに関してはこの前の世界で『経験値』。貰ってるだろ?ステータスと技能は俺も知らんがな」
声がした。
とても聞き覚えのある声が。
昴はその声が聞こえた位置へ振り向くと…………自分がいた。
短い黒髪、胴長短足、人でも殺していそうな三白眼の男が、6人も。
昴はその場でへたり込み、身体全体で震えが止まらなくなった。
「いや……はっ?え?だ……誰?いや、何で……」
震えが止まらない昴に対し、真ん中の……先程の話しかけてきたスバルが昴の手を取って、満面の笑顔で言った。
「さて、初めまして…だな。そんな訳で自己紹介な。俺の名前はナツキ・スバル。エミリアたんの、一の騎士!」
「エミ……リア、たん…の?」
昴は一方的に自己紹介を始めたスバルの発言を聞き、己の記憶の異変の正体に気づいた。
「お前……お前だったのか!?あの例の夢や、前の世界の声の主は!!」
「ご名答!何で俺がお前の中で色々やっていたのかについては……自己満足だな」
「サラリと何ふざけた理由を言ってんだ……うわっ!?」
昴はヘラヘラとふざけた理由で昴に干渉したスバルを殴ろうとした時、残りの5人のスバル達に押さえつけられた。
「お前ら止めろ!!せっかく怠惰が消えたってのに……お前らの精神汚染のせいでその後で色々と大失敗して【死に戻り】なんて悲しいだろ?」
スバルは昴を押さえつけるスバル5人にとんでもないNGワードを平気で発言したのを昴は顔面蒼白になった。
「お前!!なにさらっとNGワードまで……あれ?」
しかし、スバルがNGワードを言ったのに心臓も痛まないし、誰も死んでない。
昴はその事にひとまず安心の息を吐いたが……
「お前ら、何者だ?」
昴は6人のスバルに嫌悪感と恐怖を覚え、彼らの正体を教える様に促したその瞬間……目の前のスバルに胸を貫かれて、心臓を掴まれる寸前だった。
「凄いよな。みんなを殺してレベルアップとは……憤怒か傲慢、いやどっちかっていうと暴食と同じくらいの糞だな」
「な……お、お前……」
掠れ声で目の前のスバルを昴が睨みつけようと彼の目を見たが、逆に昴はスバルの事が更に怖くなってしまった。
そのスバルの目は、あの時……みんなを殺戮したあの時の俺と……
「お前を含めた、下手に[馬鹿な奴]にチートなんか持たせるもんじゃないな。どいつもこいつも異世界って奴を舐め切ってさ……本当に、チートスキルを持ったからって調子に乗るな!!」
「……な、何を?」
「何が勇者だ!?ステータスが高ければリーダー気どれるのか?一般人に関しても、人を殺せば強くなれるのか!?挙げ句の果てに、何で【死に戻り】をしてるのにお前は俺の何倍も強くなれるんだ!!」
「……その、強く……なれた…………切っ掛けは……お前が…」
その瞬間、昴はあの日と同じ心臓を掴まれた感覚と同じ痛みを感じた。
しかし、スバルは今までの憤怒は何処へやら。
心臓を掴んでいない手で、昴の頭を撫でたのだ。
「まぁ、強くなったのはいい事だ。せいぜい強くなって……俺達を否定して見せるんだな。後、もう朝だから……この痛みでとっとと目を覚ませ」
そう言って、スバルは昴の心臓を握り潰した。
「ぐぁぁあああ!?」
その瞬間。昴の身体は真っ白な世界から消えてしまったのだった。
昴が消えたのを見届けたスバル達の一人が、心臓を潰したスバルに質問をした。
「何でお前ってさっきのアイツが嫌いなの?アイツを導いたのってさぁ」
「ムカつくんだよ」
「…………」
「何で、アイツは両親に『行ってきます』を言えて、クラスの人や先生と仲良くなろうとして……それで初恋の人まで、これが『嫉妬』出来ずにいられるか?」
スバルは5人のスバル達に己の苦しみの共感を求めた。
そして5人のスバルは口々にスバルの嫉妬に納得をする者や否定する者、この話に関係ない話題をするスバルが述べた。
《憤怒スバル》
「その通りだが、それはお前も同じだろ?俺なんか、誰も信用出来なくなったってのに……お前らは運がよかったんだ!!何であのスバルもお前らも疑心暗擬から抜け出せたんだ!?」
憤怒スバルは疑心暗擬から脱出した3人の、消えた昴と自分達に共感を求めたスバル。そして傲慢スバルに対して文句たらたらだった。
そもそも、噴火スバルは疑心暗擬が限界突破してとある組織を作っても、一部の人間以外誰も信じられなくなった『粛清王』として君臨していた。
最終的には初恋の人すら信じられなくなり、最後に信じたのはかつて自分を殺そうとした女で……全く救われない男である。
まぁ、文句に関してはこの前消えた怠惰スバルに対しても……というか信じられなくて何度も衝突していたのはもう過ぎた話である。
《傲慢スバル》
「俺の場合は疑心暗擬から抜け出したっていうとそういう訳じゃ無いと思うんだが……それにしてもさっきの昴。園部の言葉であっさりと元に戻れるもんだな。……俺にもそんな奴がっていうのは他の連中にとっては同じことか」
傲慢スバルは何かをやり果たしたみたいで満足しているのか何処か落ち着いた雰囲気で冷静に昴を見極めていた。
ちなみに傲慢スバルは『傲慢の大罪司教』を名乗っていた狂人だったそうだ。
《色欲スバル》
「そりゃあ、愛する者の言葉は心に響くぜ?だからお前も憤怒も強欲もここまでやれたんだ。だから応援ぐらいしてやれよ?ここからなんだ。アイツの地獄の幕開けは」
色欲スバルは…………みんなから嫌われている。
理由は「胡蝶の夢」
《強欲スバル》
「………………エキドナ。おい、反応しろ。エキドナ……くそっ、ふんっ!!」
強欲スバルは、今までの事はエキドナという魔女に導かれた上で行動していたらしく、今回ここに飛ばされてエキドナという魔女との繋がりを絶たれてしまったので、それを突破するべく毎回自殺をしている狂人だ。
彼の事は傲慢スバルやみんなに共感を求めたスバルからは同情的な目で見られているが……ここまで壊れてしまってはどうしようもなかった。
《暴食スバル》
「出せよ……今すぐ出せ!!俺はここから出て、『ナツキ・スバル』を手に入れなきゃいけな……ぐへっ!?」
強欲スバルが今度は暴食スバルを殴り始めた。暴食スバルは、全てのスバルの【敵】も同然の存在で、奴はみんなに嫌われていた。
特に消滅した怠惰スバル、そして強欲スバルからは何度も何度も奴を殺したそうな。
《嫉妬スバル》
「……さて、相変わらず俺の求める答えがさっぱり無く。纏まりがない事が改めて証明されてガチでへこみ中の俺だか、まぁこれはこれで冷静になれた。アイツには悪い事を……っち。両手に花か、俺だってなぁ……」
みんなに己の嫉妬を共感して貰おうと意見を求め、盛大に空振りに終わった嫉妬スバルは"暴食の大罪司教"の仕業で二人に分断されてしまい彷徨っていた。
今までのスバルに比べると、すごいマシで怠惰や傲慢からは正面からお前は凄いやつだと称賛される程だった。
その時の二人の涙を嫉妬スバルは忘れる事なく噛み締めていて、まさに英雄道まっしぐらなのだが……何故か今回の昴に愛憎満ちた行動を取ってしまいがちになっていて、罪悪感が半端ないが、やはり今回の昴は好きになれない。
なので……
「「絶対に悪いと思ってないな」」
まだまともな傲慢と色欲から突っ込まれるのはよくある事だった。
「さて、今回のアイツのステータスだが……これでもまだ技能が隠されてるよな?」
「当たり前だろ?今回書かれた技能の中に俺達の出来る事がぎっしり詰まっているからな」
「それでもまだ増える予定って……俺って意外とやばくないか?よくそれで俺が弱いって……」
「俺が弱いのは今までの出来事でお前ら全員身にしみてるバズだろ?色欲は知らんが」
色欲以外のスバルはみんな悔しそうに食いしばった。
色欲は溜息をついていたが、まだ己の立場を分かっていない。
「……とにかく、俺達はお互いに暴走しないように見張り続けて困ったら助言ぐらいはする。しばらくの行動方針だ」
「そうだな。そうすれば怠惰みたいに元の世界に帰れる。俺の場合は地獄だろうけど……あははは♪」
「…………え?元の世界に戻れるの?」
「嘘だ!!」
「傲慢は笑えないジョーク言うわ、強欲は今更その答えに辿りついてるし、憤怒はいつも通りか〜」
「やった!元の世界に帰れるのか♪待ってろよ、俺は今度こそ自分を……ぐはぁ!!」
喜んだ暴食スバルを嫉妬以外のみんなが奴をリンチし始めた。
嫉妬スバルはこのなれた光景に嘆息しつつ、これからの昴の英雄譚を想像しながら……また嫉妬を高めていくのであった。
アンケート誠にありがとうございました。
その結果、リゼロのキャラ名をそのまま出すが25票。名前の一部を変えるが9票だったので、リゼロのキャラ名をそのまま出す事になりました!
という訳で、エリミアとシックの名前はエミリアとパックに変更します。
勿論、今までの話の修正はきちんとやります。
という訳でステータスと6人のスバルが登場しましたが、ステータスについての質問は答えられる分には答え、6人のスバルはifシリーズと6章を読んでもらえると彼等の性格がより分かると思うのでwebから是非読んでみてください!
ちなみに怠惰は納得して消えました。
リゼロを元としたオリキャラクターの名前を一部変えて登場させるか?
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リゼロのキャラ名をそのまま出す。
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キャラ名を一部変えた方がいい。