「ぐあぁあああ!!」
昴は悲鳴を上げながら飛び起きた。
原因は昨日、夢(?)に出てきた謎のスバルに心臓を握られ、その痛みが現実のように響き今に至る。
「くっそ……あの野郎。何なんだったんだ?本当に一体……おっ、ステータスプレート纏い、アーティーファクト…………ひょっとしたら!」
昴はあの時の夢のスバルに様々な感情を抱きつつ、何故か自分の枕元にポツンと置かれていたアーティーファクトに昨日の夢を思い出して目を輝かせ、確認する事にしたが……
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ナツキ・スバル 17歳 男 レベル:#0
天職:一般人(嫉妬のーー)
筋力:2a/
体力:#####
耐性:×$00
敏捷:150€
魔力:100
魔耐:♾(魔攻撃のみ*×=)
技能:【死に戻り】
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「あれ……」
相変わらず此処では壊れたままだった。
まぁ、前回に比べたらまだマシな方ではあるのだが……
「…………まぁ、本当のステータス全部話すとあの"勇者"辺りが騒がしくなるしこれについては俺のハッタリに賭けるしかないか。教会のこともあるから全部話すと死亡フラグは間違い無いしな。そもそもステータスを確認しただけで魔王や魔物達を倒せる訳じゃないし、俺のスキルはほぼ全部自動発動みたいだったからな」
昴は自分の技能を少しだけ試した後、そう結論付けてこれからメルド団長達とクラスメイト達のみんなでトレーニングをする場所へ向かうのだった。
そのベッドの上には何故か二つの変な形をした鉄の輪がポツンと置かれていたのだった。
それからの昴は、どうにかメルド団長達をステータスの事について誤魔化し(本当の事は話せるだけ話して隠すべきポイントは全力で隠した)どうにか乗り越えて、此処からはひたすら座学とトレーニングと何故かクラスメイト達の青春(修羅場やそれぞれの闇)に巻き込まれたりと本当に忙しい日常だった。
正直な所、何回か死ぬところだったし泣きそうだった。※実際には死んでいません。(大体の原因はクラスメイト達のそれぞれの"闇"と"修羅場"という名の青春のせい)
しかし、昴は折れる事なくひたすらに1日1日を乗り越えたのだった。
その理由は勿論…………初恋のエミリアたんとあれ以来、昴を気にかけ始めた優花の存在が昴の心を強く、強くしていったのだった。
座学については主にトータスの世界についての事と自己流に図書室で籠りに籠り、初日で大体の国を概要をみんなが何故かドン引きする程に昴は覚えていったのだった。
実際、いざ振り返ってみると昴自身もヤバすぎてないかと自覚する程なのだから本当にドン引き物であった。
その裏で、メルド団長がスバルに対しての訓練内容について会議をしなければならない事になりスバルだけ1日中座学をしたのが大きな要因なのかもしれないが、それでもおかしいといえばおかしい話である。
「………もしかして俺の天職やスキルってかなりのチート……なのか?」
それに関しての疑問はひとまず後回しにして、昴は今日学んだ事を思い浮かべる事にした。
亜人族は被差別種族であり、基本的に大陸東側に南北に渡って広がる【ハルツィナ樹海】の深部に引き篭っている。なぜ差別されているのかというと彼等が一切魔力を持っていないからだ。
神代において、エヒトを始めとする神々は神代魔法にてこの世界を創ったと言い伝えられている。そして、現在使用されている魔法は、その劣化版のようなものと認識されている。それ故、魔法は神からのギフトであるという価値観が強いのだ。もちろん、聖教教会がそう教えているのだが。
そのような事情から魔力を一切持たず魔法が使えない種族である亜人族は神から見放された悪しき種族と考えられているのである。
じゃあ、魔物はどうなるんだよ? ということだが、魔物はあくまで自然災害的なものとして認識されており、神の恩恵を受けるものとは考えられていない。ただの害獣らしい。なんともご都合解釈なことだと、スバルは内心呆れた。
なお、魔人族は聖教教会の"エヒト"とは別の神を崇めているらしいが、基本的な亜人に対する考え方は同じらしい。
この魔人族は、全員が高い魔法適性を持っており、人間族より遥かに短い詠唱と小さな魔法陣で強力な魔法を繰り出すらしい。数は少ないが、南大陸中央にある魔人の王国ガーランドでは、子供まで相当強力な攻撃魔法を放てるようで、ある意味、国民総戦士の国と言えるかもしれない。
人間族は、崇める神の違いから魔人族を仇敵と定め(聖教教会の教え)、神に愛されていないと亜人族を差別する。魔人族も同じだ。亜人族は、もう放っておいてくれといった感じだろうか? どの種族も実に排他的である。
「今回の戦争ってのは…そんな根本的な物が溜まりに溜まって起きちまった事なのか?…………またパックに聞いてみるとして、西の海は確か、エリセンという海上の町があるらしいな。それにしてもマーメイドか…男のロマンではあるがエミリアたんに比べると別に気にしないかな?でもせっかくなら海鮮料理をマヨネーズつけて食べてみたいな」
【海上の町エリセン】は海人族と言われる亜人族の町で西の海の沖合にある。亜人族の中で唯一、王国が公で保護している種族だ。
その理由は、北大陸に出回る魚介素材の八割が、この町から供給されているからである。全くもって身も蓋もない理由だ。「壮大な差別理由はどこにいった?図々しいにも程があるだろ……」と、この話を図書館の司書から聞いたスバルは盛大にツッコミをして怒られてしまった。
しかし、最近になって誘拐事件が起きているらしく王国は謂れもない罪を被せられる羽目になり、その事件をこの国の王女が対応していて頭を痛めているらしい。
一国の王女が出張る程なので本当に深刻な話である。
ちなみに、西の海に出るには、その手前にある【グリューエン大砂漠】を超えなければならない。この大砂漠には輸送の中継点として重要なオアシス【アンカジ公国】や【グリューエン大火山】がある。この【グリューエン大火山】は七大迷宮の一つだ。
七大迷宮とは、この世界における有数の危険地帯をいう。
ハイリヒ王国の南西、グリューエン大砂漠の間にある【オルクス大迷宮】と先程の【ハルツィナ樹海】もこれに含まれる。
七大迷宮でありながらなぜ三つかというと、他は古い文献などからその存在は信じられているのだが詳しい場所が不明で未だ確認はされていないからだ。
一応、目星は付けられていて、大陸を南北に分断する【ライセン大峡谷】や、南大陸の【シュネー雪原】の奥地にある【氷雪洞窟】がそうではないかと言われている。
「そして帝国に関しては……」
帝国とは、【ヘルシャー帝国】のことだ。この国は、およそ三百年前の大規模な魔人族との戦争中にとある傭兵団が興した新興の国で、強力な傭兵や冒険者がわんさかと集まった軍事国家……だったのだが、20年前にとある皇帝陛下の馬鹿子息が『赤黒の覇蛇』と呼ばれる謎の蛇鎧の魔人と手を組み、玉座に付いた。しかし結局奴らは20年前と同じく実力至上主義を掲げており、かなりブラックな国のようだった。
しかし、馬鹿子息はヘルシャー帝国をいずれ統べる筈の後継者の筈だった。なぜ馬鹿子息が皇帝陛下を殺してまで玉座に就こうとしたのかスバルには想像などできる訳がなかった。
しかし、この国には20年前と変わらず亜人族だろうがなんだろうが使えるものは使うという発想で、亜人族を扱った奴隷商が多く存在している。
ところが、20年前とは違い《強ければ》なんと亜人奴隷でも中々の地位に立てるらしく、実際に先程話した《海人族の鯨》と《ハウリア族の兎》がなんと『赤黒の覇蛇』の最高幹部として君臨しており、亜人に対しての扱いがマシなのか酷くなったのか判断するのが難しい国となった。
帝国は、王国の東に【中立商業都市フューレン】を挟んで存在する。
【フューレン】は文字通り、どの国にも依よらない中立の商業都市だ。経済力という国家運営とは切っても切り離せない力を最大限に使い中立を貫いている。欲しいモノがあればこの都市に行けば手に入ると言われているくらい商業中心の都市であるが……なんとここも最近、またしたも謎の誘拐事件が頻繁に起きているらしい。
「ここでも誘拐事件……か。とはいえ【エリセン】はただ拐うだけだが【フューレン】は主に可愛い女の子、だった人の無残な死体がその人の家の前にプレゼント箱に包んで贈られるらしいが、もし誘拐事件の犯人が【エリセン】と【フューレン】の誘拐事件の犯人なら……これもパックに要相談と、大体こんなもんか。案外初日に一日中座学だったのは俺にとっては幸いだったな、だってこれから……」
昴はそう言いかけた時、ドアをコンコンと叩く音が聞こえたためパックとエミリアとの話し合いの方針を纏めつつ……『もう一人の理解者』を迎えにいったのだった。
大体の国の事情を学んだ夜。エミリアたんは俺の部屋の窓から現れた。
「しゅばる〜、ゆうか〜」
「こら、エミリア!綺麗な顔が台無しになるから!!」
エミリアたんは窓に顔を近づけすぎて変な顔になってしまっていて優花に怒られていたが、俺は「それはそれでラブリーだ!」と親指立てたら優花に「デリカシーの欠片も無い」と渋い顔をしながらバッサリと斬られた。
落ち込む俺にパックがゲラゲラと笑ったので、俺は密かに黙っていたケモナー愛をパックにぶつけて……返り討ちに遭い快楽という快楽を、思い知った。
その時、何故か優花まで巻き込まれていたらしく、俺に抱きより耳元ではぁはぁして……本当に色々とヤバかった。
もう二度とパックには喧嘩を売らないようにしようと優花に頬をつねられる痛みを味わいつつ思った。
「さて、俺の頬が痛がっているのだが……そろそろ本題に入ろう。パック、頼む……俺達二人はもう覚悟は決まったから」
パックは昴とその昴の覚悟の声を聞き、頬を離して彼と同じ強い目をしてパックを見る。
パックは一体、昴はともかくこの少女はどんな気持ちでこの場にいるのだろうと不思議に思ったが、少女の目は昴と同等の強さを秘めているのを感じ、パックは遂に奴らの全容を…………
全容……を…………
・
2週間後。
「それじゃあ、おやすみ。スバル!」
「おやすみなさい」
ハジメと香織はスバルとエミリアにおやすみの挨拶をする。
「あぁ、おやすみ。実戦頑張ろうな!」
ハジメと香織は空元気のスバルに相変わらず不安と心配をしたが、スバルがいつもと変わらない笑顔をした為、ハジメと香織は何も言えなかった。
彼女を連れて部屋に戻る『大恩人』否、『親友』の、悲痛な姿にハジメは目も当てられなくて…………
そんな時、香織がハジメを優しく包み込んだ。
「私があの二人も、南雲くんを守るよ」
「その言葉、さっきの二人にも言ってあげれば……」
「…………そう……だよね…南雲く……ハジメ君。私、結局何も……」
「…………あぁ、本当にそうだよね。僕、達は……」
ハジメは香織を優しく包み返し、涙を流し続けた。
二人は余りにも悔しかった。
あの日、自分達を《結びつけてくれた》大恩人の静かに聞こえる、心が崩れゆく音が聞こえて……あの日、そのお礼を言おうとその人の部屋を開けた時…………
「あれから、あれからスバルは何も話してくれない。…………私達は、どうすれば……どうすれば……」
「………………」
二人は解決策を見出せないまま、明日を迎えることとなる。
あの、運命の明日を。
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そして、その二人が心配している当のスバルは自分の部屋に入っていく。
「――お父さん?」
開けた空間に出くわした直後、銀鈴の声音がスバルの名前を呼んだ。
声音に誘われるままに足を向け、広間に入ったスバルを見て、佇んでいた人物が喜色に満ちた声を上げる。
「やっぱり、お父さん!もう、どこに行ってたの?心配するじゃないっ」
言いながら小走りに駆け寄り、エミリアがスバルの手を取った。
拗ねた顔のエミリアはそのまま取ったスバルの手を自分の胸に抱え込み、柔らかな体温を伝えてきながら上目にこちらを見上げ、
「……疲れてる?」
「いいや?そんな事は……まぁ、明日が物凄く不安で今にも倒れそうだよ」
「えへへ、そうなんだ。じゃあね、じゃあね」
素直に認めるお父さんにエミリアが頬を赤く染めて笑う。
と、彼女はお父さんの手を取ったまま、ふいにその場に座り込んだ。足を重ねて横座りになり、手を引かれて中腰になるスバルをさらに引き寄せ、
「ほら、どうぞ、お父さん」
「……膝枕、か」
「そ。お父さん、私の膝枕、好きでしょ?あの日に私を膝枕した時、そう言ったでしょ?私、ちゃーんとそういうことは覚えてるんだから。ね、どーぞ」
自分の膝を叩き、自慢げに照れ笑いするエミリアに従い、スバルもその場に腰を下ろすと、お言葉に甘えて柔らかな腿の上に頭を乗せる。
一瞬、短い髪の毛がやわ肌を掠めて、エミリアが「んっ」と艶っぽく喉を鳴らすが、すぐに慣れた様子でスバルの頭を撫で始める。
「こうやってお父さんのこと、膝枕するのなんか初めて!あの時私に膝枕をしてくれたお父さんの温かな気持ちがすごくすご〜く分かった気がするよ!」
「…………あの時、か」
「私はこうやって、お父さんの毛先とか耳とか、指で弄るのも楽しいんだけどね。ほーら、うりうりー」
前髪を引っ張ったり、頬に指を埋めてきたり、ご機嫌なエミリアにされるがままのスバル。
それが彼女の愛情表現だというのが伝わってくるから、指を跳ね除ける気など欠片も湧いてこない。
「………………」
スバルは、本当に本当に疲れ果ててしまっていた。
それこそ、明日の実戦に致命的な影響が出る程に、スバルの精神は疲弊してしまっていた。
だから、今は、エミリアの愛に溺れてしまいたいたかった。
だけど、その愛は『偽物』だ。
その愛こそがスバルの精神を疲弊させる原因だというのに…
だけど、それしかエミリアを救う方法が見つからない。
何故ならあの日、スバルと優香、そしてパックとエミリアが再び集ったあの夜の日に……
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《特訓初日の夜》
スバルは何故か途中眠りこけていて、目を覚ました時……美しい銀髪を乱し、服もシワクチャに、声にならない呻き声を上げながら……涙を流していた。
「え……エミリア?」
「うそ……つき……」
そしてエミリアは罵倒する。
「お父……さんの、うそ……つき……」
彼女に嘘をついた父親を、しかしスバルはいきなり父親の存在を初めて知った為、呆然と今の状況の整理をしようとしたが、
「お父さん?一体……まさかパック?というか優花は、優花……あ…」
スバルも今の状況に混乱しつつ、優花の存在を思い出し、辺りを見渡してみると、優花は無事だった。
スバルのベッドでぐっすりと寝息を立てて眠っている。
てっきり惨劇でも起きたのかと不安に満ちたスバルの恐怖は一つ解消されたのだが……
「…………お父さん、お父……」
「エミリア」
スバルはとにかくエミリアに冷静になって貰おうと声をかけた時だった。
「………………あ、こんなところにいた。よかった、心配したんだよ?『お父さん』」
「…………え?」
スバルの素っ頓狂な声がした。
しかし、エミリアはそんな声など聞こえていなかったかのように……
その瞬間、エミリアはスバルを抱いた。
スバルを腕に抱いたまま、エミリアは熱のこもった言葉を並べ続ける。
「最初、お父さんが消えたとき、すごーく辛かったの。恐くなった。だって、お父さんが目の前で消えちゃって、『奴は死んだ』って目の前で言われて、そう思ったら、恐くて怖くて、体の震えが止まらなくて……」
「エミリア」
「でも、お父さんの顔や髪の毛、それに目、鼻、口……お父さんの全部が猫になる前のお父さんと似ているなって、初めて会った時、そう……そう思ったの」
「エミリ…」
「あのピラフって食べ物も美味しかった。まるで私のお母さんが作ってくれた味そのものだった。まさかとは思ったよ?だって私の側にはお父さんがいたんだし」
「エミ……」
「あっ!もしかしたらお母さんが居るかも……いた!お母さん。お母さん!」
「エ………」
「ねぇ、お父さん。またお母さんの目が覚めたら、今度こそ、今度こそ一緒に暮らそうよ!私達、3人で」
「…………」
「ねぇ、お父さん。すごくすご〜く、大好き。ずっと一緒だよ?」
その日、スバルはエミリアを寝かした後、泣き続けた。
壊れてしまった彼女を、どうする事もできずに、己の無力を呪い、泣き続けて、泣き続けて、泣き続けて、……『自害』をした。
しかし、セーブ地点は……
「心配したんだよ?『お父さん』」
既に、取り返しの付かない地点に辿り着いてしまい、
「………………うん。不安がらせて、ゴメンな…『リア』」
菜月 昴はエミリアの現状に、目を逸らす事を選んだのだった。
久しぶりの投稿……
遅くなって本当にすみませんでした。
何故遅くなったのかといいますと、日頃の疲れと話の展開(運命の日までの2週間の日常と『リゼロに関したオリ敵』の設定)に深く悩んでしまったのと『FGOの夏のイベント』と最近始まったアプリの『リゼロス』にハマったのが投稿遅れの原因でした。
スバル
「明らかにサボっていた事を自白しちゃったよこの作者……」
さて、エミリアが見事に壊れて(セーブポイント固定)次回は運命の日。
作者もこれどうするんだと戦々恐々としています(笑)
後、それまでの2週間の日々については全部書くとまたマンネリして投稿が遅れるかもしれないので過去編としていずれ書かさせていただきます。
次回は2週間を過ごしたクラスのみんなの反応を見て、彼等とスバルの間に何があったのか想像や考察をしてくれるともっと楽しめると思います!
もし設定に矛盾とかおかしい所がありましたらご指摘の程をお願いします。
返答したり修正など対応させていただきますので、長文になりすみませんが引き続き、"ゼロから始める『ありふれた』異世界生活"をお楽しみください!
リゼロを元としたオリキャラクターの名前を一部変えて登場させるか?
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リゼロのキャラ名をそのまま出す。
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キャラ名を一部変えた方がいい。